暗闇は文明が滅ぶとき


*Nightfall (1941)

この作品でAsimovはSF作家としての地位を築いたようです。この作品は読者投票によっても、the Science Fiction Writers of Americaによっても、もっとも優れた作品として選ばれているようです。ただAsimov自身は一番のお気に入りというわけではない。ペーパーバックでは35ページです。日本ではSFマガジンが創刊500号に当たる98年1月のAll Time Best SFで、短編部門の12位に入っています。訳は「夜来る」になっているようです。

6つの太陽が輝き、決して暗くならない惑星Lagashの物語です。もちろんLagashがその周囲を回転するの太陽は1つしかなくAlphaなわけですが、これはBetaと2つ星のようです。その他に光が届く4つの太陽があって、今まで夜というか暗闇を知らない。ところがどうやらカルト教団の黙示の本Book of Revelationは2500年に1度文明が滅びることを伝えている。それに現在の考古学の教えるところでは、Lagashの文明は周期的な性格を帯びているらしい。数千年に1度文明が絶頂期に達したかと思うと、没落してしまう。しかも常に火災によってすべてが破壊され尽くしてしまうようです。

そして今saro Universityの理事Aton 77をはじめ天文台の専門家は、LagashがDarknessに突入することを予告していたが、それは人々からは信じられていなかったらしい。物語は、6つの太陽の中でもっとも明るいGammaが日没するところから始まります。そして空にはBetaがただ1つだけ。どうやら言い伝えでは、最後の星の日食の瞬間空に多くの星が現れるという言い伝えがあるらしい。専門家は空に多くの星があるという妄想を誰も信じていないが、今日Betaの日食があり、そしてそれが終わってBetaの日没後、惑星Lagashに恐怖をもたらす暗黒の世界がくることは分かっている。そしてすべての人が狂ってしまうことも。この作品は日没後暗闇が訪れる時までを描いています。

太陽が6つあるということは、平均したら3つの太陽が常に空にあることになります。どうやらマッチらしきものはあるらしい。ろうそくとかたいまつのようなものは、科学者が工夫して作りだしたものがあるらしい。しかし多分電気はないし、また不必要なのでしょう。夜が来て、そもそも生物が生き延びることが出来るという考えがないようです。黙示の本にはどういうわけか、過去Lagashが真っ暗なトンネルの中に入り、人々が星を見たときのことが書かれている。なぜすべての人々が滅びたか、気が狂った中でこうした伝承が生き残っているのか。

いよいよ真っ暗になろうとする瞬間、天文台にはカルトに先導された群衆が押し寄せてくる。しかし堅固な天文台には侵入できない。そのうち完全な夜になった。そしてこの惑星の中心都市Saro(最低でも数百万の人々が住んでいる都市のようです)の方にくれないのあかりが見えて、それはますます大きくなった。それは明らかに太陽の輝きとは違う。これは1つの文明が終わった明かりだったわけですね。放火・略奪その他諸々の行動で、夜の暗さに耐えきれない人々が文明のすべてを破壊尽くす。今長い夜、暗闇という点でも文明という点でも、それがまた始まったわけです。

この作品、意表を突くという点では少し面白いかなとも思いますが、私にとってもAsimovの作品の中で一番優れているとも思えない。しかしこの作品は有名だったんですね。私はこのストーリーは、記憶になかった。昔Nightfall 1に収められた5つの作品は部分的に読んだのではないかと思うのですが、この話はあまり覚えていない。もっとも読み終わっても、英語の読解力が低いとぼんやりとした記憶しか残らないから、その意味では昔読んだことがあったとしても、よく内容を読み切っていなかったのかもしれません。今回は大意はほぼ分かったと思います。

1998-7-6




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