「英語を読む」 No.44


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「英語を読む」  No.44  98-8-9 日発行      

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盆休み期間中、私の小さな島は日本各地からお土産を持って帰郷してくる人々 であふれます。島はその間1年で一番のにぎわいを見せますが、楽しい再会を 果たして、彼らは再び自分たちの生活・活動の場に帰って行きます。読者のみ なさんも、今週は帰郷したり、夏休みで旅行したりしている人が多いかも知れ ませんね。

北日本では雨が降り続いているようですが、九州では晴天の日が続いていま す。私は相変わらず夏休み気分というか、少し時期的には早いブドウ狩りに行 って来たり、Toy StoryやContactなどの映画を鑑賞したり、さらに最近は海外 とのe-mail交換に夢中になって、英語を読むよりも書く方の時間が長いという 生活をしています。

この時期mailzineの中にも休むものが多いので、私も少し休もうかなと思って いたのですが、今回も熱心な投稿が有りましたので、発行します。しかし最近 私はすっかり発行人となってしまい、自分の感想を書いていません。少し申し 訳なく思っていますが、今週は別として来週くらいからは、少しずつエンジン をあげることが出来るのではないかと思っています。

T. Muramatsuさんからは、TIMEとBusinessweekの感想を頂いきました。特に私 にとってはBusinessweekの記事は、なかなか面白かった。そろそろ私も経済記 事を読もうかと思っているのですが、私の場合ビジネスの最前線にいるという わけでもないので、細かい内容になるとつい億劫になって未読のままになりま す。しかしみなさんの影響はやはり少しずつ受けていますから、頭の中で経済 に対する関心度が徐々に高まっているようです。 (^o^)

今回初めて投稿いただいたGreenyさんは、私と同じNiftyの時事英語の会議室 で積極的に発言している方です。そしてこの4月に、自分のHomepageを開設す るまでは、私のHPに主としてTIMEの感想文を載せていただいていました。今回 はUS Newsの記事の感想ですが、かなり長くなかなか力作で読みごたえがあり ます。これは以前私が感想を書いた内容も一部重複していますし、私個人もこ の記事には関心がありました。出来れば、次回からも継続して投稿をお願いし たいのですが・・・

なお毎回積極的に高度の感想を寄せていただいているMicroInformationGroupの みなさんは、今回は夏休みということで、お休みです。

私のmailzineは発行が不定期といういい加減なところがありますが、ときには これが幸いします。ある一定量の原稿が集まれば、即発行できますから。私と しては今週は人並みに忙しいと思いますが、仕事が休みなので、次回の発行は そんなに時間が開かないかも知れません。

1998-8-9  長崎原爆の日

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目次
1. 19年後の対面(TIME 98-8-3) by T. Muramatsu
2. 精神分裂病--その恐るべき狂気(US News 98-8-10) by Greeny
3. アメリカ版バブル崩壊の懸念? (Businessweek 98-8-17)
By T. Muramatsu

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1. 19年後の対面(TIME 98-8-3) by T. Muramatsu

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*Can Iran be forgiven ?

19年前のイラン米大使館占拠事件で,大使館の広報官だった Barry Rosen は人 質となっただけでなく,スパイ活動を指揮したとして裁判にかけられた.今週 の金曜日にパリの国連ビルで開かれる会議の場で,彼はこの事件の学生リーダ ーの一人だった Abbas Abdi と対面する.Abdi の友人のイラン穏健派の人々 が,キプロスを本拠に活動する人権擁護団体でこの会議を計画したCenter for World Dialogue に働きかけ,Rosen を招くことになった.

「彼らを許したり忘れたりする必要はない.しかし国家間の関係は再開されよ うとしており,これはその重要な一歩だ.」と Rosen は語る.Abdi も同じ考 えだ.「今回の目的は,相互理解をより深め,両国間の関係正常化を促進する ことだ.」しかしここまでの道のりはそう簡単ではなかった.対面の場として 当初ロンドンが予定されていたが,イギリス当局が Abdi に対するビザ発給を 拒否したために不可能となった.彼は今回の準備を極秘のうちに進めなければ ならなかった.イラン国内で依然勢力を持つ強硬派が,フランスへの出発前に 彼の身柄を拘束する恐れがあったからである.かつてはイスラム政体の熱狂的 な支持者であった Abdi は,国を支配する聖職者層(mullah)の反民主的な性 格を批判したために1993年に逮捕され,1年近く投獄されていた.

