アメリカ小企業の繁栄の裏で(12/13)


* Behind America's small-business success story
Despite its reputation, America often treats its small businesses at
least as shabbily as other countries do. Why do they keep growing?

アメリカの小企業対策は、必ずしも他国と比べて万全でないのに、何故アメリ カでは小企業が増えているのか。小企業というのは、零細企業といってもいい し、その中にはベンチャー企業の多くがこれにはいるのでしょうか。

この小企業というのはアメリカでは大分元気なようです。アメリカで新しく生 み出される雇用の3分の2が従業100人以下の企業のもの。昨年のベンチャー資 本投資額の37%が、操業開始の会社のためのもの。ヨーロッパでは12%だという ことです。アメリカの小企業は、規模的に見て世界で3位、つまりアメリカ・ 日本の次に位置するということです。

まずアメリカにおいては小企業といえどもなかなか大変なことが書かれていま す。

まずとにかく訴訟の危険に常にさらされている。5年前に解雇された元従業員 がある日弁護士を連れて会社に現れた話が出ています。彼はエジプト人の、あ まり仕事熱心でない保安係だったようですが、突然人種差別に基づく損害賠償 訴訟を起こしたようです。100万ドル請求だったのが、突然2万ドル請求になっ たようですから、どうもどこまで本気なのかどうか。しかしこれは当然訴えら れた以上、そのままにしておくわけにはいかない。大企業と違って弁護士を何 人も抱えているというわけには行かないから、経営者本人がそうした話し合い をしなければならない。

セクハラやら、人種などの差別などに基づく訴訟やら、とにかくどんなことで 訴訟されるか分からない。あるシカゴの法律事務所は顧客に、クリスマスパー ティを開かないようにと助言した。a Chicago law firm urged its clientsto considering cancelling their Christmas parties・・・urgedとありますか ら、かなり強い表現ですね。セクハラから酒酔い運転、そうしたことで会社側 が裁判に巻き込まれる可能性があるからというわけですが、ここまでアメリカ の訴訟社会は来ているのでしょうか。

小企業の経営者の半数以上は年収5万ドル以下。普通の訴訟費用は10万ドル以 上かかるようですから、小企業の経営者は自分でそうした苦情処理に当たるこ とになる。現在では多くの企業がreferences(証明書, 推薦状)を出さない。あ とになって訴訟沙汰になるのを恐れてのことのようです。従業員を解雇すると きにはまず弁護士に相談する。

さらに健康保険の問題がある。日本やヨーロッパと違って、アメリカの場合民 間の健康保険に加入していますが、この負担が大きい。会社は従業員負担の割 合を徐々に高めているようです。小企業従業員の場合、保険料の3分の1負担位 になっているようです。しかしこの辺は、この記事だけからはよく分からな い。確かに会社負担の率は少し高い気がします。それと民間保険ということ で、そもそも保険料が高いのだろうと思います。

さらに政府の規制も大きい。これはちょっと意外でした。ある研究では20人以 下の従業員を抱える企業は、1992年に従業員1人あたり5,784ドルを規制対策費 に使っている。これは500人以上の企業の2倍の割合だそうです。大気汚染対策 などのようですから、日本のように小さなことにも許認可権を行政当局が握っ ているというのとは違うと思いますが、行政の規制は結構厳しい。例外規定は あるようですが、それも小企業には複雑すぎるようです。

この抜け道対策というか、大企業に有利な規定は税制にも見られるようです。 パパママショップのような、零細な企業は簡単なaudit hitsだということで す。これは税制の優遇措置等を知らないために、会計事務を簡単なものにして いるからでしょう。だから小企業はたとえ増税になっても単純な均一税率を支 持しているようです。このへんはかなり中小企業の不満が高まっている感じで すね。

そうした多くの不満があるにも関わらず、何故アメリカで中小企業が多いの か。これはなぜアメリカ人は新しく自分たちの企業を作ろうとするのか、とい うことにもつながるでしょうか。2つほど理由が挙げられているようです。

第1番目に制度的なもの。多くの不利益にも関わらず、アメリカでは新しい事 業を始めやすい。カリフォルニアとマサチュセッツだけでも、全ヨーロッパの ベンチャー資金より大きいようですから、開業資金が比較的借りやすい。それ に弾力的な労働市場。これは従業員からの訴訟増加とは、一見矛盾するようで すが、合理的な理由ならばよその国よりも比較的雇用・解雇が可能だというこ とでしょうか。あと事業に失敗しても不名誉にならないことや、もし事業が成 功したら開業者の得る利益率が大きいことが税制などで保証されていることな どもあるようです。

2番目は文化的なもの。アメリカ社会が実力主義社会だということで、才能を 発揮しやすいということです。ここで日本の「出る杭は打たれる」the nailthat sticks up gets hammered downのことわざが紹介されていますが、 ヨーロッパもアメリカほど実力社会ではないでしょう。

こうしたものは長い年月かかって築き上げたもの。今アメリカ社会は必ずしも そうした意味で有利でない。もしかしたら旺盛な企業家精神文化も、消えゆく かもしれないと記事は結んでいますが、これは必ずしも当たらないかもしれま せん。Internetの普及と共に、今までとは違った意味で、中小企業が増えるか もしれません。日本もそのようになっていく気がします。



感想はこちらに・・・YHJ00031@niftyserve.or.jp
Internetの場合は・・・ohto@pluto.dti.ne.jp



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