Griffin & Sabine 三部作


Nick Bantock の三部作をようやく読んだ。本としては、久しぶりの英語の本である。ずっと前に買っていた本で、数ヶ月前にも途中まで読みかけたのだが、そのままになっておいたものである。今回は一気に読んだが、それでもそんなに時間がかかったわけではない。本文というかメールの部分はそんなに多くはないから。

*Griffin & Sabine 1991年発行
*Sabine's Notebook 1992年発行
*The Golden Mean 1993年発行

出版社はChronicle Books。定価はいずれも$17.95。

幻想的なラブロマンスである。現代の小説には違いないが、私はなんとなく泉鏡花の作品を思い浮かべた。ロンドンで孤独な生活を送りながら、絵葉書の発行を続けるGriffinのもとに、ある日突然奇妙な葉書が舞いこむ。南太平洋のSicmon諸島に住むSabineからのものであった。Sabineは13才のときから、Griffinが描く絵を幻視出来たのだという。2人の交流はメールを交わす毎に深まって行くのだが、やがてGriffinにはSabineが実在の人物なのか自分が創り出した想像物なのかわからなくなる。

Sabineがロンドンに訪ねてくると知って、Griffinは旅に出る。ヨーロッパ各国からエジプトへ、そして日本へ、さらにオーストラリアから南太平洋へと旅は続く。その間も2人のメールは続くのだが、ついにGriffinは一時は幻想とまで思いつめたSabineに会うためにロンドンの自宅に戻る。ところがそこで待っているはずのSabineはいない。

南太平洋に戻ったSabineからのメールによると、確かに彼女は1週間ほど、Griffinと同じ家にいたはずなのだ。彼らはお互いに異次元の世界に属しているのか?さらにお互いの透視能力が徐々に減退してきているし、2人の不思議な関係を暴露することに興味を持つ自称科学ジャーナリストも現れる。もう残された時間がないと判断した2人は、Griffinが前に異世界への扉を見つけたエジプトのアレクサンドリアで会うことを約束するのだが・・・・

豪華な本である。全ページが実際の絵葉書と封筒入りのメールの体裁の形を取っている。手紙はわざわざ封筒から出して読まなくてはいけなというこりようである。葉書だけならそんなに難しくないと思うのだが、封筒入りのメールの本は珍しい。2人は絵葉書発行人と切手デザイナーということになっているから、毎回、絵葉書・切手・封筒・letter paperも違ったものである。他人のメールを密かに見ているかのような錯覚を覚えるから、そうした意味でもこれは楽しい本である。作者は画家であるから、これは物語というより一種の画集なのかもしれない。

私の持っている本はオリジナルではないかもしれない。というのはアメリカではベストセラーの作品を、Book Clubの会員用に安く売るらしい。そしてそのとき例え革製や布製などの本であっても、ソフトカバーの表紙で売られることになる。もちろん値段を安く押さえるためだが、私はこの本はBook of Month Clubで買ったと思う。そしてこの本を見ていると、多分本来はもっと豪華本で有ったのではないかと思われるのだ。多分、背は赤布を使っていたのではないかと思う。しかしそんなことには関係なく十分楽しめる。

メールのやり取りをする物語ということでも、楽しく読めた。この作品は約10年前のものだが、これからはe-mailを舞台にした作品が多く生み出されると思う。時々Homepage上でも見かけるが、そのうちすばらしい作品を読めるのではないかと思って楽しみにしている。

2000-1-27



感想はこちらに・・・・・・ohto@pluto.dti.ne.jp


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