「英語を読む」 No.29


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「英語を読む」  No.29  1998-6-3日 発行     

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みなさん、こんにちは。 「英語を読む」No.29をお届けします。

今号は少し不十分なまま発行します。というのは、5/30のSunday Timeskの記 事に面白いのが多いため、No.30にまたがると思います。TIMEのUS版は、6/8 号は今世紀を作った100人の特集ですから、これはあまり書くところがない。 US Newsは、面白そうな記事がいくつかありましたので、久しぶりに感想を書 くかもしれません。

No.28で、MicroClassicsさんから紹介いただいたColeridgeに私自身が興味を 持ったので、私も読んでみたいと思いました。Gutenbergとそれとリンクして いるサイトで、読めるようです。古典というか、20世紀はじめの頃までの本 で、日本訳されているような英語の本なら、ほとんどがWEB上で公開されてい るe-textという形で読めると思います。日本の本もそうなればいいのに、とい うのが以前からの私の願いです。またNo.28の天才遺伝子の記事の感想について の情報をmichi@microinfoseekerさんから頂きましたので、載せておきました。

本はまたしてもZindelの感想になりました。日本では全く無名のこの作家の本 の感想をくどくど書いたことは、多分ほとんどの人には関心がないことだと思 われますが、個人のmailzineということでお許し下さい。読書というものが個人 的な作業であることを考えるなら、同じ本を読んでいない人の間にはなかなか 共感は広がらないかもしれません。それでもだからこそ読書が読む人の人とな りを形成するのに役立つと思います。

それと今回読者の方で同じMailzineを発行している人より、この「英語を読 む」を「役立つメールマガジン100選」として選んでいただきました。過去 にも、こうした連絡を頂いたことはありますが、個人的にお礼を出すにとどま り、私のmailzineで紹介することは控えてきました。今後は私のmailzineへの 反応ということで、積極的に紹介させていただきます。

紹介されているmailzineのHPのサイトは次の通りです。
「役立つメールマガジン100選」への直接アドレス
http://member.nifty.ne.jp/unplugged/static/mailmag/

「英語を読む」は「読み物」の分類の中にあります。 Kobashi様、ありがと うございました。

1998-6-3

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目次
1. 気になるNewsweek 98601 by MicroWorldNews
2. 天才遺伝子のことについて by michi@microinfoseeker
3. Sunday Times 98/05/30から
(1) 長生きと想像力
(2) 糖尿病はウィルスによって起こる
(3) C.Chaplinはペドファイルだった
4. 葬儀屋が殺人を犯した!! (P. Zindel)

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1. 気になるNewsweek 98601 by MicroWorldNews

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アジアの次なる怪爆弾

さて、今週も気になるのはやはりインドネシア、世界のNewsweek読者はSuharto退任 で安心するどころではありません。なにせHabibie氏は、最近その名が上る度に株価 や通貨を暴落させていたという悪評の主なのです。アジアで次に危ない政権はといえ ば、多分また、インドネシア?
まずは今回IMF勧告が暴動の契機となったことについての苦しいいいわけとして:

”Suharto退陣で、アジアでは、それまで思い及ばぬ事態ですら急速に避けられぬ事 態になり得るとわかった。
暴徒がIMF勧告によるガソリン・電気補助金廃止を受け入れることは疑問の余地が なかった。IMFの介入は社会不安の指標だとの根拠のない批判は以前からあったに せよ。
Suhartoは5カ月前まで不動の存在であったし、Marcosとは比較にならない、国民の 生活水準を向上させたし、米国の植民地にもならなかったのだから。従ってこの国に 関する米国政府の知識水準は"laughable"といわれている。”

なるほど、そうだったのですね。よくわかります。
アジア精神がつかみきれないというより、このグローバル時代にそういうものがある と思いこむことが敗因でした。しかし、いつかは当然起こるべき事態だった、結果的 にはこれでよかったんだと評価されることも将来あるのかもしれません。

さてグローバル時代の経済危機は、いまや原爆級の被害を生じ得るとの指摘は以前か らあったようです:

