Weekly「今週の英語雑誌」最終号 No.25


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Weekly 「今週の英語雑誌」最終号  No.25  98-5-11 日発行    

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最終号!!! 最終号!!!

みなさん、こんにちは。 Weekly 「今週の英語雑誌」No.25をお届けします。

誠に申し訳ありませんが、Weekly 「今週の英語雑誌」としては、最終号とさ せていただきます。

この数カ月、いろいろ考えてきましたが、Weeklyという形で発行を続けること には無理があるようです。しかし月に1回ないし2回発行と言うことにすると、 TIMEやSunday Timesなどの記事が中心になっている関係上、どうしても内容が 古くなってくることがあります。かつてのペースでTIME等の記事の感想をUPす ることは、現段階ではむずかしいと考えるようになりました。

私の発行するmail magazineとしては、このWeekly 「今週の英語雑誌」を引き 続く形で新たに「英語を読む」を発行し続けます。私の意識の上ではWeekly 「今週の英語雑誌」の発行とほとんど変わらないのですが、一応私が読んだ 英文の中で感想を書きたくなったものを載せることになると思います。もちろ んTIMEなどの雑誌記事も読んでいくつもりですが、内容的には重点がいろいろ 移動することになります。paperbackやhardcoverを含め、新聞・雑誌など、あ りとあらゆる英語の文章の中から私にとって面白かったものの感想をUPすると いう形にしたいと思っていますから。発行は当分の間不定期にします。

しかし時事英語を中心にしていた今までとは明らかに違いますので、購読解除 の希望の方も多いかと思います。そうした方は、末尾にあるまぐまぐさんか私 のHPの方で解除の手続きをお願いします。私のHPのWeeklyの目次の最後にある 解除手続きが便利かと思います。なおどうしても解除が出来ないという方を除 いて、なるべくみなさんがそれぞれ解除手続きをすすめていただくようにお願 いいたします。引き続き「英語を読む」を御講読いただける方は、特別な手続 きは必要有りません。今までと同じようにお送りいたします。

No.25は、Weekly 「今週の英語雑誌」の最終号というより、「英語を読 む」の創刊号という色合いが強い形になっていますが、どうかご了承下さい。

なお、英語の本、特にペーパーバックを中心に皆様が読んで感動したり、思い 出に残る本があれば、どうか感想・紹介のメールを下さい。出来る限り紹介さ せていただきます。こうすればWeeklyという形を維持できるかもしれませ ん。(陰の声)

1998-5-11

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目次 
1.  NOMO, 満面の笑み(LA TIMES他)
2.  ユージーンの日記 by Paul Zindel
3. The Pigman by Paul Zindel
4.  Pigmanの遺産 by Paul Zindel

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1.  NOMO, 満面の笑み(LA TIMES他)

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昨日は、NOMOが初ホーマーを打ったということで、あちこちのTVニュースを見 てみました。今日の新聞は、まだ見ていないのですが、Exciteで探してThe Los Angeles Timesやら、その他の記事を読んでみました。野球に限らず、ス ポーツの記事はそんなに難しく書かれていないと思うのですが、実は私には難 しい。専門用語を英語で知らないからなのでしょうが、読んでいてごちゃ混ぜ になって、よく分からなくなるときがあります。

本当は野球用語をしっかりとマスターしておいた方が能率がいいのでしょう が、いちおう大体分かればよし、ということで読んでみます。

中心はLA Timesの4/29の Nomo's Smile Is a Winnerという記事です。

As Hideo Nomo rounded third base Tuesday night at Dodger Stadium, the stone face he normally shows the world cracked into a big smile.

