天才遺伝子は存在するか (5/25)


*A Gene for Genius p.63
'Smart DNA' could explain how IQ is inherited

人間のIQは、どこまでが遺伝的で、どこまでが環境の産物なのか。多くの議 論がなされてきたが、知能の発達を阻害する場合を除いて、知能に影響を与え る遺伝子の存在を明らかにした者はいなかった。そうした試みを企てたのが、 ロンドン精神医学研究所のRobert Plominを中心とする研究者達である。

彼等の取った手段は、IQが高く、4才若くても大学入試に合格でき、しかも Prinstonでもcaliber-lebelsの少年たちのDNAを調べたようです。caliber- lebelsは、学業成績優秀と言うことでしょう。日本で言えば、14才で一流大学 に入学して、しかも学業が優秀と言うことでしょうか。具体的には、IQが平均 136の集団と、IQが平均103の集団を、それぞれ51人選んだ。いずれも6才から 15才までの白人で、クリーブランド近郊に住んでいる。

ここから私の知識が不足していてついていけないところもあるのですが、と にかく分からないままに書いてみます。まず23の染色体の1つ、染色体(No.)6 を選んだ。この染色体の研究が最も進んでいるということで選ばれたようで す。人間の染色体は46だったと思いますが、調べてみると生殖細胞は23の染色 体を持つようです。しかし研究対象となったのは血液ですから、このへんも良 く分かりません。

とにかく染色体No.6の37の特徴の内、1つの特性が浮かび上がってきた。 IGF2Rといわれるもので、IQが高いグループのほうが2倍現れる割合が高かっ た。これはallele(対立遺伝子) 5と呼ばれるもので、正式にはinsulinlike growth factor 2 receptorというようです。インシュリン類似成長因子受容体 とでも訳すのでしょうか。 (^^;

しかしこのIGF2Rは天才遺伝子ではない。知性に関係があるわけでもない。せ いぜいたくさんあるものの1つに過ぎない、ということのようです。IQで言え ば、4くらいの差位しか説明できない。しかもIQが高いためには、必要でもな ければ、十分でもない。なぜなら、IQレベルが普通の子でも、23%は所有して いるし、IQの高い子でも54%は持っていない。これで見ると、持っている者の 割合は23%と46%になるようで、2倍という数字は同じですが、数字そのものは 前に述べたのとは違っている。何故違うのか、良く分かりません。

とにかくこのIGF2Rはインシュリンのようなホルモンを細胞に付着させる働き をするようです。インシュリンを巻き込んだ遺伝子が果たして天才遺伝子なの かどうかは分からないが、その可能性もあるようです。ホルモンが細胞に付着 したとき、細胞を成長させたり、破壊する働きがある。どちらの場合も、脳の 成長を助けるようです。国立健康研究所の科学者によれば、インシュリンは神 経を成長させる働きがある。そしてネズミ実験では、学習・記憶に関係ある脳 の部分は、インシュリン受容体がいっぱいあることが分かっている。

IGF2Rが脳及び知性に影響を与えるということはなかなかいい考えだが、疑問 視する科学者たちもいる。その1つにPlominたちが"箸の誤り"に陥っているか もしれない、というのがある。"箸の誤り"という理論があるのですね。遺伝子 学者たちが箸を上手に使える遺伝子を発見したと思ったら、たんにアジア人に 共通の遺伝子を発見しただけなのかもしれない。つまりIQが高い集団は、そう した教育を重視する集団に特有な遺伝子を持っているだけであって、本当にIQ が高い集団だけに特有なものかどうか疑問だというわけですね。

もともとIQは、文化的にもデリケートであり、子供の環境にも影響される。こ れはIQが必ずしも、客観な知能をはかる基準にはなり得ないと言うことだろう と思います。だから賢い少年たちののある染色体の37の遺伝子を調べたからと いって、それは知性と遺伝子を関連づけたと言うよりも、単なる偶然なのかも しれない。同じような手法で、精神分裂症、好奇心、それと似た性癖を持つ人 々の遺伝子を探せるかもしれない。しかも他の研究者が同じ結果を得られると は限らないし、正確であるともいえない。割り引きして考える必要がある、と ある学者は言っています。(I would take these findings with a whole box ofsalt.) with a whole box of saltは良く分かりませんが、with a grain ofsaltに、「割り引きして」という表現がありますから、これから考えると「 大いに割り引きして(ほとんど信じられない)」ということになるのかもしれま せん。

もしIGF2Rが知性に関係あるという仮説が正しいのなら、ここからさらに難し い問題がいろいろ出てくる。いろいろあるようですが、例えば母親や新生児に 正しい栄養を与えることによって、IQ遺伝子の中身を変えることが出来るの か。知性を司る遺伝子が目の色を決定づける遺伝子と同じように決定的なの か。Genes are not expressed in a vacuum.というのは、遺伝子だけで人間の 知性は決まるものではない、ということなのでしょう。環境要因との様々な相 互作用が重要になってくる。

PlominはIQ遺伝子を探そうとして、さらに2つの染色体の分析をしているよう です。10月にはその結果を発表するようですが、彼は"We have many other hits"と言っていますから、すでになかなか成果があったということでし ょうか。遺伝子決定論者たちは、あまり他の科学者たちの批判は気にしていな い。ある心理学者は2カ月以内に、妊婦向けのIGF2Rテストが行われるだろう、 と考えています。

全体的に遺伝学の知識や正確な用語を知らないから、かなり苦しいところもあ ります。まあ全体の概略を大体つかめたことで満足しておきます。すべての染 色体の機能が完全に分かる日は来るのでしょうか。あまり楽しそうでもないよ うですが、どうもクローン人間の可能性といい、世界は私の想像もつかない世 界に突入しているようです。



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