”今春NewYorkTimesのエッセイで、元財務官のRoger Altmanは、グローバル資本市場 を「90年代の原爆」と書いた。「いかなる国に対しても、それまで考え及ばなかった 変革を強いることができるのだ」。焼け落ちたビルや破壊された商店街のジャカルタ は今まさに原爆資本時代の爆心地である。”
”「90年代の原爆」とは、国境を越えて自由に移動する大量の資金、とくに、一瞬に して投資・売却ができる大量の"hot money"を意味する。
しかし、グローバル経済のコンセンサスについて、Clinton政権・IMF・世銀で歩 調が乱れ始めた。つい最近まで、資本の自由化は貿易の自由化と同様望ましいとの合 意があった。今やRubin財務長官は、グローバル財務構造の再建を決意した。つまり 、hot moneyによる損害を牽制する手段を構じるつもりだ。
これについてアジアの政策担当者曰く、「何とおもしろい、失業者数百万人、底値で 企業を買おうとひしめく外国人の群れ、暴動、政権崩壊。すべては大きな間違いだっ たとおっしゃるんですね。ありがとうございます。」
Rubin商会はOppenheimerより、90年代の核の魔物を瓶に封じ込める運が強いよう祈 りたい。さもないと次は、ー 「もしもし東京ですか?」 ー となると、世界中が 巻き込まれてしまうのだから。”

大統領の信頼篤いRubin氏のことです。きっとうまい対策を構築されることでしょう 。どうか、predictableに、アジアのメンタリティを誤解せずに、そして粛々と、進 めて頂きたいものです。すべては大きな間違いだったのか、成熟へ向かう必然的過渡 現象だったのかが、これからの後始末にかかっています。

by MicroWorldNews

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2. 天才遺伝子のことについて by michi@microinfoseeker

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ところで天才遺伝子の話がでていましたが、(注 No.28にあります--YUKI)
Jobsによれば、創造的仕事は経験の成果だということです。
従って、経験を効率よく処理する遺伝子というものがあれば、 創造的成果に結び付く確率は高くなるのでしょうね。
Steve Jobs made a shrewd observation about creativity.
"Creativity is just connecting things," he said. "When you ask creative people how they did something, they feel a little guilty because they don't really do it. They just saw something. It seemed obvious to them after a while. That's because they were able to connect experiences they've had and synthesize new things. And the reason they were able to do that was that they've had more experiences or they had thought more about their experiences than other people."
Exposed to art, music, and science from birth and a voracious and far-ranging reader, Kay had a vast number of experiential dots to connect. (W.Bennis : Organizing the Genious, Addison-Wesley, 1997)

michi@microinfoseeke

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3. Sunday Times 98/05/30から
(1) 長生きと想像力
(2) 糖尿病はウィルスによって起こる
(3) C.Chaplinはペドファイルだった

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(1) 長生きと想像力

5/31のThe Sunday Timesの記事からです。今週はWORLDの欄の記事よりも、他 の欄の記事が面白かった。一度にまとめて書くと疲れるので、各記事を独立し て感想を書いていきます。

*Long life is a state of mind by Steve Connor

頭を使った方が長生きする。常識に属することかもしれませんが、面白いので 紹介しておきます。

好奇心が旺盛というか、想像力のある人が長生きするということです。長生き するには、禁煙や食事や運動も必要だが、頭も使わないといけないぞ、という ことで若者に対して勉学のすすめをするには良いかもしれません。

これは年寄りの修道尼を調査した結果分かったようです。調査対象の尼は同じ 施設で長年暮らし、食事も長い間ほとんど一緒、そして子供の世話など家庭の 心配事もない、だから知的好奇心が寿命にどのような影響を与えるかを調べる のには理想的な環境ということでしょうか。

調査方法は彼女たちが18才から32才の時、つまり60年以上前、尼になる誓いを したときに書いた自伝のエッセイを分析し、そこから若いときの想像力と彼女 たちが何歳で死んだか、アルツハイマー病にかかる割合はどうなのかの関係を 調べた。想像力というより、言語能力との関連といった方がいいかもしれませ んが。

1991年以来死んだ58人の尼を調査した結果、若いときに想像力が低かったグル ープの平均寿命は81.7才であるのに対し、想像力が高かったグループは88.5 才。そしてアルツハイマーにかかる割合は、低いグループの方が10倍高い。ま あ尼は健康的な生活を送っていますから、全体でいえば普通の人より寿命は長 いのでしょう。調査サンプルの数が少し少ないのは気になるところですが、大体 常識にかなっている結果と思います。

76才のMother John Baptistによれば、仲間の尼で若死にする人はほとんどい ない、ほとんどが80代から90代まで生きる、ということです。別な証言では、 多くの尼は、本を良く読んだり、いろんな活動に参加したり、テレビのクイズ 番組を楽しんでいるということです。

