亀井久興衆議院議員(国民新党幹事長)のすぐれた迫力ある国会質問演説に圧倒された竹中総務相(3月17日の衆議院総務委員会における「NHK予算審議」)。竹中総務相は、自らの恥ずべき権力の乱用を反省し、NHKへの政治的干渉をやめてNHKから手を引くべきである【その2】
「水鏡の人」(『世説新語』)[亀井久興氏は「水鏡の士」である]
亀井久興議員の3月17日の衆議院総務委員会における質問演説は圧巻だった。NHKのあり方が明確に示された。テレビは亀井議員の演説中の竹中氏の渋い表情を映していたが、明らかな動揺が見られた。顔はゆがみ、身体を振って不満を表していた。大臣たるものが議員の質問中に心の動揺を顔の表情や身体で表現するのは大変珍しいことである。竹中氏が人間として鍛錬されていないこと、竹中氏の人間的不完全さを感じさせた。
亀井議員のNHK論を聞こう。少し長いがお許しいただきたい。
以下は、竹中総務相の答弁である。竹中総務相は亀井議員のNHK論に賛意を示したのである。「竹中敗れたり」の感があった。竹中総務相の答弁をきこう。
つづいて橋本NHK会長が答えた。橋本会長の考えは亀井議員と同じだと私は感じた。
亀井議員はNHKのあるべき姿を明らかにした上で、さらにもう一度、竹中総務相に念を押した。
亀井・竹中論戦は亀井議員の完勝に終わった。竹中総務相は亀井議員の主張に同意した。竹中総務相は、今後、NHKへの介入はやめるべきだと思う。竹中総務相が、3月17日の衆議院総務委員会における自らの発言を裏切らないことを切に希望する。
《大臣のおっしゃることはよくわかりますが、私は、やはりNHKがこういう独特の立場を得るようになったというのは、それなりに歴史的な背景があると思うんです。
戦前、御承知のとおり、日本が戦争への道を歩んでいった、そのことに対して、NHKがその道へ導いていったと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、国民に多大の犠牲を与えることになった、その責任の一端はやはり私はNHKの報道にもあったというように思います。そしてまた、戦争に入ってからは大本営発表を無秩序に流した、そのことの責任も大きくあるだろう。そういう中で、戦後、GHQの占領政策がいろいろ行われたわけでございますが、農地解放とか、財閥解体とか、そういうことが行われる、さまざまな民主化立法というものが行われる。そういう中で、新しい放送法に基づいて公共放送としてのNHKというものがスタートした、そういう経緯があろうと思います。したがって、やはり国家権力というものと公共放送としてのNHKというのは常に一定の距離を持つべきだというのが私の基本的な考えでございます。
今、大臣、BBCの話をされました。私の親しいイギリスの友人は非常にBBCに誇りをもっておりまして、BBCというのは保守党からも嫌われているし労働党からも嫌われているんだ、そういうことを言って、非常に誇らしげに話すわけでございます。
御承知のように、サッチャー政権のときにフォークランド紛争というのがありました。このときに、BBCはかなりサッチャー政権を批判する報道をした。それで、かなりサッチャー政権と緊張した関係にあった。その対抗措置として国際電波をとめる、そういう強硬手段をサッチャー政権がとったことがあります。
最近では、イラクの大量破壊兵器を持っているか持っていないかという疑惑のあった、そのことについて、今度はブレア政権と厳しく緊張関係をもった。そのときに、誤報があったということで、最終的には経営委員長とBBCの会長が辞任せざるを得ない、そういう状況があったわけでございます。
BBCの番組編成基準というものによりますと、対立をする意見があるような、そういう重要な問題については、常にその双方から取材をする、そして複数の取材をするということ、そしてまたどういう取材をしたかというメモをしっかり残すことになっております。ところが、調べたところその取材メモがなかったということで、誤報ということを対外的に認めたわけでございます。
そのときに内部で特別調査委員会をつくって、そこでしっかりとその調査をしたということで、幹部が辞任をしましたから何かBBCが敗北をしたかのように見えますけれども、私は決してそうは思わないわけで、やはり自主自律、そういう考えを貫いた、そして内部の調査委員会の調査結果というものを堂々と公表して、きちっとけじめをつけた、そこにこそ、私は、BBCのBBCたるよさがあるんだというように思います。
そういう報道の中立性、また、政府、国家権力との距離をどう保つかということは、NHKにとっても大変重要な視点だと私は思いますので、そのことについての竹中大臣の御見解と会長の御見解を承りたいと思います。》
《大変重要な、よいお話を賜ったと思っております。
実は、今のお話を聞いて一つ思い出すことがございますのですが、イングランド銀行のマービン・キング総裁、中央銀行のある種の見本ですけれども、お話ししましたときに、実は中央銀行の歴史は政府からの独立の歴史であったと。実はそのとき、マービン・キング・イングランド銀行総裁はBBCについても同じだという話をされました。政府から独立して物事を考えるということが私は本当に必要なんだと思います。
同時に、これはニーマン・ファンデーションというハーバードのジャーナリスト養成講座のトップが言っておられたことですが、常にジャーナリズム、メディアというのは権力からも距離を置いて、そして大衆からも距離を置かなければいけない、それがメディアの役割である。私は、大変重い言葉であるというふうに思います。
NHKにおかれても、そういう志を持って、しっかりと前に進んでいただけるというふうに思っております。》
《NHKにとって大変役に立つというか、教訓にすべきお話をたくさんいただいたと思います。
やはり、私もBBCの幹部といろいろ意見を交換する中で、基本はジャーナリズム精神といいますか、これが基本だ、その上でいかに社会に対して納得を得る説明責任を果たしていくか、こういうふうな取り組みも必要になってこようかと思います。これが双方ないと、やはりBBCもNHKも、受信料という財源、これは視聴者・国民の信頼のあかしでございます、ここにしっかりと結びついてこないということを話し合ったことがございます。
基本的に、我々、これから大変複雑な社会に変わっていこうかと思いますけれども、そういうふうな中で、いかにしてこの社会の規範となりますか、灯台といいますか、こういう役割をどう持てるか、日に日に追求して心がけてまいりたいと思いますし、その根幹となりますのは、やはり何人からの介入も受けない権力からの中立といいましょうか、公正公平、自主自立、この精神を守って、今後とも努力してまいりたいというふうに思います。》
橋本NHK会長の考えは正しいと思う。NHKはこの橋本路線で進んでほしいと思う。
《竹中大臣のお話がそのとおりであれば、大変私も安心なんでございますが、大臣が先般参議院の委員会でNHKの公共性を論じられるときに、国の使命という観点から論じられたように伺っております。NHKは確かに特殊法人ではありますけれども、国の役割をゆだねるという、かわりにやってもらうという、そういう多くの特殊法人とは、私は基本的にNHKというのは違うんだというように思います。
ですから、国家権力の肩がわりとしての国の役割を果たすというような、そういう意味で国の使命ということをまさかお考えになってはおられないと思うんですが、そのことをちょっと確認をしておきたいと思います。》
竹中総務相が答えた。
《重要な点を御指摘いただいて、ありがとうございます。
たしか私は国の使命というふうな言葉を使ったと思いますが、それは、報道コンテンツをつくるのが国の使命だという意味ではなくて、そういうしっかりとした独立した公共放送機関が、しっかりとした基盤のもとで、まさに独立してやっていくような枠組みを準備することが国の使命である、そのような趣旨で申し上げたつもりでございます。御理解賜りたいと思います。》