ディレクターズ・カット
ブレードランナー最終版


21世紀初め、タイレル社は人間そっくりの
ネクサス型ロボットを開発。
それらはレプリカントと呼ばれた。


ストーリー:
 2019年のロサンゼルス。酸性雨が降り続くこの街に、植民地惑星で反乱を起こしたレプリカント(人造人間)が4体、逃げ込んだ。こうした事件を担当するのは、ブレードランナーと呼ばれる特捜。高性能な4体のレプリカントを捕まえるため、特捜本部は退職した凄腕の元ブレードランナー、デッカードを呼び戻す。こうして、デッカードのレプリカント捜索が始まるのだった。


スタッフ
  監督 : リドリー・スコット
  音楽 : バンゲリス
  未来美術デザイン : シド・ミード

キャスト
  ハリソン・フォード(デッカード)
  ルトガー・ハウアー(バティー)
  ショーン・ヤング(レーチェル)


作品概要

 フィリップ・K・ディックの短編小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の映画化作品。
 1982年の初公開時には興行的には失敗に終わったものの、一部でカルト的な人気を博し、徐々にSFの金字塔となっていった映画です。

 この映画は、公開当時あまりに先進だったためにリサーチ試写でも評判が芳しくなく、映画会社がハリソン・フォードのナレーションを随所に入れさせ、更に監督の意図とはまるで異なるハッピー・エンドを付け加えたのです。
 このことはリドリー・スコット監督は非常に気に入らなかったようで、公開当時にはあちこちのメディアで不満を漏らしていたそうです。

 そして、1991年。
 リサーチ試写のフィルムを再公開する話が出てきたとき、監督は「過去のものを流すのならば、いっそ本当に作りたかった形で編集したい」と申し出たのです。

 そうして再編集の後リバイバルされた作品、それがこの「ディレクターズ・カット最終版」です。

 ちなみに、ビデオではその前に一部残虐なシーンを追加した「完全版」というバージョンも発売されていますが、そちらでは劇場公開版同様ナレーションは入ったままでした。

 この「ディレクターズ・カット最終版」ではナレーションがなくなったため、各場面のキャラクターの心の動きが俳優の演技のみで語られます。これが非常にいいんです。複雑な心の機微が、ナレーションによって狭められなくなり、作品の幅がとても広がっています。


ひとこと

 「サイバーパンク」という言葉を広げた、まさにSF映画のひとつの金字塔的作品です。
 この作品で描かれた独特の世界観と、その退廃した世界の倦怠感の表現は素晴らしいの一言。その中で描かれるブレードランナーとレプリカントとの戦いはハードボイルドの極みです。

 そして、この作品はSFの衣装をまといながら、哲学的な要素を多分に含んでいます。

 「命の時間」をあらかじめ設定されているレプリカント達。そのレプリカント達が、短いからこそより「生命」の重さも輝きもよく悟っているという事実。
 降りしきる酸性雨の中、自らの命の時間がなくなっていくことを分かっていながら、最後に「他人の記憶の中」に生きる道を見いだしたのか。
 生きる価値と、死んでいく道。
 その両方を真剣に考えていたのは、どの人間達よりもレプリカントでした。
 「真剣に生きることを忘れた人間」。
 この作品は、ある側面ではそれを強く描いているように思います。

 また、特筆すべきはシド・ミードが手がけた世界観の美術。
 未来世界の無国籍な混沌とした町並みと、醸し出される退廃的な雰囲気がとても素晴らしく、その独特な世界観は後のSF映画にも大きな影響を与えました。

 現在のSF映画の源流の1本といえる作品です。



 ……それにしても、本当にデッカードは……?(←ネタバレ注意)


ディレクターズ・カット ブレードランナー最終版」DVD

1991年アメリカ映画 116分 ワーナー・ブラザーズ提供

音声
  オリジナル(英語)ドルビーデジタル(2チャンネル)
字幕
  日本語字幕
  英語字幕

映像特典
  「オリジナル劇場予告編」