Weekly「今週の英語雑誌」 No.18


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Weekly 「今週の英語雑誌」  No.18  1997-12-19日 発行     

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みなさん、こんにちは。 Weekly 「今週の英語雑誌」No.18をお届けします。

今週も、最初に雑誌を見たときに思ったのとは違う記事の、感想を書くことに なりました。

今週は、記事の数が少ないです。5本です。私も、簡単な感想を書くのが楽な のですが、分量の問題と、内容の問題があります。あまり長く書かないように はしているのですが・・・理想的には8本から10本くらいというところでしょ うか。

それと今週は過半数を、と言っても3本ですが、Economistの記事が占めまし た。私はEconomistの記事はe-newsのサイトから読んでいます。本来の Economistのサイトでは、土曜日の発行日にUPされていたようでしたが、ここ は遅れて翌週の水曜日頃UPされるようです。だから12月13日号は17日にUPされ たのだと思います。私は昨日の16日朝にダウンしました。だから昨日から今日 にかけては少し頑張ったことになります。もう少し経済関係の記事も読みた い、これはいつものことなのですが、なかなか実行できません。

今年中に多分あと1号は発行できるようです。

1997-12-19

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目次
1. The Sunday Times 97-12-14
2. Us News    97-12-22
3. The Economist 97-12-13

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1. The Sunday Times 97-12-14

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*宇宙に神を求めて
Pope builds telescope to find God
Vatican seeks "the fingerprints of God" amid the chaos of the cosmos

ローマ法王と、イエズス会が地球上でもっとも強力な天文台の1つを作るとい う話です。場所はアリゾナ州のMount Graham。他の惑星に生命がいるのかどう かを探る目的のようです。そのために少なくとも300万ポンドを赤外線望遠鏡 に、200万ポンドをoptical systemに投資するようです。oprical systemとい うのは、望遠鏡の生命であるレンズのことでしょうか。今最終段階のテストを しているということですから、完成間近なようです。

この天文台はバチカンの天文台に属する天文学者が使用することになるようで す。ローマにあり、19世紀に作られたこの天文台は、大気汚染などで現在はそ の役目を果たしていないようです。10人の科学者から構成されているようです が、天文台完成の暁には20人になるとか。

責任者のGeorge Coyne神父によれば、宗教的な傾向はあるにせよ、天文台の仕 事は純然たる科学的なものだということです。神のキリストにおける顕現はあ らゆる人間活動に適用されるから、その中には天文学も当然含まれる、という ことです。しかしもちろん問題もある。

コペルニクスやガリレオの地動説をバチカンが弾劾したのは、周知の事実。何 百年かぶりに、地動説の正しさを宣言したのは、多分最近のことだったと思う のですが・・・こうした失敗を防ぐ意味あいもあるようですが、いまどき天動 説を信じている人はいるのかなーとも思います。しかしアメリカあたりには、 いそうだな。 (^^; なにしろ聖書に書かれている内容をそのまま絶対的真 実と信じて、それと矛盾する事実はすべて間違いとする人々が今でもいるよう ですから。

しかしそうした歴史的背景は別として、やはり神学的に与える影響の方が大き い。宇宙に生命はいるのか。特に知的生命体は?もしも天文台の研究成果がそ のことを証明したら、はたして原罪の観念は宇宙人にも適用されるのか。ある いは宇宙人をカトリックに改宗させるにはどうすればいいのか。どうもそうし たことが既に議論されているらしい。もしも意思の交流が出来るならば、過去 に新大陸などが発見されたときにそうしたように、宣教師を派遣することも考 えているようです。 (^o^) さすがは2000年近くヨーロッパの宗教の中心に あり続けたカトリックという感じもしますが、一方ではやはりこの発想そのも のに違和感を感じてしまいます。確かにここまで徹底して対策を練っていなけ ればいけないのかもしれませんが・・・

さらに古くからの宗教と科学の問題もある。例えば最近の理論の1つに、宇宙 には始まりもなければ終わりもないというのがあるようですが、そうした場合 に神が宇宙を創ったという教義はどうなるのか。私はここまで聖書の文言を、 そのままに取ったことはない。一言一句を事実として受け取る人は案外多いの ですね。まあ科学と宗教の議論は、なかなか噛み合わないと思いますが。

教会側も最近は柔軟になっているから、speculative theologyというのがある ようです。これはよく理解できないのですが、新しく発見された現象・事実は 神の指紋であり、それが複雑であり、微妙であればあるほど神の万能さを証明 するものだと言うのです。だからバチカンの天文学者がどんな事実を発見しよ うとも、信仰をゆるがせにするどころか、より強固にするというわけです。こ れはなかなかいい考えだな。 (^^;

