Weekly「今週の英語雑誌」 No.12


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Weekly 「今週の英語雑誌」  No.12  1997-11-11日 発行     

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みなさん、こんにちは。Weekly 「今週の英語雑誌」No.12を、お届けします。

今週は、久しぶりにEconomistの記事を読んでみました。Economistは私にとって 気になる雑誌ですが、時間がなかったり、時間があるときは私の読みたい記事が 少なかったりして今まではなかなか読めませんでした。7月8月ころは、結構読ん でいたのですが、記事が長いことが多く、またなかなか深く分析しているので、 最後まで読むのに疲れて感想を書くのが億劫になることも多いのです。本当は毎 週1つは、読みたいのですが。

Economistの記事は、e-newというところのサイトから私はダウンしています。 Economistのサイトの方がUpされるのは大分早いのですが、私はこちらが気 に入っています。以前は本家のEconomistの方が土曜日、e-newsの方が翌週の水 曜日くらいでした。最近はどうなっているのか、確認していません。

それと今週は南アフリカの記事が3つと、半分を占めました。少し偏ったかなと いう気がしますが、これはそのときの勢いというか、ある記事を読んで興味を 持てば、つい関連記事が読みたくなるということで、お許しください。

しかし毎週、同じ雑誌を同じペースで読んでいくということはなかなか難しい ですね。

1997-11-11 YUKI

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目次 
1. The Sunday Times 97-11-2
2. The Economist 97-11-1
3. The Sunday Times 97-11-9

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1. The Sunday Times 97-11-2

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女性と髪の毛(ST 11/2)
* Stress makes working women lose their hair

The Sunday TimesのBritainに、少し変わった記事があるので紹介しておきます。

髪の毛が薄くなったり、禿げたりするのは男性だけではない。男性と競争して 頑張っている女性の中には、男性同様のストレスを受けている人もいるから、 そうした女性は男性同様脱毛症に悩まされているるという記事です。

どうやら髪の毛は、男性ホルモンの testosterone が、多くなると薄くなるよ うですが、ストレスが高まるとこのホルモンが増えるようです。だからキャリ ア指向の女性の場合、男性と同様な心配に直面している人がでてきている。

女性が職場で、よりaggressive and competitiveな労働スタイルを取るにつれ て、本来女性には少ないはずのテストステロンが増える傾向にある。ある毛髪 の専門家trichologistによれば、女性の30%が髪が薄くなった経験があるとの こと。テストステロンの働きを抑えれば、髪の毛はもう1度生えてくるようで す。ジャーナリズム、医学、弁護士、パイロットなどの専門的職業で、かつて 男性中心と考えられていた分野で、成功を求めている女性は、男性以上の努力 が要求されるからでしょう。体に対する負担も大きい。その結果ストレスも高 まり、円形脱毛症などが、起きるとのこと。スーパーウーマンにとっては、要 注意のようです。

ストレスが多いと脱毛症になるというのは、よく聞きます。今後女性の更なる 社会進出が進むにつれて、こうした悩みを抱える女性も、男性並になるかもし れません。

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2. The Economist 97-11-1 

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1. 悪夢と許しと(Economist 11/1)
Of memory and forgiveness

久しぶりにEconomistの記事の、感想です。

アパルトヘイトによる白人支配を終わらせた南アフリカ。彼らは、過去をどの ように克服し、将来といかに向き合おうとしているのか。これはそのレポート です。Economistの記事ですから、長い。かなり短くして、私の感想を中心に 書きましたが、それでも結構長くなりました。

エピソードがいくつか紹介されていますが、まずはJeffery Benzienの場合を 例にとります。彼は警察官として、今でも勤務していますが、白人政権下、 wet bagと呼ばれる拷問方法を考案した。被疑者をうつ伏せにして、手錠を後 ろ手にかけ、Benzien(取調官)がその背中にすわり、被疑者の顔に濡れた布の 袋をかぶせ、それを首の回りでねじるというもの。被疑者は窒息してくる。体 の動きが緩やかになったところで、つまり死の直前で外し、こうして被疑者を 尋問し続けるという残酷な方法です。

そうして彼から拷問された一人が、Tony Yengeni。今や彼らの立場は、完全に 逆転してしまった。Yengeniは、ANCの国会議員。Benzienは、かつて拷問した 相手に対して、sirと呼びかける。