書き出しの部分ですが、NOMOのstone faceは有名なのですね。辞書にはあまり 良い訳は載っていないようです。リトーブスなどという聞いたこともないよう な、植物の名前が載っています。しかしstone faceはよく分かる。NOMOはマウ ンドではおろか、ロッカールームでも感情をなかなか出さない。Nomomania全 盛の頃でも、ただ帽子に手を触れて挨拶するだけ。

火曜日の夜、Nomomaniaがほとんど忘れかけていたすばらしい投球を披露し た。11個の三振を取り、6-3でミルウォーキー・ブリュワーズ相手に完投し、 勝利を飾った。しかしNOMOが微笑んだのは、いままでにないホームランバッタ ーとしてであった。7回Milwaukeeの先発投手で敗戦投手のJose Mercedesから ホームランを打ったのだ。

試合後NOMOは、2年前のノーヒットノーランよりもこちらの方が思い出に残る だろうと言った。ホームランを打ったボールとバットは記念に持っておくとの こと。これはTVでは聞かなかった。私がNEWSで聞いたのは、最後にホームラン を打ったのか、という質問にちょっと考えた後、(みなさんが)調べて下さい、 とそれこそstone faceのまま言ったことだけでした。

この試合ではMatt Lukeもホームランを打っている。彼は今年NYヤンキースか ら公開移籍(ウエーバー)された選手のようです。6シーズンを通じて大リーグ には1試合しか出ていなかった。それが今では一塁手兼左翼手として、先発投 手が右であれば、先発メンバーとして名前を連ねる。これこそ驚きだと書いて います。彼は過去6年間をマイナーリーグで過ごしているのでRookieのようで す。

別の記事ではRookie utility playerとあります。どうやらutility manには「 どこでもこなせる万能の控え選手」という訳があるようです。器用だが、あま り目立たない選手と言うことでしょう。しかし最近の彼の活躍はめざましいよ うで、最近の9このヒットの内6本までが、extra basesです。2本のホームラン と4本の2塁打とあります。だからextra baseは長打のことでしょう。Dodgers は去年は途絶えましたが、それまで4年くらい続けて新人王を出していたはず です。新人が活躍できる雰囲気があるのでしょうか。

Dodgersは今年は本拠地では9勝3敗ですから強いですね。NOMOのホームランは Dodgerとしては、1994年5/23のKevin Gross以来だとありますが、これは投手 としてということだろうと思います。投手の打撃がよくないのは分かります が、これはちょっと驚きです。

Dodgersの1人の選手のことはa Dodgerというのですね。どんなイメージがある のだろう。あまり良いイメージが浮かばないような気もするのだが。

最近My Exciteが気に入っています。新聞代わりにもなる。登録した記事を無 料で配信してもくれる。私が選んだいくつかのトピックは数日に1つか2つある だけですが、なんといっても無料ですから。最新のNEWSはロイター電が中心の ようですから、少し偏りがありますが、面白いのがあります。

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2. ユージーンの日記 by Paul Zindel

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久しぶりにペーパーバックを読んでみた。特にどれを読みたいものがあったわ けではなかったのだが、偶然手にしたこの本を読んでみると、なかなか面白か った。

タイトルは長い。
*The Amazing and Death-defying Diary of Eugene Dingman
by Paul Zindel (Bantam Books)

Zindelの作品は大分前に何冊か読んでいる。その時にまとめ買いして、未読な まま残っているのが、まだいくつかこの他にもあるはずだ。しかし私の持って いるものはヤングアダルト向けの作品が主流だから、ときどきその世界に入 っていくのがつらい。今回の主人公も15才になったばかりの少年。最初 Eugene は、女の名前かと思っていたが、途中で間違いに気がついた。読了後 調べたら、愛称はGeneらしいが、こちらも女性のような気がしてならない。

この作品はタイトルにもあるEugene Dingmanの夏休みの約2カ月間の日記から 成り立っている。Dear Diary,と呼びかけるところはアンネを思い出させる。

家族関係は荒れているというか、かなり乾いているというか、両親は離婚して Eugeneは母と大学から帰ったばかりの姉と3人暮らし。というより、姉は離婚 した父からの仕送りが18才になって止まったから、新学期の分(秋期の分)は自 分で学費を稼がねばならない。新学年度が始まったら、アルバイトで来年の 学費を働かねばならない。最近母親が自宅の地下室に間借り人を置いたが、 この男の存在がEugeneは気に入らない。母親は夏休みの間にEugeneを遠く離 れたホテルのバイトにやってしまう。そして主人公が帰ってくる頃には、2人 は結婚式を挙げに遠くに行ってしまっている。10月くらいまで帰ってこない と言う手紙をアルバイト先によこしただけ。離婚した父親の方もかなりあっ さりしている。

