ネアンデルタールの少年


*The Ugly Little Boy (1958)

作者自身が3番目に好きな作品と言っている作品である。確か、どこかで読んだ記憶はあるのだが、どこでかははっきりしない。33ページの作品だから、かなり長い。Asimovには珍しく感傷的な作品かもしれない。

ベテラン看護婦のEdith fellowesが、Stasis, Inc.という会社に就職するところから始まる。採用条件は、子ども好きということ、しかも醜い子どもでも好きか、という変わった条件であった。そして確かにEdithが世話することになる子ども(あるいはそのように見えるもの)は、額は平たく、足はがに股で汚れまみれで、この上なく醜かった。どうやらこの子は4万年以上前のネアンデルタール人らしいのである。

Stasis Section Oneと名付けられた区画は、過去の植物・鉱物そしてついにはネアンデルタール人を現代につれてきた場所であった。他の植物等は2週間交代で新しいものに取り替えられるが、Timmieと名付けられた少年は既に3年間収容されている。ただし、Stasis Section Oneにあるものはどんな小さなものでも、外界に持ち出すことは出来ない。一瞬たりとも、どんな理由があろうとも。このへんは私にはよく分からないのだが、 時のエネルギーはすさまじく、Stasis, Inc.全体をも吹き飛ばしてしまうものらしい。

とにかくSnatched callously out of time, it was now the only creature of its kind in the world. the last. The only. そうしたTimmieに対してEdithの中にも母性本能らしきものが芽生えているらしい。しかしStasisにとって、Timmieもそろそろ負担になりかけてきていた。世間からは忘れられかけているし、企業として存続していくためにも、大がかりな実験を行うことになった。それは歴史時代から、具体的には中世の人をこの時代に連れてくることだった。その実験が成功すれば、Timmieの存在価値はほとんどないから、彼は再びもとの場所に返されてしまう。

周囲の人々からape boyと蔑まれ、自分以外には頼るものとてないTimmie。Edithはそんな彼に、文字を教えたり、picture tapeなどを使っていろいろと人間的教育をしてきた。しかし別れの日は迫っている。中世の農夫が無事に、この世に連れてこられたとき、彼女はついに前から決めていたことを決行した。And Stasis was punctured and the room was empty.

「アルジャーノンに花束を」に、少しは通じるペーソスに満ちた作品です。

1998-7-6




ホームページに戻る 

I.Asimovのホームページに戻る