ただ問題は、天文学ではなく生物学でしょうか。特に遺伝子学が発達して、人 間の行動のすべてを解明できるとしたら、罪の観念はどうなるのか。もし罪の 観念がなければ、宇宙にどんなものが存在しようとも、キリスト教の観念その ものがバラバラになる。たしかにこれは宗教を含めたより広い社会問題でもあ ると思います。

先週の金曜日、ロンドンの王立天文学会(? Royal Astronomical Society) は、地球の近くの4つの星に、惑星が存在することを発表したようです。他の 星に惑星が存在するなら、地球と同じ条件の惑星も存在する確率は高いでしょ う。そうすると人間型知的生命もいるかもしれない。

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2. Us News 97-12-22

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ジェファーソンの黒人の子孫
Clearing the heirs
we may soon know if Jefferson had black children

US Newsの12/22から興味深い記事です。12月16日の朝日新聞にも、この記事の 簡単な紹介が載っていました。このごろは、新聞などの元になっている記事 を、TIME/Newsweekも含めて、比較的簡単に読めるようになりましたね。

アメリカ独立宣言の起草者であり、第3代大統領であるThomas Jefferson。彼 に、黒人の子供がいたのかがまもなく判明する。そういえば、彼の奴隷所有者 としての私生活が暴露された本が話題になったのは、去年だったですか。この 話も含め、知る人ぞ知る、という感じだと思いますが、やはりアメリカ人には ショックなのでしょうか。

生前から彼が黒人の女奴隷、Sally Hemingsとの間に、数人の子供を設けてい たという噂はあったようです。彼は、そのことについて否定も肯定もせず、歴 史家はその真偽をずっと議論してきた。 Sally Hemingsの子孫は、Jefferson の子孫だと言うことを、口外することは出来ず、家庭内で連綿と伝承してき た。このことだけで黒人達にとっては、これの正しさは当然だということのよ うです。

白人だけからなる彼の子孫達はMonticello Association of the Descendants of Thomas Jeffersonを作り、一族が埋葬される墓地を管理し、誇り高く生き てきたのでしょう。だから高潔なJeffersonが黒人女奴隷を妊娠させたこと、 まして長い間愛人関係にあったことなどは信じられない。

一方自分たちがJeffersonの子孫だと信じる黒人達は、JeffersonとHemingsの 間に出来た最初の息子の名前を取ってThe Thomas Woodson Family Associationを結成します。これは1978年のことのようですから、それまでは 表だって自分たちがJeffersonの子孫だと言うことを主張できなかったのでし ょう。あちこちの子孫達が、自分たちの家庭の中で、ひっそりとその言い伝え を守り続けてきた。

しかし今ようやく科学的にどちらが正しいのかが、証明されようとしている。 DNA鑑定が出てきましたから。もっともこのDNA鑑定は最近まで、Jeffersonの 遺骨を発掘して、子孫だと主張する人々のDNAと比較することが考えられてい た。ところが最近のDNAの研究は、Jeffersonの子孫だと主張する白人グループ と黒人グループのDNAを比較することで、彼らの間に親戚関係があるかどうか が、解明できるところまで発達してきた。最近オックスフォードの科学者がそ の調査をするための、DNAサンプルを受け取った。数カ月以内にかなりの精度 で、JeffersonとHemingsの間に子供がいたのかどうかが分かる。

この噂は1802年のRichmond Recorderに早くも載っている。彼の大統領在職の 中のことですね。(1801‐9) 奴隷所有者が、奴隷の女性を妊娠させることは 珍しくなかったが、彼の場合は愛人関係にあったという疑いが濃いわけで、当 時としてはこれは考えられないことだった。彼が1826年に死んだとき、彼らの 間に出来たと思われていた5人の子供のうち2人が解放された。長子だとされる Thomas Woodsonは奴隷として登録されたことはなく、Jeffersonの死の数年前 にある白人家族と一緒に住むために、農場を離れていた。残り2人はrunaway slavesであった。この辺の扱いも気になるところです。

さらにJefferson自身の書いたものがある。直接は言っていないのですが、 1800年8月23日の家族構成として、45才の白人男性(彼自身)と10才から16才の 白人男性をあげている。ここであげられている少年がWoodsonだというわけで す。彼は1790年生まれ。その血に8分の1黒人の血が入っているだけの人は、白 人として認められていたということです。そうするとHemingsは黒人の血は4分 の1以下であったということになりますね。この段階で妻のMarthも一人息子も なくなっているようですし、一人息子は幼児の段階で死んでいるから、たしか にこの記述は意味を持ってくるかもしれません。

