Mailzine「英語を読む」 No.41


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Mailzine「英語を読む」 No.41  1998-7-23日 発行     

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みなさん、こんにちは。

2日続けての発行ということになりました。

今回は無料で読めるようになったNew York Timesの日曜版から記事を選んでみ ました。TIMEのESSAYは、私自身も消化不良のようで、感想を読んでもはっき りしないところがあるかも知れません。大きな勘違いをしていないことを、私 自身願っています。

1998-7-23

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目次
1. Newsweek 98-7-20
(1) うぬぼれの功罪
(2) ニューヨーカーを去ってから
2. TIMEのESSAYから
(1) 大統領と人種問題を話す(98-7-20)
(2) 聖なる神話と現世の嘘(98-7-27)
3. ヨーロッパを席巻する英語(New York Times 7/19)

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1. Newsweek 98-7-20
(1) うぬぼれの功罪
(2) ニューヨーカーを去ってから 

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(1) うぬぼれの功罪

*You're OK, I'm terrific: 'Self-Esteem' Backfires (p.52)
Unjustified feelings of self-worth cause aggression

TIMEも少年たちの銃犯罪を特集していますが、Newsweekは精神的な面から、 その原因を探っています。 大分前、アメリカの学校では子どもたちに自信を 持たせるために、2人1組になってお互いを誉めあう授業をしていると読んだこ とがありました。自信をなくして、将来の夢をもてない子どもにはなかなか有 効である、というような感じの書き方だったと覚えています。

ではこうした教育は果たして長所ばかりなのか。どうもそうではなさそうで す。

アメリカでこうした授業が始まったのは21年前のことのようです。self- esteem(自尊心)のある子どもは、薬物使用や10代での妊娠、学業不振などに対 して抵抗力がある。だから教育者や両親は、子どもたちが失敗しても、自尊心を くすぐる言葉を与えることが大切だというわけです。

もちろんこれはばかげた考えです。ところが最近の調査では、なんら根拠 がないのに子どもたちにを自分は偉いと信じ込ませることは、危険な子どもを作 る可能性があることが分かってきた。こうして育てられた子どもは、敵意と攻 撃心を育て、最近の学校での銃乱射事件のような事件を起こすかも知れない。 子どもが自分に対して非現実的な評価をもち、それが他人から受け入れなかっ たとき、彼らは潜在的に危険だというわけです。もちろん銃乱射事件には多く の要因があるわけですが、少なくともLuke Woodhamに関しては以上のことがい えるようです。

彼は去年の10月、母親と2人の生徒を殺害した罪で3回の終身刑を受けたようで すが、彼には"narcissistic" traitが顕著に見られるとか。今までの心理学で は自尊心self esteemが低い人は攻撃的だというのが定説だったようですが事 実はそんなに単純ではないらしい。アイオワ大学のBrad Bushman教授によれ ば、いわゆるナルシシストも暴力的傾向があるらしい。心の奥深くでは自分が 優れていることに絶対的自信をもてないでいる彼らは、ちょっとした批判や無 視にとても敏感だし、自分のうぬぼれが傷つけられたとき、すっかり切れてし まうらしい。Bushman教授らによる実験もこのことを示しているようです。そ れがどの程度かというと、男性、酒を飲んだ場合、マスコミの暴力シーンなど をよく見ている場合などと、同じ程度ということのようです。これではどの程 度攻撃的になるのかははっきりしないところもありますが、ナルシシストがガ ールフレンドから断られたり、体育の授業でからかわれたりしたら、普通の人 よりも暴発の危険があるというわけです。

だから親はいい育て方をしていたつもりでも、子どもにとっては悲劇に なることが多い。子どもがちょっとしたことをする度に、彼らを天まで持ち上 げるpraise them to the skyとどうなるか。その結果は不満なことに耐えるこ とが出来ない子どもを作り上げているのではないか。子どもに本当の誇りを持 たせることは大切でしょうが、それをどうしたことで見つけさせるかというこ とは、本当に難しい、というのがNewsweekの結論でしょうか。

しかしここで書かれていることは、別に子どもだけとは限らないような気も します。昔から、こうしたことに関しては多くの知恵ある言葉が言われてきま したが、そうしたものは無視されている。人間は精神的にはあまり向上してい ないのかも。