Abdi は最近のインタビューで,事件について語っている.
目的は,退位してアメリカに移っていたシャーの身柄引き渡しを要求すること だった.
シャーが病気療養を理由に1979年にニューヨークに行ったのは,彼の復権を狙 うアメリカの陰謀だと, 行動を起こした学生たちは本気で懸念していた.
当日,大惨事が避けられたのはアメリカ海軍の護衛隊の自制のおかげだったと 思う.
もし学生が一人でも撃たれ,殺されたりした時は,指導者グループはその場を 去り,暴徒と化した学生たちのなすがままにするつもりだった.

米人を人質としたことについて,イランでは今も,アメリカの後押しによるク ーデターの可能性から国を守るものだったとして正当化されている.しかし Abdi は「他人を傷つけることを望んでいる者はいない」というハタミ大統領 の言葉を繰り返す.
「イランの人々は,人質やその身内の方たちの苦痛を気の毒に思っている.」

Rosen には,当時の学生の行動が正当だったとは思えない.しかしシャーの圧 政をアメリカが支援したことに対するイラン国民の不満は理解できる.「シャ ーは中東の安定という目的のためには貢献した.しかしイラン国内で何が起き ているかということについて,我々はもっと知っていなければならなかった し,敏感であるべきだった.それが人権侵害であろうと,政治的に未発達であ るがゆえの問題だったとしても.」

こうした意見がパリで交わされれば,会議を主宰する Eric Rouleau はこの試 みが成功したと思えるだろう.彼は事件当時,『ル・モンド』特派員として一 部始終を目の当たりにした人物だ.「双方の国に,痛ましい歴史のあとに新し いページを開こうとする人々がいる.」というのは Rouleau の言葉だが, Rosen と Abdi はすでに次の章に取りかかったのかもしれない.

今回の対面のきっかけは,今年1月のハタミ大統領の呼びかけにクリントン米 大統領が応じる形で,両国の関係修復を目指す文化交流の開始が決定したこと だといいます.元来反欧米を掲げていたハタミ大統領の路線修正によって,暗 い歴史の当事者の劇的な対面を生みました.
  常々,国家間の対立とは誰の対立なのだろうかと思います.「敵国アメリ カ」というのはイスラムの教えにはないはずですから.

by T. Muramatsu

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2. 精神分裂病--その恐るべき狂気(US News 98-8-10) by Greeny

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YUKIさん、こんにちは。

今回は 私の文章もmailzineに載せてもらえるということで、緊張していま す。いつもは タイムから記事を選ぶのですが、今週はこのUS Newsの記事が特 に気になりました。わからない個所もあったのですが、たくさんの人に読んで もらえたら うれしいです。

URLは一応書いておきます。・ http://www.usnews.com/usnews/issue/980810/10schi.htm

おかしなところ ありましたら、教えてください。

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精神分裂病--その恐るべき狂気

Fearsome madness (US News / Science 8/10/98)
Schizophrenia remains frustratingly hard to control

今週は USNews 8月10日号のSCIENCEから、精神分裂病についての記事を読 んでみました。
最近アメリカの新聞の一面を飾った2つの事件でその犯人が どちらも もと精 神分裂病患者であったということで これを絡ませながら、精神分裂病と狂気 との関係、その問題点、今後の取り組みなどについて書いてあります。最近 精神障害の人の起こす事件が多いなとは思いながらも、躁鬱病との違いもあい まいなままだったので、この記事は こういった問題を考えていく上でいいき っかけになりました。

結論を先に言えば、タイトルにあるように精神分裂病は 若い時に発病するや っかいな恐ろしい病気ということになるのでしょうか。ただ凶行事件で精神障 害を持つ人の犯行が多いのか、彼らは危険かなど 精神分裂病と暴力との関係 も研究データはまちまちで はっきりと断定は できないようです。でも酒・麻 薬の使用、治療での薬をやめるなどすると、狂暴かする率は高くなるらしい。ア メリカも、ここで 何とか手を打たねばならないという危機感は あるようです ね。ですが、さて どういう方法を取るかとなると 患者の人権も絡んできてむ ずかしいみたいな感じを受けました。

