OLYMPUS
OM 707
OM101のところではダメカメラとして酷評したOM707だが、あまりに安く売られていたので不憫になり引き取った。35−75mmのズームレンズが付いており、具合の悪い箇所は見当たらない。
OM707のスペックについてはあまり情報がないかもしれない。測光方式は中央重点平均TTLダイレクト測光。露出制御はプログラム自動露出のみ(プログラム・シフト、AEロック付き)。ファインダー視野率は93%、ファインダー倍率0.8倍(50mmで無限遠)。フィルム巻上げは最高1.5コマ/秒。電源は単4電池4本。グリップ内蔵フラッシュはGN12(ISO100)で35mmの画角に対応。
実際、使い勝手は悪い。ポップアップ・フラッシュ内蔵のグリップ(「パワーフラッシュグリップ300」と呼ぶそうだ)であるが、シャッターボタンは前面にあり、ここに人差し指をかけて残りの三本でグリップを握ることになる。しかしこの上下の幅が指二本分しかなく小指がはみ出してしまうのだ。小指が掛からないと握力が出ないわけで、実に不安定なのである。裏蓋にある親指グリップの位置が少々遠いことも握り難さを助長してしまっている。さらにAE Lockボタンの位置も遠い。シャッターボタンに人差し指を掛けたままでは実に押し難いのである。それほど軽い機体ではないから、けっきょく左手のお世話にならざるを得ない。
AFの性能は、この時代のカメラにしては標準と言ってよいのかもしれない。要するに遅く不確実であるが、使えないことはない。
問題なのはOM三桁機専用レンズには絞りはおろかフォーカシング・ヘリコイドすら無いことだ。マニュアルでピントを合わせるためにはボディ左肩にあるAF/PF切替ボタンを押さねばならない。PFとはパワー・フォーカスの略。フォーカシングはボディ側のモーターによって駆動されており、これをマニュアルで作動させるのである。AE Lockボタンの右にあるProgram Shift レバーがPF駆動レバーを兼ねており、左右にスライドさせて動かすのだが、これが頭に来るくらい遅く、かつ合焦点でピタリと止めることは非常に困難であり、全く実用にならない。(OM101ではダイヤル式になり、かなりスピードが改善されている。)
AF専用レンズは合計8本発売された。中古カメラ屋でたまに見かけるが安価である。なにせ二種類のボディでしか使えないのだから。
マニュアルのOM ZUIKO レンズも装着は可能である。(AFレンズをマニュアルボディに装着はできない。) 絞り優先で使用できるが、ファインダー表示がされないので一体どのくらいのスピードでシャッターがきれたのか、皆目検討がつかない。
付け加えておくと、本機の測光システムはダイレクト測光であり、フィルムを装填せずにシャッターをきるとフィルム圧板の反射を測光してしまうのでかなりスピードが遅くなるが、これは故障ではない。またバルヴもなければシンクロ接点もないのだ、このカメラは。
ここまで欠点をあげつらったが、実際に手にしてみると、これがなかなか愛すべきカメラなのである。先ずはデザイン。大きなフラッシュ内蔵のグリップによって、レンズが向かって右にオフセットされて見えるが、このアンバランスをペンタ部のロゴが支えている。ロゴの横からはAF補助赤外光が照射され、なかなか格好が良い。OM101の流麗なボディに比べるとデザインの処理が未熟な感は否めないが、そこが魅力でもある。

OMの名が付いたAF一眼カメラはこの一機種に終わった。周知のようにオリンパスはその後、固定式のズームレンズを搭載したL シリーズの開発に力を入れるのだが、この辺りに他社とは異なるオリンパス独自の考え方があるようだ。たしかに軽量一眼レフにズームレンズ一本で済ますならば、レンズを固定式にしてより小さく軽量にしたほうが良いかもしれない。L シリーズに搭載されているズームレンズは驚くほど高性能で内蔵フラッシュも強力、これ一台でほぼ全てまかなえるだけの実力は十分にある。事実、L シリーズは実利主義の合衆国ではかなり売れたようである。しかしコンパクトカメラに高倍率にズームレンズが搭載されるに及び、L シリーズのアドバンテージは薄れていった。
レンズ交換式一眼レフには機能を拡張する楽しみがある。予算に合わせて少しずつレンズを増やしてゆく楽しみが。買っておしまいではなく未来に可能性を残しているところがレンズ交換式カメラの魅力なのだから。デジタルの時代になってもレンズ交換式一眼レフシステムが人気を保っているのは、この辺りに理由があると思うのだが。
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