新聞と電子新聞(E-News)
以前は新聞をとっていたのだけれど、あまりにも膨大な体積を占有する割には読むところがないのでやめてしまった。もちろん、頭の悪い勧誘員(大体が地元の人間なのだけれど)のツラを見るのも不愉快というのも理由の一つではあったけれど。ただ、そうなると世の中の出来事の流れがうまくつかめなくなるのでちょっと気にはなっていた。テレビなどという代物も、例の阪神大震災のあたりから顕著になってきた馬鹿製造機能ばかりがのさばっているので気持ち悪くてほとんどみもしないし、こうなると、さらに世間から隔絶されてしまう。
そうこうするうちに、サンケイグループの電子新聞・E-Newsの新聞広告を見た。テレビ電波に新聞データをのせる、というはなしはその半年以上前にどこかでみかけたの覚えていた。新聞記事を常に身近においておける、という利点に加えて、電車の中などで読むものがない時のひまつぶしになるので早速申し込んだ。勝手に配信されてくる新聞というのは実に気持ちが良い。
で、まずは簡単な感想をならべてみよう。
- ビューワのサイズは手頃。ただ、ボタンの反応がちょっと悪い。容量とかCPU性能の問題なのだろうけれど、ときおりいらいらすることがあるのは確か。バックライトのついたモデル、選択した記事をパソコンに転送するためのポートのあるモデル、といったもの、CPUの性能をあげて内蔵のRAMを増やしたモデル、といったものが次機種となるか。
- 受信した新聞データは一度IBMフォーマットのフロッピーに記録される。つまり、一日あたりの転送データは1.44Mバイト以内、ということになる。問題は、このフロッピーになんらかの問題があった場合、その日の分のデータはどこかに消えてしまい、手に入らない、ということだ。この点については、20M程度でいいからハードディスクを内蔵してその中に例えば一週間なり二週間なり分は本体で保持できるようになると便利なのだが。あと、バックナンバーの入手ができるようになる、というのも課題であろう。
- 本体は結構大きい割に電源を内蔵していない。みっともないACアダプタをつなげなくてはならないのだ。また、当然ただけれどテレビ電波の入りの悪いところでは受信を失敗することもあるらしい。ビューワーの充電も本体で行うわけだけれど、ビューワーの追加購入をした場合は充電機単体というのも必要になるのではないだろうか。
- でも、なによりも大きな問題は、その記事にあった。ひとつに、分量が少ない。これはもう絶対的に少ない。新聞の記事をすべて読んでもあっという間につきてしまう。加えて、誤植がどうしても気にかかる。これがなかなか多いのだ。ただ、これについては、産経新聞のものをそのまま流し込んでいるだけ、ということなので本紙の問題らしい。あと、1バイト英数と2バイト英数がみっともなく混在しているのも簡便して欲しいところ。これは、出版関係者は意外と無頓着というか、1バイトと2バイトの文字幅でレイアウトをつくる、という一種の手抜きがいまだにまかりとおっているということなのだろう。(そういえば、PC-VANというパソコン通信でみかけた某ソフトハウス社長など、DTP用のプラグインを仕事でつくっている癖に文章力もなければなんというか日本語のセンスというものもなかった… DTPのプロみたいなことを自称する人間は他にもいたけれどそちらもひどかった。いや、こちらは人間としてひどかったので論外かもしれない。とにかく、彼の「おかげ」でPC-VANにはヒューレットパッカードのサポートSIGは潰れたりもした、というのは余談なので別稿にまわそう)
記事のひどいのといえば、(つまらないまんがは趣味の問題とはいえ)、「交換コーナー」の一つに驚くことに「ダビングして下さい」コーナーがどうどうと存在していることだ。新聞というメディアが、放送物の著作権というものをどう扱うのか、という一つの見本となるのかもしれないけれど、あまりほめられたものではないだろう。例えばこんな具合だ。
平成9年の1月19日の「★ぴあDEひと息」コーナー内の「☆なんでも掲示板」中の「☆ダビングさせて下さい」の中にはこんな記事がある。
「・12/2(月)フジテレビ「HEY! HEY! HEY!」(ゲスト=藤井フミヤ他)をVHSで録画した方、ダビングさせて下さい。送料負担、ハガキで。(この後に住所と氏名が続く)」
まあ、賛否両論、というものといえなくはないが、正直いえばこんなものはサービスにいれて欲しくはなかった。なんだか、購読しているだけで泥棒の片棒をかつがされているような気がしてくるからだ。
さて、こういうことをレポートする「場」はないわけではなかったのだが、昨年の暮を境になくなってしまった。もともと、PC-VANにSIGというかたちでサポートコーナーがあったのだけれど、そこはあまりにも閑散としていた(PC-VANの最近の傾向を考えると当然だろう)ために、ショップのみになってしまい、internet上のページだけが残っていた。ここに、ショップの他、受信したデータをパソコンで利用する、あるいはその逆のためのツールが登録されたり、興味を持った人間が意見交換をできる掲示板もつくられていた。この掲示板、これからE-Newsを購入しようとする人の他、実際に購入した人間による意見交換も活発になされていた。現行機種の不満点と次機種へのリクエスト、トラブルの体験談と対策などなど。ところが、これが年末を境にいきなり閉鎖されてしまった。なんども「効用面からのみなおし」なのだそうだけれど、まさか利用者からの意見がけむたくなったのではないかと思えなくもない。こういう双方向の媒体をちゃんと使いこなせないようでは電子新聞というのは発展のしようがないと思うのだけれど… 大学の「学科公式ページ」みたいなもので、こういうところにも一種のカンリョーカがおしよせているのかもしれない。
Webというのは、発展の可能性のある巨大な媒体であると同時に、既存のメディアの中にはWebによってそれ自身のそれまでのあり方が否定され、崩壊してしまう危険をもよびさますのだろう。否定され、崩壊してしまうような媒体は、存在そのものが悪なのだから一国もはやくこの世から滅してほしいものだけれど、そういうのに限って口をぬぐってごまかそうとするものだ。電子新聞のホームページがこの手でないことを信じて、今は一刻もはやい復活を期待して待つこととしよう。
1997.01.19