その彼らが向き合っているのが、南アフリカ独自の「真実と和解の委員会」 the Truth and Reconciliation Commission。これは、かつての政治犯に対し て特赦を与えるためにもうけられた。2年前の12月に、設立されたのですが、 この大胆な制度のおかげで、今アパルトヘイトのもとでの、白人政権が犯した 犯罪が明らかになりつつある。

南アフリカほどの、すさまじい人種隔離政策をとり続けた政権が崩壊したあ と、大規模な流血が起こらなかったのは、奇跡としかいいようがない。ANCが 政権を握ったあと、大量の白人の国外脱出も起こらなかった。彼らは、過去の 傷をどのようにしていやそうとしているのか。ナチスからチリのピノチェトに いたる過去の独裁政権を調べた結果、マンデラたちは過去を無視するのではな く、向き合わなければならないと判断したようです。圧制の犠牲者やその遺族 は、嘘と欺瞞に耐えた痛みを癒されなければならぬ。加害者は、自分の犯した 罪と向き合わなければならぬ。犯罪を見て見ぬふりをしていた大衆は、沈黙し ていた責任を負わねばならぬ。そうでなければ、将来再び同じことを繰り返 す。これがマンデラ政権の共通の認識だったようです。

もちろん、加害者に対して、復讐の心を持って、罰するというのが、普通に考 えられることでしょう。正義心も満たされる。だが、彼らは過去を忘れること も、正義を振りかざすこともしなかった。彼らは第三の道を選び、そのための 委員会を設立した。そして委員会の目的は、虚偽でねじ曲げられた過去から真 実を探すこと、犠牲者の苦しみに報いること、そしてもっとも議論があったの は、当然でしょうが、加害者を許すこと、この3点だった。たしかに南アフリ カのように、過酷な歴史が続いたあと、政権が交代してこんな宥和策を取った 例は私はほとんど知らない。

もちろんamnesty特赦は、誰にでも与えられるわけではない。政治犯で、自分 が知っている事実をすべて明らかにすること、申し出る期限は、9月までとす る。この9月というのは、記事にはいつの、と言うことが書いていないのです が、多分今年なのでしょう。文脈からは委員会が設立された年ということにな るのですが、これでは1994年12月ですから、おかしい。とにかく無条件で特赦 が受けられるわけではない。申告をしなかったり、自己の他の罪を隠して、新 たな犯罪容疑がでてくれば、適用は受けない。なかなかうまく考えました。  (^^;

真実とは何か、と言うことも異論が普通なら議論になるでしょう。こうした政 治犯というか、イデオロギーがからむ場合は、同じ事実でも解釈は違ってく る。はたして、虐殺事件の最後の責任者にたどり着けるのか、普通は確信犯が 多いから、なかなか難しい。しかし事実は徐々に明らかになってきている。最 高の指導者層は、こうした特赦申請をしていないが、中堅どころというか、現 場の実行部隊が、告白し始めた。

こうした過程で、1977年に殺されたBlack Consciousness Movementのリーダ ー、Steve Bikoの虐殺事件の真相も浮かび上がってきた。国際的に反響をよん だこの事件は、多くの人々から、その疑惑が投げかけられていたが、あくまで も公式発表は事故死ということだった。しかし20年たって、殺人に直接携わっ た秘密警察の5人の警官が、事件内容を告白した。事件の内容が、公式に確認 された。(もっとも5人は殺すつもりはなかったという主張のようです) 

さらに1982年に起きたSiphiwon MtimkhuluとTopsy Madakaという2人の学生リ ーダーの死が明らかになった。これはほとんどてがかりがなかったのが、この 制度で彼らを虐殺した2人の軍人が告白して分かった。彼らの1人は1990年の段 階でも、犯行を否認していたようですから、やはりこの制度によってはじめて 真相は明らかになった。こうした例は多分もっとあるのだと思います。

もちろん委員会は、人数も少ないし、特に秘密機関の一部は、まだ手つかずの ところもあるようで、証拠書類で処分されたものも多い。警察よりも、軍関係 者が非協力的で、更にに政治家の非協力は甚だしい。概して前指導層の申告は少 ないようです。秘密が大きければ大きいほど、隠したくなるのは、当然でしょ うが。政治家関係7041人の内、ANC関係者は、副大統領のThabo Mbekiも含めて 数十人、しかしインカサ自由党関係者はいないようです。前政権党の国民党の 閣僚経験者はわずか2人。前大統領クラークは自己の犯罪を否認。