しかしアメリカは教育界でも様々な実験が行われている感じですね。それだ け国家の統制が緩いのでしょうが、成功しても失敗しても極端です。しかしこ の記事に関して言えば、現在の日本の場合も関係ないとはいえないという感じ がします。

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(2) ニューヨーカーを去ってから

Newsweek 7/20の記事からです。タイトルもあまり適切とはいえません。「テ ィナ・ブラウンの今後」くらいがいいのでしょうが、あいにく私はこのTina Brownもその他大勢の人々の名前も全く知らない。ただただThe New Yorkerと いう雑誌に少しだけ興味を持っていたがために読んだ記事ですが、アメリカの マスメディアの世界を全然知らないから、人物関係やら会社の名前がぴんとこ ない。記事ではそれらを全部説明しているわけではありませんから、一度出て きた人物かどうかチェックしながら読んでみても、なかなか分かりません。まる でパズルを解いているみたいでしたが、少しは背景が見えてきたので、大まか なところと言うか、感じたところを書いてみます。

*After The New Yorker (p.42-44)
Talk of the town: Tina Brown quits for 7something magical' with Miramax

The New Yorkerの編集者Tina Brownが6年間のThe New Yorker編集者の職を辞 して、Miramax Filmsと共同で新しい雑誌を発行する、というのがこの記事の 内容です。44才になるBrownは、業績としては黒字にはなっていないものの、 不振のThe New Yorkerを立て直した立役者ということになるのだろうと思いま す。p.43の3つのグラフから判断する限り、91年から93年にかけてのどん底か ら広告収入・発行部数・収支決算いずれも向上していますから。ただ相変わら ず赤字発行は続いているようですが、発行元がThe New Yorkerを発行し続けて いることでいいイメージを与えている面もあるでしょうから、これはある程度 覚悟しているところもあるのでしょう。

ところでこのThe New Yorkerの発行元はどこか。多分あまりにも当たり前のこ となので、どこにも書いていないようです。私は1985年に買収した云々とある し、記事の内容から、どうやらSi Newhouseだろうと考えました。そしてこれ を統括するのが、Conde Nastというメディア帝国らしい。私はどちらの名前も 初めて聞きました。そしてどうやらThe New Yorkerは来年新しくできた(出来 る?)48階建てのTimes Squareの本社ビルに移ることになっているらしい。どう もこれはあまり好ましくないようです。本社から離れたところに社屋を構え、 Bride'sとかGlamourという女性向けの雑誌も発行していたのが、本社というか 親会社のビルの中に吸収されてしまう。彼女はAt least I won't have to move to that hellish building.と言っています。雑誌は赤字を続けている し、1985年以来1億7500万ドルの赤字と言うことですから、Conde Nastaとして も、よりThe New Yorkerの資金管理を厳しくしなくてはいけないのでしょうが、 これはBrownを含むThe New Yorkerのスタッフにとっては特権を奪われたと感 じるようです。それにどうもSteven FlorioなどのConde Nastのやり方が気に 入らないらしい。

The New YorkerはBrownが編集者になってから、読者を増やすためにいろいろ と紙面の改革を行ったらしい。一部質の低下を批判する人もいるようですが、 National Magazine Awardsを10回受賞しているところを見るとそうもいえない。 それにTina-watchingという言葉があるほど、彼女はNew Yorkでは有名人らしい から、彼女がいなくなったらThe New Yorkerがどうなるのか心配する人もいる ようです。

今までにも彼女の獲得に乗り出してきた企業はかなりあるようです。USA NetworkとかABCもその中にある。しかし最終的に彼女と合意をとりつけたの が、Disneyの子会社、Miramaxだというわけです。どうやらMiramaxは関連の新 会社を作り、そこで新しい雑誌を発行し、映画やテレビ番組の制作に乗り出 し、さらには本の出版も予定しているらしい。そしてその経営がBrownに任せ られ、さらに経営が軌道にのり、利益を生み出すようになれば、利益に応じた 株式配当があるようです。とにかく外野席からはいろいろ言われていますが彼 女とNewhouseの間では、円満退社という形のようです。

彼女の新しいパートナーとなる Weinstein(BobとHarveyの兄弟。特にHarvey) と彼女はうまく行くのか。ある人に言わせれば2人はDiとDodiみたいに不釣り 合いなカップルだとか。このパートナーもかなり話題が多い人物のようで、別 枠の記事ではThe Buzz Brothersと書かれています。新雑誌の具体的な内容も まだ決まっていないようですが、ダイアナみたいに悲劇的なことにならなけれ ばいいのですが。

