機動警察パトレイバー特集



写真は、初期のビデオ全6話と第7話、
その他映像特典を収録した
「機動警察パトレイバーLDボックス」です


作品概略

 この作品は、元々1988年にビデオ用に発売された作品です。
 原案・ゆうきまさみ、脚本・伊藤和典、キャラクターデザイン・高田明美、メカデザイン・出渕裕、そして監督に押井守という「ヘッドギア」と呼ばれる5人の集団が作り上げた名作アニメで、未だに根強いファンを持っています(って、僕もそのひとりですが ^^;)。


 時は近未来(一応、1998年ということになってるみたいですが……)。
 この時代、土木作業用に開発された、レイバー(労働者)と呼ばれる汎用人間型作業機械(いわゆるロボットですね)が広く普及していた。
 しかし、高普及に伴い、そのレイバーを使用した犯罪   レイバー犯罪も多発するようになり、警視庁は本庁警備部内にレイバーを使用してその対策にあたる特殊車両二課を新設した。
 ここに、特車二課、パトロール・レイバー中隊、「パトレイバー」が誕生したのである。
 だが、レイバー犯罪の増大に対し、最新機種の開発と同時に増設された第2小隊に配属されてきたのは、教育期間の短い即席警官(って、おいおい)とどこの部署からも引き取り手のないようなあぶれ者達だった……。

 と、いう前振りで始まるこの作品は、当初ビデオ用として6本の作品が作られ、それで終わる予定でした。
 しかし、人気の高まりとともに続編を望む声も高まり、翌1989年に、遂に劇場版が制作され、更に追加のビデオ第7話、そしてテレビシリーズまで作られた後、もう一度全16話のビデオシリーズがリリースされています。
 そして1993年、第2作目の劇場版が制作され、現在3作目の劇場版が制作中となっています。

 さて、そんな多彩な「パトレイバー」なんですが、今回は初期ビデオシリーズ全6話、そして劇場版の1と2を取り上げてみたいと思います。
 というのも、僕が本当に好きな「パトレイバー」は実はこの8本なんですね。追加のビデオ第7話とテレビ、そして第2期のビデオシリーズは残念ながらスケジュールの問題で監督が交代してしまって、押井守さんは演出をしていないんです。その影響か、またはテレビということもあってか、過度に子供向きになってしまっている面もあって……。 
 という訳で、今回は押井守さんが監督した作品を基本に特集を組んでみます。


タイトル紹介

第1話「第2小隊出動せよ!」
『新設された第2小隊。しかしそこに配属されてきたのは、寄せ集めの落ちこぼれ警官達だった。
 チームワークの欠片も見せず、配備されるはずのレイバーもまだ工場から届かない。
 しかし、そんな彼らを事件は待ってはくれなかった。
 その夜、彼らに下されたのは、要のレイバーもない状態での出動命令であった。』

 記念すべき第1作目。いわゆるキャラクター紹介的な話ですが、これが結構ツボをおさえてあって、会話のやり取りがとても楽しい作品です(6話中一番レイバーが活躍した話でもあります)。
 第2小隊隊長の後藤喜一と第2小隊隊長の南雲忍、そして篠原遊馬(しのはら・あすま)と泉野明(いずみ・のあ)の会話は笑いを誘います。
 特にこの後藤隊長というキャラクターは、これ以降、シリーズを通して深みと重みを増していきます(軽さも同時に増していきますが……)。 

第2話「ロングショット」
『NY市警から派遣されてきた美人警部補。その時、東京にはNYから要人が到着しようとしていた。
 その活動を懸念される過激派テロリストの動きに、要人警護に向かった第2小隊の面々を待っていたモノとは?』

 ライバル登場、という位置づけの話だそうです。
 NY市警の警部補、香貫花(かぬか)クランシーは、この後レイバー隊の研修生として第2小隊に居座ります。
 主人公(?)泉野明と価値観が対立する、という位置づけになっています。テレビでは張り合って、お互いが成長していくというシチュエーションも描かれていましたけど、6話しかないビデオではそこはあまり描けなかったみたいですね。

第3話「4億5千万年の罠」
『ある夜、防波堤の上から自動車が海に引きずり降ろされるという事件が起こった。
 海底に沈んだ車と状況調査のため、潜水レイバーを潜らせた刑事達の前に姿を現したのは、未確認巨大生物だった……?
 果たしてこの怪物は何者なのか。
 要請を受けて出動した第2小隊の前に、その怪物が立ちはだかる。』

