Weekly「今週の英語雑誌」 No.15


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Weekly 「今週の英語雑誌」  No.15  1997-11-27日 発行     

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みなさん、こんにちは。 Weekly 「今週の英語雑誌」No.15をお届けします。

もう少し早めに発行する予定でしたが、私が少し怠けて予想通りには行きませ んでした。まあ、しかし14号が11月20日発行ですから、Weeklyということから 云えば、これが正常でしょうか。

今週は今までとは違って、最初にau pair子守殺人事件の記事をまとめてみま した。Sunday Timesにも関連記事があります。こんなふうにして、雑誌ごとに ではなく項目ごとに読んでいくのもなかなか面白いですね。もしかしたら、次 の号もそうするかもしれません。

それと今回容量が大きくなりすぎたようです。まさかau pair関係がこんなに 大きくなるとは思っていませんでした。なるべく20KBに収めたいと思っている のですが、なかなか書いているときはわかりません。

1997-11-27

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目次 
1. 子守(au pair)殺人事件
2. TIME 1997-11-24
3. The Sunday Times 1997-11-23
4. 読者室

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1. 子守(au pair)殺人事件

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子守事件は、まだ確定はしていませんが、Louise Woodwardが釈放されたこと で、ほぼひと段落したようです。先週号のNews雑誌はNewsweekを除いて、この 事件が投げかけたものをそれぞれ違った角度から問いかけていました。少し遅 れましたが、US News, TIME, Sunday Timesが、どのようにこの騒ぎを見てい るのか、それらの感想を書いてみます。

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1. Au pair裁判総括 その1
Why did Mattew die?(US News, 97-11-24)

US Newsは、本当にLouiseは無罪なのかを、医学的証拠の面から掘り下げてい ます。

Hiller Zobel判事は、Mattew Eappenの死亡原因を次のように推定したようで す。8カ月のMattewは、以前に血液凝固の症状をおこしたことがあり、それが 直りかけていた。そこにLouiseがMattewを乱暴に取り扱ったため("rough" handling) 再出血し、彼の死の原因となった。これは殺人行為と云うよりも、 故殺行為だというわけで、Zobel判事は彼女を釈放したわけです。当然これ は、被告側の説明と同じですね。

では陪審の判断は間違いか。そうではない。Louiseが釈放された当日、児童虐 待を専門とする49人の小児科医が、この再出血理論を批判した。検察側の主張 するshaken baby syndromeこそがここ20年間の研究の定説であり、裁判であげ られた個々の事実をよく説明できる、ということです。陪審の判断の方が正し い、この記事はそういっているようです。

頭蓋骨骨折に関しては、弁護側は病院に収容される3〜4週間前のものと推定し た。多分落下か何かがあり、このときに骨折と最初の出血が起きたのだろうと いうわけです。だからLouiseにはMattew死亡の責任はない。もちろんviolent ではないが、roughにMattewを揺さぶったことで、再出血をもたらしたことは 認めるが・・・、という主張ですね。

だが多くの小児科の意見はこれとは違う。まず頭蓋骨骨折はいつ発生したのか を判定することは難しい。しかし大事なことは、事件発生日の2月4日にMattew を昏睡に陥らせた損傷は大規模で重大だった。これは大量の出血が起こり、そ の結果脳の膨張をもたらし、重要器官の停止を招いたということのようです。 多くの専門家によれば、最初のとき脳膨張を伴う大量出血の結果昏睡に陥り、 さらにMattewがそうであったように3週間の正常期間後、ほんのroughnessな行 為で症状を悪化させ死に至らしめることはあり得ない、ということです。もし かりに再出血があったとしても、8カ月の幼児を死に至らせるまでにはならない。 Mattewを死亡させた脳損傷は、ただのrough handlingといえるものではなく、 violentなものであったと考えるのが自然であり、激しい揺さぶりであり、衝撃 であったと考えられる。

