歯科麻酔科医と病診連携    −病院歯科麻酔科医として携わった4例の異常絞扼反射症例から−  清水市立病院口腔外科  望月 亮 【緒言】開業歯科麻酔科医にとって、病診連携はその能力を有効に生かせるまた とない好機であると思われる。演者は「病院歯科麻酔科医」として、当院口腔外 科・手術室で過去4年さまざまな症例に携わってきた。その中で、歯科麻酔科医 として最もそのoriginalityを発揮しうるものの一つである、異常絞扼反射患者の 歯科治療について、症例を供覧しながら「歯科麻酔科医と病診連携」について考 えたい。 【症例】本年に入ってから、立て続けに3例の異常絞扼反射患者の歯科治療を依 頼された。いずれも前日入院、全身麻酔に準じたpremedicationの下に、プロポ フォルにより極めて良好な鎮静状態が得られ、予定されたかなりハードな内容の 歯科治療を予定通り行い得た。このようなシステムが良好に稼働するまでには、 麻酔科・口腔外科・手術室などとの密接な事前調整が必要であり、これまでその ような経験のなかった当院においては、実現は困難を極めた。体制稼働前の異常 絞扼反射もう1例も併せて供覧する。 【考察】大多数の病院歯科は、大学口腔外科からの派遣の下に、口腔外科治療を その主眼においている。当科でも、演者の赴任以前には、このような特殊歯科治 療に応ずる体制にはなかった。一方で、歯科大学のない本県においては、障害者 歯科などのいわゆる特殊歯科診療において、病院歯科の機能にははなはだ多くの ものが期待されている。開業歯科麻酔科医が自院で出来る特殊歯科診療には限界 があり、踏み込んだ全身管理を行えば危険も大きく、経済的にもリスクが高い。 病院歯科に期待される機能を補完する役割、一般開業医・歯科医師会と病院歯科 との橋渡しをする役割は、実に歯科麻酔科医に求められている。このような意味 からも、開業医の視点を兼ね備えた病院歯科麻酔科医が、フレキシブルな活動を 行う意義は大きいと考えられる。 【結語】開業歯科麻酔科医の一つの行き方としての、病診連携を舞台にした病院 歯科麻酔科医としての活動は、実現は困難だが意義のある選択の一つである。 【参照】http://www.pluto.dti.ne.jp/~makozuki/smh/orals/smh2.html