「英語を読む」 No.30


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「英語を読む」  No.30  1998-6-8日 発行     

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みなさん、こんにちは。 「英語を読む」No.30をお届けします。

今回は、すべてが私の雑誌記事の感想です。以前のWeeklyのようですね。(^o^) 最近、発行は比較的順調です。投稿があれば、さらに順調になりますので、 みなさん、よろしくお願いします。

どこで発行するかということは案外難しい。今回はSunday Times 5/31が、No.29 と2つに分かれましたが、TIMEやNewsweekも、もしかしたらNo.31に跨るかもしれ ません。

1998-6-8

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目次 1. ジャンヌ・ダルクを処刑したイギリス人 (Sunday Times 5/31) 2. TIME US版 1998-6-8 から
(1) Bobbyの思い出と共に
(2) ちまたにあふれるチキンスープ
(3) 核戦争の危機
3. 遺伝子戦争 (newsweek, 98-6-8)

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1.  ジャンヌ・ダルクを処刑したイギリス人 (Sunday Times 5/31)

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*England gets burnt at the Joan of Arc stake

ジャンヌ・ダルクを描いた2本の映画が製作されるようですが、イギリス人が 悪役に描かれることは必死というわけで、心配する人もいるようです。そうで なくとも、イギリス人の一部にはTitanic、それにスコットランドのイングラ ンドへの反乱を描いたBraveheartと最近のヒット作2本が事実をねじ曲げてイ ングランド人の名誉を傷つけているという不満がある。またもイギリスが悪役 か、というわけですが、ハリウッドの映画ではかつてのソ連やドイツやそして 日本などは、戦争映画やスパイ映画ではいつも大体悪役と決まっているようで すから、イングランドの場合少し贅沢という気がしないでもない。

とにかくジャンヌを描く二本の映画の内一本は、Mila Sorvinoが主役のJoan of Arc: The Virgin Warrior。監督はRon Maxwell。

もう一本はウクライナ出身のMilla Jovovichが演じる作品。監督はフランス人 のLuc Besson。タイトルははっきり書いていないと思いますが、単にJohn of Arkなのかな。

別にジャンヌ・ダルクが映画化されるからといって、イギリス人がひがむ必要 はないようですが、Alexander Walkerの言葉を聞いていると、少し情けないよ うな気もします。History is almost always used to our disadvantage. It may assist the box-office performance of the film in countries where we are loathed, and people in this country have such a poor opinion of their own past that they just shrug it off.

1431年、イギリス人によって火あぶりの刑に処された19才のオルレアンの少女 のイメージは、イギリスに敵対するものにとっては、格好の宣伝材料になるの でしょうか。皮肉屋G.B.ショーが1923年に描いた作品でも、Earl Warwickをず るがしこく、イギリス人は裏切り者で愚か者と描いているようです。Earl Warwickを調べてみたら、1428-71年に生きた人のようですから、ジャンヌとは すこしずれますが大体同時代人です。ショーの作品は舞台化されたようです が、何という作品で、中心はジャンヌダルクを描いたものなのか、ばら戦争を 描いたものなのか分かりませんが、まあジャンヌも出てくるのだろうと思いま す。その後の25本のジャンヌ作品は大体ショーの描いたようなイギリス人を描 いていると書いています。ステレオタイプ的思考は楽ですしね。しかしバーナ ードショーは、アイルランド人だったのですね。イギリス人と考えるから、混 乱するのかもしれません。

もちろん歴史家はそんなに短絡的には考えない。例えばオルレアンにあるジャ ンヌ・ダルクセンターのOlivier Bouzyは、もし映画が過度のナショナリズム を表せば、anachronismの罪を犯すといっています。100年戦争は英仏間の戦争 ではなく内乱だったし、ジャンヌを捕らえ、イングランドに渡したのもフラン ス人だったし、裁判を行ったのもフランス人の司教だったと。

さらにジャンヌによってフランス人の愛国心が勇気づけられたというのも疑わ しい。というのも彼女が指揮した軍隊の大半はスコットランド人だったから。  (^^; これは1295年のAuld Allianceのためです。それによると両国はお互 いが侵略されたときに援助するという取り決めがあった。

2作品はお互いに牽制しあっているような所もある。The Virgin Warriorの executive producerによると、自分たちの映画は歴史的に忠実だが、Bensson の映画は分からないと言う。Benssobは詳細を明らかにしていないようです が、どうもかなり型破りなものになるらしい。