Mattewが運び込まれたとき、目の充血があったことの説明はどうか。これこそ shaken baby syndromeに特有の症状であり、75%から90%の割合で見られる。検 察側眼科医はこう証言したようですが、弁護側は何故か眼科医の証人を申請し なかった。

首に傷がなかったことの説明はどうするか。弁護側は、脳の静脈が切れるほど の衝撃が加えられたのならば、当然首や背中にもなんらかの痕跡があるはず だ、と主張。しかしこれも専門家の話では、そうしたことはまれにしか起こら ないということです。

真相は明らかにならないかもしれないが、証拠を見る限りMattewの死亡は shaken baby syndromeの典型的な例だと云うことで一致するようです。そして shaken baby syndromeの原因としては、自制心をなくして憤激した父親が引き 起こすのが6割、その次に10代のベビーシッターによって起こされる割合が高 いとのことです。

だからUS Newsのこの記事ははっきりとは書いていませんが、Louise Woodward は有罪、Zobel判事の判断は間違い、と云っていることになります。

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2. Au pair裁判総括 その2
  ONE MOTHER'S STORY (TIME 97-11-24)
"HOW DID LOUISE BECOME THE HERO AND I BECOME THE VILLAIN?"

子守事件をTIMEは、どのようなものと判断したのか。11月17日号でも死亡した Mattewの両親に比較的同情的だったTIMEですが、11月24日号は母親のDeborah Eappenとのインタビュー記事と、Daniel Kadilacの記事からなっています。こ こではInterview記事から。

タイトルにもなっている Deborahの叫びは当然でしょう。何故Louiseが英雄に なって、被害者が悪漢になるのか。すくなくとも、これは逆ではないのか。ま さかとは思いますが、ここには人種の影はないですよね。どうも最近人種問題 を扱った記事ばかり読んでいるから、Mattewの両親が、父親がアフリカ系、母 親が白人といういわば異人種間のカップルだと云うことが少し気になりました。 関連記事でも、これに触れていたものはどこにもありませんでしたから、思い 過ごしかもしれませんが。

何故、人は善悪をつけたがるのか。ほとんどの人は、絶対的善でも絶対的悪の どちらでもない中間的存在と思うけれど、人の心はすっきりしないと安心しな いのでしょうか。Eappen夫妻は数週間のマスメディア報道の狂乱の中で、家に も帰れないらしい。(もちろん現在の時点でどうなっているかは不明です) 車で 移動して暮らしていたらしい。LouiseはMattewを奪い、判事は正義を奪った。 児童虐待が罰せられないのなら、子供は消耗品とでも云うのか。Deborahのいろ いろな嘆き怒りはもっともです。しかしその嘆きの詳細については省略します。

ここで分かることだけを書いておきます。Mattewの腕は折れていたらしい。こ のようなことを引き起こす事故はなかった。ということは、ここも被告側は争 っていたということになりますか。最初はLouiseを信じようとしたらしいです が、どのようにしても彼女の責任でなければ説明がつかない事件ということの ようですね。Deborahも医者ですから、そのへんは分かるのでしょうか。Louise が嘘をつき、社会全体がその嘘を拠り所に自分を攻撃する。これは当人にとって 不合理であるだけに不気味な恐怖かもしれませんね。

Louiseの人格がDeborahの怒りと不信をさらに大きくした。Louiseは、何故自 分の過失を認めなかったのか。「どうして私をこんな目にあわせるの。私はま だ19才よ」それに対してDeborahは、同じ言葉をLouiseにたたきつける。「何 故Mattewをあんな目にあわせたの。彼はたったの8カ月半だったのよ」 (^^; さらに、彼女が豪華なホテルを提供されたことも気にくわない。Louiseに とって、今こそ人生最大の幸福の時だというわけです。「どうして凶悪犯にそ んなチャンスが与えられるの」

