爆心地はカシミール(6/15)


*Ground Zero Is Kashimir (p.4)

インドとパキスタンに核戦争は起こるのか。時間が経過しても、あまり楽観的 な見方は出来ないのですが、Newsweekでは核問題を単なる軍事問題では無いと いう視点から論じています。

アメリカや世界銀行は、核のバランスが崩れるのをおそれて、経済制裁で対抗 しようとしている。しかし地政学的・援助云々の問題でないことは、援助国の 中で少なくとも日本だけは理解している。これは核戦争の恐ろしさを見にしみ て知っているということでしょう。

印パ両国の軍事費拡大は国家予算の中でもかなりの割合を占める。インドは 100億ドル、これは国内社会計画予算の3倍。パキスタンの軍事費は40億ドル で、社会的費用の10倍以上。domestic social programsとかsocial expenditureの定義はよく分かりませんが、福祉厚生予算などを含む、かなり 広範囲なものだと思います。とにかくかつて「アジアのスイス」とも呼ばれた 観光地カシミールは今では、領土問題に端を発して核戦争に発展する危険をは らんでいる。

しかしその根底に横たわるのは、ヒンズー教とイスラム教の対立がある。イン ドのイスラム人口は、1億2500万人。日本の人口と同じくらいです。nearly a tenth of the overall populationとありますが、これは多分インドのではな く、全イスラム人口の10分の1を占めるのだろうと思います。そしてパキスタ ンの核実験は、インドにとって隣国との対立というばかりではなく、この国内 に抱える巨大なイスラム教徒をどのように扱うべきかと常に表裏一体になって いる。fifth column第五列という古めかしい表現が出てきていますが、いわば 味方の中に数多くの敵がいる。そうした疑心暗鬼がインド人の多数を占めるヒ ンズー教徒に無いとはいえない。現政権の中にも、そうした排外的愛国主義 (この場合は宗教主義と言ってもいいと思うのですが)が、はっきりとある。 インド人民党の基盤はヒンズー原理主義だったですよね。

不安材料として4つほどあげられています。

1. インド国内のイスラムへの改宗運動・・・中近東のイスラム諸国は、リビ アも含めて、インド国内にモスクを含めてさまざまなイスラム施設を作るべく 資金援助してきている。仏教の影響が強かった不可職選民をイスラムに改宗さ せようとしている。原理主義的思想も入ってきているから、今まで穏健派が多 かったインドのイスラム教徒を、過激にする恐れがある。

2. 中近東諸国のパキスタン支持・・・中近東諸国を含めて世界50のイスラム 諸国から構成されるイスラム会議がカシミール問題でパキスタンを支持してい る。その結果、開発途上国の間で、インドのイメージは非同盟国からカシミー ルを暴力的に支配している国へと、悪化している。

3. 貿易の縮小・・・その結果インドと中東産油諸国の外交・経済発展・貿易 関係が、急速に後退している。今までインドの外貨源だった産油国での建設契 約にも韓国やフィリッピンが進出している。インドが原油を20%引きで輸入出来 る特権も一部廃止され、イスラム諸国への輸出も減少してきた。

4. 核技術拡散のおそれ・・・パキスタンがカシミール問題での支持と引き替 えに、リビア・シリア・イラン・イラクのいわばrogue stateに対して、核技 術を輸出するかもしれない。

独立以来インドは宗教と政治の分離をすすめる世俗国家の道を歩んできた。し かしパキスタンは常に宗教国家だった。だからインドは今までも、近隣のイス ラム諸国や国内のイスラム勢力を警戒してきた。しかしインド自身が宗教国家 に突き進むとしたら、どうなるのか。

解決策は、外から見ていても、なかなか難しそうです。



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