うぬぼれの功罪(7-20)


*You're OK, I'm terrific: 'Self-Esteem' Backfires (p.52)
Unjustified feelings of self-worth cause aggression

TIMEも少年たちの銃犯罪を特集していますが、Newsweekは精神的な面から、 その原因を探っています。 大分前、アメリカの学校では子どもたちに自信を 持たせるために、2人1組になってお互いを誉めあう授業をしていると読んだこ とがありました。自信をなくして、将来の夢をもてない子どもにはなかなか有 効である、というような感じの書き方だったと覚えています。

ではこうした教育は果たして長所ばかりなのか。どうもそうではなさそうで す。

アメリカでこうした授業が始まったのは21年前のことのようです。self- esteem(自尊心)のある子どもは、薬物使用や10代での妊娠、学業不振などに対 して抵抗できる。だから教育者や両親は、子どもたちが失敗しても、自尊心を くすぐる言葉を与えることが大切だというわけです。

もちろんこれはばかげた考えです。ところが最近の調査では、なんら根拠 がないのに子どもたちを自分は偉いと信じ込ませることは、危険な子どもを作 る可能性があることが分かってきた。こうして育てられた子どもは、敵意と攻 撃心を育て、最近の学校での銃乱射事件のような事件を起こすかも知れない。 子どもが自分に対して非現実的な評価をもち、それが他人から受け入れなかっ たとき、彼らは潜在的に危険だというわけです。もちろん銃乱射事件には多く の要因があるわけですが、少なくともLuke Woodhamに関しては以上のことがい えるようです。

彼は去年の10月、母親と2人の生徒を殺害した罪で3回の終身刑を受けたようで すが、彼には"narcissistic" traitが顕著に見られるとか。今までの心理学で は自尊心self esteemが低い人は攻撃的だというのが定説だったようですが事 実はそんなに単純ではないらしい。アイオワ大学のBrad Bushman教授によれ ば、いわゆるナルシシストも暴力的傾向があるらしい。心の奥深くでは自分が 優れていることに絶対的自信をもてないでいる彼らは、ちょっとした批判や無 視にとても敏感だし、自分のうぬぼれが傷つけられたとき、すっかり切れてし まうらしい。Bushman教授らによる実験もこのことを示しているようです。そ れがどの程度かというと、男性、酒を飲んだ場合、マスコミの暴力シーンなど をよく見ている場合などと、同じ程度ということのようです。これではどの程 度攻撃的になるのかははっきりしないところもありますが、ナルシシストがガ ールフレンドから断られたり、体育の授業でからかわれたりしたら、普通の人 よりも暴発の危険があるというわけです。

だから親にとっていいことをしていたつもりでも、子どもにとっては悲劇に なることが多い。子どもがちょっとしたことをする度に、彼らを天まで持ち上 げるpraise them to the skyとどうなるか。その結果は不満なことに耐えるこ とが出来ない子どもを作り上げているのではないか。子どもに本当の誇りを持 たせることは大切でしょうが、それをどうしたことで見つけさせるかというこ とは、本当に難しい、というのがNewsweekの結論でしょうか。

しかしここで書かれていることは、別に子どもだけとは限らないような気も します。昔から、こうしたことに関しては多くの知恵ある言葉が言われてきま したが、そうしたものは無視されている。人間は精神的にはあまり向上してい ないのかも。

しかしアメリカは教育界でも様々な実験が行われている感じですね。それだ け国家の統制が緩いのでしょうが、それだけに成功も失敗も大きい。しかしこ の記事に関して言えば、現在の日本の場合も関係ないとはいえないという感じ もします。



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