2006.11.12(その1)
森田実の言わねばならぬ[485]

安倍内閣徹底批判【26】
首相官邸をホワイトハウス化し、自ら大統領になろうと野心を燃やす安倍首相の身の程知らず

「月の影取る猿」(『僧祇律』〈そうぎりつ〉)
[井戸に映った月を取ろうとして井戸に落ちた猿。身の程をわきまえないと身を滅ぼすというたとえ]


 『ニューズ・ウィーク(日本語版)』2006.11.8号の表紙に「安倍大統領?」の活字が踊っている。こういう表現は、時々日本のマスコミに見られるが、権力者をおだて上げるおそれなしとしない。
 安倍首相が自ら大統領なろうと野心を燃やしていることは明らかである。小泉首相もそうだった。20数年前の中曽根首相もそうだった。政治家はおうおうにして独裁者になりたがる。安倍首相はブッシュ大統領に憧れているとの見方がある。本当だろうか。
 わが国の政治制度は議会制民主主義=議院内閣制である。安倍首相は、憲法によって決められているこの政治制度を無視して、自らを大統領的地位に置こうとしている。これは憲法を無視する行為である。
 安倍首相は、大誤謬を犯した小泉前首相にならい、議会制民主主義を無視して独裁的政治を行おうとしている。悪いことに、日本のマスコミはこぞって小泉独裁政治を支持してきた。さらに、安倍内閣が発足してからは、安倍独裁体制を煽り立てている。日本の新聞記者は、本当は、独裁政治が好きなのではないか。
 本来民主主義の守り手でなければならない報道機関が、独裁体制を求めるという倒錯現象が、いま、わが国で起きている。おそろしいことである。
 安倍首相が首相官邸のホワイトハウス化のため第一に行ったのが、首相補佐官の増員である。首相補佐官として、小池百合子(安全保障担当)、根本匠(経済財政担当)、山谷えり子(教育担当)、中山恭子(拉致問題担当)、世耕弘成(広報担当)の5人を置いた。
 マスコミ界内部からの“訴え”によると、広報担当補佐官によるマスコミ監視は厳しくなり、安倍政権にとって少しでもマイナスになる報道は決して許されないほど、露骨な干渉が始まっているという。「彼ほど民主的感覚のない政治家も珍しい」という声を聞いた。
 第二は、政策決定権を各省庁から取り上げ、首相官邸に移管しようとする試みだ。安全保障担当の小池百合子補佐官(前環境相)は精力的に動き出している。マスコミは小池氏ばかりに注目し報道する。このため、外相、防衛庁長官の存在が霞む。
 教育に関しては「教育再生会議」を首相官邸のもとに置き、山谷えり子補佐官を事務局長に起用した。マスコミは「教育再生会議」にのみ注目し、文部科学省と中教審の存在が霞む。 
経済財政担当は根本匠補佐官。経済財政諮問会議との綱引きがつづいている。
 拉致問題は中山恭子補佐官。拉致問題で人気を上げた安倍首相が、さらに人気を上げるために拉致問題を利用しようとしている。
 広報担当は、2005年9月11日総選挙において自民党の広報を担当し、マスコミを小泉自公連立政権の走狗にしたことで功績が評価された世耕補佐官。マスコミ内部ではひそかに「ベリア」(ソ連スターリン体制下の秘密警察の親玉)のニックネームがつけられている。「民主主義を尊重するという意識がまったくない。目的のためには手段を選ばぬ非情で狂信的な独裁主義者」と評する人もいる。
 これらの怖れを知らぬ、謙虚さのかけらもない5名の補佐官が、安倍首相が狙う「首相官邸のホワイトハウス化」を推進している。

 安倍首相ら若い政治家は、日本の政治制度が議会制民主主義であることを無視しようとしているが、これは現行憲法のもとでは不可能なことだ。
 憲法改正は簡単にはできない。そこでやむなく現行憲法下で、憲法に違反する首相官邸中心の大統領的安倍独裁体制を築こうとしている。
 しかし、この試みは成功することはない。無理すれば安倍首相は「月の影取る猿」に終わるだろう。切り捨てられようとしている各中央省庁の官僚とベテラン議員の反撃が始まるのは時間の問題である。
 それ以上におそろしいのは2007年夏の参議院議員選挙である。それまでにも多くの地方選挙がある。この選挙を通じて小沢民主党が進出するだろう。そのとき安倍政権は落日を迎える。安倍首相の「大統領」への挑戦は失敗するだろう。