中原英臣 ヒトゲノムのすべて


普段余り私が読まないような本を読んで見ました。

*中原英臣 ヒトゲノムのすべて PHP研究所 2000年7月21日
  遺伝子と生命の謎を解く

最近よく聞く話題ですし、このへんは少しは関係がある分野ですが、知識の整理も兼ねて、読んで見た本です。以前midoriさんが読んでいた本か、あるいは同じような体裁の本なのかもしれない。新書型の本であまり厚くないし、分かり易く書いていますから、少し物足りないとは思いましたが、読むのには苦労しませんでした。

しかしこの本の見方はいろいろ考えさせられました。今や遺伝子は人類にとっての「資源」であるとか、遺伝子がかつては品種改良に象徴されるような第一次産業の資源だったのが、DNAが科学物質であることが解明されたことにより、工業資源となリ、今では膨大な人類の知的財産が含まれている情報産業となっているらしい。

ここでも日本のいろいろなシステムの弊害が取り上げられている。そういえば、80年代は日本はバイオの分野でも最先端を走っていたはず。それがヒトゲノム計画ではアメリカ主導の下に行われている。どうやら1991日本の解読割合は6%にすぎない。どうやら転換点はここでも1990年ころだったらしい。

2重螺旋の発見者ワトソン博士を責任者に「ヒトゲノム」計画がスタートしたのが、この年です。いわばこれは人類の壮大な試みだったわけですから、多くの国の参加と各国の資金援助が必要だった。ところが日本は、従来の実績主義をたてに、資金援助を拒否。これでワトソンは怒りを爆発させて、日本との「戦争」という表現まで使ったらしい。まあ研究者たちの、幸にも参加できるようにはなったらしいが、どうも将来を見とおす能力が日本政府には無かったらしい。

既にヒトインシュリンが大腸菌で作られたり、人間に移植する心臓心臓をブタから作る試みもほぼ可能となっているように異種生物間移植がますます進んでいます。いわば生物の種の壁が破られているわけで、すでにヒヒの腎臓、チンパンジーの心臓、ブタの肝臓などを人間に移植する実験も行われた。

昔ののんびりした品種改良の時代と違って、遺伝子が解明されれば、いわば時間の壁も破られる。

自社の農薬を売りこみたいがために、その影響を受けない遺伝子を組み込んだ農作物は、すでに国際的企業によって売りに出されている。作者は遺伝子組換え食品に対しても極めて楽観的ですが、まあ個人にとっては、食べ物の素材がどのようなものなのかの情報は入ってこないのかもしれない。

私にとっては、やはり国家戦略が日本にはかけているのが気になる。

内容的にはあまり詳しくは無い本でしたが、この分野も、もう少し関心を持とうと思います。

2000-9-23



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