千代田圭之 暴発の臨界


*千代田圭之 暴発の臨界 徳間書店 1999-9-30初版

2005年の日本が舞台である。そのころ地球の環境汚染は一層悪化し、どうやらオゾン層の破壊の結果、日光浴を楽しむこともままならないらしい。バーンタイムなるものが毎日発表され、人々は1日当たり20分くらいしか、太陽の陽射しを楽しめないようなことも多いらしい。

そうした中で、無公害の車や、画期的な技術で日本のごみ問題を解決しようとする主人公たちが、世界の石油・金融・化学業界に君臨し、既成の経済体制を保持しようとするマイヤー財団に立ち向かうというのがストリーである。

面白く読めるが、どうも技術面と言うか、細かい所が気になった。エアカットエンジンは良いとしても、廃プラ油化還元工場などは、にわかには信じることが出来ない。家庭からでるプラスチックのごみが、この工場で直ちに灯油になるというのだ。しかも設定では1992年には、実際に最初の工場が稼動しているらしい。その成果はすばらしく、これを採用した自治体では不燃ごみの90%が減少したとか。それはいいとしても、それから10年以上経過した20005年でも、まだ30か40の自治体しか採用していないらしい。ごみ処理問題で悩み、情報化時代の現在の日本で、こんなことはありえないだろう。

それから、水をエネルギーに変えるとか、永久エネルギーの問題とか、少し胡散臭い技術があたかも実現しているかのような記述も目に付く。日本のごみの埋立地、つまり工業地帯のかなりの部分が、南極の大氷山の崩壊による大津波の結果、波状現象を起こして崩壊するというのも、あまりにも安易過ぎる。ストリーそのものは、楽しめたが、こうした細かいところの記述でしらけてしまうことがあった。仮想の現実を説得力をもって描き分けるのは、やはり難しいのだとつくづく思う。

2000-3-18



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