2004.5.12
小泉内閣の本質は「日本をアメリカ化する」ための政権である
「自分の真価を下等にして初めて得られる他人の賞讃よりも、自分の品位をたかめて他人の罵詈を甘受する方がどれ位うれしいかし れない」(武者小路実篤『幸福者』)


  

 日本の真価を下等にして得られるアメリカによる賞讃よりも、日本の品位を高めてアメリカの罵詈を甘受する方がずっとよいこと である。小泉首相にはこの言葉を噛みしめてほしいと思う。

 関岡英夫著『拒否できない日本・アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書、平成16年4月20日刊)は、全国民に読んでほし い本である。
 ここには、テレビはほとんど取り上げず、新聞が書かず、雑誌すらもほとんど取り上げていない日本の真実の姿が鮮やかに描き出 されている。
 表紙の裏にこう書いてある。
 「建築基準法の改正や半世紀ぶりの商法大改正、公正取引委員会の規制強化、弁護士業の自由化や様々な司法改革……。これらは すべてアメリカ政府が彼らの国益のために日本政府に要求して実現させたもので、アメリカの公文書には実に率直にそう明記されて いる。近年の日米関係のこの不可解なメカニズムのルーツを探り、様々な分野で日本がアメリカに都合のいい社会に変えられてきた 経緯を、アメリカの公文書に則して明快平易に描く」。 『拒否できない日本』というこの書物、とにかく全国民に読んでほしい。 今の日本で何が起きているかの真実を知ってほしいのである。全国民が真実を知れば、おのずから道は開かれる。このままでは、日 本はアメリカに食べられてしまう。
 日本のアメリカ化を先頭に立って推進しているのが小泉内閣である。小泉内閣の3年間の間に、銀行の90%は米国の金融機関に握 られてしまった。製造業の70%が米国に握られた。東京のホテルのほとんどが米国資本のものとなった。流通も、食糧も、土木建築 業すらも米国資本の傘下に組み入れられている。最近はマスコミがこれを応援している。それどころか、マスコミまでアメリカに握 られてしまった。
 最近、政官界内部で次のような噂が流れている――「広告業は米国資本に握られたため、テレビで米国批判を行うものは、テレビ 界から排除されることになった。ほとんどの大手のコマーシャル提供の大企業は米国資本が握ったからだ」。
 ちょうどその頃、私はあるテレビで米国の日本支配、日本従属国化、植民地化について語ったあとは出演依頼がほとんどなくなっ たことを経験したので、思い当たることがあった。米国の影響力は巨大である。日本人の頭脳のなかまで変えつつある。

 1年ほど前の経験を話そう。かつて官庁において指導的立場にあった知人の懇談しているとき、私が「政治は弱者をないがしろに してはならない」と言ったところ、強い反発を受けた。
 彼はこう言った――「弱者保護の社会主義には反対だ。強い者、優秀な人間がその強さと優秀さにふさわしい利益を得ることがで きないような日本であれば、そんな日本はつぶれた方がよい」。
 現在の日本指導層の間での最大価値は「競争」である。競争になれば強者が勝ち弱者が負ける。これは自然現象のようなものであ る。
 問題は政治が強者優位の競争原理を推進していることにある。私は、このような政治のあり方は間違っていると批判しつづけてき た。政治は全国民の利益を考えなければならない。弱者のことを考えない政治は正しい政治ではない。これを社会主義だと非難する のは行き過ぎである。
 自由競争万能主義は、私的利益の追求を善なるものと認める考え方を前提にしている。資本主義のもとでは経済人が他人の利益を 不法不当に侵害しない範囲内で自己の利益を追求する権利は保障されている。しかし、社会が成り立つためには自由競争万能主義を 放置するわけにはいかない。一定の歯止めが必要である。
 今日の日本の政治の問題は、この資本主義経済競争の論理が政治のなかに入り込み、政治家が自己の利益を追求することに疑問を もたなくなっているところにある。
 かつてはこのような思考に歯止めをかける政治勢力が存在した。社会主義政党である。しかし、今は社会主義政党は影響力を失っ た。野党第一党の民主党は「第二自民党」と言われるような保守中心の政党である。自由競争万能主義信奉者が多い。小泉構造改革 支持者も少なくない。アメリカ的グローバリズムの信奉者もかなりいる。与野党を問わず、政界のなかに利己主義が入り込んでい る。

 今日の日本政治の底流の基本にあるのは「日本のアメリカ化」である。小泉内閣がこれを推進している。これに自民党・公明党の 連立与党だけでなく、民主党までが参加している。アメリカ化めざす大連合が形成されている。外交・防衛だけでなく、経済システ ム、法制度、大学制度も、さらには商習慣までもアメリカ化する方向に日本の政治は走っている。
 この根本問題が政治の場においてほとんど議論されないまま、日本のアメリカ化が既成事実化している。この結果、地方、中小零 細企業、農業、家計が切り捨てられ、弱者が見捨てられている。この問題は日本政治の根本問題であるにかかわらず、政界だけでな くジャーナリズムにおいてすら議論されていない。菅氏はこうした長期的・本質的問題にほとんど関心がなかった。菅氏の挫折は民 主党に根本問題を突きつけた。 
  もう一度訴えたい。関岡英夫著『拒否できない日本』(文春新書)を読んでください。