アダム・スミスの精神(Newsweek Dec.9)


みなさん、こんにちは。

Newsweek Dec.9 p.4の記事です。

アダムスミスは現代にこそふさわしい。彼が自由市場の擁護者だったからでは なく、それ以上のものを考えていたからである。彼の関心は秩序ある社会を創 ることだった。自由市場はその目的に至る唯一の手段であり、政府では出来な い。スミスは常に政府と市場の正しい役割について考察した。スミスは決して 独善に走らず、知恵に頼った。逆に現在の我々は独善的で知恵がない。

アメリカのリベラル達は政府の保護を強調するあまり、スミスのいう"見えざ る手"を無視している。私欲(self-interest)は、たんなるどん欲とか自分本位 とか、ナルシシズムとは違う。正しく使われれば私欲は社会の幸福のために大 きな力を発揮する。人類の進歩は個人や企業の独立心と創造力から生まれるの だから。

一方で保守主義者達は政府を必要悪位にしか考えていない。政府があってこそ 許容できる自由市場は可能なのだ。政府は市場では供給できないし、望んでも いない防衛とか道路などの公共サービスを供給してくれる。

スミスの伝記を書いたJenny Mullerを読めば、スミスを反政府主義者と断定す ることがいかに間違っているかよく分かる。彼はスコットランドの関税長官だ ったの職にもついている。(中心活動はグラスゴー大学での倫理学・道徳哲学 の教授)

スミスの理論は当時の現実を説明している。18世紀イギリスは封建制度が崩壊 し、農業生産と生活水準の向上が見られた。いろいろな日常品が市場での売り 買いを通して手に入るようになり、豊かになった。家庭で苦労して作っていた 衣服・ビール・家具なども市場を通して買えるようになった。

スミスの考えでは、分業こそが社会が豊かになった要因だった。(ピンを例に とっていかに分業が優れているかをスミスは本の中で書いています) 商品は 売り手が自分の儲けを大きくしようとして流通する。売り手が博愛の心を持っ ているから、私たちが商品を手に入れているわけではない。

スミスは動機付けがいかに重要か分かっていた。これは今でも当てはまる。同 じ民族が国の政策によって違った動機付けを与えられたときどうなるかは、中 国(と台湾・香港)、ドイツ、朝鮮の例を見れば明らかだ。

政府が市場に干渉することをスミスはきらった。The Wealth of Nations「諸 国民の富」は特権を持った経済グループの圧力に屈しないようにと、立法者を 励ますために書かれたのだ。しかしスミスは政府を嫌っていたわけではない。 彼は政府の役割として3つ上げている。a) 防衛 b) 正義の保証と財産の保護 c) 道路・運河・港湾の建設、すなわちインフラストラクチャーの整備。これ らを遂行するためには政府にきちんとした予算を与えなくてはいけない。

スミスはまた富がすべてであるとは考えていなかった。逆である。暴力がより 少なく、やさしい社会、つまり人間の悪い情熱をやわらげる社会こそ彼の望む ものだった。より大きな富は人々の苦しみを和らげ、お互いに思いやりを持つ ようになる。市場には欠点もあるが、そうしたことが出来ると考えたのだ。更 にスミスは家庭こそ一番重要であり、個人の幸福の源と考えた。現在の政府の 役割は広範囲に渡っているから、スミスの時代より難しくなっている。スミス は市場であれ、政府であれその果たすべき理想像を示してくれたのであり、私 たちは現在でも彼から教わることが出来る。

現在のリベラルも保守主義者も一面しか見ていない。スミスは市場の欠陥も認 識していたし、それを是正するために、例えば普通教育を主張していた。正確 な現状分析の上に理想の社会像を描いたのだ。現在の指導者は目的がよければ 手段はどうでもいい、と短絡的に考えていないだろうか。

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経済学が元気がありません。ケインズの考え方もだんだん、効き目がうすくな ってきたようだし、あまり新しい思想も聞こえてきません。現実がこれだけ複 雑化すると、ミネルバのフクロウは飛び立てないのでしょうか。すっきりと現 実の経済を解明してくれる、新しい経済思想はまだ成熟していないのでしょう か。

YUKI



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