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簡単にまとめてみます。

● 二つの事件: Russell "Rusty" Westonと Michael Laudorの共通点
この記事に出てくる二つの事件の一つは 先日 7月24日に起きた 元精神病患 者 Russell Weston(41才)による 連邦議事堂襲撃事件。ここでは、確か 二 人の犠牲者が出たはずです。 もう一つは 6月だったかな、、、35才の優秀な Yale大で法律を学んでいた Michael Laudorが妊娠していたフィアンセを無残 にも刺し殺した事件。
この2人。。。共通点はあまりないようです。 議事堂襲撃の Weston 41才は孤 独であった。ここ数年 イリノイの両親の家と自分のモンタナの山小屋を行っ たり来たりして、政府が自分に対して陰謀を図っている(? government conspiracies against him)などと不満を口にしていたということです。それ に対し、Michael Laudorは優秀で魅力的な35才、見事精神障害から立ち直っ たということで、 本と映画で200万ドルの契約ができていたらしい。
二人に 共通するものは。。。精神分裂病であったということ、そして逮捕された ということ。

ここ少なくとも10年、アメリカ社会で問題になってきたのは、いかに危険な る精神を病んだ者から社会を守るべきかということ、そして いかに そういっ た精神障害を抱えた者たちの基本的人権を守るかということですね。

● 精神分裂病とは:(ここ日本語にしましたが、実際は よく わかっていない 個所。。(^^;)

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これは、次にあった記事 Schizophrenia: a devastating diseaseに書いてあ った部分です。
* 15才から25才の間に症状が現れ、男性、女性とも 等しくなる病気である。
* 約1%がこの病気にかかり、 アメリカだけで 250万人にのぼる。
* 原因と考えられるもののとして、遺伝的素因、妊娠(gestational problem s)、ウイルス、脳の欠陥、neurochemistry(神経化学?)が挙がっています。
* 症状は 妄想、幻覚、つじつまの合わない会話、感情面での反応がなくなる (lack of emotional response)など。
* ホームレスの約10〜15%が精神分裂病と推定される。

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多くは精神分裂病を"split personality"(性格の分裂)と考えているらしい が、そうではない、思考の障害(mystifying thought disorder)とあります。 原因はよくはわかっていないが、多分 遺伝的素因も一部にはあるらしい。近 年 薬がよくなってきており、思考の混乱、幻聴などの症状はコントロールでき るようになってきているが、incurable治らない病気であると書いてありま す。(^^;

治療に効果ある薬が出てきているものの、この病気そして治療と脳との関係は まだ十分には わかっていないらしい。
が、いくつか手がかりとなる事は出てきていると、2つほど書いてあります。 (これも、意味ワカッテナイナ〜(^^;))
(1) 脳の記憶と聴覚に関係する部分temporal lobe(側頭葉)は、分裂症の人は 違った発達の仕方をしている。
(2) 分裂症の人の脳では 通常の人よりも 多くの神経伝達物質ドーパミンを作 りだしている。
で、第一世代の薬では このdopamine systemに働くようにできていたらしい が、効果あるその後の薬では ドーパミンでなく、セロトニンとか他の神経伝 達物質に効くようになっているらしい。だから、ドーパミン説は ほんの一部 を説明しているにしか すぎない??

***専門的話は やはり ムズイ!!(^^; 要は、まだ 原因も 特定できないから、こ れで治る!!といった治療法もないということなんでしょうね。***

● 精神分裂病と暴力の関係:
最初に書いた2つの事件;凶行事件を起こした Russell Westonと Michael Laudorは置かれた環境が違うにも関わらず 共に同じ精神分裂病だった。果た して 精神分裂病と凶行事件の関係は? 何年にもわたる調査の結果でも、デー タでは はっきりとしたことが わからないようです。精神障害の人は極めて危 険であるという調査もあれば、逆の結果が出ている場合もある。
ただ ほとんどの研究者がいくつかの点では一致しているとあります。
(1) 精神障害の人が酒、麻薬を使うと、普通の人より 過激になりやすい。
(2) 多くの精神障害者は 坑精神病薬(antipsychotic medications)の治療を中 断すると、過激になる。