170年間、こうした伝説が正しいのかどうか、学者を悩まし続けてきたが、大 勢は噂に否定的だったようです。ところが最近そうした噂を信じるものが増え てきているようで、今度のような調査が行われることになったのでしょう。

今回の調査はJeffersonの子孫だと主張する2つのグループの中の18人のDNA鑑 定として行われる。しかも公正を期すために、それぞれのDNAには名前は書か れておらず番号だけ。しかも3つの研究所で、目的をあかさずに調査される。 調査結果は科学雑誌に発表されるまであかさない。なかなか厳正にやるようで す。

Jeffersonはなかなか複雑な人のようです。彼のことを書いた本の書評を読ん だことがありましたが、そう感じました。彼の思想や歴史観も残されたものだ けからは判断できないようなところがありました。しかし白人の中には、近い 祖先の中に黒人の血が混じっていない人はいるかもしれないが、どのアメリカ 黒人にも多かれ少なかれ白人の血が混じっているということは聞いたことがあ ります。

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3. The Economist 97-12-13

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1. 南アの不確定な未来
  An uncertain future

今週中に、マンデラがANCの議長職を退き、ムベキThabo Mbekiがあとを継ぐ。 マンデラは、1999年の総選挙までの16カ月間は、南アの大統領としてとどまる ものの表舞台から徐々に影響力を弱めていく。はたして強力でカリスマにみち たマンデラなき後の南アがどうなるのか。

アフリカなどでは、支配者の交代は、即、政情不安になることも多い。しかし 南アではその可能性は比較的弱い。だが人種宥和という、壮大な実権を成し遂 げたマンデラがいなくなったとき、その理想主義は破綻しないのか。経済的不 平等と黒人層の大きな失業率、高い犯罪率などは、Winnieなどの闘争的で人民 主義militants and populistsの政治家の勢力拡張を促さないだろうか。南 アのように分裂の可能性を含んでいる社会は、小さな失策も大きな混乱をもた らすきっかけとなりうる。

ムベキがANCの唯一の議長候補であることは幸いだった。少なくとも無用な混 乱は避けられる。彼にはマンデラの権威もカリスマも実力もない。彼は「人民 の大統領」にはなり得ない。彼は実務型の指導者であり、大衆に人気があり、 愛されるとは思えない。しかし彼は現在もマンデラの下で、経済政策などで は、政府を実質的に動かしている。だから政策の実質はほとんど変わらないだ ろう。この点で「マンデラ後」は既に始まっている。

しかしムベキははたして合理的な政策をとり続けて、海外の投資家の信頼をつ なぎ止めておけるのか。いざというときにANCの同盟者である共産主義者や労 働組合活動家の反対を押し切れるのか。ANCの政策決定は、コンセンサスを基 準においているから、どんな指導者も多数の支持なしに政策遂行は不可能だ。

マンデラは指導者として2つのの素質を持っていた。1つは彼の道義心の高さ。 もう1つが79才という年齢。アフリカの社会では年長者の発言は尊重される。 このへんはかつての日本とよく似ています。しかし55才のムベキにはどちらも 欠けている。彼は、これからそのどちらの資質をも備えなければいけない。だ がANCのなかで大きな勢力を持つ女性、若者、亡命者、組合活動家、共産主義 者たちをうまく指導できるだろうか。

Winnieが副議長になる可能性は薄いが、もしそうなったらムベキにとっては計 り知れない打撃になる。もしそうなったらムベキを初めとする穏健派は、ANC をうまく導けるのか。

もちろん党内問題をうまく処理したとしても、党外で彼が尊敬と愛情を求める ことは無理だろう。しかし情勢も変わっている。南アは政治の大激動期から、 経済的社会的再建の時代に入った。彼がマンデラの敷いた政策を実行し成果を あげれば、そんなに心配はない。大統領は国民に愛されなくとも、立派な指導 者になりうる。そうした考えを国民が持つようになれば、マンデラが大統領を 辞めても大丈夫だろう。

ANCの50回全国会議は既に始まっているはずです。結果はどうなったのかな。

(どうやら、Winnieは副議長には立候補せずまずは順調なスタートのようです)

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2. アメリカ小企業の繁栄の裏で(Economist)
Behind America's small-business success story
Despite its reputation, America often treats its small businesses at
least as shabbily as other countries do. Why do they keep growing?

