「角を矯めて牛を殺す」(日本の諺)
マスコミの影響力は大きい。とくにテレビと大新聞の影響力は巨大である。しかも日本のマスコミは同質化しやすく、「右へならえ」の報道をする。その上、小泉政権以来、政府と中央官庁(とくに財務省)の影響下におかれている。ほとんどすべての報道機関が同じ考えで同じことを伝える。きわめて危険である。
同質化したマスコミが政治権力と一体化すると、恐るべき力を発揮する。それが過っている場合には社会に甚大な被害をもたらす。これが最近起きていることである。
2001年4月に登場した小泉内閣は、米共和党政権の政治経済理論である市場原理主義(弱肉強食主義)を政権の施策の中心に据えた。ブッシュ政権が推進するアメリカン・グローバリズムを全面的に日本に導入した。
小泉首相は、“官から民へ”“規制なき自由競争”“結果についての自己責任”を柱とする「小泉構造改革」を呼号した。これに中央=東京の全マスコミが協力し、「構造改革」を煽った。そして、小泉構造改革の批判者をあたかも戦前の「アカ」のように扱い排除した。
戦後、日本は「民」と「官」とが協調して生きてきた。戦後の日本の経済社会は、節度ある競争にもとづく共生主義を基本にして生きてきた。米共和党政権の唱える市場原理主義は「和をもって尊しとする」日本の風土には合わない。にもかかわらず、小泉政権は強引に「改革」を進めた。
小泉政権が無理矢理にアメリカ型市場原理主義を日本の導入した結果、日本社会の安定は失われた。国民経済は混乱し、国民生活は乱れた。
2007年7月29日の第21回参議院議員選挙において自民党が大敗北した最大の原因は、国民生活を破壊した小泉構造改革に対する国民の怒りだった。小泉構造改革は大失敗に終わったのである。
ところが、与党政治家、中央官庁指導層、マスコミそして大企業経営者はこの「大失敗」をいまだに認めようとしない。すでに国民は真実を知っているのに、頑なに過ちを認めようとしない。
小泉政権は数々の失政をしたが、とりわけ公共事業を頭ごなしに否定した罪は大きい。この結果、国の基盤である地方経済は破壊された。
「国家の実力は地方に存する」(徳富蘆花)のである。地方が廃れたら国は衰弱する。いまの日本、その危機に直面している。
国の基盤である地方を復興させるためには、新たな視点に立った国民のための公共事業が必要である。
公共事業を全面的に否定することは、「角を矯めて牛を殺す」に等しい愚行である。
われわれがめざすべきは、「民と官の調和」である。すなわち、「共生と競争を両立させる経済運営」である。公共事業をいたずらに否定するのではなく、「真に国民のためになる公共事業」を民と官が力を合わせて立案し実行しなければならない。
マスコミの諸君、公共事業に対して極端な偏見を抱いている財務省の一部官僚の言うがままになるのはもうやめてほしい。地方再生の邪魔をしないでほしい。
国民のための公共事業は不可欠であることを読者の皆さんに理解していただくため、「国民のための新公共事業必要論」を始める。(つづく)