ここで述べられていることが正しければ、この会議室に参加している皆さん は、みんな長生きできるということになります。これからもがんばりましょ う。 (^o^)

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(2) 糖尿病はウィルスによって起こる

*Diabetes in children may be spread by school virus

糖尿病は、ウィルスによって起こる、というタイトルを見たときには信じられ なかった記事です。もっともここでの糖尿病は主として学童schoolchildren のことのようです。成人についてはあまり書いていないようですが、もしも大 人にも当てはまるということがいえたら、これは大発見ですが・・・

イギリスでも子供たちの間に糖尿病が広がっている。今までの常識としては食 事poor dietが、主な原因だということで一致するのではないかと思います。 ところがグラスゴーにある地域ウィルス研究所のDr Geoffrey Clementsによれ ば、子供たちの間ではウイルスによる相互感染(cross-infection, 辞書では交 差感染となっていますが、ちょっと違うような気がします)が主な原因である 可能性が高い。そしてそうしたウィルスに感染しやすい遺伝子があるのかもし れない。

だから,はしかや、おたふくかぜ、風疹などを治すワクチンと同様に、糖尿病を 治せるワクチンが出来れば、糖尿病は少なくなるのかもしれない。

どうも長い間謎だったのは、子供たちの糖尿病が新学年直後、冬、春に発生が 多いということだったらしい。このことがもしかしたらウィルスによって糖尿 病が発生するのではないか、そのヒントになったわけです。糖尿病にも季節性 があるというのは、私は初めて知りました。

一番犯人として疑われているのは、Coxsachie B4と呼ばれている腸内ウイルス で、どうもこれはいくつかのガンを始め、かなり広い病気の原因であると考え られているらしい。

糖尿病は血糖値を規制するホルモンインシュリンの不足によって起こる。症状 としてはひどい渇きがあり、時として昏睡や死を引き起こす。初期の段階で は、糖分の摂取を控えることで治るが、ひどくなればインシュリン注射が必要 だし、しばしば視力に影響がある。死ぬ場合もある。この辺の知識は私も漠然 とながら知っています。

インシュリンは膵臓内のLangerhansと呼ばれる組織から分泌されるようです。 そして糖尿病の最悪の症状、Type 1として知られているものでは、免疫システ ムがこの組織を攻撃破壊し、インシュリンの生産が出来なくなる。だからたと え初期の症状であっても、その治療にはインシュリン注射が必要になる。この Type 1が子供たちの間に急速に広がっているようですから、事態は深刻です ね。

最近までこうした免疫システムのLangerhansへの攻撃破壊はDNAがひき起こす ものと考えられていた。しかしどうやらこれがウィルスによって生じるというこ とらしい。だとすると、これは成人の糖尿病患者にも当てはまることかもしれ ませんね。

さらにこのType 1の場合、Langerhansへの攻撃破壊は糖尿病だと分かる前に完 成していることが多いらしい。だから対策のとりようがないのでしょう。それ を防ぐために特に子供たちにはワクチンによる予防が重要な意味を持ってくる ようです。

Coxsachie B4の中には11の蛋白質が見つかっているようで、そのうちのどれが 膵臓への攻撃を免疫システムに命じるのかの研究を今しているようです。

糖尿病はイギリスでは死因の4番目、成人失明の原因としては1番目のようで す。日本でも事情はあまり変わらないかもしれません。しかしこの記事には最 初から驚かされました。あまり医学的知識のない私ですが、それでも読み終わ った後でもなかなか信じられない。まあ真面目な記事だとは思いますが、 Sunday Timesでは今でも信じられないような記事を大分読んできました。 これが本当なのかどうかは、私にはさっぱり分かりません。(^^;

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(3) C.Chaplinはペドファイルだった

* Chaplin was a paedophile, claims author by John Harlow

チャップリンがpedophile(小児(性)愛者 )だったという記事です。Sunday Timesもこうした暴露物が好きだなという気はしますが、A.C. Clarkの時ほど 意外性はない。しかしこの記事、ChaplinをBritain's most enduring film starと書いています。私も彼の自伝は読んだことがありますが、彼はイギリス で幼くして既に人気者だった。多分10代でアメリカに渡ったと思いますが、 Chaplinは意識の上では自分を何人と考えていたのでしょうか。辞書では確か に、「英国の映画俳優・脚本家・製作者」と書いています。