しかしとにかくハリウッドの影響力は強い。本文の最後は次のように結ばれて います。フランス人の教師がオルレアンの博物館 (前に出てきたセンターのこ とかもしれません) に生徒を連れてきて、ジャンヌの敵は誰だったかと聞い た。10才の子供たちは一斉に"Les Anglais"と答えた。しかし別にこれはハリ ウッドの影響ではないと思うのですが。イギリスで聞いてみたらどんなに答え るのでしょうか。

私はジャンヌを描いた作品はバーグマンの作品を是非見たいのですが。私にと ってはいわば幻の作品です。ビデオで手にはいるはずですが、いつか見れたら と思っています。

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2. TIME US版 1998-6-8 から
(1) Bobbyの思い出と共に
(2) ちまたにあふれるチキンスープ
(3) 核戦争の危機

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(1) Bobbyの思い出と共に

TIME US版6/8のAmerican Sceneの記事です。今週は20世紀の100人の特集第2弾 のようで、他には面白い記事があるのかなと思っていたら、結構楽しめる記事 がありました。

* Guarding The Dream
Thirty years later, Juan Romero honors R.F.K.
By STEVE LOPEZ /SAN JOSE

American Sceneの記事です。ちょっといい話しです。

兄Johnの理想を次ぐべくRobert F.Kennedyが大統領選を闘っている最中に銃弾 に倒れて既に30年。Kennedy一族は数々のスキャンダルにまみれ、かつての栄 光にもかげりがでてきていますが、今なお彼の生き方を人生の理想とした一人 の少年の物語です。

少年はRobertの暗殺の瞬間に居合わせた。ホテルの白い制服を着て、自分のロ ザリオをRobertの手に握らせ、必死にその命を救ってくれることを神に祈った 17才の少年。彼の写真はあらゆる新聞雑誌で報道され、有名になった。

しかし彼はいずこともなく姿を消した。マスメディアの情報提供と引き替えの 様々な誘惑をを断って。

今回彼は初めて30年前の出来事を語った。しかしあくまでも彼自身のことでは ない。Bobbyこと、Robert の名前が忘れられないために。彼の名前はJuan Romero。メキシコで生まれ幼年時代を過ごしたやせた少年。はっきりは分かり ませんが、彼は不法移民だったのかもしれない。カリフォルニアの大統領予備 選の前日、Juanが皿洗いをしていたホテルにRobertが泊まった。Juanは他の皿 洗いの人たちに自分が一晩中後かたづけをする事を申し出る。もしかしたら、 Robertの部屋からルームサービスの注文が来て、Robertと握手できるかもし れない。

Kennedyの人気はメキシコでもものすごかった。その写真は十字架とともに、 壁に貼ってあった。同じカトリックということばかりではない。Bobbyも家庭 を大事にしていたし、兄のJohnはヒスパニックのことを勤勉で家庭を大切にす る人々だと話していた。普段周囲の人々に タコス食いと馬鹿にされていた Juanにしてみれば、政治には関心はなかったものの、Robertだけは特別な存在 だったのかもしれない。Kennedyが黒人やヒスパニックなどに人気のある秘密の 一端はこの辺にあるのかもしれません。

そしてその夜電話がかかってきて、JuanはRobertの部屋に行く。彼と握手し たJuanの感激といったらこの上もなかった。 "Ididn't feel like a busboy or a Hispanic. I didn't feel like I was 17. I just felt like a person."

次の夜勝利宣言をするRobertともう1度握手するために、彼は群衆の中をかき 分けた。そしてRobertの手を再び掴んだその瞬間、悲劇は起きた。Robertが 倒れ、Juanがその側に跪き、衝撃と苦悶を感じながら、彼を助け起こそうとす る。Robertの頭を後ろから起こしたJuanの手は血まみれだった。ロザリオを Robertに手渡し、ひたすら祈るJuan。医者はRobertは話すことは出来なかっ たといったけれども、彼は確かに彼の最後の言葉を聞いた。それは 'Is everybody O.K.?' か 'Everything's going to be O.K.'" のように聞こえ た。

その後彼は有名人になった。ホテルで働くことは出来なくなった。手紙も毎日 届く。記者たちは彼の後を追い回すし、情報提供と引き替えに大学の授業料の 提供を申し出た人もいる。しかし他人の不幸から利益を得るのは尊敬すべき人 のすべきことではない、という継父の言葉を胸に彼はカリフォルニアを去っ た。

