「英語を読む」 No.34


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「英語を読む」  No.34  1998-6-24日 発行     

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みなさん、こんにちは。 「英語を読む」No.34をお届けします。

No.34には投稿が2人の方からありました。T. Muramatsuさんが、読んだ記事は New York Timesが中心になっていますが、The Timesでも連日大きく報道され ていました。同じ事件も、人によっていろいろ受け取り方が違いますし、同じ 記事の感想を複数の人が書くのもいいかもしれません。MicroWorldNewsさん は、毎週Newsweekの感想を送っていただくようになり、感謝しています。最近 私もその影響を受けたのか、Newsweekをもう1度丁寧に読むようになっていま す。

No.33で感想を書いたアメリカ軍のサリン使用に関しては、NewsweekはTIMEと は違って、その事実に否定的なようです。あれはTIME/CNNのスクープという感 じが強かったので、Newsweekとしても単なる後追いをしたくなかったのかもし れませんが。

私はNo.34では、1人の黒人が3人の白人に殺された事件を各誌で読んでみまし た。事件そのものは陰惨なものですが、これからも各雑誌を読み比べるという 態度はとっていきたいと思います。そういえば、T. Muramatsuさんがかかれて いる「子守殺人事件」は、私も興味があって各誌読み比べたことがあります。

今週以内に、もう1回発行できれば、と思っています。

1998-6-24

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目次
1. The Nanny Murder Trial (NYT他) by T. Muramatsu
2. 気になるNewsweek 98/6/22     by MicroWorldNews
3. TIME 98-6-22
(1) ヒロポンの復活
(2) 人種融和の底流で

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1. The Nanny Murder Trial (NYT他) by T. Muramatsu

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The Nanny Murder Trial は日本でどれほど話題になったのでしょうか. 共稼ぎ夫婦やシングルマザーの多い米国では,テレビによる法廷報道の ショッキングが注目されると同時に,身近で深刻な問題として大きな 反響を呼びました.
死因に関する論争では弁護側の科学的な主張が完全に勝っていたと 言われる中,終身刑の陪審評決,そして判事による劇的な減刑という展開に なりましたが,このほど最高裁による最終判決が下り,被告は英国への 帰国を許されることになりました.

***Massachusetts High Court Backs Freeing Au Pair in Baby's Death***   (NYT 6/17/98)

「マサチューセッツ州最高裁が16日,英国人オペア,ルイーズ・ウッドワード に対する州高裁の減刑判決を支持したことにより,本件に関する刑事訴訟は 事実上終了した.」

「当初の陪審評決では second-degree murder (第二級謀殺.情状酌量の 余地ありとされる場合)で終身刑だったが,州高裁のゾーベル判事は,刑が 重すぎるとして罪名を manslaughter (故殺.一時的な激情などが原因の, 殺意なき殺人)としたうえで,その時点までの279日間の拘留に減刑してい た.今回の最高裁判決はこれを認めたものだ.」

「最高裁は,ゾーベル判事による減刑判断の職務上の妥当性については全員 一致で認めた.しかし判決自体には再考の余地があるとする少数意見も 明らかになった.その中で3人の判事が,罪名の変更と同時に減刑を宣告した ゾーベル判事の扱いは慎重さを欠くと述べるとともに,ウッドワードが今後 この事件に関して金銭的利益を得たり,子供の世話をする職についたりする ことを禁ずるべきだと加えた.」

「ウッドワードは帰国できることになったが,無実となったわけではない. ミドルセックス郡のライリー地方検事は『真実は明らかだ.ウッドワードは マシュー・イーペンを殺した.12人の陪審員も判事もこの点に異論はない』 と言う.
一方弁護団は科学的な証拠をあげて依然無実を主張している.幼児の死亡は 頭部の古い傷が原因となって突然出血した事故死であるとし,この点について 新たな審査を求める構えだ.」

「Court TV(訴訟を専門に報道するアメリカのケーブル局)によって "The Nanny Murder Trial" として報じられたこの事件は,米英両国の視聴者を釘付 け (rivet) にした.米国では仕事の間子供を他人の手に委ねる両親の不安が 問題となる一方,昨年10月30日にウッドワードが second degree murder で 有罪となった時には,イギリス国内には怒りが巻き起こった.」

私は最初の判決が大きく取り上げられた時までは法廷報道を見たことがなく, Court TV も,ダイアナ妃事故死の時に見ただけでした.法廷にカメラが 持ち込まれ,顔も実名もそのまま報道される様子は,国会の証人喚問さえ 静止画像になってしまう日本での感覚からすると,驚くべきことでした.