作品全体のストリーは、EugeneのDellaという1才年上の少女への愛と勝手な思 いこみ、そして別れが中心になっている。Eugeneは「傍観者たるより、行動 者たれ」というアドバイスをインド人のマハトマという人物より授かるくら いだから、この作品はストリーとしては次から次に事件があるというわけで はない。それにHappy endingというわけでもない。

しかしこの作品を読んでいて楽しかったのは、作中に出てくる固有名詞の多種 多様さである。Eugeneは将来作家をめざしていていわば本の虫だから、同世 代 の仲間からは元々浮き上がっている。彼がホテルに持っている荷物の中に は、Mentor Pocket Dictionary, History of the World, The Complete Book of Famous Births and Deaths,Genius through the Ages,さらにはプルース トの Swann's Wayとか、Masters and JohnsonのSexual Inadequencyとか哲学 盛衰史、愚者の船、ハムレット、PetersonのQuotes and Proverbなどがあ る。とに かく青少年特有の賢くなりたいといおうか、知識至上主義を絵に描 いたような少年だ。実際彼は、アルバイト期間中にボバリー夫人、罪と罰、 モヒカン族の 最期、白鯨などを読破していく。白鯨は読了にはいたらなかっ たが、こうした 読書傾向から見るとかなり早熟だと思う。ただ英語で書かれ ている作品は、日本人の感覚とは違うかもしれない。

しかしこの作品で一番面白いのは毎日毎日飽きもせず引用するBayonne News & Sunという新聞である。これはEugeneが愛読している新聞なのだが、彼はこれ をアルバイト先にも送ってもらう。もちろん実在の新聞ではないと思うが、毎 日平均して3つか4つ挙げられているこの新聞のタイトルだけ読んでいても面 白い。最初の日付6/26の日記にはマリリン・モンローの幽霊が大統領の側近 に話しかけたと書いてある。MMはその後も結構幽霊として登場してくるが、 このへんは現代から見れば少し古いかな。MMが今でも若いアメリカ人には人 気があるのだろうか。

他にもぱらぱらとめくっていたら、
*シカゴの司書、UFOに誘拐される
*女性歯科医、夫の愛人の歯を引き抜く
*人魚の群がリバプール沖で発見さる
*行方不明の少年、500ポンドのゴリラの腕の中で眠っているのを発見される
*teenagerが母親をアラブ人に売り渡す(確か逆の例もあったような)
*オーストラリアの2つの頭を持つ赤ん坊は男の子と女の子であることが判明

多分もっと面白いのがあったと思うのだが、毎日こんな記事ばかり載っている ような新聞のようだ。アメリカにはこんな新聞があるのは知っていたが、こ んな新聞がWEB上で読めないかと思って興味を持って探していたりする。タブ ロイド紙は見つけたけれども、さすがにタブロイド紙さえもここまでは書か ない。こうした種類の新聞は日本にはないだろう。

さらに毎日その日にどうしたことが起こったのかを本で調べて書いている。と きどきは語彙を増やそうと辞書の中の誰も知らないような言葉を引用したり する。

こうしたものが延々と書かれている。しかもその背後に流れるユーモアという か、これはRanald Dahlにも通じるようなものがある。

最近の日本の少年少女文学というか、10代向けの作品はほとんど読んだことが ないので分からないが、この作品は面白かった。おかげで一気に読んでしま った。しかしこの作品をアメリカの少年たちの中で読んでいける人が何人い るのだろうか。出てくる固有名詞は、作家や映画俳優やら、商品名やらほと んど毎ページそうしたものにあふれている。知らないものも大分多かった し、芸能人やらアイドルは少し古くさいが丁寧に読んだらかなり物知りにな れるかもしれ ない。

今まで読んだZindelの他の作品とは少し違うかなと思ったが、かなり楽しめま した。次もZindelで行こう。

1998-5-7

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3. The Pigman by Paul Zindel