先週アメリカで発行された伝記Charlie Chaplin and His Timesの紹介記事の ようです。作者はKenneth Lynn。John Hopkins大学の歴史の名誉教授であり、 ハーバードの英語の名誉教授。その中でチャップリンが時には8才の少女を誘 惑し、成人になるやいなや興味がなくなったのか、自分の映画では使わなかっ たということなどを紹介しているようですが、これは彼の映画に詳しい人なら 周知の事実かもしれません。はたしてそれがpedophileの定義にふさわしいのか どうか。今朝アインシュタインの恋人が旧ソ連のスパイだったというような話 しもテレビでやっていたようです。英雄たたきなのか、まさかユダヤ人叩きと いうことはないでしょうが、死人は弁解できないから少し気の毒という気がし ないでもない。

いくつかの例をあげています。そのうちの一部を紹介します。例えば長い間忘 れられていて去年死亡したチャップリンのかつての妻、Lillita Greyの回想を 書いています。彼女は1921年12才の時にThe Kidでエキストラとして出演した とき、32才のチャップリンの目に止まった。彼は彼女のために特別なエキスト ラのシーンをつけ加えた。何歳で結婚したのかは知りませんが(1920代半ばで 結婚したとありますから17才くらいかなと思いますが、調べていません)、2人 は短い期間結婚していた。しかしGreyが妊娠したと知るやいなや、彼女への関 心をなくした。呼び方も、"age of innocence"から結婚後は"the bitch"へと 変わった。

その前の共演者のMildfred Harrisは1918年から1920年の間、Chaplinと結婚し ていますが、彼等が最初の関係を持ったのは公にはHarris16才の時。しかし Harris自身の言葉では、母親の勧めもあったようですが、13才の時から関係は 始まっている。Chaplinが1960年代に書いていた自分の記録(多分彼の Autobiographyのことだろうと思います)では、Harris自身の方から積極的な誘 いがあったように書かれているようです。

LynnはChaplinが名前が不明の8才の女の子と戯れていたという証言もあるよう ですが、こちらの方の関係は詳細は不明。Chaplinが54才の時、劇作家Eugene O'neillの娘Oona O'neillと結婚してからは、彼も大人になったのか、そうし た少女嗜好はなくなったらしい。それでも1952年に彼がスイスに移ったのは、 普通いわれているように彼の左翼的思想からではなく、sexゆえだったという ことが今度の本では主張されているようです。これはマッカーシー旋風のこと でしょうか。あのとき、アメリカの映画人も大分アメリカを離れたのではない かと思いますが、チャップリンの場合は違うということなのでしょうか。

私は彼の自伝は多分英語の本としては初めの頃に読んだはずですが、ほとんど 覚えていない。子供時代のことを断片的に覚えていますが、いわば彼の華やか な活躍の時代のことはすっかり忘れています。

今週のSunday Timesはまだ面白い記事があります。多分紹介できるとおもいます。

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4. 葬儀屋が殺人を犯した!! (P. Zindel)

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*The Undertaker's Gone Bananas by Paul Zindel (Bantam Books)

今回の作品は、今まで読んだZindelの作品とがらりと違う。若い男女のペアが 主人公であることには変わりがないが、今までのように彼等が交互に出来事を 述べていくということはなく、普通の客観的な第三人称的な形で物語は語られ ている。そして話しの中身も、殺人事件を取り扱ったミステリー物だから、な かなか楽しめる。しかし私は例によって、あらすじは脇に置いて、読了後の余 韻に浸りつつこの作品で面白かったところを思い出すままに書いてみます。

Bobby PerkinsとLauri Geddesが今回の主人公。舞台は、New Jerseyにある30 階建ての建造間もないCentury Tower Apartment。 マンハッタンもGeorge Washington Bridgeも見渡せるから、まあ州は違うがNew Yorkと言ってもい い。各階10戸ずつですから合計300戸くらいだから1つの村くらいの規模です ね。といっても、家賃が高いのか、特に高層部は入居者はまばらです。例え ば、Bobbyの家は、24-Hですが、同じ24階には他に入居者はいない。24-GにMr. Hulkaが入居してくるところから、物語は始まるのですが、下の22階と23階に は入居者はまだ誰もいない。各階とも作りはalphabetで同じなようで、特にG は贅沢な作りになっている。例えば寝室が3部屋、メイドの部屋、洗濯部屋(a private laundry room)、forty-three-footの居間、これは約13メートル四方 だということだとすれば、160平方メートル以上になります。そしてwrap- aroundのテラスとありますから、テラスがぐるりと回りを囲んでいるのでしょ うね。家の中は迷路みたいになっているという表現もあったようですから、か なり大きなマンションだと思います。