「ゾーベル判事は減刑にあたり,ウッドワードの行為は『混乱,経験不足, 欲求不満,人間的未熟さ,そして怒りによるものでもあったが,悪意に 基づくものではない』と考えるのが法の解釈だとした.
この裁判で弁護団は陪審員に対し,manslaughter ではなく murder として の判断だけを求めるという,いちかばちかの (go-for-broke)戦術に出たが, 最高裁判決では,ゾーベル判事がこれを認めたのは手続き上の重大な 過ちだったと指摘した.しかし同時に,それを修正するために判決において 下した判断は,権限上適切だったと結論づけた.」

「高裁判決で,弁護団はいわば緒戦に敗れた形になった.ウッドワードは 陪審から murder による終身刑を宣告され,15年間は仮釈放の道も 閉ざされた.しかしここでゾーベル判事が減刑を行なったのだ. 高裁は16日,これは判事の権限だというコメントを発表した.しかし今回の 少数意見には,この点に関する非難もあった.『判事がウッドワードに同情す るあまり,法廷の誠実さと公平さに対する一般の信頼を危機にさらしたことは 明らかだ』というものである.」

「彼女の故郷イングランド北西部の町エルトンでは,帰郷を歓迎する声の 影でウッドワード家に対する反感も生まれている.家族の長い間の友人で, 当初は支援運動のリーダーでもあったジャン・ジョーンズは,ウッドワードの 母親を『あんな無礼な人は見たことがない』という.支援者に対しても横暴 で,今では支援金のことしか考えていないというのだ.
また,弁護団の一員だったシャープ弁護士も,母親がウッドワードの ボストンでの宿泊費と称して,同弁護士からの1万5000ドルの請求書を捏造 したと非難している.」

「彼女は法廷報道のスターであると同時に殺人犯として帰国する. 最高裁の判決文は言う.『被告に対する判決は重く受け止めねばならない. 被告は幼児の死亡に関し有罪である.今回の刑事訴訟の結果によって, 決して被告の罪が消えたわけではない』」

英国の受け止め方も当然気になったので,読んでみました. もちろん事実は一つですから基本的に同じことが書いてありますが,やはり ニュアンスは違います.NY Times では「それでも有罪であることにかわりは ない」と締めくくる言い方ですが,英国二紙ではむしろ,この点が冒頭に 来ており,有罪が覆らないことに対する無念さ(特に Independent の 見出し)が伺えます.同時に最悪の事態は避けられたという安堵も感じます. 英国の様子の取り上げ方もずいぶん違います.

***Free to go home - but you're still guilty of killing the baby ***
  (INDEPENDENT 6/17)

「20歳のウッドワードは依然 manslaughter で有罪だ.彼女にとって今回は綱 渡りの解放だった.7人の判事からなる州最高裁は,この判決が4対3という きわどいものだったことを明らかにした.」

「もし反対意見が勝っていれば,ゾーベル判事による murder から manslaughter への罪名変更は認められても,それをもとに拘留を279日で 終了するという決定は覆され,マサチューセッツ州の通例では manslaughter の場合3年から5年は獄中にとどめられることになっただろ う.」

***Woodward is free to return home***
   (TIMES 6/17/98)

「終身刑を求めた陪審評決の復活は否定されたが,20歳のオペアの無罪も 認められなかった.
彼女は一貫して無罪を主張してきたが,今回は幼児の死亡に対する 有罪判決が繰り返されただけでなく,7人中3人の判事が,彼女が今後 他人の子供の世話をすることを禁ずると同時に,今回の事件の情報によって ウッドワードが利益を得ることも禁ずるべきだという意見を述べた.」

