「英語を読む」 No.28


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「英語を読む」  No.28  1998-5-27日 発行     

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みなさん、こんにちは。「英語を読む」No.28をお届けします。

どうやらタイトルを変えた途端に、発行が順調になりました。前にも書いたよう に、気分的に楽になったからかもしれません。将来はどうかわかりませんが、こ れではWeeklyの名前をつけてもいいかなと思っています。今回のように私の文章 と投稿者の方の文章で、構成したものを発行できれば、時間的にも、かなり余裕 が生まれるかなと思っています。

今回はNewsweek5/25とSunday Times 5/24が一緒になってちょうどいい区切りで した。

みなさんの、投稿をお待ちしています。特に、今まで読んだペーパーバックの中 で思い出に残る作品・お勧めの作品がありましたら、ぜひ感想をお聞かせ下さい。

1998-5-27

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目次
1. 気になるNewsweek 98/5/25  by MicroWorldNews
2. 天才遺伝子は存在するか (Newsweek 5/25)
3. Sunday Times 98-5-25
4. The Portable Coleridge (1) by MicroClassics

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1. 気になるNewsweek 98/5/25  by MicroWorldNews

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**インドネシア暴動の発端は?
先週のYUKIさんの記事にありましたが、突然の流血暴動の発端は私にも大いに気にな るところであります。確かに前日までは学生は合法的に抗議していたのです。 Newsweekで細部を追うと:

 「その日、5000人の学生デモ隊はTrisakti大学を出て国会へ向かったが武装警官に 阻まれ学内へ退去しはじめた。そのとき、おとり諜報員とみられる人物が「ひよっこ !」と叫んだ(fateful taunt)。学生たちはその人物をなぐりはじめ、警官は実弾 で応酬した。少なくとも6人が射殺された。」

ところで、これ以上に気になるのは、IMFの指導力低下の問題です。  「(速報を聞いた)会談中のG8リーダは、大統領の7回以上の再選を保証してい る体制の改革を促したものの、公共料金値上げ撤回というSuhartoの第1手を批判す る者はいなかった。」

貧困者の生命線であった燃料補助金の廃止の結果、ガソリン71%、電気60%、バ ス66%、電車100%という公共料金の大幅値上げが直前に発表され、大衆の怒り をかき立てていたのでしたが、これはIMF融資430億ドルの繰延べと引換に選択 せざるを得なかった「大変困難な決定」の結果だったのです。

 「突如IMFが問題の一因となってしまったことで、G8諸国はもはや最貧国の援 助方法について自信をもてなくなった。この自信回復にはJakartaの被害再建よりも 時間がかかりそうである。」

唯一正統性ある他国への介入とみられていたIMFの失策により、今後のグローバル 経済の進展が影響を被ることのないよう祈らずにはいられません。

**インド核実験
前号Timeの記事にみるように、この事件に関するアメリカの失策は枚挙にいとまがな いようです。例えば:
 「2年前CIAは帰化インド人職員を文書不正使用により解雇したが、この職員は 近東関係のデータを洗いざらい持ち去ったということである。」
 「インドは監視衛星の通過をやり過ごしてから作業を進める、という手を使って監 視を逃れていたが、その通過スケジュールはhackerの手で利用しやすくWebsiteに掲 示されている。」

直前のパキスタンの忠告に対し断固としてインドへの信頼を表明したといわれる Richardson国連大使の面目は丸潰れ、こけにされ放題:
 「74年の核実験時Gandhi首相はその平和的目的を強調し、成功を通知する暗号文 は「仏陀は微笑んだ」であった。今回の暗号は「ホワイトハウスの崩壊」である。」

インドの真意は武力行使よりは、このあたりにあると見るむきもあるようで、むしろ そうであるなら、話は簡単:
 「核保有5国が排他的な安全保障理事国となっていることに原因をみる識者もある 。参加したい国には参加させる方がよい、そして安全で安定した武器の使用方法を指 導するのだ、という。例えば起爆操作を暗号化し、簡単に発動できないようにする。 」

