市場の論理(11-29)


東南アジアの不況がついに、韓国そして日本の金融界へと広がってきました。 山一の自主廃業という事態をEconomistは、どう見ているのか。当然かなり厳 しい評価ですが、それにしても日本の再生の可能性を信じているような論調だ と私は思いましたが、これは私の期待の現れでしょうか。

*Reality hits Japan

Better late than never. Economistの記事は、この言葉で始まっています。 遅くともしないよりましだ。もしも、山一が自主廃業という名の倒産の道を選 ばなかったら、日本経済は破局に陥っていたかもしれない。なかなか厳しい。 山一のような会社が人為的に生き残っていたのは、たまごっちのバーチャル・ ペットが人工的に生き残っているようなものだ。そのスイッチが切られたの は、将来のためにいいことだ。なかなか手厳しいですね。

しかし日本政府に取っては、これはもちろん彼らの見通しの甘さも含めて、そ んなに楽観的にはなれない。彼らは、決して何もしなかったとは思っていない からだ。1980年の初め、バブルがはじけたとき、かれらは金融機関の不良債権 は時間と共に、消失すると考えた。そのつけが現在回りに回って、銀行や保険 会社の危機になっている。

*アジア諸国への教訓・・・なすべきことを8年間も延ばすな。

東南アジアの通貨・金融危機は、劇的であったが、そんなに深刻ではなかっ た。確かにタイやマレーシアやインドネシアなどの、東南アジア諸国が高度経 済成長から一転、危機に見舞われたのは劇的ではあった。だが、それらは適切 な対策さえ取れば解決可能であったし、なによりその経済規模が小さく、世界 経済に与える影響はそんなに大きくなかった。だが韓国と日本の危機は違う。 劇的の度合いは2倍だが、深刻さは4倍に増した。両国の経済規模の大きさを考 えれば、ことは重大だ。しかし日本が金融危機に原因があるのに対し、韓国は 金融関係ばかりではなく、大財閥の屋台骨が揺らいでいる。(韓国は別の記事 がありますので、時間があれば書くかもしれません。)

それでは恐慌になるか。まだだ。アジアを覆っている暗雲は、大きく灰色だ が、まだ黒い雲ではなく、雷鳴は聞こえていない。

日本の場合は、解決策ははっきり見えていないが、問題点ははっきりしてい る。政治的行政的に適切な対策を採ることが出来れば、高価な代償と苦しみを 払うにせよ、解決策はある。金融界を除けば、日本経済はまだ強く、産業の競 争力は世界をリードしている。だから金融界への信頼が回復すれば、消費は回 復し、成長力を取り戻すだろう。そうすれば韓国を含めたアジアにとっては、 大きな安心となろう。

ではこの金融危機の解決策は何か。政府の財政援助しかない。税金を使い、国 債発行ということで反対論もあるだろうが、他に選択肢はない。もちろんこの 過程で多くの経営内容のよくない金融機関は閉鎖されるし、経営陣も含めての 解雇が行われる。そうすれば競争力は回復する。Economistは、大蔵省と日銀 はどうやら財政援助と金融機関の整理をあわせて実施するつもりだと書いてい ます。そうだとすると、個々の金融機関や個人にとっては、まだかなりの痛み を伴うような事態が訪れるのでしょうか。Big Bangで、私はそんなに日本が変 わるわけではないと思っていましたが、最近の激動とも言える倒産劇を見てい ると、認識を改めないといけないようです。

もちろん日本経済がこの危機を乗り切れるかどうかは、Economistも楽観して いないようです。長期化するだろうし、まだどうなるかがはっきりしない。問 題は山一の倒産ではなく、簿外損失・債務の存在ですね。これが山一特有の問 題ではなく、一般的であるということが、問題です。日本的経営のつけがいっ ぺんに回ってきたような感じですが、はたしてこの膿を出し切るのか。このま ま体質を変えようとしなかったら、ということは曖昧な解決を取ろうとしたら ということでしょうか、多くの金融機関の倒産があるかもしれない。

大蔵省は、金融機関の倒産はないとうそを言い続け、官主導のビッグバンで時 間を稼げば、どうにかなると思っていた。しかし東南アジアの金融危機によっ て、もくろみは崩れた。市場の論理が、より強烈な形で、Big Bangを貫徹しよ うとしているようです。

最期にEconomist誌の言葉。日本は、危機に見舞われる度にそれをきっかけと して強くなってきた。だからアジア諸国は日本がもう1度その歴史を繰り返す ことを願わなければならない。そうして自分たちは日本の失敗を繰り返しては ならない。

明治維新と、第2時大戦の敗北。これは、多分世界史的に見て、かなり強烈な 出来事のはずです。私は今回の事態がそうしたものと肩を並べるという認識は まるでないのですが、どうも日本を見つめる海外の目はかなり厳しいようで す。21世紀に、太陽は再び昇るのか。



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