2006.3.22(その1)
2006年森田実政治日誌[153]

「公」を守り、小泉内閣の「官から民へ」「小さな政府」の間違いを正すための公務公共サービス労働組合協議会の広報活動を支持する
小泉内閣の「小さな政府」論は日本の「公」を破壊し、それを通じて日本を破壊する危険な破壊理論である。日本国民は騙されてはならない。同協議会発行の小冊子を読もう!!

「公とは、社会全体の調和を図ることである」(本山美彦〈京都大学大学院教授〉著『売られる日本、買い漁るアメリカ』ビジネス社、2006年3月刊「まえがき」より)


 小泉構造改革は、米ブッシュ政権の利益のために、米ブッシュ政権の指令のままに行動することによって日本を破壊し、米国支配階級に日本国民の富を「生け贄」として捧げるものである。小泉首相、竹中総務相、安倍官房長官、武部幹事長、中川政調会長らの従米型構造改革主義者が進める構造改革路線(「官から民へ」「小さな政府」「規制緩和」)を阻止しなければならない。その上で、「調和社会」をめざして「新たな公共性の構築」を行う必要がある。
 公務労協(公務公共サービス労働組合協議会)は、このために「良い社会をつくる公共サービスを考える」研究会をつくり、学者・有識者の協力をえて地道な研究活動を行い、それを小冊子にまとめて出版し、国民への啓蒙活動を行っている。「官」を魔女狩りするような逆風に抗して、頑張っている、
 こうした活動は貴重である。いまのところ、大新聞・大テレビのマスコミが小泉政権の広報宣伝機関と化し、朝から晩まで「構造改革」「小さな政府」「官から民へ」「規制緩和」を叫び、小泉政権を応援している。このためにいまだ多くの国民が、小泉政権と彼の手先であるマスコミのデマ宣伝に騙されたままである。だが、少数とはいえ書店で小泉批判の本を買い勉強し始めている国民がいる。これは大変よいことであるが、しかし小泉のマスコミ連合を打ち破るには、より大きな努力が必要である。全労働組合が起ち上がる必要がある。

 最近、公務労協発行の小冊子を4冊読んだ。以下、出版時期順にあげる。
(1)神野直彦(東京大学経済学部教授)・宮本太郎(北海道大学大学院教授)『良い社会をつくる公共サービスに』(2004.10.30)
(2)山家悠紀夫(やんべ・ゆきお、「暮らしと経済研究室」主宰、前神戸大学大学院経済研究科教授)『「日本21世紀ビジョン」を批判的に読み解く』(2005.8.22)〈政府の経済財政諮問会議の『日本の21世紀ビジョン』への批判〉
(3)神野直彦・宮本太郎・佐藤学・堀越栄子・間宮陽介・草野忠義『危機を超え共生社会へ』(2005.9.20)[神野・宮本氏は前掲、佐藤氏は東京大学大学院教育学科教授、堀越さんは日本女子大学教授、間宮氏は文教大学大学院教授、草野氏は連合事務局長〈当時〉]
(4)山家悠紀夫『「小さな政府」を考える〜「経済財政白書・第2章」の批判を中心にして〜』
(2006.1.31)
 以上4冊のうち、山家氏の2冊について以下、少し解説する。

 第一。経済財政諮問会議の文書『日本の21世紀ビジョン』の情勢分析の基本点について触れておきたい。山家氏は述べている。
 《報告書の流れを追ってみますと、まず、現状のままいったら日本はどうなるかということで「直視すべき危機、避けるべきシナリオ」という記述があります。》
 以下、政府側の情勢分析を要約する。「三つの流れ」がある。(1)少子高齢化、(2)地球規模でのグローバル化、(3)情報化。この三つの流れにうまく対応しないと日本の先行きは危うくなる、というのである。「危うさ」とは、日本経済が停滞し縮小すること。官が民の活動を圧迫して足かせになる。グローバル化に取り残される。希望をもてない人が増え社会が不安定化する。日本は着実な衰退の道をたどる(以上は政府側の見方である。念のため)。
 山家氏は「このようになりますと、まず脅しているわけです」と指摘している。小泉内閣は国民を脅してばかりいる。悪いクセである。
 この政府の経済財政諮問会議の見方には大きな欠点がある。第一に少子化の流れを固定的なものと考えるのは正しくない。これは変えることは可能なことだ。政府の地方切り捨て、福祉切り捨て、強者優遇・弱者いじめの小泉構造改革をやめ、若い夫婦と子どもを大事にする政策に切り換えれば、子どもは増える。少なくとも減少傾向を止めることは可能だ。現在の少子化は固定的必然的不可避的なものではなく、自民党政権の過った政策の結果である。
 第二に、グローバル化(アメリカ主導のグローバル化)は永続的なもの ではない。一時的なものにすぎない。ブッシュ時代はあと2年10カ月で終わる。ブッシュ政権が消えればいまのアメリカ流グローバリズムの時代は終わる。アメリカ流グローバリズムはもうすぐ終わるものである。政府の認識は根本的に間違っている。
 第三に政府は「情報化」を過大評価している。情報化は進むが、これのみを過大評価し、情報化の視点からのみ社会を見るのは大きな誤りである。
 山家氏も指摘しているが、政府の状況認識が誤っている上に、これを固定的に捉えて、その上で「危機だ、危機だ」と大騒ぎしている。これは愚かなことである。これが小泉内閣のしていることである。

 もう一つ、取り上げたいことがある。「小さな政府」への批判である。山家氏は『「小さな政府」を考える』の最後の〈おわりに〜「小さな政府」がもたらすもの〉の中で次のように書いている。
 《「小さな政府」で何が懸念されるかをまとめてみよう。
 1つ、社会保障制度が相当厳しいものになってしまう。
 2つ、政府サービス、教育とか保育、文化、福祉等々が低下して日常生活が不便になる。要するにこれらのサービスを受けるお金がかかるようになる。
 3つ、安定性の低下、将来不安の高まり等が起こる。(以下略)
 4つ、労働条件が全般的に厳しくなる。(以下略)》
 「小さな政府」は国民を不幸にするということである。

 山家氏の分析は正しい。小泉内閣の「小さな政府」は大間違いである。「中くらいの政府」でよいのである。マスコミが小泉首相の「小さな政府」論をほめ上げるのは、国民を誤った方向に導くもので、大変危険である。
 もう一つ、小泉内閣の「官から民へ」も大きな間違いである。正しい方向は「民と官の調和」である。
 2006年の政治の中心課題は、小泉政府の「小さな政府」と「官から民へ」の政治路線をつぶして、「中くらいの政府」「民と官の調和」「思いやりのある中道政治」の方向へ転換することである。
[アメリカのブッシュ政権にバックアップされた政府、マスコミ、エリート官僚、自民党と公明党、経済界あげての「官から民へ」「小さな政府」の大合唱に抵抗しながら「公」のために戦っている公務公共サービス労働組合協議会の活動を支持したい。同時に、より積極的な「公」の大切さを国民と組合員に訴えるための活動を強化することを望む――森田実]