そして、WestonもLaudorも 事件の前、薬を止めていたらしい。

● 施設を出た精神病患者たち・・・40万人。
精神病患者は アメリカでは1950年代半ばから 社会復帰を果たしているようで すね。その数、この数十年で40万人とあります。これが、今 アメリカでは 大きな問題となっているということです。
精神病院の閉鎖は 新たなpsychoactive drugs(精神活性の薬)と 地域社会にお いて治療など必要なケアを十分行なうという前提の上にはじまったもの。 だ が、実際には資金不足など種々の理由で 多くの地域では これらケアは行なわ れていないということです。ところで、ここでいうmental health servicesと は、地域のクリニックでの精神障害患者へのカウンセリング、投薬など含めて 言っているのでしょうか。記事では、多くの精神病患者がThorazineなどの薬 を飲まない、治療を受けないことが大きな社会問題になっていると書いてあり ます。その理由は 忘れてた、paranoia強い怖れからだったり、あるいは 薬を 長期間使うと 副作用が出てくるのかな。。。they fear the permanent Parkinson's-like twitching or crippling stiffnessとあります。 あのヒト ラーやモハメット・アリのように 手足が震えるようになるのかしら。

● 今後何をすべきか?・・・the focus of heated debate..意見様々なようです ね。【簡単に書こう、、自信ないし、疲れてきた。。(^^;】
* 政府は :
精神病患者、家族に対する教育、救済活動、クリニックに来なくなった患者の家 への家庭訪問などのプログラムを社会が進めることを考えているようです。患 者を十分フォローすることでしょうね。

* これへの反論; 以前施設、病院に入っていた患者の40%は 自分を病気だ とは考えないから、強制されないと 治療は受けないというわけですね。で、 出てくるのが involuntary "outpatient commitment"の各州での法制化。 何と いう訳にしたら いいかわかりませんが、要は 精神病患者の病院からの退院を 条件つき、つまり社会復帰後も通院、あるいは治療を続ける条件をつけることの ようです。で、現在37の州で この法律ができてはいるのだが。。。それにモン タナもイリノイも含まれている。。。実際には めったに実行に移されていないよ うですね。

* あと、強制はよくない、その前にやれることを最大限するべきだという意見 もあります。一例に挙がっているのが、実際 Robert Bernsteinがワシントン のThe Bazelon Centerでやっているもので、mental health "advance directives"。。。 患者自身が病状が良好な時に この先 また症状が悪化したら どういった治療を望むか文書にして書いておくみたいですね。これはこの数年 ヨーロッパで取られている治療法で、よい結果が出ているようです。

ですが、この市民的自由の擁護者Bernstein自身も 強制的方法を取らねばなら ないかもしれないと認めているようです。
それだけ、今 アメリカ社会の状況は厳しいということなんでしょうね。もち ろん 精神障害を背負った患者たちにとっても。

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John Forbes Nash: genius, madness, and a Nobel Prize

精神分裂病だからって、暗い話ばかりじゃない!!
二人のすばらしき人物が挙がっています。
* The Russian dance Vaslav Nijinsky。。。ニジンスキー名前は よく聞いた が。。。はて、どんな人か よく知らない。(^^;
病気にも関わらず、10年間 ダンサーとして活躍していたようですね。
* John Forbes Nash。。。1994年、経済学でノーベル賞を取った人なんですね。 21才の時 書いた27ページの博士論文で ノーベル賞をもらったのでしょう か。論文の内容は むずかしいので、パス。 それより、ノーベル賞を取るまで の記述が目を引きます。 論文を出したあと、高等数学のwunderkind(鬼才)と騒 がれるが、その栄光は長く 続かない。 MITで教職についてすぐ、paranoid schizophrenia (誇大妄想性の精神分裂病)になり、大学は辞職。ヨーロッパを 放浪、その間 奇妙なる手紙を妻や同僚に送る。
ところが。。。病気になって20年後、回復!! そして ノーベル賞受賞となっ たようです。(^^)

アハ。。。こういう 話は いいですネエ。(^_^)

by Greeny☆。。(http://member.nifty.ne.jp/greeny/index.htm)

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3. アメリカ版バブル崩壊の懸念? (Businessweek 98-8-17)
By T. Muramatsu

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BusinessWeek (8/17/98) のカバーストーリーから2本です.
アジア問題,Monicagate と悪材料を抱えながら,「低インフレ,堅調な消 費」に米国株式は支えられてきました.しかしそこにある危うい部分につい て,相場そのものの実態と,そこに投資する個人の両面から書かれています.

*How worried should you be ?

何ヵ月もの間,優良株は高値を追ってきたが,その間にも市場全体を押し上げ る力は弱まってきていた.優良株の新高値の陰で,他の大部分の銘柄も同様に 上昇していたわけではなかった.