しかし新編集長が今週中にも決まるらしいThe New Yorkerは今後どうなるのだ ろうか。もしかしたら世紀末のこの変動の中で沈没してしまうのだろうか。そ れにしてもThe New Yorkerの表紙はどれをみてもなかなか面白い。今夜にで も、WEB上のサイトを訪問してみようと思います。

(付記) 佃さんから教えていただいたところでは、S.I. Newhouse Jr.は、 Advance Publicationsの会長だそうで、この会社がConde Nastと The New Yorkerを所有しているそうです。私の勘違いも少しあるようですが、そのまま にしておきました。

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2. TIMEのESSAYから
(1) 大統領と人種問題を話す(98-7-20)
(2) 聖なる神話と現世の嘘(98-7-27)

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(1) 大統領と人種問題を話す

少し遅れましたが、7/20のTIME US版のESSAYを読んでみます。

*Talking Race With The President
Arguing over old issues, but with a heartening sense of goodwill
  By ROGER ROSENBLATT

ESSAYで、こんなに素直な文章を読んだことはあまりありません。文章が易し いというのではなく、書かれていることが非常に率直というか、皮肉とか、複 雑な言い回しが無いようなのです。作者の人柄でしょうか。

作者がクリントン大統領を囲んで、人種問題についてパネルディスカッション に参加したときの感想を書いています。司会はJim Lehrer。作者以外のパネリ ストは、Cynthia Tucker, Elaine Chao, Sherman Alexie, Clarence Page, Richard Rodriguez, Kay James , Roberto Suroです。合計10人ということに なります。いずれも錚々たるメンバーなのでしょうが、私はクリントンとJim Lehrer以外は知りません。

最初作者は参加が決まってから、そのための準備をしようと思ったようです。 school vouchersについての論文を読んだり、専門家の意見を聞いてみようか と、思ったのですね。school vouchersはよく分かりません。学校入学に当た って、その人の人種等を記す書類などのことでしょうか。とにかく人種問題は アメリカそのものですし、それを大統領と議論することになるわけですから、 作者も少しは心配したのでしょう。And any time you meet with a President, if you say you're not nervous, you're lying or legally dead. このへ んの大統領観も普通はESSAYの欄ではお目に書かれないものです。

しかし結局は自然体で行こうと決めた。アメリカ人として、これまでこの問題 を避けては生きてこれなかったわけですし、自分の気持ちも分かっている。他 のパネリストも同じような態度で臨んだようです。結果的にはこれがよかった のでしょうか。

作者は人種問題がマスメディアで議論されるごとに不自然さを感じていたらし い。各人が持っている自然の感情をそのまま議論するのではなく、理論的にな り、偏狭や批判ばかりが目立つ。Now we live with thwarted expectations and the sort of intellectual meanness that goes with disappointed hopes. Integration, the best idea this country ever had, dares not speak its name. こ*れはわかりにくいところもありますが、人種問題を論じ ると、(実状を無視した議論になり) 期待が裏切られたり、失望してしまうこ とがよくあるが、この国が成し遂げた最大のこと、integrationすなわち人種 差別廃止の偉業については誰も語ろうとしない、ということでしょうか。これ は驚くべき言葉だと思います。

筆者は現代は筆者が育った過去の時代と比べて、その倫理的環境はまったく別 世界のようだと言うのです。例えばテキサス州、Jasperで1人の黒人が3人の 白人のsubhumanたちによって車で引きずり回され殺された事件を考えて見よ。 40年前だったら、これは大事件になったろうが、黒人の市長も、死亡した男の 家族も、これを人種差別としてとらえなかった。すべてを人種問題から議論する ことはない。Jasperの事件の記事を読んだときにも感じたことですが、アメリ カは、最近では人種問題ではかなり寛容になってきているようです。

パネルディスカッションで、作者の友人のPageが、依然として人種問題は存在 することを証明するために、シカゴ郊外で10代の黒人が白人の警官から嫌がら せをされていると発言した。Pageは黒人のようですが、それに対する作者の考 えは、40年前だったらそもそも黒人の家族が郊外に住むことなど不可能だっ た、ということのようです。

