「創世記」は歴史か。(NEWSWEEK,OCT.21)


Newsweek Oct.21はPBSが10回にわたって聖書の「Genesis創世記」シリーズを 放映するに当たっての特集記事です。

2つの記事から構成されていますが、後のp.59のBut did it Happen?「しかし 書かれたことは実際に起きたのか」の記事をもとに感想を書いてみます。

学界の常識では、創世記11章までに書かれていることは、証明されない。天地 創造、エデンの園、大洪水、バベルの塔などです。

12章のアブラハムの物語以降についての記述は、当時の社会的・文化的事実・ 習慣を反映しているが、創世記に書かれた内容が歴史的事実と必ずしも一致し ているとは限らない。考古学者の発掘調査の結果は、聖書の記述とは必ずしも 一致しない。

聖書自体の記述にも時代錯誤的矛盾があるが、これは聖書に述べられた事件と 編集過程の間に1000年の隔たりがあるからだ。

結論としては、"the more we learn about the customs and conditions in the early second millenium, the more we find that the narratives [of Genesis] reflects them."という引用で終わっています。

私は聖書学については全くの無知ですが、ここに述べられていることは至極妥 当なところだと思います。

しかしキリスト教原理主義者達は怒るでしょうね。聖書に述べられている言葉 は一言一句神の言葉として信じている人たち、この世界は7日で造られたもの だし、進化論なんかを教えている生物教師達は辞めさせてしまえと叫んでいる 人たちにとって、こういった記事もまた排斥の対象になるんでしょうか。数的 にはどれくらいいるかわかりませんが、日本で時々見聞きする報道から、アメ リカの一部宗教界の偏狭さには理解出来ないことが多いです。

しかしアメリカ大統領が就任式には必ず神に祈るような表現を使いますから、 聖書の影響は私の考える以上だとは思います。そのアメリカ人がどうやら聖書 をあまり読んでいないらしいということは少し驚きでした。

どこかで読んだことがありますが、人間の犯す犯罪のすべてが書かれていると いわれる創世記。しかし子供のときにsanitized "Bible stories"を読んだき りだと云うのです。実際、私が創世記を最初に読んだときに感じたことは、神 があまりにも残酷だということでした。私の思い浮かべるイメージとは大分違 っていたのです。子供用に編集された聖書からは、多くの性的描写はもちろん 数多くの暴力もがなくなり、怒れる正義の神ではなく、人間性あふれる教育者 的な神だけしか描かれていないと云うことです。

聖書の解釈についてもいろんな考えが出てきているようです。神のおこした大 洪水にしても、罪もない動物までも何故殺したのか、ナチのホロコーストは、 その遠因がここにあるのではないのか、そうした意見が必ずしも的外れではな いかもしれないとは、私も思っています。

このPBSの番組の1つの目的に、彼らにとっての世界3大宗教ーユダヤ教、キリ スト教、イスラム教ーの対話を進めるという事もあったようです。しかし、創 世記を含む聖書を聖典とするこれらの宗教は、同じ出来事に対してもその解釈 はかなり隔たりがあるようです。その1つとしてAbrahamがわが子Issacを神に ささげる事件のことに触れています。

聖書の話題はアメリカ人にとって、私たち日本人の仏典以上になじみ深いので しょう。TIME/NEWSWEEKではときどきみかけます。

YUKI


これは私としても少し意図的に書いたところがあって、他の記事とは違って必 ず反論があるだろうと思っていたのですが、期待はずれで少しがっかりしてい ました。私は特に聖書とか宗教の方に詳しいと言うわけではありませんが、興 味は持っています。しかし信仰のことは心の中では他の人がどんなことを考え ているのか、よくわかりません。

今週のTIMEにもローマ法王が進化論を容認したという記事が載っています。そ ちらのは別建てにしましたので、出来ましたらコメントお願いします。

(中略)