「一方弁護団は無実を証明するために,幼児の死因に関する独自の科学的な 調査を計画していたが,この中心となっていたのがシャープ弁護士だ.彼女は ウッドワードをうそつきと言うなど,無実を疑っているとして先月解雇され た.」
「しかし同弁護士はウッドワードの帰国決定を喜び,『私は常に,彼女が訴状 のような罪を犯してはいないと主張してきた.医学的な証拠がゾーベル判事の 決定につながり,それが今回も支持されたのだ』と述べた.」

「今回のニュースに対するエルトンでの反応は,昨年ウッドワードの釈放が 決まった時に比べて静かなものだ.前回の勝ち誇ったような大騒ぎが世間の 不評を買ったためだ.彼女の支援者も,『やっと帰ってこられるのはもちろん 嬉しい.しかし亡くなった子供のことを忘れてはいけないし,イーペン一家の ことは気の毒に思っている』と語っている.」

by T. Muramatsu

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2. 気になるNewsweek 98/6/22    by MicroWorldNews

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*The Tears of a Nation

私たちにとって中南米とは、ペルー大使館事件に象徴される超無法地帯で、とにかく Drug Cartelという想像を絶する規模の権力があるわけですから、もう何が起こって も驚くことも気になることもない、というのが正直な感想です。ですから、コロンビ アで民間人が1晩に32人殺害された(正確には7人が殺され、人質として連行され た25人も処刑されていた)と聞いても、地球の裏側の無法地帯についてこれ以上印 象が変わるということもなさそうです。しかし、この6ページの記事を注意深く読む と、ちょっとおもしろいことがわかってくるかもしれません。

さて、要人暗殺や大量殺人の凄絶さは他の国々も引けをとらないものですが、この記 事ではコロンビアの状況を数字で把握することにより、緊急性を印象づけようとして います。例えば:
”人口3千2百万のコロンビアで百万以上の人々が家を失い世界最多の内部難民の国 と化した。”
”米国のコカイン消費の80%、東海岸のヘロイン消費の60%を輸出している。”

”コロンビアのゲリラは世界有数の富裕・強力・冷酷無比なものになった。活動歴3 4年の共産主義ゲリラFARCは14000人、国民解放軍ELNが5000人、となり、 活動範囲は4倍となってスペインと同じ広さである。”
”コロンビア正規軍は12万であるが大半はパイプライン等の警備に当たるので、戦 闘員は3万である。一般に組織的反乱の鎮圧には10倍の戦力が必要であるという。”

さらに加えて、ゲリラ防備のため富裕層に雇われていた民兵が組織化強大化して40 00人に達し、正規軍の黙認に乗じて暴挙の限りを尽くすようになり、今回の大量殺 人事件も対ゲリラ作戦の名目で彼らが挙行したものであったのです。
そして最後に、
”麻薬・ゲリラ・民兵という致命的な三巴に対抗するため国際的支援(おそらくは国 連平和維持軍)をも求めざるを得ないところまで国民意識が低下しつつある”として います。

ところで日本の新聞によれば、来月の異動でRichardson氏に代わって米国国連大使に 就任するのは、かの有名なホルブルック氏、バルカン、アラブの和平交渉でそのnot so subtleなタフネスを実証したホルブルック氏であるということです。今度こそう まく処理していただきたいものですね、アジアのことは日本に任せて(?!)。

MicroWorldNews

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3. TIME 98-6-22
(1) ヒロポンの復活
(2) 人種融和の底流で

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TIME 6/22のUS版の記事です。先週号の記事ですし、読み終わってからも大分 時間がたっていますが、一応記事を見ながら思い出しつつ書いてみます。な お、具体的なケースが多く紹介されていますが、長い記事ですから、ほとんど 省略すると思います。