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*THE PIGMAN by Paul Zindel  (A BANTAM STARFIRE BOOK)

ユージーンの日記に続いて、ZindelのThe Pigmanを読んでみた。これもBANTAM BOOKSである。どうやらこの作品で彼は小説家としての名声を築いたらしい。 初出版はHarper & Row から1968年3月に出ている。とすると、主人公たちは私 とはあまりに違わない世代ということか。

BANTAMのタイトル裏にあるRL 6, HL age 12 and upという記述から見ると、こ れもヤングアダルト向け、日本でいうティーンズ向けである。そしてこれも 読者対象は主に男の子だろう。作品構成は奇数章をJohn Conlan, 偶数章を Lorraine Jensenが書くという形になっている。2人とも、Franklin High Schoolのsophomoreという設定である。仲良しの2人組だが、まだ恋人というわ けではない。最後に載っているZINDELのinterviewなどから判断すると、15才 の少年がモデルらしい。4年生高校の2年生と考えれば、年齢的にはぴったし あてはまる。

JohnとLorraineの家庭生活はあまり幸福ではない。Johnのような腕白少年を持 った父親母親は大変だろうと思う。家の電話に接着剤を流し込んでは、使え なくしたり、平気で嘘をつくというか、嘘をつくことに生き甲斐すら覚えて いるようだ。もっとも彼の将来の希望は俳優だから、人生これすべて演技だ ということを早くも悟っているのかもしれない。Lorraineの場合、父親は既 に亡くな っているのだが、母親にいわせれば最低の男だったらしい。彼女は 通いの看護 婦だが、患者たちの悪口ばかり言っている。さらに給料が安いこ とを口実に、平気で派遣された家庭から物を盗んでくる。まあ、古典的少年 少女小説の設定と、現代の若者向け作品が異なるのはしかたないとしても、 Zindelの登場人物 たちはどうしてこんなにも倫理観が希薄なのだろうか。た ぶん、こちらが現実感覚というか、読者にとっても身近に感じるのかもしれ ない。偽善を描くどころか、偽悪でもなさそうだ。事実の方がはるかに厳し いというわけだ。

もっとも当時は既成の価値観が今以上に崩れているときであった。それにこれ はあくまでも若者たちの視点から見た大人たちなのである。大人たちに良い ところがあるとしても、彼等はそれを敢えて無視するのはいつの時代にも変 わらない。母親には従順であったLorraineでも、最後の所では、母親のコピ ーから抜け出して、自分自身を確立するために、反抗するのだから。現代は 30年たっているから、もっと題材は深刻かもしれない。

物語は2人の主人公がひょんなことからMr. Pignatiと呼ばれる孤独な老人(し かしまだ60にはなっていない!!)と出会い、そして悲劇的結末を迎えるまでを 描いている。仲間の少年を含めて4人で見知らぬ相手と電話でどれくらい長く 話せるかを競っていた時に、2人はMr Pignati、すなわちThe Pigmanと知り合 う。Mr.Pignatiは名前にちなんで、豚のぬいぐるみやら、いろんな豚関係のア イテムを収集していることから、主人公たちがつけた愛称。

しかし主人公たちの性格というか、行動にはほとほとついていけない。最近の 日本の若者に似ているなという感慨を少し持ったが、多分これは私が年を取 ったということだろう。主人公たちとPigmanの3人の出会いが、悪戯にしては 込み入っている。話し相手がいないPigmanの弱みにつけ込んで、慈善団体の 物だと偽って10ドルをもらうということになる。私は読んでいてときどき、 Johnに 対してはそのあまりの自由奔放さについていけないと思ったが、まあ 友達の中 には、将来殺人者間違いなしのNortonのような人物もいることだ から(もち ろんこれはJohnの言葉であるから少しは割り引かなくてはならない が、書かれている内容から見たら既にその兆候は十分にあるようだ)、それか ら比べたら彼は邪心がない少年だというべきか。

