『金持ち父さん』シリーズ(筑摩書房)

2002年11月30日

 ハワイ生まれの日系人ロバート・キヨサキが書いた「金持ち父さん」シリーズがある。世界中でベストセラーだと言われているが、私もこの本にかなり強い影響を受けている。もし「キヨサキ教」というのがもしあれば、私は信者だと言ってもいいくらいだ。

 このシリーズでは、金持ちになるためにはどうしたらいいか、どういう考え方をしたら金持ちになれるか、どういう能力が必要かを説明している。ところが、お金を手に入れる直接の方法についてはまったくと言っていいくらい書かれていない。ちょっと変わった本なのである。

 スポーツ選手、芸能人、宝くじ当選者など、一時的に大金を手にした人たちのほとんどが数年後には普通の人(金持ちとは呼べない状態)になってしまうのはなぜか? それはつまり、考え方や能力が金持ちのそれになっていないからだという。

 このシリーズのうち、日本語訳されているのは現在のところ以下の5冊。いずれも筑摩書房から出版されている。

「金持ち父さん 貧乏父さん」
(原題:“Rich Dad, Poor Dad”)
「金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント」
(原題:“Rich Dad's CASHFLOW Quadrant”)
「金持ち父さんの投資ガイド 入門編」
「金持ち父さんの投資ガイド 上級編」
(原題:“Rich Dad's Guide to Investing”)
「金持ち父さんの 子供はみんな天才」
(原題:“Rich Kid Smart Kid : Giving Your Child A Financial Head Start”)

 シリーズを通して、ロバート・キヨサキの師匠である「金持ち父さん」の多くの格言が登場する。重要な格言は何度もくり返し登場しているが、そのうちもっとも基本的なものは「資産」と「負債」の定義である。この定義はロバート・キヨサキのホームページ( http://www.richdad.com )の "Rich Dad's Basics" というコーナーにも紹介されているのでそこから引用してみる。

Assets vs. Liabilities
Asset: something that puts money in your pocket
Liability: something that takes money out of your pocket.

「資産はあなたのポケットにお金を入れ、負債はあなたのポケットからお金を持っていく。」という意味である。

 会計や簿記を習ったことがある人なら、資産・負債といえば貸借対照表の記入欄のことであり、常識として、貸借対照表では資産の額は負債と資本の額の合計に等しくなくてはならないことはご存知だろう。しかしこの「金持ち父さん」シリーズではそのようなことは一切おかまいいなしだ。(常識や慣習にとらわれることなく本質となる点を突いていると感じたことが、私がこの本に惹かれている理由のひとつである。)

 たいていの人(=会計や簿記を習ったことがない人)は「貸借対照表」というものが何かも知らず、「資産」は財産、「負債」は借金というように漠然と考えているのではないだろうか。貸借対照表や損益計算書に書かれた数字がどういった意味を含んでいるのか読み取る能力を、このシリーズでは「フィナンシャル・リテラシー」と呼び、またお金についての様々な判断能力を「フィナンシャル・インテリジェンス(フィナンシャル・IQ)」と呼んでいる。この2つの能力はシリーズを通してたいへん重要視していて、これらを身につけておかないと老後にとても苦労することになるかもしれないと言っている。

 しかしながら、この2つの能力の内容については具体的な解説はほとんど無い。結局は自分で勉強しさないということらしい。どうしてそういう内容になっているのか不思議に感じていたのだが、5冊目の「子供はみんな天才」を読んで納得した。勉強の方法はひとつではなく、多くの方法があり、最適な方法は人によって異なっている。ある人に最適な勉強方法は他の人には必ずしもそうではないということがロバート・キヨサキの持論であるらしい。だからあえてファイナンシャル・リテラシーの具体的内容については書いていないのだろう。


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