アメリカの小企業対策は、必ずしも他国と比べて万全でないのに、何故アメリ カでは小企業が増えているのか。小企業というのは、零細企業といってもいい し、その中にはベンチャー企業の多くがこれにはいるのでしょうか。

この小企業というのはアメリカでは大分元気なようです。アメリカで新しく生 み出される雇用の3分の2が従業100人以下の企業のもの。昨年のベンチャー資 本投資額の37%が、操業開始の会社のためのもの。ヨーロッパでは12%だという ことです。アメリカの小企業は、規模的に見て世界で3位、つまりアメリカ・ 日本の次に位置するということです。

まずアメリカにおいては小企業といえどもなかなか大変なことが書かれていま す。

まずとにかく訴訟の危険に常にさらされている。5年前に解雇された元従業員 がある日弁護士を連れて会社に現れた話が出ています。彼はエジプト人の、あ まり仕事熱心でない保安係だったようですが、突然人種差別に基づく損害賠償 訴訟を起こしたようです。100万ドル請求だったのが、突然2万ドル請求になっ たようですから、どうもどこまで本気なのかどうか。しかしこれは当然訴えら れた以上、そのままにしておくわけにはいかない。大企業と違って弁護士を何 人も抱えているというわけにはいかないから、経営者本人がそうした話し合い をしなければならない。

セクハラやら、人種などの差別などに基づく訴訟やら、とにかくどんなことで 訴訟されるか分からない。あるシカゴの法律事務所は顧客に、クリスマスパー ティを開かないようにと助言した。a Chicago law firm urged its clientsto considering cancelling their Christmas parties・・・urgedとありますか ら、かなり強い表現ですね。セクハラから酒酔い運転、そうしたことで会社側 が裁判に巻き込まれる可能性があるからというわけですが、ここまでアメリカ の訴訟社会は来ているのでしょうか。

小企業の経営者の半数以上は年収5万ドル以下。普通の訴訟費用は10万ドル以 上かかるようですから、小企業の経営者は自分でそうした苦情処理に当たるこ とになる。現在では多くの企業がreferences(証明書, 推薦状)を出さない。あ とになって訴訟沙汰になるのを恐れてのことのようです。従業員を解雇すると きにはまず弁護士に相談する。

さらに健康保険の問題がある。日本やヨーロッパと違って、アメリカの場合民 間の健康保険に加入していますが、この負担が大きい。会社は従業員負担の割 合を徐々に高めているようです。小企業従業員の場合、保険料の3分の1負担位 になっているようです。しかしこの辺は、この記事だけからはよく分からな い。確かに会社負担の率は少し高い気がします。それと民間保険ということ で、そもそも保険料が高いのだろうと思います。

さらに政府の規制も大きい。これはちょっと意外でした。ある研究では20人以 下の従業員を抱える企業は、1992年に従業員1人あたり5,784ドルを規制対策費 に使っている。これは500人以上の企業の2倍の割合だそうです。大気汚染対策 などのようですから、日本のように小さなことにも許認可権を行政当局が握っ ているというのとは違うと思いますが、行政の規制は結構厳しい。例外規定は あるようですが、それも小企業には複雑すぎるようです。

この抜け道対策というか、大企業に有利な規定は税制にも見られるようです。 パパママショップのような、零細な企業は簡単なaudit hitsだということで す。これは税制の優遇措置等を知らないために、会計事務を簡単なものにして いるからでしょう。だから小企業はたとえ増税になっても単純な均一税率を支 持しているようです。このへんはかなり中小企業の不満が高まっている感じで すね。

そうした多くの不満があるにも関わらず、何故アメリカで中小企業が多いの か。これはなぜアメリカ人は新しく自分たちの企業を作ろうとするのか、とい うことにもつながるでしょうか。2つほど理由が挙げられているようです。

第1番目に制度的なもの。多くの不利益にも関わらず、アメリカでは新しい事 業を始めやすい。カリフォルニアとマサチュセッツだけでも、全ヨーロッパの ベンチャー資金より大きいようですから、開業資金が比較的借りやすい。それ に弾力的な労働市場。これは従業員からの訴訟増加とは、一見矛盾するようで すが、合理的な理由ならばよその国よりも比較的雇用・解雇が可能だというこ とでしょうか。あと事業に失敗しても不名誉にならないことや、もし事業が成 功したら開業者の得る利益率が大きいことが税制などで保証されていることな どもあるようです。

2番目は文化的なもの。アメリカ社会が実力主義社会だということで、才能を 発揮しやすいということです。ここで日本の「出る杭は打たれる」the nail that sticks up gets hammered downのことわざが紹介されていますが、 ヨーロッパもアメリカほど実力社会ではないでしょう。

こうしたものは長い年月かかって築き上げたもの。今アメリカ社会は必ずしも そうした意味で有利でない。もしかしたら旺盛な企業家精神の文化も、消えゆく かもしれないと記事は結んでいますが、これは必ずしも当たらないかもしれま せん。Internetの普及と共に、今までとは違った意味で、中小企業が増えるか もしれません。日本もそのようになっていく気がします。

