2010.1.27

経済状況報道のたくらみ

高橋清隆




 マスコミ各紙は昨年12月9日、09年7〜9月期の国内総生産(GDP)を下方修正する内閣府の発表を一斉に報じた。同年11月16日発表の前期比1.2%増、年率換算4.8%増から前期比0.3%増、年率換算で1.3%増と大きく後退する内容である。あらかじめ景気のいい数値をぶち上げたのは、連立内閣で調整が難航していた09年度第2次補正予算の充実を阻むためではなかったか。

 09年度予算は補正を含め、総額102.5兆円。10年度予算は事業仕分けで3兆円削られれば、92兆円の規模が見込まれていた。そのままでは10.5兆円の景気抑制効果が働く。40兆円の需給ギャップがある不況下で、庶民の生活はとどめを刺されるところだった。

 最悪の事態は、亀井静香郵政改革・金融相の捨て身の交渉で免れた。電線地地中化など公共事業に充てる地方自治体向けの交付金を中心に7.2兆円の経済対策を取りまとめたからだ。国民新党は当初、2次補正について11兆円を要求していたが、発表数値に気を許したら取り返しの付かないことになっただろう。GDPの改定値が出たのは、閣議決定の翌日だった。

 11月20日、政府の月例経済報告に「緩やかなデフレ状況にある」と記されたことが報じられた。これは日銀に量的緩和などの政策圧力をかけるためである。エコノミストの植草一秀氏によれば、「大不況」や「金融不安」の表現を避け「デフレ」とすることで、物価下落だけの問題に転嫁できる。所管官庁である日銀に政策対応を押しつけ、財務省は財政出動を免れるというわけである。

 毎日・朝日・読売・日経・産経の各紙は同日夕刊から23日朝刊にかけ「日銀は政府と危機感の共有を」「日銀はデフレに対する認識が甘いのではないか」などの社説やコラムを載せる。これを受ける形で12月1日、日銀の白川方明総裁は3カ月で10兆円を政策金利と同じ0.1%の低利で貸し出す「広い意味での量的緩和」を行うことを表明した。

 そもそも、なぜ経済状況を報じるのか。ほかのニュース同様、支配権力者が好ましい反応を期待してのことにほかならない。

 6年前、ゴールドマンサックスの報告書に2050年の世界GDPランキングが載ったと報じられたことがある。1位が中国、以下米国、インド、日本と続く。これは予想ではなく、世界を牛耳る国際金融資本の意志とみるべきではないか。「暗黙の了解ほど、支配を強力に推進するものはない」というのが、フリーメーソンの心操術の一つである。

 ある日銀関係者から伝え聞いた話によると、同行が年4回発表する企業短期経済観測調査(短観)はねつ造である。もちろん、勤勉な末端職員たちは全国約1万社に及ぶ企業を選び、数字や判断について熱心に回答を集める。しかし、上司はそれをごみ箱に捨てている。マスメディアは、大衆が望むことではなく、大衆に望むことを報じるのである。