ポケモンと日本語の話

 2000年6月8日

 米国ではポケモンがずいぶんと流行っているようだが、本家日本ではポケモンもだいぶ下火になってきたかな〜と最近は感じている。我が家でも、上の子(小3)はもう熱が冷めたようだ。しかしひらがなやカタカナが読めるようになってきた下の子(4才)は今でもポケモンの本を毎日のようにながめている。

 私もゲームボーイのカラー液晶のやつが売り出されたばかりのころポケモンのピカチュウバージョンというのにはまっていたりする。このゲームに登場する「ポケットモンスター」と呼ばれる生き物にはレベルが上がると名前や形態、属性などが変化する種がいくつかあるのだが、これがゲームの面白さに一役買っていると思う。昨年から私が飼育しているカブトムシやクワガタも、卵が孵化(ふか)して幼虫になり、蛹(さなぎ)になって成虫へと劇的とも言える体の変化があり、それを目の前で見ることが出来るというのも飼育する者をひきつける魅力だと言える。

 ところで、昆虫が幼虫から蛹、蛹から成虫へと形態を変えていくことは「変態(へんたい)」と呼ばれている。しかしポケモンでは「変態」ではなく「進化」という言葉を使っているのである。(さすがに任天堂の人間も、子供たちがそこらじゅうで「変態」という言葉を連呼する場面を想像してやばいと思ったのだろうか。)「トランセルがバタフリーに進化した」というようにこの言葉は使われているのだが、どうも私はこの「進化する」という言葉に違和感を感じてしかたがない。世代交代なしに進化するというのがなんとしても許せない。おそらく幼少時ポケモンに親しんだ子供たちのうち何割かは「進化」という言葉の正しい意味を知らずにそのまま大人になっていくんだろうなあと考えると悲しくなってしまう。へたすりゃ今の大人でさえ、ダーウィンの「進化論」を知らずに「進化」という言葉の意味を曲解している人がいるかもしれない。ポケモンのおかげで「進化」という言葉がすっかり歪められてしまったと言えるのではないだろうか。

 同じように、日本語では意味が歪められてしまった言葉は数多い。特にカタカナ表記の外来語に顕著だと思う。例えば「ダイエット」。もとの "Diet" という言葉は「食餌療法」のことで、食べるものや食べ方によって病気を治したり体質改善をはかることを指している。鉄欠乏性貧血の人に鉄分を多く含む料理を食べさせたりすることもそうだが、極端なことを言うと痩せすぎの人に高カロリーで吸収しやすい食事をさせて太らせること(こういうことが実際にあるかどうかは別にして)だって本当は「ダイエット」と言うのである。それが今の日本では「ダイエット」と言うと「痩せようとしていること」を意味するようになってしまっている。たとえそれが食べ物によってではなく運動などで痩せる場合でもだ。何年か前には「シェイプアップ」という言葉があったはずなのに、「シェイプアップ」は既に死語になってしまっている。

 最後に、ご存知とは思うが念のため、
この文章中の「ポケモン」、「ゲームボーイ」等は 任天堂 の商標です。


独り言のインデックスへ戻る

ホームページへ戻る