さて、このような苦境にある米国は、どんな態度でこれを乗り切るのか、私の一番気 になるのはここです:
 「次の作戦を練る米国の政策担当者らには悲しみと憂慮の色があった。この程度の 事件によってアメリカ人が冷戦を懐かしんだりはしないことはわかった。しかし少な くともわれわれの注意を引くものではある。」
私にとっては、学ぶところの多い一言です。

MicroWorldNews

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2. 天才遺伝子は存在するか (Newsweek 5/25)

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*A Gene for Genius p.63
'Smart DNA' could explain how IQ is inherited

人間のIQは、どこまでが遺伝的で、どこまでが環境の産物なのか。多くの議 論がなされてきたが、知能の発達を阻害する場合を除いて、知能に影響を与え る遺伝子の存在を明らかにした者はいなかった。そうした試みを企てたのが、 ロンドン精神医学研究所のRobert Plominを中心とする研究者達である。

彼等の取った手段は、IQが高く、4才若くても大学入試に合格でき、しかも Prinstonでもcaliber-lebelsの少年たちのDNAを調べたようです。caliber- lebelsは、学業成績優秀と言うことでしょう。日本で言えば、14才で一流大学 に入学して、しかも学業が優秀と言うことでしょうか。具体的には、IQが平均 136の集団と、IQが平均103の集団を、それぞれ51人選んだ。いずれも6才から 15才までの白人で、クリーブランド近郊に住んでいる。

ここから私の知識が不足していてついていけないところもあるのですが、と にかく分からないままに書いてみます。まず23の染色体の1つ、染色体(No.)6 を選んだ。この染色体の研究が最も進んでいるということで選ばれたようで す。人間の染色体は46だったと思いますが、調べてみると生殖細胞は23の染色 体を持つようです。しかし研究対象となったのは血液ですから、このへんも良 く分かりません。

とにかく染色体No.6の37の特徴の内、1つの特性が浮かび上がってきた。 IGF2Rといわれるもので、IQが高いグループのほうが2倍現れる割合が高かっ た。これはallele(対立遺伝子) 5と呼ばれるもので、正式にはinsulinlike growth factor 2 receptorというようです。インシュリン類似成長因子受容体 とでも訳すのでしょうか。 (^^;

しかしこのIGF2Rは天才遺伝子ではない。知性に関係があるわけでもない。せ いぜいたくさんあるものの1つに過ぎない、ということのようです。IQで言え ば、4くらいの差位しか説明できない。しかもIQが高いためには、必要でもな ければ、十分でもない。なぜなら、IQレベルが普通の子でも、23%は所有して いるし、IQの高い子でも54%は持っていない。これで見ると、持っている者の 割合は23%と46%になるようで、2倍という数字は同じですが、数字そのものは 前に述べたのとは違っている。何故違うのか、良く分かりません。

とにかくこのIGF2Rはインシュリンのようなホルモンを細胞に付着させる働き をするようです。インシュリンを巻き込んだ遺伝子が果たして天才遺伝子なの かどうかは分からないが、その可能性もあるようです。ホルモンが細胞に付着 したとき、細胞を成長させたり、破壊する働きがある。どちらの場合も、脳の 成長を助けるようです。国立健康研究所の科学者によれば、インシュリンは神 経を成長させる働きがある。そしてネズミ実験では、学習・記憶に関係ある脳 の部分は、インシュリン受容体がいっぱいあることが分かっている。

IGF2Rが脳及び知性に影響を与えるということはなかなかいい考えだが、疑問 視する科学者たちもいる。その1つにPlominたちが"箸の誤り"に陥っているか もしれない、というのがある。"箸の誤り"という理論があるのですね。遺伝子 学者たちが箸を上手に使える遺伝子を発見したと思ったら、たんにアジア人に 共通の遺伝子を発見しただけなのかもしれない。つまりIQが高い集団は、そう した教育を重視する集団に特有な遺伝子を持っているだけであって、本当にIQ が高い集団だけに特有なものかどうか疑問だというわけですね。