*Crank

昔はspeedと呼ばれたcrankがまたアメリカで広がりつつあるという記事です。 このcrankは昔日本で初めて製造されたという記述がありました。辞書で調べ ると、speedという名前でよく知られているこの薬物は中枢神経系興奮剤 methamphetamineで、methともいわれ、日本ではヒロポンというどこかで聞い た名前と同じものらしい。これが女性のダイエット薬として人気がでてきたの か、よく売れているらしい。確かに100時間も睡眠・食料をとらなくても、楽 しく夢の世界で遊べるようですし (^^;、体重は確かに減るでしょうが、い ざやめようと思っても薬物の作用としてそんなに簡単に切り替えれるわけがな いから、これでいいわけがない。

この薬物が蔓延しているのがアメリカ全土かどうかはよく分かりません。記事 では、on America's heartlandでとなっています。具体的には、グレートプレ ーンズの北西部の中心都市Billings(人口91000人)です。多分ここは石油精製 産業と地域医療の中心地。しかしバーが立ち並び、モンタナ州でありながら、 ワイオミング州やサウスダコタ州からもカウボーイたちが現代風R. and R. 求 めてやってくる。R. and R. は、R. and D. (研究開発)みたいなものかなと思 っていたら、警察俗語で強姦と強盗 (rape and robbery)でした。ビリングス はいわば現代の西部劇的荒野の都市なのかもしれません。

このビリングスで、人々はクランクのためにすべてを失いつつある。家庭も、 仕事も、家も、銀行預金もそしておそらくは自分たちの心までも、というわけ です。このクランクは80年前に人工的に日本で発明された。第2次大戦で兵隊 が使用し、50年代では主婦の間に、60年代にはヒッピーの間でspeedとして流 行った。そして現在では時には小学3年生までもが使用しているというわけで す。

そしてその製造・使用に関しても問題がある。製薬者が錠剤という形で提供し ているわけではない。製造法も粗雑で、吸ったりかいだり注射をつかって利用 する。(smoked, snorted, or injected)  人々をコヨーテのようにしてしま い、ビリングスの町はもうめちゃくちゃになってしまった。中毒者の家は窓を 銀紙で覆い(中毒者は日光を嫌うそうです)、街中に注射針があふれ、銃乱射が 起きる。

約4年前までは違法薬物といえばマリファナとコカインが主流だったのが、あ っという間にクランクがそれらにとって代わった。取り締まりはマリファナな どよりはるかに難しくなった。それは屋内でTupperware partyの方式で販売さ れ、製造も合法的に手に入れた材料を使って、Internetから手に入れた知識を 使って簡単に出来る。Tupperware partyというのは、辞書によれば「セールス マンが主婦たちを集めてホームパーティーを開き, 製品の宣伝と販売を行な う」こととあります。だからコカインと違って簡単に家庭の中に入っていけ る。警察はその製造元をBeavis and Butt-head labsと読んでいる。Beavis and Buttはよく分かりませんが、多分手軽に素人が製造できることを意味し ているのだろうと思います。

しかしなぜクランクで、しかも今なのか。主として白人層、しかも田舎にまで 広がっているのはなぜか。はっきりとした理由は分からない。ただ現代の文化 がKeep going, keep moving and do it all. だということ、そして特に女性 にとってはwannable-supermodel factorが入っているのかもしれない。せわし い時代の中で、supermodelのような体型が理想とされる。こうした時代風潮の 中でコカインが手に入りにくいオレゴンからアイオワまで、貧しい人々にクラ ンクがいきわたり、West and Midwest crank beltが出来上がった。組織暴力 が大量生産しているカリフォルニアやメキシコから、直接に、あらゆる方法で 手にはいるようになってきている。

クランクは安すぎて、簡単に手に入りすぎて、そして中毒になりやすい。子どもたちへ の浸透も高い。10才か11才で薬をやっていたり、そうした薬物使用者から虐待されたり している少年・少女もかなりいる。6才で繰り返し強姦を受けたり、11才で売春を強要さ れたりした少女もいる。いずれもクランク中毒の母親が絡んでいるし、中にはそうした 生活を当たり前のことと受けとめる少女たちもいるらしい。