それにしても来年4月をめどに、委員会の調査は続いているようですが、これ は膨大な仕事量になるようです。はたして現場の警察官の犯行が、誰から指令 されたのか、どこまでさかのぼることが出来るのか。政治家達は、言葉のすり 替えで、切り抜けようとしています。例えば、「抹殺せよeliminate」とか「 社会から排除せよremove from society」という命令は、「殺せ」と言う命令 ではなかったし、現場の警察官がそのように解釈したとするならば不幸なこと だ、と言い訳しているものもいます。

真実と和解の委員会がめざす第2のの大きな目標は、先に3番目としてあげた加 害者を許すということです。それによって人種間の争いを無くし、政治的安定 を築く。これはかなり思い切った選択だと思いますが、マンデラは敢えてその 道を選んだ。白人を追い出すのではなく、彼らと共存する道を。平和の代償 が、特赦であり、特赦の代償は、謝罪ではなく真実の究明だというわけです。 誰も謝罪を要求されない。拷問を実行したものは、自由に歩き回り、被害者は 彼らを許すことを期待されている。

もちろん遺族の中には、こうした反対のものも多い。それが普通の人間の感情 だと思います。しかし概して犠牲者達は、復讐せず、かつての殺人者達は死の 恐怖なしに普段の生活を続けている。政権交代時に、黒人達は白人のプールや 別荘を占拠しなかったし、政府も白人の土地を没収したり、重税を課したり、 企業の国有化という手段を取らなかった。

これは現在の南アの状況と一見矛盾する。南アの犯罪率は世界でももっとも高 いところの1つです。殺人発生率はアメリカの7倍。そして各種の犯罪防止のた めには、厳しい政策を採っている。

こうした中での、委員会の活動です。アフリカの土壌を考えれば、信じられな いことが起きた。マンデラの力が大きいが、委員会も一役買っている。彼ら は、遵法と人権尊重の精神的風土を確立しようとしているわけですね。これは 一時的なものということで国民も納得しているのでしょうか。過去を忘れた り、あるいは中途半端な融和策を採らなかったことで、かえって将来の政治家 にとっては厳しい基準が示された。

委員会は最初からすべての真実が明らかになるとは思っていない。しかし少な くとも、過去の真実のいくつかは見えた。そしてそうした調査の過程で、国民 の過去認識もはっきりした。白人の大多数も、はっきりと沈黙していたことの 意味を悟った。国民党は彼らの支持を受けていたのだから。黒人と白人の理解 は、こうした経験を通してかなり進んだと言うことのようです。まだ道は遠 い。しかし2つの人種の平行的な世界が交錯し始めた。

wet bagを考案した警察官、Benzienは、かつての被疑者Yengeniにこう言っ た。「私は祖先が住み続けた南アフリカと、家族と私自身のために戦い続けな ければならないと信じた。今考えると、間違っていたことが分かるし、心から 謝罪する。そして新しい政権が生まれた今日、自分が依然として南アフリカに 住んでいることに驚いているし、そのことがうれしい。私は今でも、わが国を 誇りに思っている」

これはよい意味でなかなか信じられない世界です。こうしたことが起こるのな らば、我々の未来も明るいかもしれない。まだ南アフリカの実験が成功すると いう確信は、私にはもてませんが、少なくともここには希望があります。

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2.マンデラ後の南アフリカ
Who is Thabo Mbeki?