夫妻はかなりの手紙をもらったようですが、hate mailは1%位だったとか。と いうことは、少なくとも数百通単位のメールを受け取っていることになります し、そのほとんどは彼女たちに同情的だったようです。しかしマスメディアの 攻勢が、かなりこたえているらしい。

小児眼科医としてのfellowshipの地位を断ってまでも、一時子供の世話に専念 しようとしていた彼女。その彼女が資格がないau pairを雇ったことまでも、 批判されているようです。悪と決めつければ、マスメディアも世間もその人に 関係のあることはどんなことでも悪になるらしい。 (^^;

彼女が唯一後悔していることは、Louiseを首にしなかったこと。子供は嫌いと いうことを直接、Louiseの口から聞いているのですから、少しは悩んだはずで すから、このことを今後悔しているかもしれません。

まあ、当事者の一方の言い分を聞いていれば当然その人の云っていることが正 しく聞こえます。だからLouiseの弁明を聞けば、今度はLouiseの無実を信じる かもしれません。 (^^; しかし今の所は、Deborahの方が正しいと私も思い ます。

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3. Au pair裁判総括 その3
  Prosecutors ready to let Louise go home (The Sunday Times 97-11-16)
   by Tony Allen-Mills

au pair裁判をThe Sunday Timesはどう取り扱ったか。少し前の11/16付けの記 事ですが、感想を書いてみます。

この事件を検察官の側から見たらどう映るのか。今後の検察の方針としては、 もしも将来の裁判の審理に差し支えないならば、Louiseはイギリスに帰っても よいという立場です。必要に応じて、Loiseが裁判に出席することを弁護側が保 証してくれれば、それに異論は唱えないと云うことですね。Zobel判事はマサ チューセッツに残ることを条件としているようですが、どうなるのでしょう か。

それはともかくこの事件を担当した1人、Martha Coakley副検事にはどのよう に映るのか。名うての刑事弁護士、Barry Scheckとわたり合った彼女は最初 の勝利をZobel判事によって覆される。やはりこれは個人的にも専門家として もショックだったようです。確かに陪審の評決を覆すことは、可能性としては あると私も読みましたが、かなり珍しいことのようですから。Zobel判事自身 は、過去にもそうしたことをしていたようですし、可能性としては残されてい るということでしたが、案外あっけなく決まりましたからね。

Coakley副検事は、事件そのものには児童虐待の専門家として、なんら疑問は 感じなかった。Louiseの犯行は明らかだった。ただ意外だったのが、国際的 反響の大きさだったようです。これについてはある黒人コラムニストも次のよ うに書いているようです。「もしもLouiseが、白人の子供を殺したとして告発 されている黒人女性だったら、大衆はLoiseを裁判所からそのまま電気いすに 直行させよ、と要求しただろう」

焦点は法律と科学の問題でした。はたしてMattewが数週間前に、致命的な脳 損傷をおこしていたのかどうか。やはりSunday Timesも弁護側の主張は、たわ ごとだとする専門家の意見を載せています。ここでは50人のchild specialist が、被告・弁護側の主張を批判したと載っていますが、おそらくこれはUS Newsでも読んだ49人の児童虐待の専門家のことだろうと思います。これに対し てはLouiseの弁護士の1人は、彼らをchild abuse cultと呼んで、科学ではな くイデオロギーに支配されていると批判したようですが・・・

何故疑いのないものに見えるこの犯罪をイギリス人が騒ぐのか、Coakleyには 理解できない。その原因を彼女はまず犯罪一般に対しては次のように説明して います。

By and large, people expect criminals to look like criminals, and lots of times they do. People who are crack addicts and bank robbers look like people who would do those things.

これはもちろんあとが続くのですが、かなりの偏見が入っているような 気もします。悪人らしい人は悪人である。善人のように見える人は、犯罪をお こさない。確かにTVドラマの世界では通じるかもしれませんが、実生活でもこ うしたことが決定的に言えるのでしょうか。検察官の発言だけにちょっと驚き でした。

まあ、しかし彼女の云いたいことの要点は次のことです。
"But child abuse and domestic violence are very different. People who look like you and me and the mailman, the priest and the baby- sitter hurt and kill kids. It makes your world pretty unsafe, doesn't it, when you can't figure out where evil lurks?"

