米国在住の研究者S氏の話──米国から見る“フジテレビ対ライブドア戦争”
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず。彼を知らずに己を知れば、一勝一敗す。彼を知らずに己を知らざれば戦う毎に必ず殆うし」(孫子)
“フジテレビ対ライブドア戦争”は会社乗っ取り戦争の本場の米国からどのように見られているかを知りたいと思っていたところ、米国在住の犯罪学者(アメリカ犯罪学界会員)のSさんが来日しましたので、2月27日に懇談しました。Sさんは金融・証券の専門家でもあります。Sさんは、日本のジャーナリズムにもよく登場する著名な研究者ですが、発言の記録についてあらかじめ承認をいただいていませんので、本欄ではイニシャルにします。Sさん、ご了解ください。2月の日本のマスメディアを独占した“フジテレビ対ライブドア戦争”について聞きました。
── アメリカでは“フジテレビ対ライブドア戦争”は報道されていますか。
以上は、日米の経済事情に詳しく、金融・証券の専門家であるSさんの話です。数ある情報と見方のなかで、読者の皆さんの参考になればと考え、インタビューの形で紹介しました。
フジテレビとライブドア戦争には、グローバリズム対国内企業尊重かの戦いですから、多くの人が関心をもつのは当然です。しかし、マスコミの対応は行き過ぎています。「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」です。フジテレビ以外の各テレビ局は、堀江ライブドア社長のインタビューを毎日何回も報道していますが、どう見てもやり過ぎです。何か意図があるのかな、と勘繰りたくなります。もう少し品のいい戦いをしてほしいと思います。大切なのは礼儀です。
Sさん:何も報道されていません。こんなことはアメリカでは日常茶飯事です。アメリカの報道機関が知ったとしても、報道しないでしょう。少なくとも大きなニュースにはならないと思います。報道する価値がないのです。それともう一つ原因があります。日本で報道されている以上のことは知りませんが、新聞で報道されているところでは、この事件は、あまり上等な話ではないのです。ライブドア側の奇襲攻撃から始まったような印象があります。違法ではないのですが、奇襲攻撃を行うような企業は、アメリカでは高い評価は得られません。たとえば、ハゲタカ・ファンドがそうです。彼らは、違法行為ではないのですが、奇襲攻撃を行います。このような企業のトップは、たとえば商工会議所のような組織のトップにはつけないのです。したがって、そうした奇襲攻撃をともなう企業乗っ取りは「良心なき行為」とされ大新聞、大テレビはあまり大きな関心を示さないのです。報道されるとしてもタブロイド紙だけでしょう。
「決闘の法理」という言葉があります。戦時国際法です。どういうことかといいますと、たとえば源平合戦のとき、攻める直前にのろしを上げて、相手側にこれから攻めることを知らせてから、攻撃します。正々堂々の勝負をするのです。アメリカでもガンマンが撃ち合うとき、後ろからは撃ちません。前を向き合って同時に撃ちます。ヨーロッパでは決闘のとき、背中を合わせて歩いてから、向きを変えて撃ち合います。相撲の場合も仕切をしてから立ち合います。
アメリカでは、証券市場で敵対的買収を仕掛けるときにも、「決闘の法理」が貫かれます。いくらか、いつから始めるか、期間は?──などを事前に明らかにします。
最近では、東京三菱と三井住友がUFJを買収するために戦いましたが、三井住友は、事前に買収にあたっての条件を発表しました。これが敵対的企業買収のルールです。しかし、ライブドアの初めのやり方には「決闘の法理」はなかった、すなわち高度な商取引のルールに則っていなかったのではないか、とアメリカでは受け止められるでしょう。アメリカではハゲタカは尊敬されません。ハゲタカは法律さえ守っていれば何をしてもかまわない、という姿勢でやっています。だから「ズルイ奴」と見られているのです。
── 今度はニッポン放送がフジテレビへの新株予約権発行という形で逆襲しました。これに対しライブドアは差し止めを東京地裁に申請しました。アメリカではどう見られていますか。
S:この事件が起きたときは日本に来ていましたのでアメリカでの反響はわかりません。ただ、今後の展開を見なければなりませんが、フジテレビ側は失敗したのではないかという感じを受けています。素人のやるようなことをしてしまいました。フジテレビにとっては勝てる戦いですが、方法を間違えました。
フジテレビ側には、この戦いに勝つ方法があります。必ず勝てる方策が一つあります。これはフジテレビの方に言うべきことですから、ここでは言いません。そうすればライブドアは負けます。それをやれば、2週間あれば勝負はつくでしょう。
── ライブドアに800億円もの大金を融通したリーマン・ブラザーズ証券の狙いは何ですか。
S:リーマン・ブラザーズ証券も株式を上場している会社です。株主に対する責任がありますから、無理なことはできません。おそらく、リーマン・ブラザーズのバックに何者かがいて、リーマンに融資しているのではないかという感じがしています。いまのところ、これ以上のことは言えませんが、何者かがバックにいてリーマンが動いたと考えられます。