もちろんintegationが完全に目標を達したとは筆者も考えていない。そこでク リントンの意見を聞いたようですが、大統領はaffirmative actionも弁護しな がら、さらに多様性ということに関心も持っている。彼はintegrationという 言葉は、identityやseparatismという言葉と必ずしも相容れないと感じたの か、うまく話題をかわしてしまった。

結局議論の中心は平等なチャンスを支持するものと平等な結果を支持するもの に分かれた。クリントンは両者を支持したが、preferenceを重視する考え方に 近いようだった。これは多分少数者優遇制度を支持することだと思います。人 種平等を実現するためには、底辺から積み重ねなくてはいけない。つまり少数 者優遇制度もある程度仕方がないということでしょう。筆者の考えはこれと少 し違うようです。確かに多様な学生集団も、それ自体教育的だが、それは自尊 心selfesteemが物理学physicsよりも重要だという議論と同じだ。どうもここは よく分からないのですが、affirmative actionを廃止して、チャンスさえ平等 に与えればよい、という考えでしょうか。しかしここの段落は抽象的で、分か りづらい。多分筆者は白人だと思うのですが、人工的に平等を推進するような 動きにはあまり賛成できないのでしょう。ここは細かいところまで正確な内容 把握をしているかどうかについて、あまり自信はありません。

しかし作者が感じたことは、こうした議論の違いではなかった。大統領と他の パネリスト同士もほとんどが初めて会った間柄であったが、みんな家族のよう だった。こうした議論が普通は騒々しい騒ぎになるか、savage politenessに なることを考えれば、これは珍しいことだった。そこには無意味と同義語の形 式的な礼儀正しさは見られなかった。お互いに他のものの幸せを願っていた し、大統領の幸運を願っていた。

大統領もこのパネルディスカッションが大分気に入ったようだった。もっと話 したがっていたし、実際議論が終わってから45分も他の参加者たちと楽しく過 ごしたようです。肌の色が異なる10人の参加者全員がアメリカの繁栄を願って いた。人種ではなく国が重要だった。つまり私たち全員の幸せが大事なのだ。 この議論で何か成果があったと言うわけではないが、作者はかなり満足したよ うです。

かなり省略をしましたし、特にチャンスを重視するか、結果を重視するかを説 明した文章のところは、思いがけない勘違いをしている可能性がありますが、 作者が感じたことは読み間違えていないと思います。人種問題や宗教問題など の微妙な問題は、どうしても書かれた文章だけからは、見えてこないものがあ ります。この文章は、今まで読んだことの無いような、それでいて一見当たり 前のことを書いているだけに、大多数のアメリカ人の感情を表しているような 気がします。まだ完全に人種差別の無い社会が実現されているわけではない し、矛盾も多いが、それでも後戻りはない、というところでしょうか。

この文章を読み終わって、これは案外難しい文章だった、大きなミスをおかし ていなければいいがと、今頃になって思っています。

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(2) 聖なる神話と現世の嘘(98-7-27)

TIME 7/27 US版のESSAYからです。

*Stories Sacred, Lies Mundane
Ten years later, a casualty of the Tawana Brawley case finds vindication
By LANCE MORROW

このESSAY、タイトルからしてなかなかやっかいです。私は、理想を実現する ためには嘘をついてもかまわない、目的のためならば手段は選ばない、そうし た考えを否定していると勝手に拡大解釈しました。

私たちの精神は聖なるものと、世俗的なものの間を揺れ動く。ある時は自分 自身に対する理念と神話的通念を信じるかと思えば、もう一方で日常的で人間 的な混乱、矛盾、不公平などがあり、だから法律が必要となってくる。この2 つの領域の境界に、危険で面白い嘘の領域がある。

10年前、N.Y.のWappingers Fallsというハドソン川に面している町でこの3つ の領域が交錯した。当時10代の黒人少女, Tawana Brawleyが、白人の警官たち に誘拐されて、森の中に4日間も監禁されていたこと、彼らは彼女を繰り返し 強姦し、腹にKKKとNIGGERの文字を書いたこと、犬の 糞を彼女の体に塗って、 かつて彼女の家族が住んでいたアパートの外にごみ袋に入れて放り出したこと などと話した。ただ彼女にとって運が悪かったことに、そこのアパートの住民 が彼女がこそこそとごみ袋に入り込むところを目撃していた。そして大陪審 は、長期間の詳しい調査の結果、彼女の話の信憑性を裏付ける証拠は何もない と結論づけた。