E.R.(Emergency Room?)に運び込まれるクランク中毒者はおおまかに3つに分類される。

1番目は、'I've hit bottom'というべき中毒者。もう行き着くところまで行った、とい う絶望にとらわれている患者たちのことでしょうか。10日間文字どおり不眠不食で、 最後には薬もそこをつき、絶望感に陥り動くことさえ出来ないもの。

2番目は人騒がせなタイプ。被害妄想が大きいのか、通りで喧嘩したり、大声で叫ぶ。 人のいうことを聞かないタイプです。

3番目は薬のやり過ぎで腕が麻痺し、呼吸するのも困難なもの。

しかもこのどのタイプをとっても急増している。汚染は確実に、広がり、程度 も悪化している。この薬は手軽に手にはいるから罪悪感も薄いのかもしれませ ん。しかしもともと効き目は強いようで、ドラッグの中で一番たちがよくない と考える専門家もいるようです。

クランクを止めようと懸命に努力している人も何人か紹介されています。しか しやはりいったん中毒に陥ったら、なかなかそこから抜けきらないようです。 しかもビリングスでは、クランクはいわば社交のためには必要不可欠なものの ようです。パーティを開けばそこに必ずクランクあり、という状態のようです から。親たちが子どもにクランクを渡すのも普通なようで、使用年齢は毎年確 実に下がっている。

しかしクランクを使用し続けると、3カ月もほとんど眠ることも無い人もいる らしい。時間感覚も薄れてくるのでしょうが、現実と空想、そして妄想が入り 乱れてくる。木を見ると、必ず怪獣が後ろに隠れているらしいし、いろいろな imaginationが頭の中に沸いてくるのでしょうから、私から見れば、これはな かなか刺激的な人生にも見えますが、もちろんそんなことはないでしょう。一 度この深みにはまったら、なかなか脱出は出来ないと思います。大体すぐ眠た くなるような私のようなものにとっては、全然眠くならないというのが異常だ し、食べなければ体重が減るのは当たり前なのに、それをダイエット薬と勘違 いするのもおかしい。

ヒロポンというのは戦後の日本でも流行った、というのはどこかで読んだ記憶 がある。現在では多分死語だと思うのですが、それとも今でもまだ使われてい るのだろうか。名前だけかっこよくすれば、知らないままに中毒症状に陥る人 は今でもいるのかもしれません。

この記事長いものですから、特に後半部は本文はほぼ省略した形になっていま す。具体的なケースも最初に書いたように大体省略しています。しかし最初読 んだとき、小学校で薬物検査をすると言ったら、十何人かの子どもたちが逃げ 去った、つまり小学生にも常用者ないしは経験者がかなり多いというのがどこ かに書いてあったと思うのですが、今回ざっと読んだときには見あたらなかっ た。あれはどこに行ったのだろうか。私もこの記事を読んでいたら、空想と現 実の境目がだんだんとぼやけてきました。 (^^;

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(2) 人種融和の底流で

TIME 6/22の記事からです。3人の白人が1人の黒人を残忍な方法で殺した。果 たしてその裏にKKKの影はあるのか。TIME, Newsweek, Sunday Timesの関連記 事を読んでみましたが、ここではTIMEの感想を中心に、一番詳しいSunday Timesで補うことにします。

*Beneath the Surface (p.28-29) 

49才になる黒人男性がヒッチハイクで3人の白人の若者と一緒になり、そのあ げくトラックで3マイル以上もひきずられ、その途中引きちぎられた体の部分 が道路沿いに75箇所以上にわたって撒き散らされるという陰惨な事件が発生し た。舞台はテキサス。

被害者はJames Byrd Jr. ,49才のAfrican American。逮捕された3人はいずれ も白人でShawn Allen Berry, 23才。John William King,23才。 Lawrence Russell Brewer ,31才。Berryがトラックの持ち主。Kingが事件を主導した人 物。2人は幼なじみで同じburglary chargeで刑務所に入っていたときにBrewer と知り合った。ちなみに被害者のByrdも刑務所に入っていたことがあるようで すが、こちらはSunday Timesの表現では、a harmless ex-convict who liked to play trumpetとあります。