しかも駐車場は地下の3階部分を占めているようで、このマンションは管理人 としてもかなりの人が働いている。彼等の間にも序列があって、本文にあげら れているだけでも、doormen, concierges,lobby assistants,a garage manager,mailmen,parcel post delivering men, window washers, そして paper deliverypersons, daily paper deliverypersons, Sunday paper deliverypersonsなどいます。全員が常勤なのかどうかは分かりませんが、職 業の中には複数の者もかなりありますから、このマンションには多くの専用ス タッフが働いているということがいえます。主人公たちの家庭は、そんなに特 別に裕福ともいえないようですが、このマンションはなかなか豪華なようです。 専用のプールもある。24階から見ると、プールの人影も、蟻のように見えるよ うです。

主人公のBobbyはとにかく変わった少年、年齢は本文に書いていたかもしれま せんが、よく覚えていない。Fort Lee Highの生徒ですから、15才くらいだろ うと思います。彼もZindelお気に入りの、indivisualismの化身のような人物 で、他人が自分をどう思おうとも自己流の生き方を貫く人物。人から誤解され ても別に気にもしない。学校内でもその行動は誰一人知られないような有名な 人物です。特に逞しいというわけでもなく、問題児ということでもない。先生 や他の生徒とは全く違う価値観で動いているから、多分周囲の者は彼を愚か者 と思うか、ほとんど理解できない。彼の最大の理解者は両親のようです。両親 は、息子の行動を全面的に信頼しているようで、まあ世間から見たら彼等もも 大分変わっている。芸術的才能が豊かな一家かもしれない。

一方のLauriは常に死を恐れている少女。これは彼女が以前住んでいた町での 悪夢のような経験の影響がある。彼の隣の家の全員が火事で死んだ。大分後に なって、彼女の独白というか、Bobbyに仮想のLove Letterを心の中でつぶやく 場面が出てきますが、その中で隣の家の少年に密かに想いを寄せていたことが 分かる。そのことは誰も知らないことだが、とにかく事件後あらゆることを死 に結びつける。エレベーターに乗っているときはもちろんその落下を恐れる。 橋は崩れ落ちるかもしれないから渡れない。トンネルも同じ。町を歩いていた ら、ガラスか飛行機かクレーンが落ちてくるかもしれない。とにかく生きたい という強い願いを持っているが、同時にいつも死の強迫観念から逃げられな い少女。両親は彼女のことを心配して、このマンションの3-Aに引っ越してき た。彼女の場合も、Bobbyと出会う前は両親が最大の理解者ということになる のでしょうか。

Lauriがある事件でBobbyの無罪を証明した2人は急速に仲良くなる。街の中を 修道士や尼の格好をして歩き回ったり、24階から風船に水を入れて、マンショ ンのプールめがけて飛ばしたり、時には警官から尋問されたりもする。その中 でLauriも少しずつ死の恐怖を忘れかけたというか、現実を直視することが出 来るようになってきている。

どうも背景が面白いから前書きが長くなりましたが、物語は24-GにMr.Hulkaと その妻が入居してくるところから始まる。Billyはテラスから隣の部屋にいる Mr. Huskaを見てどうも気に入らない。the eyes are the mirror of the sou l.というわけですが、このへんは面と向かい合っている人の目を見ているわけ でもないのに、Billyはよほど目が良いのでしょうか。(^^;

ある日両親が休暇でいないときに、Billyは隣の部屋から言い争い・女性の悲 鳴・物が壊れる音などを聞く。このアパートは作りも頑丈で、普通は隣の家の 物音が聞こえることはない。テラスから24-Gの部屋を見たBillyは、Mr.Hulka が妻らしい女性の死体らしき物を寝室に運ぶのを見る。早速Lauriに連絡し て、Lauriとともに警官や管理人たちが駆けつける。しかし警官はBillyの話し に半信半疑。彼はいままでいろんな悪戯をしていますから。さらに部屋をいろ いろ調べても、怪しいことは特にないし、殺されたはずのMrs. Hulkaが家に帰 ってきたから、なおさら悪戯ないし勘違いということで、警官たちは、Billy たちを強く戒めて、帰っていく。