彼女の話は嘘としては、あまりうまいものではなかった。子どもを育てたこと がある人なら、彼女の話が真っ赤な嘘であること、数日間無断外泊して、恐ろ しい義父の怒りを恐れて、やけになった15才の少女がでっち上げたものである ことがすぐに分かっただろう。

しかしTawanaの話しの中には、私たちの文明の中に固定観念として埋め込まれ ているものがあったから、ブラックホールのようにそのつまらない話しを大き なものにしてしまった。彼女の話は、人種対立がない社会であったら、作り話 として誰も相手にしなかったろうが、人種・強姦・リンチの記憶を心の奥深く にしまっているアメリカではそうはいかなかった。彼女の経験は悲劇的事件と して、過去にもそうであったように崇高な怒りをもって抗議しなければならな い。Tawanaの事件は、1955年にミシシッピのTallahatchie郡で、14才のシカゴ の少年Emmett Tillが、白人女性になれなれしい態度をとった(fresh with)と いう理由でリンチされたことと同じ意味を持っている。こんな風に一部の人た ちは考えたようです。

このTawana Brawley事件の犠牲者は誰か。Tawana自身か。確かに自分をごみと してしか想像できなかったことは、ずるがしこい面もあるが、悲しい面もあ る。だがこの事件の場合、Tawanaの嘘は実害をおよぼした。事件が公表される と、人種問題を専門とする3人の弁護士C. Vernon Mason, Alton Maddox , Al SharptonがTawanaの代理人としてマスメディアを煽った。Dutchess郡の副検 事、Steven Pagonesが犯人の1人とされ、Pagonesは汚名を注ぐのに10年間かか った。

政治家や批評家や映画・テレビのメディアは私たちに神話通念を与える。つま りこれらの人たちは、我々のパターン的思考を満足させるものを提供してくれ るのでしょう。その結果起きる日常の混乱を取り締まるために、特に嘘の領域 では、法律が必要となってくる。先週法律はその役目を果たし、Pagonesの嫌 疑は晴れた。Sharptonたちは彼の名誉を傷つけたとして、陪審はその損害補償 額の審理に入った。

現在のように、メディアが神話を作る時代にあっては、噂とかセンセーショナ ルな事件は原材料である。つまり娯楽のためならば、それを真実からほど遠い ものに加工する危険が常にあると言うわけです。だから事実がおきまりの事 件(cliche)として処理される危険性もある。

特にアメリカの場合、人種・強姦・リンチという観念は、昔からアメリカ人の 中に強い真実として根付いている。だからアメリカの黒人の中には、O.J.シン プソンが有罪であっても問題ではない、Tawanaが嘘をついていても問題はな い、という人がいる。事件が事実であったかどうかは、その背後にある深い真 実に比べれば問題ではない。つまり人種差別という大きな未解決問題が存在す る限り、黒人が犯す小さな犯罪行為は批判の対象にならないと言うことでしょ うか。もちろん白人の中にはこうした考えを聞いて、信じられずに怒りのあま り、自分の額を打つものもいる。このへんはかなり勝手に解釈していますが、 額を打つというのは当惑したときは分かりますが、怒り狂っているときにもそ うした動作をするのでしょうか。

だからTawana Brawleyも、Emmett Tillと同じように、奴隷制度・人種差別に 苦しんだ黒人として、少しくらい嘘をついて他人に迷惑をかけたからといって も、同じような犠牲者なのだ。ここまで言い切っていいかどうかは分かりませ んが、こうした論法はけっこう応用としては見かけるようです。

しかしこうしたごまかしがいつまでも通用するはずはない。ここではナポレオ ンの例があげられていますが、彼もまた常習的うそつきだったようですね。 Sharptonやその仲間はSteven Pagonesの名誉を汚したばかりではない。彼らは Emment Tillの思い出にも大きな悲しむべき傷を負わせてしまった。苦い嘘を 積み重ねることで、真実もいつしかそれとともに流されてしまう。確かにこう した事件が続発すれば、人種問題に新たな火種を与えるのかも知れません。た だこの事件は案外教訓として役にたつかも知れません。先週のESSAYとは、同 じ人種問題を扱っているのに、論点が少し違っています。過去にも人種問題を 扱った記事を続けて読むと、いろいろと混乱することがありました。ただ渦が あちこちでときどき発生するが、すこしずつ落ちついている感じがします。

