2010.2.5(その5)

森田実の言わねばならぬ【107】

平和・自立・調和の日本をつくるために[107]

《新・森田実の政治日誌》[月満つれば欠く・小沢政治の終焉(22)]総選挙勝利後の民主党の失敗〈その1〉人事の失敗

「政を為すは人に在り」(『中庸』)



 政治において人事は最も大切な事柄である。人事の過ちは取り返しがつかないものである。鳩山内閣は、出発点において、人事上の過ちを犯した。

 2009年8月30日の総選挙で民主党は圧勝し、同党は政権交代実現に成功した。国民の期待は非常な高まりを示した。この成功の絶頂において、民主党は失敗した。民主党の最大の失敗は、小沢一郎独裁体制をつくったことにある。その後の民主党政権の迷走の第一の原因はここにある。

 私は、楽観的シナリオから悲観的シナリオまで諸々の可能性を分析し考えながら政治分析に取り組んでいる。政権交代が実現したのは、停滞した日本の政治に対する国民の不満の爆発であった。ニーチェの言うとおり、「脱皮できない蛇は滅びる」のだ。脱皮することが必要になっていたのである。日本国民は投票で自民党政権を終わらせた。

 ただし、政権交代への過剰な期待は禁物である。政権交代が実現すれば、すべてがよくなるというように考えることは正しくない。政権交代以後がどうなるかは、新政権がしっかりやるか否かにかかっている。政権交代して日本の政治がよくなるか、よくならないかというのは政権が何をどうやるかにかかっている。われわれは新政権を注意深く観察する必要がある。政権交代の祝賀ムードの中で現実の政治が失敗する方向に進んでいるのに目を閉じてはならない。政治家、政党者は甘い対応をしてはならない。政治ジャーナリズムも同様である。鳩山政権発足後の数カ月を冷静に見ると、残念なことだが、最悪の事態が起こっている。

 失敗の第一は人事である。「政を為すは人に在り」という言葉がある。政治に限らず人間のやることの成否はすべて人事にかかっている。指導者がどういう人間かによって政治は右にも左にも動く。極楽にも地獄にもなってしまう。

 民主党政権は人事において失敗した。小沢一郎氏の操り人形の鳩山由紀夫氏が総理大臣としてきちっと仕事をするためには最高実力者の小沢一郎氏に副総理ないし官房長官のような立場に就けて内閣の一元化をはかる必要があった。党と内閣の二元化は細川連立政権の失敗を繰り返すおそれがある。細川連立政権の最大の失敗は実力者の小沢氏が党側にいて細川首相と対立したということにあった。もし小沢が副総理なり官房長官なりになっていればわずか9カ月で崩壊することはなかったであろう。鳩山首相は小沢氏を副総理、あるいは官房長官という立場で入閣させるべきだった。それを初めから断念してしまった。このため、鳩山内閣は操り人形型政権になってしまった。一番初めに決まった人事が小沢幹事長だった。そこに第一の失敗があった。

 もう一つの失敗は、小沢幹事長が決まったあと、小沢幹事長体制に対抗できる内閣人事を行わなければならなかった。小沢幹事長に対抗できる力のある人物を副総理か官房長官にしなければいけなかったのに、しなかった。例えば、渡部恒三のような小沢と対等な関係を築くことができる政治家を据えるべきだった。小沢幹事長体制においては、党の力に比べて内閣の力が低すぎる。極端な党高政低となってしまっている。これでは内閣は安定しない。小沢を絶対者にしたのは大失敗だった。(つづく)