前川透 ECビジネス最前線


*前川透 ECビジネス最前線 アスペクト 1999年11月15日発行

副題は「日米・電子商取引の現状と未来」とある。ECとはElectronic Commerceのことである。必ずしも楽しい本というわけではないのだろうが、私にとっては興味ある話題の最新情報ということで大いに面白かった。

これからのビジネスがどうなるかということも関心はあるのだが、今はそれはさておいて、私が新しく教えてもらったことの幾つかをここに書いておこう。この本これからしばらくは手元において、ここに出てくる固有名詞やら術語にもっと慣れ親しみたいとも思っている。それにこの本の良いところは、本文に出てくる固有名詞などの英語のスペルをすべて下の欄に記してあるところ。インターネット関係の本では、これからは、これは常識で無ければならないと思う。前に読んだ本で、英語表記がないために、インターネットで検索する時に苦労したことを思い出した。巻末には多くのURLが載っているのも助かる。インデックスはついていないが、出来たらつけてもらいたい。昔と違って、比較的容易に出来ると思うから。

いわゆるドット・コムの会社がたくさん出てくるのだが、その代表例として、アマゾンがあげられている。確かに200万冊の本を安く売られては、通常の小売の本屋は歯が立たないだろう。日本とは少し事情が違うが、それにしてもアマゾンの日本進出もうわさされているようだから、案外再版価格はこうしたところから、崩れていくのかもしれない。アマゾンが、さまざまな分野に進出してきており、さまざまなサイトを買収しているのも印象的だった。アマゾンとBarnes & Nobleとの競争も面白かった。

海外オークションはescrow serviceを利用すれば、私でもアメリカのオークションサイトに参加できるかもしれない。これは第三者に売買代金を寄託するという制度であるが、なにしろこれなら少し時間はかかるが、うまく行けそうだ。

証券取引に関して、私も現在日本についていろいろ調べているが、アメリカの方が環境ははるかに整っている。ここで証券会社を3つに分けている。従来からの会社、ディスカウント証券会社、それにオンライン証券会社である。サービスの内容が違うとはいえ、日本の場合でも場合によっては手数料が10分の1にもなる。自分で情報を集め、自分の判断で株式の売買をするものには、こちらの方がはるかに便利だと思う。

オンラインバンキングもアメリカでは、振替・新規口座開設・外貨両替申し込みなど、銀行のほとんどのサービスで利用できるようだ。私の住むところでは残高照会と取引記録照会などしかまだ出来ないようだが、この辺は日本でも銀行も生き残りをかけて、これからサービス競争が始まるのだろう。電子マネーの動向も少し気になるが、個人的には自宅から金銭の送金・その確認などが出来たら、いろいろなことができるように思う。

そしてポータル・サイト間のものすごいシェア争い。portalという言葉自体も、インターネット用語としては比較的新しく、始めてTIMEかNewsweekで見たときは違和感を感じたが、もうすっかり定着してしまった。

インターネットでは、No.1しか儲からず、No.3以下は存在しないも同然という言葉も出てくるが、考えて見れば、ここ2・3年がこれからの生き残りをかけた時だったのかもしれない。サイバースペースの世界も、そろそろ創世記の時代が終わりを告げているのかもしれない。赤字を続けながらも、シェア拡大のために売上の半分をCMに注ぎ込むという信じられない会社も存在する。それもすべて知名度を高めるためである。かつての利益率優先の考え方から、市場シェア、さらにはそれ以前の「マインド・シェア」で優位に立つことがもっとも重要なようだ。それぞれの分野で新しいブランド品が今多く生まれている。

地域に密着した商品を扱う店以外は、これから厳しい競争にさらされるかもしれない。なにしろ大げさに言えば、世界中の同業者がライバルということもありうる。少なくとも日本の流通機構は大いに変わると思う。最近日版の赤字決算のニュースを聞いた。これは必ずしも本体の業績悪化が原因ではなかったようだが、取引先の書店の経営は急速に悪化しているようだ。さらに今日は長崎屋の会社更生法申請のニュースが飛び込んできた。急激な業界再編成があちこちで始まるかもしれない。

アメリカはことECに関する限り、日本より5・6年先を進んでいるような感じがする。日本が独自の道を歩むとしても、ここで書かれている多くのことはやがて日本の現実となると思う。食料品などのECが実現するかどうかが問題だが、予想ではここでもかなりの割合がそうなると予想している。そうだとすると、グローバリゼーションはわれわれの日常生活に大きな影響を与えるだろう。

新聞や雑誌などを読んでも良く分からないところが、こうしてECの全体を見通すことで少しは見えてきた。この中のかなりのものに私も興味を持っているし、そうした意味では新しい知識をたくさん身につけたから、多いに役に立った本だった。もう少しこうした本を読みつづけようと思っている。

2000-2-13



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