もともとIQは、文化的にもデリケートであり、子供の環境にも影響される。こ れはIQが必ずしも、客観な知能をはかる基準にはなり得ないと言うことだろう と思います。だから賢い少年たちののある染色体の37の遺伝子を調べたからと いって、それは知性と遺伝子を関連づけたと言うよりも、単なる偶然なのかも しれない。同じような手法で、精神分裂症、好奇心、それと似た性癖を持つ人 々の遺伝子を探せるかもしれない。しかも他の研究者が同じ結果を得られると は限らないし、正確であるともいえない。割り引きして考える必要がある、と ある学者は言っています。(I would take these findings with a whole box ofsalt.) with a whole box of saltは良く分かりませんが、with a grain ofsaltに、「割り引きして」という表現がありますから、これから考えると「 大いに割り引きして(ほとんど信じられない)」ということになるのかもしれま せん。

もしIGF2Rが知性に関係あるという仮説が正しいのなら、ここからさらに難し い問題がいろいろ出てくる。いろいろあるようですが、例えば母親や新生児に 正しい栄養を与えることによって、IQ遺伝子の中身を変えることが出来るの か。知性を司る遺伝子が目の色を決定づける遺伝子と同じように決定的なの か。Genes are not expressed in a vacuum.というのは、遺伝子だけで人間の 知性は決まるものではない、ということなのでしょう。環境要因との様々な相 互作用が重要になってくる。

PlominはIQ遺伝子を探そうとして、さらに2つの染色体の分析をしているよう です。10月にはその結果を発表するようですが、彼は"We have many other hits"と言っていますから、すでになかなか成果があったということでし ょうか。遺伝子決定論者たちは、あまり他の科学者たちの批判は気にしていな い。ある心理学者は2カ月以内に、妊婦向けのIGF2Rテストが行われるだろう、 と考えています。

全体的に遺伝学の知識や正確な用語を知らないから、かなり苦しいところもあ ります。まあ全体の概略を大体つかめたことで満足しておきます。すべての染 色体の機能が完全に分かる日は来るのでしょうか。あまり楽しそうでもないよ うですが、どうもクローン人間の可能性といい、世界は私の想像もつかない世 界に突入しているようです。

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3. Sunday Times 98-5-25

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The Sunday Times 5/24のWORLDの記事を簡単に紹介しておきます。

1. Purge of Suharto's clan starts
Dynasty's downfall averts civil war

スカルトが長年dukkunと呼ばれる占い師に、特に危機に直面したときに相談し ていたと言うこと。アメリカでも、日本でも以前によく聞きましたが、政治家と 占い師の関係はなかなか結びつきが深そうです。特に2年前に、それまでの良 き相談相手だった妻の死亡後は、昔からのジャワ島の迷信の世界に深く入って いったらしい。

Prabowoは、4人の学生の死について責任を問われる可能性がある、というのは まあ当たり前でしょうね。しかし彼の部下たちは積極的に略奪や、組織的解 雇、放火にも関係していたようで、Prabowoは混乱に乗じて一気に軍と国家の 権力を握るつもりだったのでしょう。

しかし今回の一連の経過の中で圧力をかけたのが、アメリカ・イギリス・オー ストラリアの軍事・情報関係者たちの連携ぶり。お互いに緊密な情報を交換 し、軍のエリート層との人脈を生かして、破局を防ごうとした。日本は、こう した面ではあまり活躍はしなかったようですが、在留外国人の避難の中では一 番秩序正しく実行したようです。ツアー旅行みたいに、在留邦人を市の中心に あるホテルに避難させたとありました。

2. I saw Briton shot, says Khmer Rouge guerrilla
Mine clearance expert killed three days after being kidnapped, Scotland Yard detectives told

カンボジアで地雷除去作業に携わっていて、クメール・ルージェに誘拐された Christpher Howesは誘拐3日後に射殺されていたという記事です。かなり確度 は高い。彼を連行した責任者の証言ですから。尋問の後、果物のdurianを食べ ているところを背後から、銃殺した。おそらく彼は最後まで銃殺されることに 気づいていなかったようですが、これがクメール・ルージェ流の高官の最後の 晩餐式処刑法だということです。

3. Colombia cocaine cartels plot to flood World Cup
Authorities uncover plan by some of world's most notorious drug traffickers