児童虐待とか、家庭内暴力をおこす人は普通の人だ。そのことが人々を不安に させる。どこに悪が潜んでいるか分からないとき、人々はおそれを感じるものら しい。私は家庭内の犯罪に限らず、犯罪は社会的地位や貧富に関わらず、もち ろん美男美女であろうとそうでなかろうと、起こるものだと云うことは当たり 前と思っていたのですが、どうもこれを読むと自信が持てなくなった。(^o^) 大体私は「・・・を愛している人だから、そんなことをするはずがない」と いう式の発想も苦手なのですが、こうしたことも案外社会的評判の上では大き いのかもしれませんね。少し驚きでした。

しかしとにかくLouiseの外観には、この女性検事はだまされなかったというこ とでしょうか。Louiseは10年単位の判決を受けるべきだし、きちんと服役しな ければいけない。この点に関しては、彼女は自信があるようです。

彼女の唯一の心配は別のところにある。それは25年間もイギリスに住んでいる 姉のもとを休暇中に訪ねるのが、今までの楽しみだったのが、この事件に関与 していることで、これからも快適なイギリス旅行が出来るかということのよう です。

しかし何故イギリスは、普通の殺人事件に対してサウジのでも、アメリカので もヒステリックな叫びをあげるのでしょうか。確かに血の気が高まっていると しか云いようがない。まあさすがにSunday Timesは冷静でしたが。(^o^)

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2. TIME 1997-11-24 (US版)

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*悲劇を乗り越えて
A TRIUMPH OF WILL
A QUARTER-CENTURY AFTER A TERRIBLE TRAGEDY, MARSHALL UNIVERSITY HAS THE WINNINGEST FOOTBALL TEAM OF THE 1990S

ある大学の現在の栄光の影には、過去の悲劇があったという記事です。アメリ カの大学のフットボールのことをよく知りませんので、知識不足のためとんで もないまちがいをおかすかもしれません。登場人物が多すぎるのです。

West VirginiaのHuntingtonにあるMarshall大学は、今そのフットボールチー ムthe Thundering Herdで有名です。ここはRust Belt, Bible Beltのどちらで もあるのですね。Rust Beltは、重工業地帯。Bible Beltは、もっと南部かと 思っていました。

Huntingtonは人口60000人の小都市ですが、自分たちの町の大学フットボール チームのポスターや、帽子シャツがあふれている。去年は1-AAで、15戦全勝だ ったようで、大学フットボール100年目の今年は、Division 1でプレーしたよう です。これは長い歴史で始めてのことのようですから、画期的なことだった。 今年の成績は11勝2敗。Mid-American Conference(MAC)の優勝チームだったよう です。かつてMACから追われた経験があるだけに喜びもひとしおだった。MACと Division 1の関係が少し不明です。アメリカの大学フットボールの組織は、私 にはよく分かりません。

しかしマーシャル大学には忘れようにも忘れられない悲劇の歴史がある。1970 年11月14日に、75人が死んだ飛行機事故があった。チャーター機だったよう で、75人全員死亡したのですが、そのほとんどが Thundering Herd関係者でし た。37人の選手、25人のサポーター、8人のコーチ、そして5人の乗務員。アメ リカのスポーツ史上最大の悲劇です。マーシャル大学にとっては、フットボー ル関係者は、大学の責任者も含めてほとんどいなくなった。

90年代に入って最大の勝率をもつマーシャル大学ですが、70年代は最低の勝率 だった。事故の後遺症もあって、10年間で22勝しかできなかった。12連敗が1 度、10連敗が2度。フットボールチームを廃部にせよとの声もあった。しかし もし廃部していたら、75人の死が無意味になるということで、存続してきたの でしょう。

