10月18日(水)

障害者自立支援法について

会田稜三(東京都武蔵野市在住)


 現在、障害者の親たちや福祉施設の関係者を不安に陥れる事態が生じています。それは昨年の10月に国会で与党によって強行採決された「障害者自立支援法」が今年の4月から一部施行され、10月からは全面施行されたことによるものです。
 私の息子は昭和42年生まれの39歳ですが、先天的な知的障害(自閉症)をもっており、千葉県にある知的障害者入所施設「いすみ学園」に昭和60年からお世話になっています。
 「いすみ学園」は東京都の委託施設として自閉症児の親たちによって設立された施設ですが、利用者たちが「大人(おとな)として生きる」ことをモットーに、研究熱心で意欲的な職員たちと保護者会が一体となって運営しております。息子は当初学園内で生活していましたが、現在は「いすみ学園」が一体的に運営するグループホームに入居し、そこから地域の電器部品メーカーの工場に通勤しております、
 息子が2歳の頃に、自閉症と診断されたときに、私と家内は目の前が真っ暗になった思いでしたが、「障害をもって生まれた児は不運ではあっても、不幸ではない人生を送ることはできる」と言う医師の言葉に支えられて、息子の「不幸でない人生」を模索しながら今日まで来ました。
 私たちは既に70歳を過ぎており、「親亡きあと」のことを考えると、日本の福祉政策が温かく、信頼できるものであることを願わずにはいられません。
 その観点で見ると「障害者自立支援法」は問題が多すぎると思います。同法は「いかに福祉を推進するか」でなく、「いかに福祉予算を削るか」ということが主軸になっているとしか思えません。
 問題点の第一は「福祉サービスの実施主体を市町村に一元化」し、国や都道府県の役割が後退したことです。つまり「福祉行政の市町村への押し付け」です。現在市町村の窓口は混乱をきわめています。また、将来的にも市町村による福祉格差が増大することは避けられません。
 問題点の第二は「利用した福祉サービスに対し原則1割の自己負担」を利用者に課したことです。所得に応じた負担額の上限はありますが、利用者もしくは同世帯者に収入や預貯金があったりすると、負担額が増える仕組みになっており、「親なき後」を思って障害者名義の預貯金を遺すことが仇になります。
 問題点の第三は「障害程度区分」の制度です。これは障害者を介護保険制度に準じてランク付けを行い、軽度と判定された者を入所施設から締め出そうとするものです。締め出された者はどこに行けばよいのでしょうか。
 このような問題の多い「障害者自立支援法」について、10月2日の衆議院本会議での総括質問の中で民主党の鳩山由紀夫氏は安倍内閣総理大臣に対して「1割負担の凍結と抜本的な再見直し」を求めました。  私ども障害者の親たちは重大な関心をもってこの法律の帰趨を見守っています。