それから町から町へ、職も転々としながら、彼の放浪の生活は続いた。誰に も、2度とあの悲劇の瞬間を話すことはなく。結婚して彼はRobertの精神を引 き継ごうと決意する。勤勉で、神を敬い、家族を大事にし、そして他人に対す る寛容と同情の心を忘れないで。しかし現在のヒステリックな反移民運動が強 いカリフォルニアで、Robertの名前を残すためにも、ようやく彼のことを語った ということなのでしょうか。自分のためにではなく、Bobbyのために。

彼はRobertの最後の瞬間、当然自分も写っているその写真を所有したことは1 度もなかった。このへんもすがすがしいというか、まねが出来そうもない。

この記事を書いたSteve Lopezが、より詳しい物語を今月号のLifeにも書いて いるようです。

私はRobertの死の瞬間の写真をみた記憶はない。Robertの暗殺をどこで聞いた かも、はっきりしません。しかし彼の死を悲しむ友人に私は冷淡だった。人の 考えは年をとると共に変わりますが、時々昔のことを思うと冷や汗を感じるこ とがあります。  (^^;  あの時代、アメリカも、そして日本の私の回り も騒々しかった。

(付記.) Newsweek 6/8も、Robert暗殺30年を違った角度から書いています)

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(2)ちまたにあふれるチキンスープ

* A River Of Chicken Soup

チキンスープが世のなからあふれているという話しです。といっても、本の話 しですが。Chicken Soup for the Soulを手始めに、今では大ベストセラーシ リーズになったチキンスープシリーズ。これは大分前にもNiftyの会議室でも話題 になっていたのですが、私は読んだことがないから良く知りません。しかし先 週はPublishers wWeekly paperback best-seller listのTop10の中の5冊がこ のチキンシリーズだというのですからすごい。現在まで総計で2800万部以上売 れているようです。これからも続々でてくるようで、将来は合計70タイトルに もなるとか。

この本は1989年に2人の著者がtheir favorite inspirational tales and poemsを101の話しをタイトルごとに分類して発行しようとした。人生論の一種 だと思うのですが、いろいろな心を楽しくさせたりする話しが101載っている ようです。しかし持ち込んだ出版社はどこもこの出版計画に心を動かされなか った。33社で断られて、ようやく1993年に小さなフロリダの出版社から発行。 販売予定20000部。しかしChicken Soup for the Soulは700万部を記録した。 そのあと著者のJack CanfieldとMark Victor Hansenは、立て続けにChicken Soup for----の名前を冠したシリーズを発行し続けているというわけです。

すべての本に共通なのは、101のほとんどが3ページたらずの、心や魂に訴えか ける物語から成り立っていること。101というのは、Hansenのいうところで は、霊的な数字だそうです。 earnest, unadorned and ruthlessly uplifting な物語が、"On Love," "A Matter of Attitude," "Live Your Dream," " Learning to Love Yourself"というような分類の下に収録されているらしい。 そのテーマは母の愛情、困難を克服する方法、誤解を解決する法、かわいい子 犬、子供の果てしなき智恵、などなどらしい。その影響力はImagine a bath in strawberry shortcake. Imagine a meal of chocolate eclairs. With a Napoleon for dessert. And a milk-shake chaser. とあります。良く分かり ませんが、甘ったらしく感傷的な考えになるということなのでしょうか。

どうしてこんな本がこれほども人気があるのか。どこでも読めて、短くて、読 んでいて元気づけられるからということのようです。調査によれば、読者は85 %から90%が女性。しかし著者はもともと女性用に書いたわけではない。彼等は もともとはビジネスマン向けの講演などでその話術に磨きをかけてきたようで すから、その中でそうした物語もたくさん集めてきたのでしょう。ここでいう ビジネスマンはhardened businessmen, who nowadays are taught to share feelings, break down emotional barriers and awaken their Inner Capitalistsのことです。アメリカも、標語とか、スピーチ実例集などが良く 売れるのでしょうか。Chicken Soup is less the product of the feminization of American culture than of the infantilization of corporate America. というのは、アメリカ社会が女性化しているというより も、社会全体が足についた思想を失いつつある、ということでしょうか。細切 れの物語で、部下の勤労意欲を駆り立てても、あまり効果はないかもしれませ ん。

しかし読者からは、自分たちが知っている多くの話しが殺到しているようで、 それを101という枠内に収めて、また新たなチキンシリーズが出来上がる。道 徳心のない昂揚心、宗教のない霊感、これこそポストモダンの90年代にふさわ しい信仰だというわけです。

ところでチキンスープの名前から人は何を連想するのでしょうか。私には辞書 に書いている意味ではどうもぴんと来ない。

(付記) チキンスープの連想については、Niftyの会議室でいろんな方から意見を いただきました。そのうちSHIRAさんの意見を紹介しておきます。いろいろ教え ていただいた方、ありがとうございました。

>「心がくたびれたときに、飲みやすくて栄養があって、おだやかな」と
> いう感じを出そうとした命名なのでしょう。

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(3) 核戦争の危機

TIME US版6/8のインド・パキスタンの核実験をめぐる記事です。事実のそのも のは、日本でも詳しく報道されていますから、気づいたところなどを簡単に書 いておきます。

*Enemies Go Nuclear
Pakistan answers India with its own atomic tests. Now will the two rivals be able to avoid going to the brink?