 お遊びの強い怪獣物です。
 シリーズ中、良くも悪くも押井守カラーが最も色濃く出た話と言えましょう。
 「結局、力技で終わらせてしまった。押井監督がなんとかまとめてくれた」とは脚本の伊藤和典の弁。
 ストーリーうんぬんはともかく、初代のゴジラに対するオマージュは楽しめました(あ、いや、好きなので……)。

第4話「Lの悲劇」
『街のど真ん中でレイバーの銃をぶっ放す、という暴挙に出た第2小隊。
 その行為に対して、レイバー隊員養成学校での再訓練が全員に命じられた。
 懐かしの校舎に戻った面々。しかしそこで彼らを待っていたのは、不可思議な怪現象の数々だった。
 この学校で何が起こったのか? この現象の原因は?
 恐怖の再訓練の中で隊員達が見た物は……?』

 これもお遊びの強い幽霊物です。
 僕がシリーズ中、一番笑ったのはこの話でした。
 周囲を取り巻いていく謎から、その答えを導き出していく過程はなかなか楽しめて、最後の決着もこれがまたいい!
 軽く見るには一番のお薦めではないでしょうか。

第5話「二課の一番長い日」前編
『冬が訪れ、第2小隊の面々は短い冬休みに入り、それぞれにくつろいだ時を過ごしていた。
 しかしその頃、特車二課の建物の近くに不振な車が出没し、特車隊の動きを監視するようなそぶりを見せていた。
 不審に思った後藤隊長は、行動を開始する。
 しかし、事件は起こってしまった   
 厳しい戦いを承知で、隊員達は即座に東京を目指し始めたのだった。』

 シリーズ中最高傑作!(あくまでも私的に)
 とにかく後藤隊長がかっこいい!
 僕はこの作品で、初めて映像作品を見ていて鳥肌が立つ経験をしました。
 脚本家が書き上げた後「やったぜ! ざまぁみろ!」って気持ちになったと言ってましたが、よく分かります(自分も文章を書きますからね)。
 語り口がとにかく素晴らしく、おじさんキャラクターの立ち方が半端じゃないです。

第6話「二課の一番長い日」後編
『東京に集結した第2小隊。
 しかし、事件は様相を悪化させ、警察首脳部の動きも硬直の色を見せていた。
 そして下された、後藤隊長の逮捕命令。
 孤立無援の中で、後藤はひとり、事件解決への道を探っていくのだった。』

 初期ビデオシリーズを締めくくる最終話。
 おじさんキャラクター立ちまくりです! 後藤隊長も、相手方のおっさんもかっこいい!
 でもこのお話、後編だけに、あまり詳しく触れるとネタばれになっちゃうんですよね。
 ぐっとがまんがまん。

「機動警察パトレイバー 劇場版」
『都内で多発する、不審なレイバー暴走事故。
 しかし暴走するレイバーには、ある共通点があった。
 その謎に迫ったとき、隊員達は恐ろしい事態が迫りつつあることに気づく。
 都内のあらゆる箇所でレイバーが一斉に暴走する!
 その魔の手は、すぐそこまで近づいていたのだった。
 首都東京は壊滅するのか?』

 遂に劇場に進出した第1弾。
 エンターテイメント作品として十分に力の入った物であるばかりでなく、現代の問題を訴える押井節が冴え渡ります。
 アニメファンでない方でも、この映画は「面白い!」と言ってくれるのではないでしょうか。
 傑作です!

「機動警察パトレイバー2 the Movie」
『レイバー暴走事件から3年がたった2002年、冬。
 第2小隊で活躍していた隊員達も、今はそれぞれの職場に転属し、それぞれの道を歩いていた。
 ある日、不審な戦闘機が東京ベイブリッジを爆破する事件が発生した。その1発のミサイルが、全ての始まりだったのだ……。
 その後発生する不審な出来事の数々に、警察と自衛隊は対立を深めていく。そして政府は、事態の収拾を図るべく、自衛隊の実戦部隊に治安出動を命じる!
 そして、後藤は旧第2小隊の面々に事件解決のため招集をかける。
 第2小隊、最後の戦いの結末は?』

 これは、東京を舞台にした内戦シュミレーション映画ですね。
 元々押井守と伊藤和典が「東京を戦場にすることが出来るか」という打ち合わせから始まって、こうすれば出来る! という筋が見えたから制作に踏み切ったといいます。
 すっかり後藤隊長が主役ですね。って、この方が好きですが。
 緻密なストーリー展開と浪花節のアンバランスさに、乗ることが出来れば病みつきのような感覚を味わえます。
 (乗れなかったら、この映画は厳しいでしょうが……)



ごく私的な作品の魅力

 この作品の一番の魅力はキャラクターの会話と、巧みなストーリー展開ですね。
 しっかりと練られた脚本と、テンポのよい語り口、そして何より演出の見せ方が素晴らしい!

