会社がなぜ消滅したのか


*読売新聞社会部 会社がなぜ消滅したのか 新潮社 1999年10月15日
 「山一証券役員たちの背信」

これは読売市場に連載されたものを元にしながら、かなり大きく加筆されているようだ。なかなか面白く読めた。

日本の証券会社の中でも名門と言われた山一の倒産の衝撃はまだ記憶に新しいが、それが一部の経営陣だけの簿外債務隠しではなく、事業法人部と言う組織を中心とした大掛りな組織犯罪であったこと、それが長い間隠されていたこと、その隠蔽工作に関与した人物たちが、次から次に偉くなって行ったこと、などなどがある。

倒産を救うチャンスはいくつかあったが、山一の組織・トップはその度に因習にとらわれて、決断出来ない。ここには英雄も存在しない代りに、極悪人も存在しない。組織人として生きようとするなら当然の行為と思われた行動が、もはや許されず、組織の瓦解を早めるということもありうると言うことか。まあたしかに犯罪的行為もあるのだが、それにしても、山一が三洋証券と違って、組織が大きすぎるがゆえに、生き残れなかったと言うことも、なかなか象徴的ではないか。

しかし営業停止後、弁護士たちが出した最終報告書はなかなか文学的な表現があって面白い。「そして皆偉くなった」など、まるでアガサ・クリスティーではないか。この文書は倒産処理後の文書であるにも関わらず、マル秘扱いされることと言い、行平・三木の2人の元社長を除いた経営陣、及び監査会社に対する賠償訴訟を、結局は起こさなかったということに、日本らしい思いやり・馴れ合いの精神が、まだ残っていたのかもいれない。その意味で、これはもしかしたら20世紀最後の大型倒産の象徴だったのかもしれない。

21世紀、資本がグローバル化されたとき、そうしたのどかなよき慣習が、この国に残って入るだろうか?

2000-7-23



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