家庭内でやすらぎを見つけられなかった2人はMr. Pigmanといると不思議に心 が落ちつく。Mr.Pigmanは最初妻はカリフォルニアの妹の所にいっていると話 していたが、どうやら少し前に妻は死んだらしい。2人がお互いに深く愛しあ っていたということに主人公たちは驚く。3人は孤独な魂がお互いに引かれる ように、一緒にいるとくつろぎを感じてくる。3人は一緒に動物園に行ったり する。Mr.Pigmanは毎日動物園に通っていて、ここのエピソードはなかなか重 要だと思うのだが、詳しく書くのは面倒くさいから省略。3人はデパートや、 家の中をローラースケートをはいて走り回ったり、ユーモアあふれる会話を交 わしたりなかなか楽しい時を過ごす。M r.Pigmanも急に若返ったというか、2 人を仲間と思っていたのだが、はりきりすぎで心臓発作で倒れる。

Pigmanが退院するかもしれないという日に、JohnとLorraineは、Pigmanの家で パーティを計画する。2人とも友達を自分の家に招待することが出来ない環境 にあったから、そのお返しの意味もあったのだろうが、多くの友達と一緒に Pigmanの家をめちゃくちゃにしてしまう。Pigmanが何よりも大事にしていた妻 の服をはじめ、豚の収集物も壊してしまうから、もちろん家に戻ってきたMr. Pignatiの驚き悲しみといったら・・・彼は心優しいから、怒り狂わないが、 さすがに2人の行動を若者にありがちなユーモア・ジョークとして片づけるこ とは出来ない。

JohnとLorraineは、お詫びもかねて、ようやく元気がないPigmanを動物園に連 れ出すのだが、Pigmanのお気に入りでこの世で最大の友と信じていたひひの Boboが死んでしまったことを知って、Pigmanは悲しみのあまりその場で死んで しまう。

私は大体こうした作品は苦手だ。Zindelの作品はヤングアダルト向けとはい え、共感がなかなか沸きおこらないような気もする。ユージーンは面白かった が、今まで読んだ他の作品の登場人物は苦手なタイプが多い。Zindelは死ん だはずのPigmanシリーズとしてThe Pigman Returnsという作品を書くと予告 している。この作品が書かれたのかどうか知らない。この感想を書きなが ら、同時 に読み始めたThe Pigman's Legacyがそうではないかと思うのだ が・・・

何故この作品が面白いのかよく分からないところがある。しかしあまり共感し ないと書きながらも、しばらくZindelを読んでみようと思っている。

1998-5-8

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4. Pigmanの遺産 by Paul Zindel

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*The Pigman's Legacy by Paul Zindel (A BANTAM STARFIRE BOOK)

ZindelのThe Pigmanの続編を読んでみた。これは内容的にいってもやはり前作 の最後の後書きで書いていたThe Pigman Returnsに当たると思う。

この続編は面白かった。比較的薄い本で最初は字が小さくて読みにくかったが、 後半は一気に盛り上がってきて夢中で読んだ。それにこの作品は、ストリーとい うか、主人公たちの考え方・行動はなかなか好ましいというか、彼等を一気 に好きになった。

多分、これは登場人物が、少ないからだとおもう。JohnとLorraineとMr. ColonelとDolly、それに犬のGusだけだ。本文でJohnやLorraineの親たちや、 友達、病院の医師・看護婦なども少しは出てくるが、彼等のことはほとんど 無視してもいい。

形式は前作と同じく、奇数章をJohnが、偶数章をLorraineが書くという構成に なっている。今回はその中で、お互いに対する想いを、本が出来上がるまでは 一部隠すという形を取っている。

2人はPigmanの死を契機に子供時代と決別したのだ。彼等は、Pigmanの死に責 任があると思っているが、それに悩むことで、精神的にも成長したようだ。そ れに彼等の親たちも彼等を理解しようと、いろいろ努力し始めている。16才 になったばかりの彼等が、ようやく大人たちの苦悩を理解し始めた。だから 彼等の不満・寂しさは残っているにせよ、家族に対する憎しみ・軽蔑の念は 大分薄らいでいる。この作品には、The Pigmanに見られた、私自身には理解不 能と思える言動は、Johnの場合を取ってもほとんどなかった。彼は相変わら ず嘘をつくことがうまいが、今回は反発を覚えるよりも、感心してしまっ た。

