*仁科剛平 株で1億円作る! ダイヤモンド社 1999年11月26日発行(2000.2.6 28版)
普通はこうした実用書を読むのを読書とは言わないのだろうと思う。それに多分私も、これから類書を読むことがあっても、それらの感想を書くということは、もう無いだろうと思う。しかし今回は、これが私にとっての最初の株投資の本であったということだけでなく、最近の私の読書の一端も表しているのではないかと思って、感想を書いて見ることにした。
これは図書館の最新刊コーナーに並んでいるのを、借りてきた。発行は去年11月のようだが、2ヶ月あまりで28版を重ねている。かなり売れているのではないかと思う。最近私はインターネットやMLでかなりこうした投資情報について調べていることが多い。直接のきっかけは、野村証券のウェッブサイトでヴァーチュアル株式投資のシミュレーションゲームに参加してからだ。そこでの成績はあまり良くないのだが、おかげで最近また経済記事に関心を持ってきている。しかし基本用語などに無知なため、今までこうした記事を読んでもよく理解できないことが多く、関連書を読まなくては、と思っていたところだった。
この本のタイトルはすごい。全部を書くとかなり長くて、「インターネットのミニ取引から始めて株で1億円を作る!」というのだから、このタイトルだけで人は思わずこの本を手にするかもしれない。私もすぐさま手にして見た。ただ数年前の私だったら、まずこうした本には絶対手を出さなかったろう。それを変えたのが、タイトルにもあるがインターネットである。
田舎に住むものにとって、以前なら情報の面やそのほか多くの面で、株式投資はかなり不利だった。ところが状況は去年秋頃から一変している。私のように証券会社が全然無い地域に住んでいるものでも、オンライン取引を利用すれば、ほとんど不便を感じないようになっている。地域差はほとんど解消されてきており、各人の情報力・決断力次第では、大儲けのチャンスがあるということで、低金利に飽き足りない個人投資家の資金がかなり株式市場に流れ込んでいる。
この本は10万円の資金を5年間で1億にするというものである。まあ実際は宝くじ並の確率だろうが、多くの人が研究次第では可能かもしれないと思うだろう。私は読む前には、元手が1000万くらいいるのかと思っていたが、10万円というのだから、もしかしたらこの本を手にした多くの読者が今ごろは大きな夢を空想しながら、いろいろと情報集めに励んでいるかもしれない。
私は野村証券のサイトで架空の株式売買をするに当たっては、全然知識が無かったから、多分多くの人が取るであろうようなことをした。つまり地元企業や私が知っている企業の株式を選び、それをずっと所有して値上がりを待つ。しかも各自に与えられる金額は一律100万円だから、ボロ株というか低位株を多く買ってそれらの値上がりを待つ。大体そんなところだった。しかし作者によれば、こうした方針は全部間違っているとか。株式の分野でも、古い理論は見捨てられつつあるらしい。
どうやら、値下がりを続ける株というものは、やはり下がり続けるものらしい。そう言えば、ソロスも気取った言い方だったけど、同じようなことを言っていた。とにかくこの本の教えるところでは、株価の高いニュージャパン銘柄を選ばなくてはいけないらしい。そのために単位株を購入するのではなく、ミニ株取引という選択を選ぶのだとか。こうしたことはよく知らなかったから、私にとってはこれだけでも読んだ価値があった。
この分野の情報はインターネット上にあふれているが、案外基本知識は手に入らない。ナンピン買いという言葉に出会っても、推測して読んでいた私だが、やはり何事によらず、基礎的な知識は本でしっかり確認しなくてはいけないと思い知った。それと噂話のようないい加減な情報をいくら集めてもだめだということ。当たり前のことだが、少しでも株売買をしようと思ったら専門用語やいくつかのテクニックをきちんと理解していた方がいいのだろう。
本そのものは案外簡単に読めた。ただしこの本の一番の売りであるテクニック部分にあたる4章から6章が、専門的で多くの専門用語も出てきて、よくは理解できていない。この部分だけは、あと何回か読んでもう少しきちんとそれらを理解出来るようにするだろう。最初の部分と、最後の部分はインターネットでの株式取引の概況やら基礎知識だったから、案外すらすらと読めた。しかし郵便局を利用するなどの具体的な知識で、知らないことをいくつか教わった。
不思議なことに、株式取引に興味を持ち出してから、英語への興味というか、実力をあげなければいけないと思うようになっている。しかしこんな態度では多分株でもうけることは出来ないのだろうな、とも思っている。理論や一般的なことだけでは、あまり役に立ちそうも無いから。
これからも当分は普通の読書のあいまに、こうした本を読み続けると思う。
2000-3-3