もう少し簡単に書けたらいいのですが、どうもうまくいきません。

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3. ヨーロッパを席巻する英語 (New York Times 7/19)

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今週もSunday Timesは面白そうな記事がないし、New York TimesもWEB上で読 めるようになったから訪ねてみたら、面白い記事が見つかりました。19日付の 日曜版の記事です。

* English Becomes the Principal Language of Europe
By JOHN TAGLIABUE

簡単にいえば、ヨーロッパ諸国で英語が共通語としての地位をますます固めつ つあるという記事です。

来年の通過統合を控えて、イギリスは当面はeuroに参加しない。しかしフラン クフルトにあるヨーロッパ中央銀行には、イギリスはちゃんと出席している、 それが英語だというわけです。もちろんEUの公用語は、参加15カ国の言葉すべ てですし、ヨーロッパ中央銀行の当面の公用語は11ヶ国語のはずですが、会議 の時に使われている言葉は 英語です。いわばcommunication languageとして 使われているわけです。国境が取り払われ、距離がかつてほど意味を持たなく なり、そしてアメリカ文化の影響が大きくなるにつれて、英語はヨーロッパ諸 国では必須語になってきているようです。

数々の事例が紹介されているのですが、面白そうなものをいくつか紹介してお きます。

*ドイツのDeutsche Telekomが請求書で、市内向け、長距離向けの区別を表す Ortsgesprache, Ferngespracheに代えて、City CallsとGerman Callsという 表現に改めた。The Institute for the German Languageは抗議したが受け入 れられなかった。ドイツ・テレコムの言い分は、「分かりやすい英語表現は時 代精神Zeitgeistの反映である」からということです。

*フランスの名門ビジネススクールInseadは教育面でも研究面でもofficial languageは英語です。

*スイスのチューリッヒでは、銀行家やジャーナリストたちは自分たちの間で は、Swiss Germanを使う。ところがドイツ人と話すときには、英語を話す。こ のへんは北の大国に負けないぞという矜持の現れなのでしょうか。なかなか面 白いものがあります。(付記 これにはドイツ人がスイス人のドイツ語を馬鹿 にするということも理由かも知れないと、Molitorさんから教えていただきま した。)

*スイスは6才から英語教育に力を入れているようです。ある国会議員の言 葉。「スイスの公用語であるドイツ語・フランス語・イタリア語の3カ国語を 知っているだけでは、文盲illiteratesと同じだ。」少なくとも英語は入って いなければいけないというわけです。小国が生き延びていくためには英語は 必要条件になっているようです。それにしてもスイスのエリートは4ヶ国語使 えるというのは、最低条件なのでしょうか。なかなか大変ですね。

英語がInternetの普及とともにますます国際語として認知されれば、19世紀の 国家統一の過程で多くの言語が国家の標準語に駆逐されていったように、いつ の日かドイツ語やイタリア語も単なる方言になってしまうのかも知れません ドイツ語を海外で普及する役目を担ったGoethe Institutesも、世界中で閉鎖 が続いているようです。

自国語をことのほか誇りに思っているフランスは違うのかなと思っていたら、 どうもそうでもないらしい。1994年にフランス政府は3000語の英語に代えて、 同等の意味をもつフランス語を使わなければならないという法律を作ったので すが、これは1789年の人権宣言Declaration of the Rights of Manに抵触する という決定をConstitutional Councilが出した。ただ政府の役人はこれに従わ なければならないようで、同じ表現をするのにも大臣と民間人では違った表現 をする事があるるらしい。フランスのコングロマリットLVMHの若いアメリカ人 重役が、パリの本社を最初に訪問したとき、フランス語が上手ではないことを心 配したようです。しかしパリに行ったら、困ったことは全然無かった。LVMHの official languageは英語だったからです。

英語の重要性はどうやらますます大きくなっているようです。ところで最近新 聞で読んだなぞなぞというかジョークを1つ。世界で一番多くの人に使われて いる言葉は何か。もちろん英語ではありません。中国語でもないし、スペイン 語でもない。前にもどこかで読んだような気もしますから、知ったいる人も多 いと思いますが、暇があったら考えてください。

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