インターネット中毒


キンバリー・ヤング著「インターネット中毒」を読む。小田嶋由美子訳。毎日新聞社刊。原著は"Caught In the Net" by Kimberly Young。副題がhow to Recognize the Signs of Internet Addiction and a Winning Strategy for Recovery。

インターネットに夢中になり、それを止めることの出来ない人は、薬物中毒・アルコール中毒と何等変わりはないという視点から、豊富な実例を挙げて、Internetが人々に及ぼす影響を考察している。

まあ書いている内容は大体前もって想像できたし、私自身が、cyberspaceでかなりの時間を過ごしているから、納得できる点も多く一気に読んでしまった。インターネット中毒になった結果、大学を中退したり、失業したり、家庭崩壊が起きたり、インターネットのもつ暗黒面を限りなく追っている。すさまじいものがあります。アメリカのケースですが、多分日本でもInternetの普及と共に、インターネットが個人に及ぼす悪影響はこれからますます議論されるだろう。昨今の日本では、インターネットを悪用した犯罪が、続けざまに起こって一時インターネット悪玉論が流行していた。もちろんこの本でも小児愛者の犯罪などは、取り上げられているが、大多数は個人がインターネットにのめり込んだ結果として、実生活から逃避した結果、彼らの人生が崩壊していく過程・それへの処方箋が書かれている。普通の人なら、誰にでも起こりうるというわけだ。

時間的には、私もかなりの時間をe-mailなどに費やしているわけだから、ある意味では立派なInternet中毒者かもしれない。それに大多数の中毒者が、自己の症状を理解していないと言われれば、元来が楽観的である私なども、少し心配になって来る。読んで気づいたことを、心に浮かぶままに書いてみる。

それにしても、1日に18時間PCの前に座りっぱなしとか、1週間の接続時間が50時間から70時間とかいう人が結構いる。アメリカはInternetの利用料金は、定額制と思っていたら、この本を読む限り必ずしもそうではないようだ。原著は1998年の出版だから、1年前の資料だと思うが、月に300ドルや1000ドル請求されたとか、書いてあったようだから、金銭的負担が高くなる場合もかなりあるらしい。この辺は、AOLの例が良く出てきていたようだから、その関係かもしれない。

それとInternet中毒者がのめり込むのが、主にchat、interactive gameそれにニュースグループということが書かれている。e-mailやnet surfingのことも少し書かれているが、問題となる中毒者は圧倒的にこの3つに夢中になることが多いようだ。今まで味わったことのない興奮を味わえるから、それらにのめり込むようだ。特にchatではサイバーセックス、あるいはそこでのロマンスに夢中になり、家庭を崩壊した人々の例が数多く挙げられている。ゲームでも、1日に10数時間も架空の世界の人物になりきって架空の自己を成長させるようだ。ここまでのめり込んでいる人々がいるとは知らなかった。どちらにしても、なかなか誘惑的な世界だとは、思うのだが・・・

学生たちの中には、学業を怠ってInternetに夢中になっているものがいるいうのも分かる。なにしろアメリカの大学はcomputer roomでは、24時間自由に無料で接続できるとあって、MUD(Multi User Dunsion)のめり込む人も多いらしい。現実の世界ではなく、架空の中にある国でいきることに生き甲斐を感じるらしい。しかもplayerが大勢いて、彼らと対話したりしながらゲームをすすめていくようで、この世界で偉くなることが人生そのものの生き甲斐になっている。そして現実の世界と架空の世界の境目が無くなってくることがあるらしい。

どうもこのへんはこのごろとんとゲームに関心のない私には分かりづらいのだが、まあ納得はいく。chatそのものは、私自身は経験したことはないが、e-palとそれらしいことをよくしているから、そのおもしろさは分かる。現実の自分から架空の自分に変身して、相手を理想化していくというのも分かる。このへんは私のe-palに対する感覚からも、思い当たることがある。e-mailは、面白いからこれに熱中して実世界のことはどうでも良くなるというのも、まあ想像できる。このへんは私のe-mailに対する思い入れと重なるところが大分あるようだ。

しかし中毒症状というのが、どうも分からない。Internet中毒者も、接続を禁じられたら激しい中断症状を起こすらしい。自分では、機械なんかに支配されるはずがないと思っている人でも、いざInternetに接続できない時間が長くなると、いらいらして周囲のものに当たり散らし、自分の仕事・勉強に集中できないとか。このへんは私には理解できないことが大分ある。

作者はInternetの重要性・必要性には一応理解を示している。ただ時間の管理をしっかりとやり、人生にとっての大切なものの領域をInternetが不当に侵すことの無いように、というわけです。勉強はしないで1日の大半をゲームに費やす大学生、仕事中に個人のメールを書いたり、sexy siteに夢中になっている会社員、見知らぬe-palとのロマンスや恋愛に夢中になり家事を放ったらかし、終には夫を捨ててecyberspaceの恋人のもとに走る主婦、あるいは小児愛者の犠牲者となる少年少女たち。確かにもしこうしたことが頻発しているようなら、Internetの暗黒面は、まだ気づいていない多くの人に知らせる価値がある。

