麻薬組織の反撃(12/13)


*The mob fights back
Kidnapping and murder are the drug-dealer's weapon

コロンビア・メキシコの麻薬組織が殺人・誘拐等のなりふり構わぬ暴力手段 で、攻勢に出てきたようです。組織の存亡がかかっているからでしょう。

BETTER a grave in Colombia than a jail in the United States. アメリカ の刑務所に入るくらいなら、コロンビアで死んだ方がましだ。これはかつての メデリンMedelinの麻薬王、Pablo Escobarの言葉。1980年代に、自分たちのこ とをextraditableと呼んだ彼らは、アメリカへ引き渡されるのを避けるため に、車の爆破・殺人を繰り返した。extraditableは適訳があるかどうか知りま せんので、「引渡し該当者」くらいに訳しておきます。Escobarは自分の願い を実現した。1991年コロンビアの憲法は、国民の引き渡しを禁じた。その2年 後彼は麻薬取締官(?anti drug forces)によって射殺された。

麻薬組織の記事はは以前にはよく読んだ記憶がありますが、最近は世界で続け ざまに大事件が起きているせいかあまり聞かなくなりました。extraditionと いうのも、自国の刑事犯を外国に引き渡し要求するというのが、本来普通だと 思いますが、コロンビアの場合はアメリカの要求に応じて自国民を引き渡して いたのですね。最近ではフランスがIra Einhornを裁判にかけないことを決定 したとNewsweekの載っていました。これも多分アメリカは引き渡しを求めてい たと思いますが、このへんは国同士の力関係も左右するのでしょうか。

今や麻薬組織の勢力地図も変わってきているようです。かつてのMedelinか ら、ライバルのCaliへ、そしてメキシコの組織へ。アメリカはコロンビアとメ キシコの麻薬犯罪者達を、アメリカの裁判にかけたいようですが、麻薬組織の 側も激しい抵抗をしている。その現れが自分たちに反対するジャーナリスト達 を中心にした殺人・誘拐だというわけです。自分たちに不利な事実を報道した り、厳しい取り締まりを求めるものには容赦ない行動を取っているようです。

コロンビアでは今年既に7人のジャーナリストが殺された。ここ1カ月で3人。 これはコロンビアが新しく国民の外国引き渡しを認める法律を制定したことに 関係があるのでしょう。しかしこの法律は、過去の犯罪に対しては適用されな い。アメリカ政府には不満なようですが、これによって現在刑務所内にいる Caliの麻薬王達はアメリカで裁判は受けない。しかもこの法律は刑務所の混雑 を緩和するという名目の法案と引き替えだったような感じです。だから彼らの 1人は2年以内に釈放される可能性がある。麻薬組織の脅迫に屈した感じです。

メキシコはどうか。メキシコは政府・警察の方は、引き渡しなどを含めて真相 究明にあまり熱心でないようです。ここでも狙われているのは、ジャーナリス ト達。政府に没収された1トンのコカインが行方不明になった事実を報道した ジャーナリストは麻薬組織によって射殺された。先月にもTijuanaの週刊誌の 編集者が、やはり麻薬関係の報道で殺された。メキシコは麻薬取り締まりの最 高責任者が、麻薬組織から金をもらうのと引き替えに情報を流していた事実も ありました。あの人警察長官だったですか、詳しいことは忘れましたが。

しかしメキシコの場合麻薬組織は殺人者をアメリカから雇うという傾向がある ようです。国境を超えた犯罪組織の連携も、ますます深くなっているようで す。

さらに麻薬組織が反撃を強めているのは、金銭的な理由もある。コロンビア政 府は1年前に、通称Escobar法というのを制定したのですが、これによってたと え死者であっても、犯罪で利益を得たものは没収される。過去の犯罪を含めて ということになると、これは確かに効果があるでしょう。現金はもちろんのこ とですが、都市部・田舎の土地不動産が没収される可能性がある。だから名義 隠しを初めとして、いろんな手段を講じているようです。しかも没収された土 地を与えられた農民に対しては、脅迫と現実の殺人を持って脅している。10月 に土地を没収されそうになった麻薬王の一人は、部下に農作業をしようとして いた人々12人を殺させた。

この調子だと、アメリカや麻薬撲滅を願う人々にとって成果があがるのかどう かは、まだはっきりしません。記事は、「結局最後に笑うものはEscobarかも しれない」と結んでいます。なかなか簡単にはいきそうにないですね。



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