World Cupを控えて、コロンビアの麻薬組織が大量の密輸を企てているようで す。テロや騒動に備えて、フランス警察の麻薬取締が緩むだろうと見越しての ようです。金額的にも、何百億もの量らしい。しかし直接フランスに運ぶよう なことはせず、まずはスペイン・イタリア・オランダあたりに荷揚げすればあ とはEU内の輸送は比較的楽だということです。密輸する側も、取り締まる側も 様々な智恵を絞っているようです。前回のアメリカでのWorld Cupの時は、 CaliカルテルのRodrigues Orejuela兄弟は、2機のBoeing727を2回ずつ、計4回 メキシコのアメリカ国境に飛ばしたというからすごい。いずれも2億1000万ド ルの価値の7トンのコカインを運んだようです。今回も、これに匹敵する作戦 をねらっているようです。

4. Falklanders await rush for black gold
Potential £100 billion oil reserves spell change for isolated community

フォークランド沖に石油が埋蔵されていることがほぼ確実になったようです。 Wales位の広さの所に、2200人しか住んでいない島も、住民の願いに反して、 騒々しくなるのかもしれません。住民は金銭的にはかなりの恩恵を受けるよう ですが、石油産業が自分たちの島に出来ることは望んでいない。しかし戦争に 敗れたアルゼンチンも、自国の利益になるような法律を制定している。まさか 新たな紛争の種になることはないと思うのですが、10年以上前のフォークラン ド紛争は何が原因だったのか、私はよく覚えていません。石油資源も絡んでい たのかな。

5. US carnage brings call to arm schools
Provocative remedy for string of deadly assaults

アメリカの学校で多発する銃乱射事件は、どうやら銃規制の動きではなく、学 校の武装化への動きを強めているらしい。具体的には、教師が銃を所持するこ とを認めるようにという主張の方が大きい。潜在的犯罪者は、犯罪を犯すに当 たって自分の危険性を考えるから、教師から銃で反撃される可能性を考えると 生徒が学校で銃を発射することが少なくなるだろうと言う発想のようです。 Exciteのサイトでアンケートを取っていた時も、こうした事件が何故続発する かの原因としては、銃が簡単に手にはいるから、と考える人よりも、犯人の人 格の問題と考える人が圧倒的に多かった。

6. Jefferson's 'black heirs' in DNA test
Did founding father have affair with slave girl?

去年のUS News 12/22にも載っていた、アメリカ独立宣言の起草者であり、第 三代大統領でもある、Thomas Jeffersonにはたして黒人の子孫がいるのかとい う記事です。US Newsの記事では、数カ月以内に結論が出るということでした が、このSunday Timesの記事の内容は、特に目新しいことはありません。ただ この記事が出たということは、もうすぐで結果が分かると言うことです。

本文にももうすぐ科学雑誌で発表される、とあります。もともとの方針が Oxfordの3つの実験室で内容を秘密にしたまま実験を行い、その結果は科学雑 誌を通じて発表される、ということでしたので、多分もうすぐNEWSになるので しょう。私は3月頃発表かと思っていたので、そのときはあまり雑誌もまじめ には読んでいなかったから、見落としたのかもしれないとすこし気になってい ました。 (^^;

TIMEもNEWSWEEKも、DNA鑑定の結果は報道すると思います。Sunday Timesのこ の記事は、結果はどうあれ、アメリカ人が敬愛するジェファーソン像は永遠に 変わってしまった、と結ばれています。

7. Iran dares to defy grip of mullahs
President holds 'town meetings' to solicit views of his subjects

イランでは穏健派と保守派が勢力争いにしのぎを削っている。穏健派のカタミ 大統領出現以来、、若者たちが街頭に出てその支持を表明している。しかし自 転車に乗っている女性(これはpuristからは罪深いと考えられている)が襲われ たり、カタミ派の集会が襲われている。一方では、保守派を皮肉る出版物も人 気があるようです。少し心配なのは流血の恐れがあること。