このチームは、70年の事故以前にも決して強いチームではなかった。67年と68 年は全敗だったようですし、このときに新入部員の募集に当たってスキャンダ ルを起こし、MACから追放されたようです。

あの日70年の11月4日は東カロライナで、惜しい試合を負けて3勝6敗になっ た。しかし選手達の心は、以前のことを考えると、そんなに悪い気分ではなか ったようです。雨が降って風が強い日でした。着陸寸前に、飛行機が木の先端 に触れ、アパラチアの山腹に激突。こうして75人全員が死亡。

これが地域社会に与えた衝撃は大きかった。60000人の小都市。そして大学関 係者が9000人を占めています。選手・コーチが、ほとんど死亡したのを始め、 サポーター達には4人の医師、市会議員、州議員、さらに数名の有力な実業家 など町の実力者が多かった。さらに体育理事などの大学関係者。こうした人が 一度になくなったのですから、確かにそのショックの大きさは想像できます。 選手のうち4人は北のニュージャージー出身だったようです。

もちろん、このニュースが個々の関係者に与えた衝撃はさらに大きい。いろ んな人間ドラマが紹介されていますが、これは割愛します。

チーム再建の課題は、飛行機に乗らず陸路で家路についた補助コーチの William Dawsonの手にゆだねられた。彼も飛行機に乗るはずだったのが、直前 になって取りやめた。選手の中では、けがのため遠征に参加しなかったレギュ ラーの数名が残っていた。そしてNCAA全米大学競技会は、特例として2カ月前 に入学したばかりの新入生の選手登録を認めた。当時のニクソン大統領も、激 励の言葉を送った。

71年には奇跡的にも2勝をあげたようです。ところがさすがにそのあと低迷す る。しかし1979年に、Sonny Randleがきてチームを活性化する。彼はthe great NFL receiverとあります。有名な人かもしれません。5年間で12勝42敗 の成績をあげているようです。あまりよくなっていない気もしますが、これが 将来の布石になった。1984年に、チームは20年ぶりに勝ち越し、それからHerd はずっと負け越しがない。92年には、Division 1-AAで優勝。多分大リーグと 同じで、これはDivision 1の下級リーグなのでしょう。

生き残ったDawsonコーチの苦悩を始め、遺族は今でもあの悲劇を忘れることが 出来ない人が多い。しかし遺族同士の出会いと、連帯も一部ではある。父親を 失ったもの同士の恋と結婚もあった。息子の死から立ち直れなかった父親もい た。今でも毎晩亡き息子からの母の日のカードを見る母親もいる。そのカード には、マーシャル大学のキャンパスにある噴水の絵。毎日流れる噴水のように、 彼女の息子の思い出も、また日々新たなものとなる。

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3. The Sunday Times 1997-11-23 

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1. もう1つの子守事件
Black Louise' case ignites justice row
Woodward's 'sympathetic' treatment rekindles interest in poor black girl jailed for 25 years

The Sunday Times 11/23のWorldの記事からです。Louise Woodwardの事件の各 誌の反応と読み比べをして下さい。 (^^;

これは、Louise Woodwardと、同じような事件で、わずか11才の少女が25年の 刑の判決を受けて、現在服役中だという記事です。それにしても、アメリカは すごい。11才であろうと、たとえ不十分な裁判であろうと、25年の刑を言い渡 して収容するのですね。日本とは大いに違う。

この事件も数週間マスメディアに話題を提供したようですが、少女の支持者か らの抗議もむなしく判決は確定したようです。ここで重要な違いはヒロインが 19才の白人のイギリス人少女ではなく、11才の貧しい黒人の少女だったという こと。舞台はテキサスのオースチン。彼女の名前は、Lacresha Murray。物理 的に危害を加えたという証拠も、証人もいない。それでも判決は執行された。 判決は確定しているようですが、Louise裁判のあと、弁護側は控訴というか 裁判やり直しを求めているようですが、どうなるのでしょうか。

