2010.1.14(その3)

森田実の言わねばならぬ【32】

平和・自立・調和の日本をつくるために[32]
《新・森田実の政治日誌》[谷垣禎一自由民主党総裁研究(11)]『政治家の本棚』(早野透朝日新聞編集委員インタビュー、朝日新聞社、2002年5月5日刊、1890円)にみる谷垣禎一氏の原点〈その2〉「言葉の力」

「『これだ』とひざを打ちたくなる言葉は、われわれの歴史の中にもあり、そういうものによって人格を形成してきた。それが言葉の力ではないですかね」(谷垣禎一)



 谷垣禎一氏は本書のなかで早野透氏のインタビューに答えて、自身の政治哲学・政治理念の一端を語っている。

《『大学』には「修身、斉家、治国、平天下」とある。結婚式のスピーチで言うんです。まず、あなたたちが幸せにならなきゃだめだ。しかしそのエネルギーを、自分たちのためだけに使わないでほしい。さらに周りに及ぼしてもらいたいとね。そして国を治めて、天下を平らかにするとつながっていくわけでしょう。日本人にとって望ましい価値体系のような気がするんですね。》

 谷垣氏の家庭重視、地域重視の一つの原点がここにある。谷垣氏は儒教思想について高い見識をもっている。

 谷垣氏は、儒教思想には二つの面がある、と語る。第一に「人間を中心にした合理的な思考体系」、第二に「生命の尊重」である、と。そしてこう語る。

《何代かさかのぼれば、自分の祖先の名前も知らない。しかし、延々と伝えてきた命であることには違いない。ノそこに、先祖崇拝というものがある。ノ人間がぎりぎり一人で立って、おれは何だろうと思うときに、永遠の命の中に位置づけられているということ、これが儒教思想の神髄だノ。》

 谷垣氏は幼少の頃から日本の歴史書に親しんだ。平泉澄著『物語日本史』、竹越与三郎『二千五百年史』など。さらに最近になって田口鼎軒著『日本開化小史』、『神泉正統記』、『読史余論』、『愚管抄』など。

 そして、谷垣氏はこう語る。

《『二千五百年史』は、わりあい民衆史観というか、近代的、開明的ですよ。ノ竹越を読めば、聖徳太子は、中国の文明を取り入れて日本文明の骨格をつくった人物なんだな、ああ偉い人だったんだということがわかる。》

 さらに丸山真男、大塚久雄の史学も学んでいる。

 政治家・谷垣禎一氏の政治思想の根底には、日本と中国の歴史に関する長年の勉学がある。谷垣氏は「現代」を長い歴史のなかで捉えている。谷垣氏の価値判断は、長期的視点に立っているのだ。目先のことしか考えない最近の日本人の思考に対する正当な批判の心を谷垣氏はもっている。(つづく)