8. Surge of support boosts Vanunu
More than 500 letters will be forwarded to him this week

Sunday Timesはここ数週間、Vanunu釈放の記事を掲げています。

9. Police link to murder of Russia's Serpico
Corruption in elite police force linked to mafia killing of top cop

ロシアで警察仲間の不正を暴き続けていた警官が殺された。多分仲間の警官に 殺されたようで、真相は明らかにならないかもしれない。この人、いろいろな 妨害やぬれぎぬにも負けず、1人で頑張っていたようですが、こうした警官が ロシアにもいるのですね。Serpicoは大分前にTIMEかNWで読んだ、同じような 境遇のアメリカ人の警官でしょうか。彼は結局生命への危害を恐れて、スイス に逃げたから命だけは助かった。しかし殺人を請け負ったり、犯罪組織に関係 を持つ警官が多いロシアで、珍しい存在だったのでしょう、彼の葬儀には多く の人が参列した。ただ犯人もその中に制服を着て参列していたかもしれない。

10. Cape Town cheers killer of child rapist
Hundreds of people expected to turn out to voice their support

自分の娘をレイプされた男が犯人を撃ち殺した。今南アフリカでは彼に同情の 声が集まっている。被害者は6才になる娘で、父親は罪を認めた犯人(多分娘の 友人の父親?少なくともその家族の者)を警察に引き渡した。その後、彼は犯人 が供述をしたかどうか聞きに行くわけですが、そのとき勤務中の友人の警官が、 「あいつを殺せば良かったのに」ということを言った。そして犯人が収容されて いる独房の鍵と銃を渡した。犯行時のことは良く覚えていないということのよ うですが、すさまじい犯罪率の南アフリカでも、この事件は人々の心に訴えか けたのでしょう。南アフリカでは3分に1回、子供がレイプされ、犯人に自分の 手で直接復讐する親たちが増えているようです。

11. Italians demand 'looted treasure' from Clinton ally
Legal proceedings considered against Jackie Onassis's companion

ジャッキー・オナシスの友人だったMaurice Templesmanが1980年に100万ドル で美術商から買った美術品を返還するように、イタリア政府から請求されてい るという話。シシリーの古代の発掘遺跡から盗まれたもののようです。

12. Inside Paris - Kirsty Lang
Soccer kitsch sends style down the pan; Socialists' soft spot for Blair; Some serious gnome truths ...

*パリ情報。かつてはサルトルやシモーヌ・ボボワールらの知識人たちが集った Left Bankに今ではブティックが出来ている。最近はWorld Cup目当ての土産物 やもできた。昔を懐かしむものには苦々しいことのようです。

*フランス警察はWorld Cup対策として麻薬常習者を見分ける簡易装置を導入する 予定。汗に含まれるカンナビスを探知できる装置のようです。

*庭のノームについての第1回国際会議が来月ブリタニーで開催されるとか。 ノーム解放戦線は、活動を止めたのかな。それともこの会議に集結するの かな。(^^;

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4. The Portable Coleridge (1) by MicroClassics

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The Portable Coleridge (1)

Samuel Taylor Coleridge(1772-1834)は邦訳を見つけにくい作家の1人だ。かつて岩 波文庫で130ページの詩集とシェイクスピア論とがでていたので、蔵書の多い図書館 ならあるかもしれない。90年刊の岩波文庫「イギリス名詩選」には"Kubla Khan"が1 つだけ収録されている。しかし英語圏では、決して忘れ去られた詩人ではない。今日 届いたBarnes&Nobleのカタログでは、"The Rime of the Ancient Mariner" の復刻版 が$19.98ででていた。原版は1876年にGustave Dore の超現実的銅版画の挿画で刊行 されたもので、この不気味な忘れがたいイメージを世紀を越えて呼び起こし続けるの だ。

 Penguin版の "The Portable Coleridge" は、1950年、I.A.Richardson編集になる もので、Coleridgeの著作の全容をコンパクトにまとめて$13.95、現在最も入手しや すいものだろう。構成は、編者解説58ページ、詩160ページ、書簡87ページ、評論128 ページ、そして「文学的自伝」の抜粋が約200ページで、計600ページを越えるが、1 8世紀であることを忘れさせる平易な文章で、迫真のイメージの世界とともに、それ が生み出されたプロセスが知的に解明されてゆく展開を無理なく追うことができる。

