南アの不確定な未来(12-13)


*  An uncertain future

今週中に、マンデラがANCの議長職を退き、ムベキThabo Mbekiがあとを継ぐ。 マンデラは、1999年の総選挙までの16カ月間は、南アの大統領としてとどまる ものの表舞台から徐々に影響力を弱めていく。はたして強力でカリスマにみち たマンデラなき後の南アがどうなるのか。

アフリカなどでは、支配者の交代は、即、政情不安になることも多い。しかし 南アではその可能性は比較的弱い。だが人種宥和という、壮大な実権を成し遂 げたマンデラがいなくなったとき、その理想主義は破綻しないのか。経済的不 平等と黒人層の大きな失業率、高い犯罪率などは、Winnieなどの闘争的で人民 主義のmilitants and populistsの政治家の勢力拡張を促さないだろうか。南 アのように分裂の可能性を含んでいる社会は、小さな失策も大きな混乱をもた らすかもしれない。

ムベキがANCの唯一の議長候補であることは幸いだった。少なくとも無用な混 乱は避けられる。彼にはマンデラの権威もカリスマも実力もない。彼は「人民 の大統領」にはなり得ない。彼は実務型の指導者であり、大衆に人気があり、 愛されるとは思えない。しかし彼は現在もマンデラの下で、経済政策などで は、政府を実質的に動かしている。だから政策の実質はほとんど変わらないだ ろう。この点で「マンデラ後」は既に始まっている。

しかしムベキははたして合理的な政策をとり続けて、海外の投資家の信頼をつ なぎ止めておけるのか。いざというときにANCの同盟者である共産主義者や労 働組合活動家の反対を押し切れるのか。ANCの政策決定は、コンセンサスを基 準においているから、どんな指導者も多数の支持なしに政策遂行は不可能だ。

マンデラは指導者として2つのの素質を持っていた。1つは彼の道義心の高さ。 もう1つが79才という年齢。アフリカの社会では年長者の発言は尊重される。 このへんはかつての日本とよく似ています。しかし55才のムベキにはどちらも 欠けている。彼は、これからそのどちらの資質をも備えなければいけない。だ がANCのなかで大きな勢力を持つ女性、若者、亡命者、組合活動家、共産主義 者たちをうまく指導できるだろうか。

Winnieが副議長になる可能性は薄いが、もしそうなったらムベキにとっては計 り知れない打撃になる。もしそうなったらムベキを初めとする穏健派は、ANC をうまく導けるのか。

もちろん党内問題をうまく処理したとしても、党外で彼が尊敬と愛情を求める ことは無理だろう。しかし情勢も変わっている。南アは政治の大激動期から、 経済的社会的再建の時代に入った。彼がマンデラの敷いた政策を実行し成果を あげれば、そんなに心配はない。大統領は国民に愛されなくとも、立派な指導 者になりうる。そうした考えを国民が持つようになれば、マンデラが大統領を 辞めても大丈夫だろう。

ANCの50回全国会議は既に始まっているはずです。結果はどうなったのかな。



感想はこちらに・・・YHJ00031@niftyserve.or.jp
Internetの場合は・・・ohto@pluto.dti.ne.jp



ホームページに戻る 

The Economistのホームページに戻る