テレビのデジタル放送の話

1999年6月7日

 テレビ放送がデジタル化されることが決まっているのだけど、一般の人はどれくらい知っているのだろうか。

 僕はテレビ局の設備関係の仕事をしている都合で、たまたまテレビのデジタル化についての情報を入手しているが、郵政省はあまり一般の人達に知らせる努力をしていないように見える。そして「テレビがデジタル化されるとどうなるのか?」という大切な情報が一般の人に伝えられていないのだが、いいのだろうか?

 テレビがデジタル化されて受けられるサービスや恩恵、つまりデジタル化で便利になることや良くなることについては僕もまだ詳細をつかんでいない。しかし、すでにデジタルで放送されているスカイパーフェクTV!(以下「スカパー」と略)を視聴しているおかげでなんとなく雰囲気はわかってきた。

 スカパーのチューナーには時計がついている。指定した時間に自動的にチャンネルを切り替えるなど様々な機能のためだ。実はこの時計は合わせる必要がない。なぜならスカパーの電波に時計の進み遅れを調節するための情報が入っているからだ。 テレビの番組表も電波に乗って送られてくる。その番組表の表示を見ながらリモコンを操作するだけで見たい番組の録画予約などができる。しかもスポーツの延長などで時間がずれたとき、それに合わせて録画時間をずらしてくれる。なんとも便利だ。

 テレビのデジタル化は便利になることが多い反面、今のアナログ放送から移行する期間には以下の2点のような「困ること」もあるのを知っている。

 これらもイマイチ一般の人に知らせる努力を怠っているように思える。

【10年後には今のテレビが映らなくなる】

 デジタルの放送が開始されても、今のアナログ放送はすぐにはなくならない。デジタルとアナログの併用期間は10年間だという。ということは、今もし新品のアナログ用テレビを買うと、10年たつとまだテレビが故障していなくても見ることができる番組がなくなってしまう。テレビを見るためにはチューナーを接続するかテレビを買いかえるかしないといけない。

【場所によっては今のテレビで見られるチャンネルが減る】

 今のテレビ放送はVHFとUHFという2つの周波数帯が使われている。東京周辺は主としてVHFが使われて、UHFはローカル局だけになっているが、地域によってはVHFをまったく使わず全てUHFを割り当てているところもある。 札幌はVHFが4チャンネル、UHFが3チャンネル使用されている。私の妻の実家がある苫小牧ではテレビはすべてUHFだ。

 ところで、デジタル放送の周波数帯はすべてUHFにするらしい。ということは東京近辺でVHFのアンテナしか立てていない家ではUHFのアンテナにつけかえるという工事が必要になる。北海道内ではおそらくUHFのアンテナを立てていない家は無いだろうから問題にはならないが、それとは別の問題が起こりそうだということだ。

 テレビの放送塔は、隣接する放送塔からの電波と干渉しないようにチャンネルをずらして割り当ててある。2つの放送塔の中間の位置にある家では、アンテナの向きを変えるとどちらでも受信できることになる。片方の放送塔から7つのチャンネルの電波が出ているとするとその家では全部で14チャンネルの電波が届いていることになる。

 ここにデジタルの電波が同じ数だけ追加されると、ひとつの放送塔から14チャンネル分の電波が発射されることになるので2つの放送塔の中間の位置にある家に届く電波はなんと28チャンネル分だ。しかし実際には3つの放送塔の中間の位置というのがありうる。3つの放送塔を頂点とした三角形の中央付近ということだ。そういう場所では42チャンネル分の電波が届く・・・と言いたいが、チャンネル数が不足してしまい無理だ。そういう場所ではいずれかのチャンネルを犠牲に、つまり受信できなくするしかない。おそらくアナログの民放のいずれかがその犠牲になるだろうと僕は予想する。

 実は北海道には上の問題が発生する場所が何ヵ所か存在することがわかっているらしい。そういう土地に住んでいる人たちはデジタル放送開始と同時にデジタルの受信装置を買わなくてはならないわけだけど、さてその事実を知っているかどうか。自治体か郵政からそのための援助って期待できるのだろうか?

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