Lacreshaは、祖父母と一緒に住んでいた。祖父母は7人の子供を養子として育 てていたようです。そのうちの3人がLacreshaの実の兄弟siblingです。父親母 親のことは、記事には書かれていません。もしかしたらこの7人は祖父母にと っては、Lacreshaがそうであるように、全くの他人ではないのかもしれませ ん。とにかく祖父母は貧困地区で、保育所みたいなものを開いて同じように貧 しい黒人の子供たちの世話をしていたようです。

1996年5月24日に祖母が外出していた。祖父は重いpolioにかかっているようで すから、多分普段は祖母が子供たちの世話をしていたのだろうと思います。家 には12人の子供が残された。5人くらいよその子供を預かっていたことになり ますね。一番幼いのが5カ月、そして一番年上なのは記事には書いていないの ですが、多分11才のLacreshaだったのではないでしょうか。留守の間は彼女が 子供のめんどうを見ていたようですから。

その朝2才になるJayla Beltonが、継父に連れてこられたとき既に様子がおか しかった。祖父や近所の人たちの証言などによっても、Jaylaは病気のようだ った。汗ばみ、吐いていて、腹を抑えて(? holding her side)いた。午後にな ると、奇妙な息づかいbreathing funnyをしていた。Lacreshaは、Jaylaを祖父 のところに連れていき、Jaylaはすぐに病院に連れて行かれるのですが、死んで しまったのですね。

検視報告は次のようでした。An autopsy found Jayla had been killed "by a massive blunt injury to the abdomen with ruptured liver". She also had four broken ribs and bruising.肝臓破裂するほどの暴力が腹部に加えら れた。ろっ骨も4本折れていた。

5日後にLacreshaの取り調べがあり、警察発表では、取り調べ開始2時間半後 に、彼女は偶然にJaylaを落とし蹴ったことを認めたということになります。 翌日Lacreshaは殺人罪capital murderで、起訴されます。起訴後すぐに彼女の 名前と写真が地元紙に載ります。少年少女がこうした扱いを受けるのはさすが にアメリカでも珍しいようです。

地区検事は数多くのインタビューで「現在全国に蔓延している子供による子供 の殺人はオースチンでも例外ではない」と、語っています。これにも裏があるよ うで、地区検事は1976年以来初めて対抗相手がでる再選を控えていたようで、 この事件をアピール材料にした感じもします。だから急いで1996年8月に裁判 に持ち込んだ。

しかもこの裁判が何とも奇妙なものです。Lacreshaの弁護人はinexperienced public defenderとあります。多分正式な弁護士ではない?これも日本では考 えられない。しかも資金不足で医学的専門家の証言を得ることが出来なかっ た。証拠はLacreshaの自白だけという裁判だったから、まさか有罪になること はあるまいと思っていたら過失殺人罪negligent homicide(これは過失致死と は違うと思います。刑が重すぎる)で20年の刑。

さすがに判事は裁判のいい加減さにあきれたのか、裁判のやり直しを命じま す。今度はLacresha側も、弁護士数人をつけて、もちろん専門家やその他の証 人尋問もしたようですし、万全の体制で臨みます。今年の2月に判決がでたわ けですが、なんと判決は更に重い25年。このときLacreshaは12才になっていま した。Loise Woodwardが、無垢と、か弱さと繊細さのイメージで同情を引き起 こしたのに対し、Lacreshaは貧困と無知のイメージで見られたのでしょうか。 それにしても、検察が控訴したとは思われませんが、何故判決が重くなるので しょうか。

検事側の反応は冷淡です。「マサチューセッツに住んでいなくて幸せだ。かの 地では赤ん坊殺しが釈放されるんだから」

アメリカという国の矛盾をこの事件は象徴しているのかもしれません。それと 素人陪審の欠点が極端な形で現れることも。長所と短所はお互いに絡み合っ ているとはいえ、やはりこの事件と日本での事件を比べてみたとき、あまりに も落差が大きすぎる、信じられないというのが正直な感想です。