パキスタンの核実験がかつての冷戦下のように核抑止力が効いて、インド亜大 陸でも緊張しながらも安定した関係が続くだろうという見方はほとんどない か、少数派のようです。今回のパキスタンの核実験も、 It wasn't a question of if, butwhen.(US News)という見方が支配的でしたが、事実そう なった。現在の予測としては、南アジアで将来核戦争の可能性が高い、という のが支配的なようです。

TIMEは両国を2匹のサソリに例えています。two scorpions in a bottle, eyeing each other warily, showing off their stingers, dimly aware though not properly worried that an attack by either would mean death to both. このさそりは同じビンの中で自分たちのstinger(サソリの針である と同時に、携行用肩撃ちの防空ミサイル兵器の意味もあります)を見せびらか し、もしお互いに闘ったら自分たちに破局が訪れることは、どうにか分かって いるのだが、そうかといってそれを回避するための努力をするどころか、ます ます相手を威嚇し続けている状態のようです。

クリントン政権もいろんな状況を想定しているようです。その中でカシミール での紛争が、通常兵器による戦争に、そして核戦争に発展するという見方が強 い。頭を冷やして冷静に考えれば、核を使うことが無謀だと考えるはずです が、現在の所は「核には核を」もしくは先制攻撃として使うかもしれない。両 者のこれまでの歴史的・宗教的な背景を考えれば、どうも危なっかしい。

かつての米ソが持っていた核使用のチェック機能がうまく働くのか。50年間に 3度の戦争を闘った両国は、現在でも国境付近では毎週のように死者がでてい る。米ソのように武器削減交渉や首脳間のホットラインなども多分行われてい ない。緊張関係が続いているときには最高度の理性が要求されるが、指導部が 偏狭な愛国心を押さえ込む可能性は将来も大きくないかもしれない。クリン トンがパキスタンのシャリフに4度目の電話をして、もし核実験を思いとどま れば、通常兵器や財政援助を提供するといったのに対して、シャリフの返答 は、 I don't think I'll last in office more than two or three days if I don't make a test. 世界もこの地域の人々のどろどろとした感情を理解し ていないが、これこそが暴発の原因となることも確かなようです。

アメリカが現在恐れているのも、数カ月以内に両国が核弾頭ミサイルの配備を 終わった後に、どうなるかということ。相手からの攻撃を恐れて核使用の警告 を出したものの、スパイ衛星などを使った情報が入るわけではないから、疑心 暗鬼から警告だけではすまなくなる。冷戦時代にあっても、見込み違いから、 核戦争になったかもしれない a hair-trigger situationの場面があった。核の 管理者がしっかりしていた大国の場合であっても、思わぬミスが起こり得た し、両国の場合管理態勢がしっかりしているとも思えないからどうも不安でし ようがない。さらに両国の政治的・経済的安定が、国際的制裁の結果ぐらつい たら、どうなるのか。

アメリカの高官の中には、There may be a spiraling arms race here, but we do not think it is inevitable.と言っている者もいるようです。世界は この言葉を信ずるしか無いのでしょうか。今回の両国の核実験の前に、ペンタ ゴンでは、もし両国が核武装したとしてカシミールをめぐる紛争で核使用をさ せないためにアメリカが何を出来るかのsimulationを繰り返したようです。結 論はいつも同じでした。核戦争を止めることは出来ない。当分は世界に一種の 無力感が残るようです。

(付記) Asia版は違う記事を載せていますが、見方は最後のエピソードといい、 ほぼ共通しているようです。楽観的な見方は、さすがにあまり読んだこと ありません。

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3. 遺伝子戦争 (newsweek, 98-6-8)

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先週に続いてNewsweek 6/8では、遺伝子研究の記事を読んでみました。

*Biotech Brawl (p.42-43)