ストリーの展開はJohnとLorraineの2人が今は亡きPigmanの家を訪れるところ から始まる。驚くことにそこには人が住み着いていた。彼等は、それをPigman の亡霊だと思うが、実は自分の死期を予感して、しかも自分の家で死にたい と望んでいたMr. Colonelだった。この人は、昔はスウェーデンの地下鉄を設 計したり、現在も大きな博物館みたいな屋敷を持っている。そのなかには各 種の恐竜の壁画やら、貴重な物がいっぱいあるようだ。しかし現在はIRSの追 求を何より恐れている。かつての金持ちも税金未納が続き、現在は財政的に はほとんど破産者のようで、かつてのPigmanの家に侵入し、食べ物を買う金 もなく、diverticulosisの病気のためにその気力も無く、誰にも知られず死 ぬ寸前だった。その時JohnとLorraineと知り合ったというわけだ。設定が少 し無理があるかなとは思うが、年齢ははっきりしないが、最後にDollyと結婚 式を挙げるときに82歳以上となっていたようだから、まあこのへんは目をつ むっておこう。

JohnとLorraineは、Mr. ColonelにかつてのPigmanの面影を見る。それは自分 たちの両親には見られない優しさだったのか。ここでもまた愛に飢えた者同志 は交流を深くする。それにJohnたちの学校の食堂の清掃員であるDollyが加わ る。彼女はかつては結核サナトリウムの補助栄養士だったのだが、結核が少 なくなっていくにつれ、いわば職業的には降格という形になったわけだ。 Dolly は60才だが、ColonelもDollyも結婚歴なしという設定。

彼等4人はある日、Atlantic Cityを目指して遠出する。そこにはカジノがあ って、ColonelとDollyは大金を稼ぐ。ところが2人がその金をどのように使う かと楽しい話しをして過ごしていた間に、その金を預かったJohnはすべてギ ャ ンブルで無くしてしまう。それを知ってColonelとDollyは悲しそうにする が、それでもJohnを責めようとしない。両親とは大違いだ。夢破れて4人が Staten Islandに帰る途中、Colonelの様態が急変し、病院の緊急治療室に運ば れる。 そしてColonelのたっての願いで、ColonelとDollyはまさにColonelが 死ぬ直前に結婚式を挙げる。ギャンブル場から最後にかけては、私は一気に 読んだ。なかなか緊迫感がありました。

The Pigmanにもこの続編にも謎というか、人生のパズルというか、スフィンク スの謎みたいなパズルが載っている。The PigmanのはWife, Husband, Lover, Boatman,Assasinの5人が出てくるやつで、私もかつて流行した心理ゲームで 読んだことがある。この本で読んだときには驚いたが、どうやら源流はギリシ アにあるらしい。そしてこの本で紹介されているGame of Lifeも興味深かっ た。果たしてこうしたパズルが真理を言い当てているのかどうかは分からない が。

人生にとって、人は何をもっとも重要と考えるのか。どうもZindelの本は、若 者にこうした問いを投げかけているらしい。ユージーンでもインド人のマハ トマはシバ神への信仰を通して、人生とは何かということをいろいろと話し ていた。最後にJohnとLorraineはそれは愛だということを確信する。

Pigmanシリーズの2冊は若者と老人の交流を描いている。こうした作品が今で も人気があるのかどうかは分からないが、ここではアメリカの老人たちの寂し さとそしてまた潔さも書かれている。そして何よりも、individualismの厳し さ。

Zindelの作品で未読のはあと5冊手元にあるが、タイトルとカバーを見ると、 teens romanceのようで読むのに少し気が引ける。もちろん今まで読んだ3冊も 大きくいえばそうなのだが、これらはそれだけではない。しかしZindelの場 合、大体予想は裏切られているから、少なくとも後1冊は読んで見るつもり だ。

98-5-9

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