DC260 Zoom

 1990年の時点でKODAKは4BASEというサイズを提唱していた。これは、銀塩写真から移行するデジタル写真のひとつの提案だった。これが、1024×1536ピクセル。KODAKはこの後、これをひとつのメガピクセルという目標として一般向けのデジタルカメラをつくってきたといっていい。市販されるデジタルカメラの先駆けとして、AppleへOEM提供したQuickTake100、名機とも称されたDC40、さらに、KODAKが最初にメガピクセルを称したDC120。特に、DC120は、銀塩カメラを使ってきた人間にとってはさほどの違和感もなく絵づくりのできるすぐれたモデルだった。120のメガピクセルは、89万画素のCCDをソフトウェアで補間して120万画素にする、というちょっと変則的なものだったが、出力される画像は素晴らしかった。また、無圧縮のデータをとりだせるのも魅力の一つだったといえる。使用しての良い点や不満の詳細は別コーナーを参照してもらうとして、絵づくりのできるカメラとして大変だったのは、カメラの形態がちょっとしたビデオカメラ的であり、軽くスナップ、という感じでは使いにくい点だった。対面の状態で会話しながら、ちょっとシャッターを切る、ということがしづらい。構えた時点で、「カメラをかまえてるぞ」という気配が瞬時にまきちらされてしまい、相手も相応の緊張をしてしまう。撮影をする、という喜びにおいてはDC120は合格点だったのだけれど、スナップ用に常に持ち歩く、という点ではいまひとつ不満足、であった。

 今回、とうとうDC260Zを買ってしまった。デジタルカメラはこれで四台目。雑誌の評価等を見ていた限りでは起動時間や撮影感覚等についての不安が大きかったのだが、実際に手に取ってみると対した問題ではなかった。起動時間はたしかにちょっとかかる感じはするがこれはDigitaスクリプトで自動電源オフまでの時間を大幅に長く設定することで支障なくなる。撮影間隔は保存時間としてはすばやくはないが、二コマは連続で撮影でき、かつ、保存前にプレビュー段階で不要な画像は削除できるため、喧伝されているほどの問題ではない。十字カーソルが柔らかくて使いにくい、という評もあったが、これはこの手のインターフェイスに慣れているかどうかという問題だろう。はやいはなしが、プレイステーションのデュアルショックをつかえるならば問題はない。ある雑誌では、DC260はいつも持ち歩くカメラではなく、ここぞという撮影で心構えとともに持ち出すカメラだ、というようなことがかかれていたけれど、このカメラのサイズと持ちやすさは「いつももちあるく」ことを十分に可能にしている。そりゃ、いま使っているメモ用カメラ、VE-LC2などにくらべると大きいのはたしかだけれど、用途が違うのだから仕方がないのだ。

 さて、DC260を使ってみた感想の、「良い」点から。

 DC120よりもコンパクトになっていて、しかもホールディング感が実によい。また、全体のつくりもかちっとしていて、120よりも高級感がある。

 画面の縦横比が銀塩の35mmフィルムと同じなので、構図がとりやすい。これはとても気持ちがよいことだ。またそれにともなって縦位置検出センサーが実に便利である。

 ストロボをオフにして室内撮影をした時、結構高い感度がある。手ぶれに気をつけていけば手持ちで結構とれる。

 DC120でちょっと困っていた「バッテリー収納部の蓋」も改善されている。120の時は、蓋が完全に本体からはずれる設計になっており、また、電池そのものも手前から奥に重なるようにいれるスタイルだった。このため、電池交換の際に蓋をおとしてしまったり、電池がなかなかでなくて手間取ったり、ということが多かったのだ。260では蓋は蝶番で本体につながっている。さらに、電池は横に四本ならぶ形で収納するので交換も実に楽だ。

 デジタルズームも結構つかえる。もともとの解像度が高いためかもしれない。

 望遠側でそのまま近接撮影ができるため、接写が随分手軽にできる。デジタルズームもあいまって、構図の組み方に自由ができて楽。

 標準モードでの秒3枚の八枚連写はつかいこなしにこつがあるけれど、結構おもしろそう。

 また、DC260を使ってみて「ちょっと困る」点。

 近接撮影時のファインダー視差が大きい。このため、接写時のフレーミングは液晶にスルーで表示しながらでないとつらい。ファインダー内のガイド(マニュアルにはこれについての説明がない)はほとんど役にたたないのだ。もっとも、NiMHの電池を使えば液晶をファインダーがわりにして使っても気にならないので近接撮影には液晶をつかうことにすればよいわけだが。

 画像を表示する際、ラフなブラウジングは十分に速いのだけれど、きちんとした表示が終わらないと拡大等ができない。表示が完了するまでの時間もちょっと長いような感じを受ける(このこともマニュアルに記述がない)。ただ、一端きちんと表示すれば拡大画像のスクロールが軽快に行えるのはよい。VE-LC2はズーム機能といってもカーソルを動かすたびに画像を展開しているらしく実にのんびりとして反応がかえってきたものだったから。

 マニュアルがわかりづらい。ファインダー内のガイドについての説明がなく、メニューの説明もcapture、reviewのモード切り替えについての表記がない、等。

 ファインダーの位置がカメラの左上端なので、ちょっととまどう。なまじホールディングがよいだけに、そして、フレームの縦横比がわかりやすいために、つい、普通のカメラのように構えてしまうのだ。そうすると、当然ながら目は液晶の上のところにある。まあ、これは慣れればいい程度の問題だけど。

 で、Wish Listを。

・FlashPixでの無圧縮保存モードがほしい
 120でも「ここぞ」という場面で使っていたこのモード、せっかくの160万画素でつかえないのはくやしい

・液晶ファインダーの更新速度を速く
 結局、ここで色やフォーカスを確認するのには限界があるわけで、たとえば緑一色などでいいから単色で更新レートをはやくするモードが欲しい。接写時のフレーミングチェックにはこれで十分なのだから。

・秒12コマ連写は無理?
 220に搭載されている12コマ連写、たぶん保存画素数の問題なのではないかとおもうけれど、さらに低い解像度で連写速度をあげる、というのは無理だろうか。同時に連写の撮影枚数がふえるともっとうれしい。AFきかなくていいから…フォーカス固定で。

 とりあえず、近日中に行われるファームウェアのアップデートに期待しているところ。現状でのテスト撮影について簡単な画像のページをつくった。AdobeのImageStyleのデモ版の試用もかねている。

1998.09.13.