South Africa's future leader is a man of many parts. But his message
to the country's whites is plain

今年12月に、マンデラはANCの議長職(President)を退くが、そのあとを引き継 ぐのはThabo Mbeki。おそらく1999年にマンデラの大統領職を引き継ぐのも 彼。はたして、マンデラ後の南アはどこに行くのか。

Mbeki(ムベキでいいのかな)は、南アをどこに持っていくのか。彼は以前は共 産主義者であり、しかし1980年代には、白人政権の下で既に実業家として活躍 している。保守と革新の両面の顔を持つ彼は、マンデラとは現状認識がかなり 異なるようです。

まずアパルトヘイトの過去を現在がまだ引きずっている、という基本認識があ る。アパルトヘイトで生み出された社会的不公平は是正されていない、という ことですね。マンデラが流血なしに、革命を成し遂げたのならば、当然次の課 題は、その上にたって社会的平等をどのようにして築くかにある。現状の上 に、未来を築くことは出来ない。だからこれからは今まで白人層が持っていた 特権が、少しずつ無くなる。というより、本来の姿に戻すと言うことでしょう か。

土地の国有化とか、新税(多分富裕税みたいなものかな、と思います。記事に は全然書かれていませんが、白人層に不利な税であることは確か)を創設する ことはしない。しかし人口比に応じて、黒人にそれ相当の役割を与えると言う ことです。マレーシアでマハチールが採った、マレー人優遇政策と同じような 内容でしょう。Affirmative actionと言う言葉をここで使っていますが、これ はアメリカで使われるのとは違って、多数派に大きな役割を与えると言うこと ですね。それ自体が目的ではないが、より公平な社会を作るために、必要なス テップだと言うことです。

白人の政権移転に伴う生命への恐怖は、一応マンデラによって取り除かれた。 しかし現状をそのまま続けることは出来ないでしょう。黒人層の不満も高まっ ている。5年後も黒人の地位に向上が見られなければ、おそらく反乱が起き る。そのためにも、黒人にチャンスを与えている。例えば国営航空会社の機内 の広報誌(in-flight magazine)の契約を若い黒人の会社とした。今までその仕 事をしていた、白人の会社は不平を言っているようですが、これは仕方がない と私も思います。

ムベキは、経済的には保守主義で、かなりこれに固執している。それとWinnie に対する考えが、他のANC幹部と少し違うようです。少年誘拐及び殺害の嫌疑 がもたれている彼女を、12月にANCの副議長に任命することに前向きなようで す。

彼にはマンデラの持つカリスマ性はない。当然ANC内部でも、国の大統領とし ても、実務能力で勝負するしかない。彼は、サッチャーのように、民営化を推 し進めるつもりのようです。これはANCも、黒人層にもあまり支持されない政 策ですが、どうやら労働組合を少しずつ味方に引きつけている。いくつかのラ ジオ局、1つの国内航空会社は既に民間に売られた。電話会社は一部民営化、 他にも空港、航空会社、ダイアモンド鉱山、貨物会社や森林会社などが、民営 化の予定ですから、これはかなりの規模です。

このへんと白人層の特権がどのように絡み合っているのかは、よく分かりませ んが、少なくともそうしたことを通じて、彼は黒人が白人と対等の経済的チャ ンスを持てるようにしたいらしい。批判も覚悟の上のような感じを、この記事 からは受けました。

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3. 労働は国境を超える
BRIEF: Workers of the world

外国人労働者は増えているのか。何故彼らは移動するのか。それは国内経済に どのような影響を与えるのか。

この記事は、人類の歴史から説き始めていて、なかなか雄大です。(^o^) 人 類は、よりよい生活を求めて、あるいは迫害などから逃れるために、いつの時 代でも国境を超えていたのでしょう。そもそも国境という観念が、人工的なも のですから、国内の人口移動とほとんど意識の上では同じ人々も、もしかした ら現在でもいるかもしれません。歴史的な人口の移動を書いている部分が、私 は気に入ったのですが、ここは思い切って省略します。現在の状況を書いてい る部分だけの、感想です。

ある研究によれば、現在約8000万人の人々が、生まれた国と現在住んでいる国 が違うそうです。さらに2000万人が、自然災害や、政治的抑圧からの避難者・ 亡命者として、国外に住んでいる。これに毎年100万人の永久移民と、さらに 100万人の一時的亡命者が加わる。歴史的に見て、数的には大きいが、受け入 れ国の人口比率からは、少なくなってきているようです。

アメリカは1991年に200万人いた移民が、、1995年には80万人。ドイツは、 1994年と95年で、約80万人いたようですが、これは多くの短期の労働者を含ん だ数字です。1980年代から、90年代初期にかけては、移民も増えたようです が、ここ数年は減少傾向。規制が強くなったこともありますが、移民を出して いた側の経済発展が大きな要因かもしれません。

