「君は舟なり、庶人は水なり。水はすなわち舟を載せ、水はすなわち舟を覆す」(荀子)
2004年夏の参院選は小泉内閣にとって最大の試練である。歴史的にもきわめて大きな意味をもっている。21世紀の日本の進路を決
める選挙であると言っても過言ではないと思う。
しかも、戦後初めての自衛隊の本格的な海外派遣決定に際して行った小泉首相の記者会見は、とうてい国民を納得させるものでは
なかった。いわゆる「首相の説明責任」はまったく不十分なものだった。
2004年通常国会のテーマはイラク問題だけではない。増税・福祉削減の国民負担増、地方切り捨て的な地方改革、道路公団民営化
問題が議論される。いずれも夏の参院選を睨む展開となる。
政治権力は水の上に浮かぶ舟のようなもの。水は国民大衆。水は舟を載せることもあり、また覆すこともある。同様に、政治権力
が成り立つか否かは国民の支持の有無にある、という意味の格言。
自民党衆議院議員の伊吹文明元労相の新聞『いぶき』1月1日号の一面トップの見出しは「勝者なき総選挙、決着は参議院選へ
」。ここに政界の平均的な見方が示されている。小泉首相は3年前の2001年夏の参院選で勝った。小泉政権はこの勝利で力をつけ、
3年間政局を引っ張ってきた。2003年9月20日の自民党総裁選でも勝った。しかし2003年11月9日の衆議院総選挙では民主党と引き
分けた。公明党の支援でやっと勝った。自民党としては、形式上は勝利、実質的には敗北という結果となった。自民党単独では民主
党に勝てないことも明らかになった。自民党はすでに独自の力で政権を取り、維持できる力を失ってしまっている。
2004年夏の参院選において、小泉政権の真価が問われることになる。小泉首相にとってきびしい審判が下る可能性が高いと私は予
想している。もちろん自民党は公明党・創価学会に全面的に依存する。参院選選挙区のうち二人区と一人区では公明党・創価学会の
支援を受ける。自民党はあたかも創価学会という釈迦の掌から出ることができない孫悟空のような存在になってしまっている。
小泉政権は2003年11月総選挙のあと「勢い」が落ちた。下降局面に入ったのである。世論調査の支持率も下降気味。小泉構造改革
の目玉の道路公団改革も事実上挫折した。ブッシュ大統領との約束を果たすためにイラクへの自衛隊派遣を決定したが、いちいち公
明党・創価学会の了承を事前に得なければ一歩も前に進むことができない。
第一に小泉首相は憲法第9条に言及しなかった。憲法前文の一部をつまみ食い的に引用して自衛隊のイラク派遣を合理化したが、
これによって小泉首相は憲法第9条を事実上棚上げした。
これでいいのか――これは04年通常国会の論戦の中心テーマになる。憲法第9条を今後守るか守らないかの問題とともに、内閣が
公然と憲法第9条を無視して、法を基礎にした政治が成り立つかという国のあり方も問題にされなければならない。小泉首相のやっ
たことは憲法解釈の変更とは違う。憲法の重要条項の事実上の凍結である。これは憲法違反行為であり、野党は小泉首相の責任追及
を強める。
もう一つ重要な法的問題がある。イラク特措法上の「非戦闘地域」の問題である。常識的にはイラク全土が「戦闘地域」であり、
「非戦闘地域」が存在するという小泉首相の判断には無理がある。いまの時期の自衛隊派遣にイラク特措法を適用することは法律的
には違法行為の疑いがある。この問題も通常国会の論戦のテーマになる。
小泉首相は「日米同盟と国際協調」を旗印にしてイラクへの自衛隊派遣を合理化してきたが、これが問題のすり替えであることは
国民の知るところとなっている。小泉首相の矛盾だらけの言辞に国民は気づき始めており、小泉親衛隊といわれるような一部巨大マ
スコミも小泉擁護ができなくなっている。
通常国会で議論される重要な政治問題は、夏の参院選において有権者の審判を受ける。
有権者は三つの傾向に分かれる。一つは小泉政治支持層。いわゆる「勝ち組」が中心である。これには自民党支持者だけでなく公
明党支持者も含まれる。二つは反小泉層。民主党、共産党、社民党の支持者だけでなく政治的に関心の高い無党派層も含まれる。い
わゆる「負け組」がこれに加わる。三つは政治そのものへの無関心層。この無関心層が増加すれば投票率が低下し、創価学会票頼み
の小泉政権に有利になる。
無関心層増大の背景の一つとして注意すべきことは、ニヒリズムと諦めの感情が国民の間に広がっていることである。ここに小泉
政権がつづいている要因の一つがある。逆に見れば、小泉政治は国民を絶望させることに成功し、それによって政権が維持されてい
る、ということにもなる。
2004年夏の参院選を左右するのは投票率である。低ければ小泉首相に有利、高ければ民主党に有利――と言ってよいと思う。投票
率が急上昇したときは小泉政権は危機に立つだろう。
小泉政権が信任されれば、米国従属、経済縮小、憲法第9条凍結の小泉政治がつづくことになる。反対に小泉首相が敗北すれば、
非常識な小泉政治は終わるか、ストップがかかる。これは日本再生の一歩になる。(このことは以下で述べる)
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