遺伝子の構造をめぐって、公共と民間の研究所の間で厳しい論争が起こってい るようです。その代表例として2つの研究施設の研究方法の違いを描いていま す。

1つはイギリスのCambridgeshireのWellcome Trust。ここは英米独仏、そして 日本の公共的研究所や政府の援助を受けているようで、現在300人の科学者た ちが人間のDNAに含まれるすべての情報を2005年までに解読しようとしてい る。このプロジェクトの名称はHuman Genome Project。これが実現できたら、 原子の分割、月面着陸と同様の歴史的偉業になることは間違いない。

彼等は人間のゲノムに含まれる30億ものlettersを解読し、それらを毎日 Internetで公開している。彼等の研究が結果として新薬、新会社、雇用創出に 結びつく可能性はあるが、あくまでも中心は純粋な科学研究ということにあ る。

これに対してアメリカの科学者J.Craig Venterの計画は違う。彼は人間のゲノ ムの解読を3年以内に、しかも3億ドルの(安い)費用で完成させると発表した。 彼はhigh-speed DNA sequencing instrumentsの生産会社Perkin-Elmerとの共 同研究をしているようです。ただこちらは、民間会社が入っていますから、 こうした研究をcharity projectでするわけにはいかない。あくまでも、ビジ ネスチャンスを求めているわけで、これをめぐって関係者の意見が2つに分か れているというわけです。

もちろん人間の遺伝子研究は大分前から始まっている。そしてバイオテク企業 は、金になる新薬を製造できるという見込みから、研究成果の特許をとろうと しているわけです。だが存在が信じられている約100000の遺伝子は、ゲノムの ほんの一部に過ぎない。その他にmillions and millionsの働きが全然分から ないlettersがある。科学者たちの中には、それをjunkと呼ぶ人もいるようで す。そしてこのjunkの研究をすることは、ビジネスライクなVenterのような科 学者たちにとっては、時間の無駄だということになるらしい。だからすべての ゲノムの解明をするよりも、より実用的な少数の遺伝子の解明をより速く、よ り安く解明できるということらしい。このへんが公共的研究所の存在意義が問 われると同時に、アメリカのバイオテク産業支配の有無とも絡んでくるだけ に、いろいろ議論になっているわけですね。

もともとVenterもNIH(National Institutes of Health)、つまりHuman Genome Projectのアメリカ側研究所で働いていた人間ですが、特許をめぐって対立 し、独自の研究所を設立した。だから研究成果が、特許化されるかどうかとい うことは、最初から大きな対立点であるようです。さらにはVenterの個人的恨 みもいくつかある。

Venterの研究方法には、まだ未確認のテクノロジーを使ったりして、必ずしも Human Genome Projectの研究成果とは一致しないかもしれない。しかし彼の研 究方法は最も価値のある新薬を作るのに必要な200から300の遺伝子解明には有 効であるらしい。いわば、おいしいところをつまみ食い、という感じですね。 さらに公共的研究所が、研究成果をすぐに発表しているのに対して、Venter側 は3カ月ごとにしか発表しない。最も重要な部分を特許申請するためのようで す。

特許が認められるためには、ただの研究発表だけではダメで、それが例えばイ ンシュリンのような薬を作れるというように、どのように実用化されるのかを 示さなくてはいけない。だから時間と金がかかる。既にHuman Genome Science やIncytePharamaceuticalsのような会社は多くの遺伝子特許を持っている。前 者のCEOのWilliam Haseltineによれば、彼の会社は既に人間の遺伝子の95%の mappingが終わっている。しかも全遺伝子の中で役にたつ情報を提供してくれ るのは、わずか2〜3%。今更、全遺伝子の解明など意味がないということのよ うです。「我々は既に月に行ってその石を持ち帰った。いまの状況は宇宙飛 行士に月のすべての石を持ってくるようにというようなものだ。おそらく可能 だろうが、それが何の役にたつのだ」というわけです。彼から見たら、両者の 議論は馬鹿げている、既に勝負はついているということでしょうか。

Ventorに対するウォール街のbiotech analystの評価も分かれているようです。 さらにWellcom TrustもVentorに対抗するべく、1億8100万ドルの資金追加を発 表した。科学者たちの戦いはさらに続くようです。

DNAの写真を始めて見ました。多分1つ1つの赤や黄や緑や青の点が本文でふれ られているletterなのだろうと思います。人間が何であるかの解明が着々進ん でいるようです。人間のすべての遺伝子的構造が究明されたとき、人間は己の 生物学的限界を超えられるのか、絶望しないでおられるのか、この記事を読み ながらふと考えました。

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