そして舞台になったのが人口7500人(NWでは8000人)の小さな町Jasper。市長は 黒人、郡保安官は白人。人口比率は白人55%、黒人45%。副題にあるように、か つてのDeep Southの町ではなく、New Southの町で白人と黒人の関係はうまく 行っていると思われていた町。そこで過去に例を見ない残虐な事件が起きただ けに、住民のショックは大きい。主犯格Kingの父親さえもが、息子の犯行を信 じられないといいながら、被害者の死を痛んでいる。ただ底流として、黒人と 白人の関係が必ずしもうまく行っているといえない事件も起きている。

例えば数年前人気があった黒人高校生のフットボール選手が自殺した。彼は白 人の女の子とつきあっていた。本当に彼は自殺したのか、もしかしたらリンチ にかけられたのではないかという疑いを一部の人は持っている。そして2週間 前には白人の若者が白人の十代の少年たちから殴られるということが起きてい る。前の事件は少し問題がありますが、後の事件は、人種がらみでなくても起 きる気はしますが。しかし今度の事件はそれらの比ではない。

足首をチェーンでトラックと結び、2マイルから3マイル(Asia版では3kmから 5km)も、多分普通の速度で引きずり回った。体はバラバラになり、あちこちに その遺骸が残された。全部で75箇所(STでは78)のようですから、多分原形はと どめていなかったのでしょう。そのあまりの残忍さの故か、近くの町のVidor にあるImperial Wizard(これが多分KKKのはずです)は、Byrdの死を悼み、Klan とは関係が無いという声明を出した。

TIMEはKKKとの関係は薄いというニュアンスです。そもそもKKKは世間では有名 だが、勢力は落ちている。ただしそれに代わる過激な人種差別団体がいくつか 存在する。その中で有名なのがAryan Brotherhood。ABのいれずみが、King や Berryの体には彫られている。この団体はかなり過激で、1960年代にカリフ ォルニアの刑務所で結成されている。We recruit criminals.と関係者は豪語 していますが、今度の3人のようなpretty thievesは相手にしないと言ってい ます。これだけでもそのすごさが分かる。さらにアメリカの刑務所は犯罪者を 更正させるのではなく、より重大な犯罪、すなわち人種主義者を養成してい る。主犯のKingも刑務所に入ってから、過激な言動が見られるようになった。 このへんの事情はSunday Timesが詳しく書いていました。

それに最近Jasper付近で見逃せないのが、Christian Identity Churchという 宗教組織。彼らは、既存の無名の教会を買収しては、その教えを広めている。 Amazing Groveを歌いながら、Sieg Heilと言っている。Amazing Groveは有名 な賛美歌。Sieg Heilはナチスが愛用した「勝利万歳」という言葉。いわば宗 教に名を借りた人種主義組織です。彼ら3人はこの組織と関係がなかったの か、調査中のようです。

ただ人種間の犯罪の95%は、そうした人種差別組織のものではない。Jasper付 近では、白人が黒人やヒスパニックに職を奪われると言う不満も強いらしい。 だから今回の事件がoppotunity crimeであるかもしれない。ゆきずりの犯行と いうか、多くの偶然が重なった結果だというわけですね。たまたま夜遅く黒人 が1人で歩いていた、たまたまトラックにはチェーンがあった、たまたまこち らは3人で向こうは1人、しかも酒を飲んで気が大きくなっていた、などなど。

兄が白人たちによって殺されたことを知った妹は、銃で殺されたと思った。悲 しい運命を受け入れるべく、しかし最後は立派にあの世に送ろうと思って、一 番いい服を着せてやるために、彼女は兄のアパートに急いだ。真相を知ったと き、服を着せてやる兄の死体はなかった。この記事はやりきれなさだけが残り ます。

Sunday Timesには、最後に各人種差別組織のリストが載っています。

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