「小泉よ、自民党から出て行け」の声
亀井静香前政調会長は8月10日、テレビ朝日で小泉首相の自民党からの離党を求め、こう語った。「小泉さんは自民党を出ていけばいいん
ですよ。『自民党を壊す』と言っているんだからだ。だから、そういう人(小泉さん)は出ていけばいい」
自民党総裁である小泉首相は2年前から「自民党をぶっ壊す」と言いつづけてきた。この発言をマスコミは褒めたたえた。それにより小泉
首相の支持率は高まった。小泉首相は調子づいて最近までこの言葉を使いつづけている。この小泉首相を自民党議員が支持している。自民党
員も支持している。それでいて自民党をやめようとしない。居座っている。これほどおかしなことはない。
だが、この矛盾を指摘する報道がほとんどない。わが国のマスコミはおそろしいほど不見識・無責任である。報道機関自体が、これを矛盾
と思っていないのかもしれない。客観報道主義もここまでくると堕落である。報道機関が善悪の区別がつかなくなったら、そんな報道機関か
ら発せられる情報は有害である。
政党は国民と国家権力をつなぐ橋である。橋も古くなるとボロボロになる。時には壊して造り直さなければならないこともある。しかし、
できるかぎり補修して使うのがよい。
小泉首相が「自民党をぶっ壊す」と叫びつづけたのはマスコミが喜ぶからであろう。マスコミが喜んで大騒ぎすると、小泉人気が上昇す
る。これを見て小泉首相はまた「ぶっ壊す」と叫ぶ。それを自民党員自身が支持する。それでいて、国民に向かっては「支持してください」
と言う。これほどの政治的欺瞞はない。
1週間後の8月17日、今度は野中広務元幹事長がフジテレビで「小泉さんが自民党を飛び出して新党をつくって解散する、というのはどう
ですか」とのキャスターの質問に答えて、「そうして(自民党から出ていって)ほしいですね。自分が育ってきて、そのなかから総裁になり
総理になった人が、その政党(自民党)を潰したいというのなら、出ていってどうぞおやりなさい」と、小泉首相に自民党から出ていくこと
を勧告した。
当然の発言である。自民党の総裁になりそれゆえに首相になった小泉首相が、その座にいたままで2年間もの長い間「自民党をぶっ壊せ」
と叫びつづけることは大いなる偽善であり、許されることではない。
だが、おかしなことはこれだけではない。選挙になると、自民党公認候補は有権者に向かって「自民党を支持してください」と訴えつづけ
てきたのだ。
壊すべき政党に所属することをやめないで、「ぶっ壊せ」と叫びつづけるのはどう見ても正直な人間のやることではない。その上国民に向
かって「自民党を支持してください」と訴えるのは二重の矛盾である。これほど有権者を愚弄するのはほとんど過去に例がない。
米国の二大政党の一つ共和党は約250年の歴史を有し、対する民主党も約170年の歴史がある。イギリスの保守党は全国的組織政党になって
から約140年の歴史を刻んできた。イギリス労働党の歴史も100年近い。長い歴史のなかでは何度も解党の危機に遭遇し、そのつど改革して乗
り切ってきた。その結果、国民的基盤をもった政党に成長してきたのだ。絶えざる改革によって政党の生命を維持してきた。政党は破壊する
のではなく改革すべきものなのである。
自民党は1955年11月にできた政党だ。まだ50年も経っていない。国民の信頼を失ったからといってそのつど解党していたら力のある政党は
育たない。改革を積み重ねる以外に道はないのだ。小泉首相の「自民党をぶっ壊せ」発言は幼児的な発想にもとづく大愚行なのである。
日本の野党が育たないのは、政党を改革して生かすのではなく、国民から批判されるとすぐに潰してしまうからである。良く生かそうとす
るのではなく、破壊してしまうから野党は長続きしないのだ。
偽善そのものである。子供じみた偽善遊びである。こんなことを60歳を過ぎた大の大人がやっている。もうこの辺で国民もこのばかばかし
さに気づき、偽善者を国政の場から引きずり下ろさなければならないと思う。
自民党内でまともな大人の政治論を理解している正常な人間が亀井、野中の二人だけだとするなら、自民党の未来は絶望的である。それで
も自民党議員と自民党党員が小泉首相を支持するようなら、次の総選挙で自民党政権そのものが終焉するだろう。また、それでも国民が小泉
首相を支持するならば、日本国そのものが沈没するだろう。