Coleridge is a thinker who took creation, the process as well as the product, to be explorable. (Richardson)

**詩
まず、成果物としての詩に注目する。
"The Ancient Mariner", "Kubla Khan", "Christabel" の3つがとくに有名で、彼の これ以外の詩を知っている人はごく少数といわれる。これらは同時代のどの作品より も、定常的にかつ広く愛唱されてきた。一方で、批評が困難な詩であるといわれる。 現実から隔たった独自の世界であるからだ。作者自身が"Christabel"について、”一 見ふつうのフェアリテイルのように見える作品には全く過分といえる賞賛を最も高名 な詩人方全員からいただいた”と書いているが、まさにこの思想的コアの不在によっ て、彼の詩の「息をのむ鮮烈さ(breath-taking vividness)」がもたらされたのであ った。

これらの3詩について、まず雰囲気だけでも味わっていただこう:

The Rime of the Ancient Mariner(老水夫の歌)
26才の作品。625行。老水夫は3人の婚礼客に出会いその1人に身の上話を語り 始める。異常な眼光に引きつけられ聞き手は立ち去ることができない。水夫の船がか つて南極付近を航海中1羽のあほうどりが飛来する。吉兆と貴ばれるこの鳥を水夫は 意味もなく殺してしまうが、以後呪われた船は幽霊船や天使の軍団に翻弄され海洋を さまよい続ける...。

Kubla Khan(フビライ汗)
26才の作品。54行。フビライ汗は上都に壮麗な歓楽宮(pleasure-dome)の造営 を命じた。聖なる河Alphは底しれぬ洞窟を経て地底の海へと流れ込む。杉の木立を引 き裂く異様な亀裂から噴出する巨大な泉、流れは延々5マイルを経て洞窟に達し、轟 音とともに落下するのだ。歓楽宮のフビライ汗は、轟音の中に戦いを予言する神の声 に聞きいる...。

Christabel
29才の作品。677行。領主の1人娘Christabelは、ある夜森で倒れている高貴な Geraldineを見つける。他国から5人のならず者に誘拐されて捨てられたのだった。 心優しいChristabelはGeraldineを館に伴い介抱する。翌朝父に引き会わせると父の 心は感慨にふるえる。何と彼女は、遠い昔誤解から仲たがいした懐かしい友の娘であ ったのだ。ところが、父のもてなしに常ならぬ思いを感じとったGeraldineの瞳に、 ほんの一瞬蛇の光が走る。Christabelは見逃さない。そして、混乱と動揺のうちに叫 ぶ「この女をすぐに追い出して下さい!」。すべての善意は一瞬のうちに打ち砕かれ た...。

さて、次にこれ以外の詩をみてみよう。
他の詩はいずれも以上の幻想的3詩とは違って、誰にも身に覚えのあるような日常的 な叙情を歌ったものである。しかしその鋭敏な迫真性故に、現代でも深い共感を覚え る読者は少なくないはずである。

自分の言葉や行為の影響を考えはじめると際限がない:
And what if all-avenging Providence,
Strong and retributive, should make us know
The meaning of our words, force us to feel
The desolation and the agony
Of our fierce doings? (Fears In Solitude, 1798)

対人関係でいたたまれない思いにさいなまれる:
Deeds to be hid which were not hid,
Which all confused I could not know
Whether I suffered, or I did:
For all seemed guilt, remorse or woe,
My own or others' still the same
Life-stifling fear, soul-stifling shame. (The Pains of Sleep, 1803)

喜びへの感度が高すぎるとかえって喜びが感じられなくなる:
The more exquisite the individual's capacity of joy, and the more ample his means and opportunities of enjoyment, the more heavily will he feel the ache of solitariness, the more unsubstantial becomes the feast spread around him. (The Blossoming of the Solitary Date-Tree, 1805)

長居しすぎた客のような人生:
That only serves to make us grieve
With oft and tedious taking-leave,
Like some poor nigh-related guest,
That may not rudely be dismist;
Yet hath outstay'd his welcome while,
And tells the jest without smile. (Youth and Age, 1832)

次回は、この詩人の特異な才能の必然的発展経緯を探求してみよう。

MicroClassics

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