最近の傾向としては、高度な技術を持った人たちの移民が世界的に増えている ことです。多国籍企業の発展もありますが、各国政府もこうした移民は歓迎し ているようです。ここでは一応こうしたものは、除いて考えます。

外国人労働者は、どうしたインパクトを与えるのか。まず利点として、受け入 れ側の先進国では、高齢化が進んでいますから、概して若い外国労働者は平均 年齢を下げるという効果がある。当然、生産年齢人口比率も上がりますから、 税金もそうでない場合より安くなる。日本の高齢化も、これで解決するかな。 (^o^)

それに対して、外国人労働者への批判的な意見として、国内労働者の雇用を奪 うこと、賃金水準を引き下げること、などが普通は言われます。この一見常識 かに見える意見は正しいのか。問題はそんなに単純ではない。これが、 Economistの記事の言いたいことでしょう。

まず移民は、生産者であると同時に消費者でもある。だから、職を奪うと共 に、職を作り出してもいる。人口が新しく増えたわけですからね。そして労働 内容から見たら、国内労働者から職を奪っているというより、彼らがしたがら ない仕事をやっている場合が多い。補完的ということですね。さらに競争力を なくし衰退していく産業が彼らによって甦らせられる場合もある。例えば1970 年代から80年代にかけてのLos Angelesの衣服産業です。さらに低賃金が、物 価を下げ、実質賃金の上昇になることもある。

移民労働者が国内労働者の賃金に与える影響はそんなに大きくはないようで す。例えば、1980年に125000人のキューバ人が到着したマイアミでは、労働人 口が7%増加したが、非熟練労働を含めて市内の労働者の賃金と雇用状況はほと んど変わらなかったということです。さらに別の研究では、底辺の非熟練層の 黒人やヒスパニックにもほとんど影響を与えていない。ただ同じ外国人労働者 間では、少し影響があるようです。競合する分野では、2%の賃金下落が見られ るとか。さらに、彼らの賃金が、国内労働者並になるには予想以上に時間がか かる。これが労働市場に対して、賃金低下の圧力にはなっているかもしれませ ん。しかしほとんどの経済学者は、移民労働者の影響は他の影響に比べれば、 わずかだということで一致しているようです。

1973年から1993年にアメリカの非熟練労働者の賃金が、熟練労働者の賃金に比 べて、下がったのは、技術革新によって非熟練労働への需要が減少したことが 主な原因で、外国人労働者の流入はあまり関係ない。それぞれ30%と2%という 評価のようです。だから、彼らの経済的影響は過大視されでいる、というのが この記事の結論です。

日本ではどうなのでしょうか。たしかに外国人労働者の与えるインパクトは経 済的問題だけではなく、社会的文化的側面が強いのかもしれません。

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3. The Sunday Times 97-11-9

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1. パキスタンのテレビCM
Pakistan TV bans the shampoo set

パキスタンで、TV広告に対する規制が強まっているようです。先進国では無害 としか思えないシャンプーや練り歯磨きの広告が禁止されてきている。髪をな びかせたり、ほほえみを見せるのが、イスラムに反すると言うことらしい。シ ャワーを浴びている石鹸の広告はさらに強い怒りを呼び起こした。頭しか画面 では見えないのですが、下は当然ヌードだと言うことがmullahたちの怒りを引 き起こした。 (^^; 当然こんな調子ですから、他の分野にも影響がある。 外国映画やコミックでは、検閲の結果、飲酒や入浴、ビキニ姿はカットされて いる。Tom and Jerryでは、猫が犬にキスしているシーンもカットされた。

ブットがNawaz Sharifに負けたたときから、もしかしたらと思っていました が、ここまで徹底的にやるとは思わなかった。パキスタンは独立以来、世俗化 というか、宗教と政治の分離を厳しく守ってきたはずでした。宗教政党の得票 率も、6%を超えたことはない。しかしSharifの支持母体が宗教色の強い保守層 だと言うことは、前から言われていました。そのイスラムの影響が、アルコー ルやギャンブルや公共娯楽面以外に現れてきているのかなという気がします。 西洋文化の流入には、相当の危機感があるようです。もちろん反対派はこうし た厳しい対策をとり続けると、イスラム原理主義の復活につながると警戒して いるようですが。タリバンの保護者でもあるパキスタンですが、彼らの影響も 受けたのでしょうか。