その後BillyとLauriが24-Hの部屋に2人残されたとき、またしても女性の悲鳴 と物音。警察に電話しても、信用されず今度再びいたずら電話をかけてきた ら、少年院に送られるぞと脅かされる始末。この辺から物語はミステリーじみ てきます。果たしてMrs Hulkaは本当に死んだのか。そのうちMr.Hulkaが大き なトランクを持って外出。追跡する2人。自分の経営する葬儀社によったMr. Hulkaは、最終的にHudson川にトランクを投げ捨てる。Mr. Hulkaの会社の葬儀 車を無断借用して後を追っていた2人がハンバーガーショップに乗り込んで、 そこにたむろしていた同級生たちに事件の経過を説明しても誰も信じない。笑い 転げたり、からかわれたり。どうもBillyは日頃から他人からは全く信用されて いないようです。Billyは我が道を行く少年ですが、あまり他人からは、好かれ ていないようです。もっともLauriも、Billyの話しが勘違いだと思っている具合 ですから、信じられないのは無理もないでしょう。果たしてMrs.Hulkaは死んだ のか生きているのか、このへんは結構スリリングでした。

24-Hに戻ってテラスから2人が24-Gの部屋を覗くと、Mrs. Hulkaがハンモック で読書している。これを見てLauriの心は、既に自分の家でBillyも交えておい しい夕食を食べることに移っている。しかしBillyの心は以前として何が24-G で起きたのかにある。Lauriと違って、Billyはなかなか信念が強い。その後電 話でMr. Hulkaと駆け引きしたりする場面もなかなか緊迫しています。Mr. Hulkaが外出したのを見計らって、24-Gに侵入する2人。そこで見たものは、ハ ンモックの女性が、Mrs.Hulkaではなく、別の女性の死体だということ。しか もMrs.Hulkaの首だけが、TVのコンソールに入っていた。すべてを理解した2 人。トランクで捨てたのは、Mrs.Hulkaの首以外の部分で、ハンモックにある のが多分Mr.Hulkaの愛人で最初に殺された女性。

そこにMr.Hulkaが戻ってくる。しかし彼はまず24-Hに行って、電話線を切り、 さらに24-Hの玄関を外からチェーンで何かに結びつけて内側から開けれないよ うにする。テラス越しに24-Hに戻った2人に、Mr.Hulkaの魔の手が伸びてく る。テラスから、2重ガラスをハンマーで叩いて侵入しようとするMr.Hulka。 それに熱湯やブタンガスで防御しようとする2人。このマンションのガラスは 頑丈だから、ハンマーで叩いても粉々にならないというところも感心しました が、この辺も一気に読ませます。

こうした恐ろしい最中Lauriは、自分が死ぬことよりも、Billyが死ぬことの方 を恐れる。彼女のBillyへの友情は、いつしか愛情に変わっていたことを自覚 するわけです。現実の死が自分と愛する者に身近に迫ってきたとき、彼女の病 的な死への恐怖はなくなった。Mr. Hulkaの攻撃を懸命に逃れる2人。最後は定 石通りHappy endはになると分かっていても、まあ時間のたつのを忘れるとい うか、残りページが少なくなるのが惜しいといおうか、なかなか楽しめます。

後半は一気に読めました。そういえば今まで読んだZindelの作品もいずれも後 半は一気に読めました。物語の世界に溶け込んだということもありますが、 Zindelの筆力もあるのだろうと思います。この作品は、他にも葬儀屋を世間の 人はどう見ているかとか、家庭内で大量のゴミを処理できる設備とか、いろい ろ興味深い記述がありました。どうも本筋とはあまり関係ないこうしたところ が今の私には面白い。そうかといって、固有名詞や単語などで分からないとこ ろをそのままにして読み進んだから、本当にこの作品を堪能したのかどうか、 もっと実力があれば、さらに面白かったかもしれないとも思います。

タイトルのthe Undertaker's gone bananas! というのは、主人公の2人がMr. Hulkaの手を逃れて、Lauriが自分の家にかけ込むときに叫ぶ言葉。これを Billyがロビーを走りながら、同じ表現で各家庭に知らせます。go bananasは、 「頭がおかしくなる、気が変になる」という意味ですが、私はタイトルのよう に訳してみました。

Zindelの未読の作品で、私が持っているのはこれで残り1冊だけ。これを読ん でしまったら、もうZindelは読むこともないかもしれない、と思っています。

1998-5-28

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