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2. 黒人市長、KKKの巣窟を征服
  Black mayor triumphs in lair of the Ku Klux Klan dragon

Sunday Timesは、WORLDの記事12個は一応全部読んだのですが、2番目に感想を 書くのは1番目に選んだのとは、一見反対の内容に見える記事です。

かつてKu Klux Klanの本拠地だった場所で町長になった黒人ビジネスマンの話です。

ジョージア州、Stone MountainはKKKの寺院として知られているようです。ア トランタの東15マイルの地にあるこの岩山は、花崗岩に馬に乗った南軍の英雄 達のレリーフが描かれているとか。そしてこの地で過去60年間、KKKのメンバ ー達は自分たちの秘密儀式を執り行っていたようです。

そしてこの山がある町も同じStone Mountainの名前で呼ばれているのですが、 ここは全国的に悪名高いKKKのリーダーが3年間町長を務めた町でもあるようで す。James VenableはKKKのNational Knightsの前imperial grand dragon 。定 訳はよく分からないのでそのままにしておきます。とにかくKKKの最高指導者 の1人であったことは確かなようです。彼は4年前に、91才でなくなるのです が、自分の私兵klan armyを持っていたようですし、niggersとかiberal pinko communist typesとか怒鳴り散らすのが常だったようです。

しかし白人至上主義の象徴ともいうべき彼の家が、新しく町長になった黒人ビ ジネスマンChuck Burrisによって買い取られた。彼が町長に選ばれたというこ とは、強力な黒人勢力を誇る南部でも画期的なようです。Stone Mountainの歴 史においては町長はおろか、今まで唯一の黒人政治家だということです。それ ほどこのJames Venableは有名だったし、その影響力もStone Mountainsの町に 深く根をおろしていた。

町の人口は6500人、白人と黒人が半々ということのようです。この勢力図から 見ると、黒人も議員は今まで出していても当然だと思うのですが、どうなので しょうか。とにかくBurrisは、黒人ばかりではなく白人からも一部支持を得 て、今月はじめの町長選に勝った。人種ではなく、仕事が出来るかどうかが選 挙民の選択の基準になってきたようです。しかし町長職の給料は、月300ドル のようです。しかも町長の仕事はパートタイムで、本業のコンピューターソフ トウェアのビジネスの方は今まで同様続けるらしい。こんなことがアメリカで は許されるのでしょうか。

毎年開かれていたKKKの年次総会はどうやら1991年に禁止されたようです。し かしここが今でもジョージア州でもっとも、人種問題が複雑な地であることに は変わりはないらしい。南軍の熱狂的なフアンはやはり毎年何千人も集まって くる。これは直接KKKと関係があるのかどうかは分かりません。

Burrisにいわせれば、伝えられるほど人種対立は激しくなかったということで す。彼はニューオリオンズで生まれ、ルイジアナで育ち、10年前にStone Mountainsに移ってきた。1991年彼が議員に立候補したときには、Venableはま だ生きていた。そのころはVenableは病気がちだったようで、人種差別の元気 もなくなっていたようです。Burrisによれば、VenableはBurrisに投票してく れると云ったそうです。(^o^) 昔Goldwaterとかいう極右の知事がいたけれど も、彼も年老いてからは穏やかになった。どうも政治家は、本当に人種主義者 なのかどうか分からないところもある。建て前として、人種主義を使っている のかもしれないし、あるいは年を経ると共に考えが変わるのか、この辺もよく 分かりません。

とにかくVenableの住んでいた家は、彼の死後売りに出された。そしていろい ろありますが、結局Burrisがその家を購入した。だから彼が現在住んでいる家 の隣にはVenableの姉が住んでいるし、通りを隔てたところにはその姪が住ん でいる。新しい家に移ったからといって、別に人種差別的なことを受けたこと はなく、大いに気に入っているようです。