女性をテレビに出すことは、出来る限り少なくし、その場合も男性と一緒に娯 楽番組のホスト役を務めてはいけないとか、民族衣装を着るべしとか、どうも 事情が急速に悪化している感じです。

女性に対する虐待も、家庭の内外で増えている。当然衣服についてだけうるさ いのではない。婚姻外で性関係を持った女性は、厳しく罰せられ、男性はほと んど処分を受けない。ベールの着用を厳しく求められながら、メッカ巡礼の時 は着用を禁止されている。イスラム法の解釈が、一部原理主義者に振り回され ているとしかいいようがない。政府が何をめざしているのか理解できない、と いう女性団体の指導者の言葉を紹介していますが、確かにその通りです。原理 ということが、何故正義に変わるのだろう。

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2. 南アの黒人達の反乱
South African blacks fight to break Boer strongholds

The Sunday Times 11/9から、南アについての記事です。今週はEconomistに続 いて、3つめの南ア関係の記事ということになります。

前に書いたEconomistの感想と重複することがかなりあります。特に副大統領 のMbekiの発言・政策はほとんどつけ加えなくてもいいようです。

ただこの記事全体を読んで思ったことは、ムベキの言葉、「アパルトヘイトの 過去を現在がまだ引きずっている」ということの意味を私は、より象徴的な意 味にとっていました。政権の中心は黒人の手にわたったが、過去は簡単には覆 されない。白人達は、まだまだ大きな力を持っている。しかしこのSunday Timesの記事は、過去の状況は何一つ変わっていない、という気持ちを一瞬起 こさせました。もちろんそんなはずはないのでしょうが、ここで紹介されてい るいくつかの例では、とても黒人達が主役にはなったということは言えない。

信じられなかった事例をあげると、
*57才の肉屋、PETRUS MAMADIは牛を盗んだかどで、その持ち主及び2人の警官 を含む、いずれも白人からなる集団から数時間にわたって暴行を受けた。彼は 口に銃を入れられたり、近くで発砲されたり、意識を失うまで暴行を受け、地 元のホテルの外に捨てられた。腎臓に損傷を受け、ろっ骨は折られ、脳挫傷を 負ったというのですから、重症です。この損害賠償を、裁判所に訴えたのです が、これは南アの黒人としては画期的な勇気ある行動らしい。私は、よくぞ暴 動が起きなかったものだと思いますが、どうもそんな雰囲気ではないらしい。 牛泥棒の疑いがはれたあとに、訴訟を起こしたわけですが、友達や家族は報復 を恐れて、反対したということです。さらには、警察も最初は調べようともし なかったとか。この裁判を引き受けている弁護士の事務所から、重要書類とか X線の写真だけが盗まれた。

*黒人労働者が野外のトイレに入っていたとき、その白人の雇い主は、黒人が ズボンを下げたまま飛び出すかを試すために、黒人の方に向けて発砲した。警 察官は、単なる冗談として処理。

警察官はまだ白人が主流のようです。だから、こうした白人の黒人に対する暴 行事件を捜査するのにはあまり乗り気でないとか。

しかし白人達が語る言葉は、昔とほとんど変わっていないようです。

*白人のジョーク。「何故黒人は匂うのか。目が見えないものでも、黒人を蹴 ることが出来るためさ」

*「俺と黒人は人種が違う。すべての人間は人種主義者だ。もし祖国を愛する ならば、人は人種主義者にならなくてはいけない」

*「同じバーで黒人と酒を飲むのはかまわない。奴等がおとなしくしていれば ね。しかし、奴等が節度をわきまえていないなら、銃をぶっ放してやる」

ある黒人はいう。「白人はまだ自分たちが神様だと思っている。私が最近白人 居住区に引っ越したら、何人かが引っ越してしまった。彼らは私たちが彼らの 子供たちに魔法でもかけると思ったのだろうよ」

たしかに、これでは5年たっても現状が変わらなかったら、黒人の不満は爆発 するかもしれない。Economistで読んだ南アとのあまりもの落差。おそらく は、事実はこの中間のどこかにあるはずだが、やはり人はそんなに変わらない のでしょうか。

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