もちろんそうでしょう。そこが私の一番知りたいところでもあるのです。異な る文化圏に属する人の発想が違うのは当然です。価値観が普遍的でないこと は、よく読んだりします。欧米では聖書が思考の根底にあると言うことは常識 的にはよく語られます。ただおかしなことに同時に聖書はあるいはキリスト教 の信仰は信じられていないという話もよく聞くのです。どちらが本当なのか。 これが私にはよく把握できないのです。

(中略)

聖書の遺跡が発見されたというのは、時々新聞でも見かけます。最近ではイエ メンの都市だとか、イスラエルで聖書の記述を裏付けるものが見つかったと か、詳しいことは忘れましたがこういった内容は私もよく見ます。しかしこれ は聖書時代の遺跡が見付かったという事であって、聖書に記述されている内容 がそのまま正しいわけではない、これはNEWSWEEKの言っているとおりだと思い ます。「創世記」もその時代の産物ですから、当時の(出来事が起きたとき か、編集の時かそれは問わないとしても)政治的・社会的・文化的状況を反映 しているのは当然です。そして私は「創世記」に書かれている内容のかなりは ユダヤ民族の伝承ですからそれのもとになった出来事はあったろうと思いま す。ノアの洪水伝説は世界各地に伝わっていますが、だからといってアークが アララト山にたどり着いたとは信じません。(しかし、高橋克彦の竜の棺シリ ーズは大変面白かった)

私がある程度そうだと思うのはアブラハム以後の記述ではないかと思っていま す。それ以前のは、やはり神話というか神学上のものだと思います。一言一句 神が与えた言葉っとは信じられません。そしてそうではないと主張しているの が一部の原理主義者ではないでしょうか。私は今週号のTIMEを読んで、キリス ト教徒の大多数と私との認識の違いはそんなにないと思っています。

なお進化論が万能であるかどうかは、私にはわかりません。自然淘汰説とか進 化論とかの知識は私の頭にはほとんど詰まっていないもので・・・ただ、日本 人には受け入れられやすいんでしょう。日本で始めて進化論の講義があったと き、出席した人々は大きな拍手で答えたとか読んだことがあります。日本のア ニミズム的考え方は進化論とはあまり矛盾しないのでしょう。

(中略)

日本人の宗教感覚はいろいろ言われていますね。日本人は無宗教であるとか、 いやそうではない、日本人こそ宗教心が一番厚いとか。故山本七平氏によれ ば、日本人こそ世界で一番宗教心の強い「日本教」徒だということでした。何 を宗教と定義するかで違ってくるのだと思います。ある日本人が自分は仏教徒 だといったら、ヒンズー教徒だか、イスラム教徒だかに笑われたそうです。仏 教は宗教ではないと。道徳律にすぎないと。そういった見方もあるのでしょ う。

自分が無宗教であると言うことが、日本と他の地域では受けとめられ方が違う かもしれませんね。しかし私はこれも絶対的とは思っていないんですよ。世界 には様々な考え方があるし、あるから面白いんですが、人間の考えることはそ んなに違わないんじゃないかと思っています。宗教に対する考えも表面的なこ とは別にして、あまり違わないのではないかと。座禅を重視しているのは、い まやカトリックの僧院ですすらね。

だからこそ原理主義者達の行動は私の好奇心を刺激します。私には理解できな いからこそ、ますます知りたくなるのです。

(中略)

いいえ、ぜひともお願いします。キリスト教でも仏教でもユダヤ教でも何でも 結構です。私自身は仏教徒でしょうが、これも大多数の日本人(ちょっと無責 任ですが)と意識的にはほとんど変わっていないとおもっています。特にゴー タマ・シッダルタの教えに帰依しているという訳ではないです。もっとも彼の 教えを読むと心が安らぎますけどね。これは昔読んだトマス・アクィナスの本 なんかも同じでしたから特定の宗派には関係ないのです。

個人的には、よく知らないなりにスピノザのいう神に惹かれています。

YUKI



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