もちろんBurrisも自分が選挙で勝ったからといって、南部の人種差別が無くな ったとは思っていないようです。しかし新しい時代が始まっていることについ ては自信がある。いつの日か3代目か4代目の黒人町長が選ばれ、またヒスパニ ックやアジア系の町長が誕生したときこそ、本当の変化が起きた時だという思 いのようです。そして案外そうした時代は早く来るのかもしれません。

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3. ウィニー・マンデラの裁判
  Winnie's old friends go for kill in court
  Tomorrow Xholisa Falati will accuse her former best friend of torture

Winnieの裁判がいよいよ始まりました。17人の失踪・殺人に対して、Winnie Mandelaは、はたして責任があるのか。証人に立つのは、かつての親友達。か れらの証言内容は、以前にも書きましたから、具体的なこととは省略します。

Winnieの罪状は外から見ていたら、明らかなように見えるのですが、不思議な ことに彼女に対する支持も根強いのですね。どうしようもない嘘つきであっ て、野蛮で自己中心的で良心もないように見える彼女だが、庶民レベルの人気 が不思議と強い。このへんはマンデラを中心とするANCのリーダーとの間に深 い溝があるようです。彼女が常軌を逸した行動を採ったのも、すべてアパルト ヘイトが原因だから、彼女に罪はない。少なくとも過去のことは許してやるべ きだと云うことのようです。将来の指導者としての彼女への期待はいぜん強 い。このままでは本当に来月ANCの副議長になるかもしれません。

しかしANC指導部の彼女に対する不信・反感は強い。マンデラ大統領自身が、 ウィニーが権力を握ったら、外国資本が国外に流れると云うことを恐れている ようです。だからこの裁判を通して、どうにかして彼女の復権を防がなければ ならない。

彼女の悪事を知るものが、次から次に証言台に立つようです。彼女を唯一支持 するのは、有力な人の中では愛人と云われるDali Mopfu。Winnieは元気そのも ののようです。「人々が私に副議長になってもらいたいのかどうかは、知らな いわ。しかし私が副議長になるということ、これは当然のことよ」 いやは や、本当にここまで自信満々になれるのですね。

私はこの記事を読んでDianaとWinnieの姿が、二重写しになりました。あまり 共通性はないようにも思いますが、彼女たちの人気は一体どうやったら説明で きるのか、さっぱり分からないところが、私には謎で共通なところです。  (^^;

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4. 読者室

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Weekly No.14の記事の中のB-29のことについて原さんから、詳しく教えて頂き ました。NIFTYの方でも教えていただいたのですが、ここで原さんの解説を簡単 に紹介させていただきます。

それによるとB-29のBは、 BOEING社のBではなく、bomber爆撃機のBだろうという ことでした。他にも、F(fighter戦闘機)、A(attacker攻撃機)、C(cargo輸 送機)などが有名なようで、それぞれF-14とか、A-10とか、C-141などがある ようです。ほかににY、E、P、V、Tなどは、それぞれ作機、電子戦機、哨戒機、垂 直離着陸機、練習機などを表すと云うことです。さらにF/A−18は戦闘攻撃機、 EA−6は電子攻撃機となっているようです。このへんは見当もつきませんでした。

こうした軍事用語・兵器などの知識が少なくて、具体的なイメージがわかないこ とがよくあります。私はB-29の解説を確かに新聞で読んで、記憶にとどめたと思 っていたのですが、どうやら勘違いしていたようです。考えてみれば、軍の戦闘 機に民間会社の名前をつけるはずがありません。この思い違いのすりこみは、ロ ッキード事件の時の報道だったと思います。妙に感心して、納得したことを記憶 していますから。

しかし軍の組織やら、兵器などはいくら読んでもすぐ忘れてしまいます。こうし たのは、本当はメモでもとっておかなくてはいけないのでしょうが、元来が怠け 者ですから、また忘れてしまうかもしれません。

原さん、どうもありがとうございました。

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