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3. 麻薬組織の反撃
The mob fights back
Kidnapping and murder are the drug-dealer's weapon

コロンビア・メキシコの麻薬組織が殺人・誘拐等のなりふり構わぬ暴力手段 で、攻勢に出てきたようです。組織の存亡がかかっているからでしょう。

BETTER a grave in Colombia than a jail in the United States. アメリカ の刑務所に入るくらいなら、コロンビアで死んだ方がましだ。これはかつての メデリンMedelinの麻薬王、Pablo Escobarの言葉。1980年代に、自分たちのこ とをextraditableと呼んだ彼らは、アメリカへ引き渡されるのを避けるため に、車の爆破・殺人を繰り返した。extraditableは適訳があるかどうか知りま せんので、「引渡し該当者」くらいに訳しておきます。Escobarは自分の願い を実現した。1991年コロンビアの憲法は、国民の引き渡しを禁じた。その2年 後、彼は麻薬取締官(?anti drug forces)によって射殺された。

麻薬組織の記事は、以前にはよく読んだ記憶がありますが、最近は世界で続け ざまに大事件が起きているせいかあまり読まなくなりました。extraditionと いうのも、自国の刑事犯を外国に引き渡し要求するというのが、本来普通だと 思いますが、コロンビアの場合はアメリカの要求に応じて自国民を引き渡して いたのですね。最近ではフランスがIra Einhornを裁判にかけないことを決定 したとNewsweekの載っていました。これも多分アメリカは引き渡しを求めてい たと思いますが、このへんは国同士の力関係も左右するのでしょうか。

今や麻薬組織の勢力地図も変わってきているようです。かつてのMedelinか ら、ライバルのCaliへ、そしてメキシコの組織へ。アメリカはコロンビアとメ キシコの麻薬犯罪者達を、アメリカの裁判にかけたいようですが、麻薬組織の 側も激しい抵抗をしている。そのあらわれれが自分たちに反対するジャーナリ スト達をターゲットにした殺人・誘拐だというわけです。自分たちに不利な事 実を報道したり、厳しい取り締まりを求めるものには容赦ない制裁を取ってい るようです。

コロンビアでは今年既に7人のジャーナリストが殺された。ここ1カ月で3人。 これはコロンビアが新しく国民の外国引き渡しを認める法律を制定したことに 関係があるのでしょう。しかしこの法律は、過去の犯罪に対しては適用されな い。アメリカ政府には不満なようですが、これによって現在刑務所内にいる Caliの麻薬王達はアメリカで裁判は受けない。しかもこの法律は刑務所の混雑 を緩和するという名目の法案と引き替えだったような感じです。だから彼らの 1人は2年以内に釈放される可能性がある。麻薬組織の脅迫に屈した感じです。

メキシコはどうか。メキシコは政府・警察の方は、引き渡しなどを含めて真相 究明にあまり熱心でないようです。ここでも狙われているのは、ジャーナリス ト達。政府に没収された1トンのコカインが行方不明になった事実を報道した ジャーナリストは麻薬組織によって射殺された。先月にもTijuanaの週刊誌の 編集者が、やはり麻薬関係の報道で殺された。メキシコは麻薬取り締まりの最 高責任者が、麻薬組織から金をもらうのと引き替えに情報を流していた事実も ありました。あの人警察長官だったですか、詳しいことは忘れましたが。

しかしメキシコの場合麻薬組織は殺人者をアメリカから雇うという傾向がある ようです。国境を超えた犯罪組織の連携も、ますます深くなっているようで す。

さらに麻薬組織が反撃を強めているのは、金銭的な理由もある。コロンビア政 府は1年前に、通称Escobar法というのを制定したのですが、これによってたと え死者であっても、犯罪で利益を得たものは没収される。過去の犯罪を含めて ということになると、これは確かに効果があるでしょう。現金はもちろんのこ とですが、都市部・田舎の土地不動産が没収される可能性がある。だから名義 隠しを初めとして、いろんな手段を講じているようです。しかも没収された土 地を与えられた農民に対しては、脅迫と現実の殺人をもって脅している。10月 に土地を没収されそうになった麻薬王の一人は、部下に農作業をしようとして いた人々12人を殺させた。

この調子だと、アメリカや麻薬撲滅を願う人々にとって成果があがるのかどう かは、まだはっきりしません。記事は、「結局最後に笑うものはEscobarかも しれない」と結んでいます。なかなか簡単にはいきそうにないですね。

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