 キャラクターがしっかりしているから会話が楽しくなるんでしょうが、後藤喜一というキャラクターが特に秀逸ですね。
 飄々とした行動と、軽いしゃべり方、しかししっかりとした重みと行動力、影響力を持っている。
 このようなキャラクターが表現できた、というだけでこのアニメシリーズは凄いと思いますね。
 ただ、ゆうきまさみの漫画を読んだり、監督が交代した後のテレビを見たりする限りでは、こういった味を後藤隊長が出し切れていなかったところを見ると、やはりこのキャラクターは押井守のキャラクターであったのかな、と思います。
 第6話で、後藤隊長相手に松井刑事が探りを入れる会話を交わす船上でのシーンは、今見ても鳥肌物ですね。


そして、この作品から派生したものたち……

1.「未来放浪ガルディーン」(火浦功著、角川文庫)
 この「パトレイバー」という作品のルーツは、ビデオ化が実現する十年も前から漫画家のゆうきまさみが「こんなアニメあったら面白いなぁ」なんて同人誌ノリで(実際同人漫画出身ですしね)ノートに書いていた企画書だそうで(といっても、当時は宇宙が舞台だったりとかしていたらしい)、それをメカデザインの出渕裕が目に留めて「やってみよう」という話になったそうです。
 そして、企画書を作るなら文章を書く人が必要だ、ということになり、たまたま知り合いだったSF作家の火浦功を仲間に引き込んで、企画書を作成した。その内の1本が「ガルディーン」だったのです。
 結局その時にはアニメの企画は没になり、「ガルディーン」だけが小説として世に出てしまったんですね。
 「パトレイバー」はこの後、脚本家の伊藤和典、そしてその妻でキャラクターデザイナーの高田明美が加わり、最後に押井守を迎えて、「ガルディーン」の数年後にやっと姿を現すことになります。

2.「機動警察パトレイバー」(ゆうきまさみ著、少年サンデーコミックス)
 ゆうきまさみによる、漫画版「パトレイバー」です。
 本人によると、最初は漫画版を描く気はなかったそうですね。
 「自分がこんなものを観たいから企画を立てたのであって、描きたくて企画した訳じゃない」ということですが、ビデオのリリースとほぼ同時期に連載が始まりました。
 これはこれで面白い漫画になっていました。企業と企業の開発競争の姿がストーリーに絡み合い、なかなか複雑な人間模様を展開していました。
 最後は、結構どろどろしていたような……。

3.「機動警察パトレイバー」(伊藤和典他著、富士見ドラゴン文庫)
 こちらは、今回特集した8本の脚本を担当した伊藤和典、テレビ版で脚本を書いた横手美智子、それに押井守等が書いた小説版「パトレイバー」です。
 この小説シリーズの中で、「劇場版1」の小説版を伊藤和典が、「劇場版2」の小説版を押井守が書いているのが興味深い点でしょうか。
 アニメシリーズと漫画版を繋ぐようなシチュエーションの話もあったりして、結構楽しんで読むことが出来ました。


 その他にも、来日したジェームズ・キャメロンが「劇場版1」を観て、その劇中の「レイバー製造シーン」にインスパイアされて「ターミネーター2」の予告編(あのシュワちゃんがプレスされていく製造工程を見せていた奴ですね)を作ったとか、色々な話を聞いたことがあります。
 何にせよ、現在製作中の「劇場版3」が楽しみです。しかし、噂ではレギュラーはもう後藤隊長しか出てこないとか……。少し寂しい気もしますが、後藤さんが出てるんならそれだけでOKかな。
 残念ながら、監督は押井守ではないらしいのですが、でも観に行っちゃうんだろうなぁ。
 でも、制作決定の報からもう3年くらいたってるような……本当に、作られてるのかな?
 ちょっと不安ながら、続報を待っているのでありました。