株式市場はこれからどうなるのか,という問いに,インフレ,金利,需要とい った経済のファンダメンタルズを重視するアナリストは楽観的だ.一時的な不 安心理による上下はあっても,長期的に見れば心配はなく,NYダウ平均が7 月に記録した9338ドルの最高値から1000ドル近くも下落している今は買い時だ と言う.

しかし市場自体のダイナミズムに注目するテクニカル派のアナリストは,市場 の反騰には懐疑的だ.その理由の一つは,最高値以後の下落局面で新安値を記 録した銘柄の数が非常に多いことだ.これはまだ市場が底を打っていないこと を示しているという.
もう一つの不安な兆候は,「騰落株線」と呼ばれる指標に見られる.毎日の値 上がり銘柄数マイナス値下がり銘柄数を累積していくものだ.この指標は4月 初めがピークだったが,相場はその後も上がり続けた.すなわち,それ以降は ごく限られた銘柄に支えられた上昇だったことを意味する.

最後の何度かの上昇局面では,わずか10や20の銘柄に買いが集中していた.そ してこうした銘柄のPERは50,60,さらに70にまで上昇してしまった.相場 の勢いに乗じて買い,勢いがなくなれば逃げてしまうというマネーゲームに市 場は動かされている.

*A downturn could really rock the boat

イリノイ州に住む40代の Massucci 夫妻は,自宅のレコーディング・スタジオ に1000ドルのエレクトリック・ドラムセットを加えた.マサチューセッツ州の Shelly夫妻は,2万ドルで新しい自転車を3台購入し,さらに6000ドルを使って 休暇をサイクリングで過ごした.株式相場の上昇で「今年の投資目標は達成し た」と37歳になる Shelley 氏は言う.

彼らは「資産効果」の恩恵を受けている典型的な例だ.株式の上昇によってポ ートフォリオの価値が上がり,住宅価格も年率2ケタ上昇している中で,多く の家庭では老後の心配がなくなったような気分になっている.これを反映して 貯蓄率はGDPの0.2%にまで下落する一方,消費は今年に入って年率6%で伸 びている.

しかしNYダウは史上最高値から9%も急落した.これが今後も続いて,資産 効果に浮かれていたアメリカ人が不安に襲われたとしたら,消費の落ち込みは 深刻なものになるだろう.メリル・リンチのスタインバーグ主任エコノミスト によれば,現在のアメリカ経済は,これまでアメリカだけでなくどの国も経験 したこともないほど,株式相場の影響を受けやすくなっているという.

つまり資産効果は両刃の剣なのだ.株価が1ドル上がると消費が4セント増える という試算があり,FRBの報告では,株価上昇によって個人資産は1996年か ら7兆ドル増加した.しかし同じ理由で,株価が1ドル下落すれば消費は4セン ト,おそらくそれ以上減少することになるだろう.

近い将来米国がリセッションに見舞われると考えるエコノミストはほとんどい ない.しかしそうでなくても,株価の上昇が止まるだけで,景気後退以上の重 大な影響をもたらす可能性がある.その理由は貯蓄率の落ち込みにある.1982 年には8%だった貯蓄率は,株式への資金移動を反映して昨年には2%となり, さらにこの1年間で危険水域ともいえる状態となった.株式投資が10〜12%の リターンを生み続けない限り,ベビーブーマーが職場を去り始める頃には深刻 な事態を招きかねない.

ほとんどの人は,住宅価格の上昇や株式・ミューチュアルファンドから生じる キャピタルゲインも資産の増加と考えているため,これらを除外した「貯蓄」 の数字はあまりに悲観的に映るかもしれない.しかしそうした資産の目減りも 始まっている.たとえば株価が20%,もしくはそれ以上下落した場合,消費者 も企業も,それと運命を共にせざるを得なくなるだろう.

 

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日本のバブルと同じような面ももちろんありますが,今から思えば異常な金融 政策が演出した日本の場合とは違い,グリーンスパンFRB議長とルービン財 務長官の巧妙な舵取りに対する信頼はいまだ絶大です.しかし最近の米国金融 政策はアジアに手を縛られた面が多分にあり,これまでとは局面が変わってき ていること,加えて0.2%という貯蓄率の驚くべき低さが不安材料です.な お,「2万ドルで自転車3台」はどうしても気になって,価格を調べましたが, 高いものでも5000ドルを超えるものは見つかりませんでした.細かい話です が,付け加えておきます.

By T. Muramatsu

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