私は本を読んでいたとき、中毒者のチェックテストを読んでみたら、かなりの中毒者かもしれないと思っていた。しかしKinberly Young のweb pageで確認したらnormalの判定のようだ。このへんはどちらにでも判断できる要素があるからかもしれない。しかし私の場合、中毒者とされる人との間にはどうも大きな差があることも確かなようだ。私は現在Internetでは、ほとんどがe-mailだけだ。接続時間はテレホーダイの時にはつなぎっぱなしだが、昼間はoff lineで書く。だから、on lineの状態はしようと思えばいくらでも少なくできる。このへんも答えの内容がいくらでも変わるから、まあ私の診断結果は良くは分からない。chatや、gameは今の所ほとんどやっていない。chatには、少し興味があるが、今の所実践していない。

e-palとの関係も少し違うような気がしている。私の場合、相手の住所・電話番号を含めて、snail mailやら電話などでの実生活での接触も出てきていますが、お互いに等身大に近いe-mailのやり取りをしていると思っている。まあcyberspaceでのやり取りだから、自分に都合の悪いことは敢えて書かないということがあるにせよ、比較的正直に書いている。しかしこの辺は微妙なところだから、この本に書いて有るところも間違いとは言えない。こんなことを考えると、web siteでのチェックテストの時は、私の方が少し身構えしたのかもしれない。

ただ私は中断症状にならない自信だけはある。というより、このごろ少し面倒になって意識的に丸々1日接続しないことが良くある。それでも別に淋しいとは思わない。ただその後、返事を出すのが、少しきつい。英語でmailを書くというせいもあるかもしれないが、ときどきmailを書かなくてもいいとなると、ホッとすることがあるのも事実。私の場合、心の片隅のどこかにInternetを何かに利用したいという気持ちが常にある。その可能性を常に模索している。だから、現実逃避から、Internetに夢中になっているわけでもない。まあ空想の世界は好きな方だが、私にとってはInternetの世界は、どちらかというと現実の世界のイメージに近い。

Internetで私の性格や生活は変わったか。これは確かに変わってしまった。しかし私の場合、どうしても悪い方向に変わったとは思えない。自分を広い世界に導いたことで、例えそれが架空の世界を媒介にしてで有るにせよ、現実世界でのより積極的な自分を作り出す結果になったと思う。

多くの情報が手に入るからといって、万々歳と叫ぶ気持ちは既に全然無い。ただし、必要ならば多くの情報を手に入れられるし、世界のe-palとのe-mailの交換で多くのものを手に入れた。私の場合、それを大切にしているが、最初から現実の人間関係と同じとは思っていなかった。ただし、私の場合かえってそうした関係を求めていたのかもしれない。どちらにせよ、より現実的な人間関係に近づいているとは思うが、多分この本に述べられているようなことにはならない。一時はそうしたことも1人のe-palとは楽しんだが、お互いに飽きてしまった。現在は、それらを含めていろんなことを話題にする関係に戻ってしまった。

私の場合英語のwritingを向上させるという大義名分もある。しかしどうもこのごろこれも怪しくなってきた。英語で簡単にmailを書けるようになったのだが、果たして実力がUPしているのかどうか、心許ない。まあ少しは英語の勉強には役立っているだろう。数名のe-palが毎日jokeを送ってくるから、商品名やら芸能人などの固有名詞やらの入ったもので分からないものもあるが、たいていのjokeを理解するのには困らな苦なったし、分からないのはe-palに聞けばよい。e-palの中に一人、私の英文を直してくる人がいるが、これはもちろん勉強になる。私もそのかわり時々頼まれて、他のアメリカ人のe-palの文法やら語彙やらを直している。アメリカ人が必ずしも完璧な英語を書くとは限らないし、jokeの理解度も人によって違うということが良く分かった。当たり前のことだが、こうした当たり前のことを納得しただけでも役にたったといえる。

voice mailを2人から送ってもらった。あと3人送ってくれるらしい。そのかわりに送った私のvoice mailは、相手はなかなか聞き取れなかったらしい。時分自身の英語力の不足を感じている。今度アメリカのドラマやワイドショーなどをCM入りで送ってもらうことになっている。CMという英語は通じなかった。多分英語を書き続けているということ、あるいはいろんな手段で英語の実力UPに勤めているということ、これらは私の場合Internet中毒者にならないための重要要素かもしれない。私の場合、Internetは興奮とか中毒というより、勉強・仕事という要素が、現在の所強いのである。まあ大いに楽しんでいることは事実だが、中毒に至る興奮とは最近の状況は大分違っている。

しかしこの本にはHPを作っている人でInternet中毒にかかっているという人は一人も出てきていないようだ。この辺は面白い。因果関係は、作者も全然触れていないから分からないが、私はあると思う。要するにInternetに対する心構えの問題が関与してくると思っているのだが、今はこれには触れない。

作者のキンバリーの写真は彼女のHPに載っている。美人である。この本の感想を含めて手紙を書こうかと思っている。昔の私だったら、これも考えられなかった。

URLは、http://www.netaddiction.com

私は、この本をきっかけにという訳ではないが、多分これからは普通の読書のペースを上げると思う。今までも、Internetを通しての読書が有るから分量的には読書量はそんなに減っているとは思っていないのだが、今後日本語を含めて単行本の読書が増えると思う。しかしInternetさえ無ければ、1年に100冊や200冊読める自信は今でもあるから、やはり私も又一種のInternet中毒者なのだろうか。

1999-3-12




Mailは、こちらに・・・ohto@pluto.dti.ne.jp


ホームページに戻る 

Diaryのホームページに戻る