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洋画 タ行


「タイタニック」(1997年)

 1912年、豪華客船タイタニック号は2200人の乗客を乗せ、アメリカへの処女航海へ乗り出した。その船上には、落ちぶれた名家の娘ローズや、しがない絵描きジャックの姿もあった。身分の違う二人は、偶然に船上で出会い、やがて惹かれ合っていく。だが、けして沈まない船と呼ばれたタイタニック号は、やがて想像だにしない悲劇に見舞われていくことになるのだった。

 大ヒットを記録した、レオナルド・ディカプリオ主演、ジェームズ・キャメロン監督のラブストーリーです。
 正直に言うと、タイタニック号を舞台とするのであれば、スペクタクル映画に仕立てて欲しかったというのが私の第一印象でした。それに、恋愛ものに仕立てるにしても、あまりにも恋愛部分がおざなりというか……ローズがジャックの奔放さに惹かれるのは分かるんですけど、ジャックがローズに惹かれたのが何故なのかが全く分からないんです。「君は誰よりも心が美しい人だ」なんてローズの魅力を語ってますけど、説得力がないです。
 とはいえ、この映画はやはり非常に大きな魅力も持っています。
 まず一つは、徹底したリサーチを行い、タイタニック号の内装や歴史、乗り込んでいた人々の歴史や船上で起こっていたことなどを、可能な限り調べ上げてスクリーンの中に反映してあること。本当にさりげなく、しかし確実に物語に絡めて描き出されたそれらの「真実」は、もう一つの映画の軸としてのタイタニックの悲劇を完璧に描き出していたと思います。
 二つ目に、虚構であるふたりの主人公達の物語と、真実としてのタイタニックの悲劇を巧みに融合させた物語は、3時間以上という長丁場でありながら、しかし時間の長さを感じさせない見事な演出で紡がれているということ。けして中だるみせず、最後まで見せきってしまう監督の力量は大した物だと思います。
 やはり、総合的に見ると凄い映画だな、と思わざるを得ませんね、この作品は。
 「恋愛を盛り上げるためにタイタニックは沈んだんじゃない」なんてこの映画をたたく人もいますけど、映画の舞台設定の仕方は様々ですしね。「ライフ・イズ・ビューティフル」のように、アウシュビッツを物語の都合でいい加減に描いた映画だってありますから、事実の部分は徹底的に事実として描いて見せたこの「タイタニック」は、まだマシなんじゃないかと思うんですが。
 ……でも、やっぱりこの演出の力量で徹底的にリアルなパニック・スペクタクルの「タイタニック」を見たかったなぁ……。


「タイタンズを忘れない」(2000年)

 1971年、アメリカのヴァージニア州アレキサンドリアでは、白人の高校と黒人の高校が合併されることとなった。だが、保守的な片田舎では白人社会が根強く残っており、そのことを歓迎する白人はいなかった。そんな中、合併後の高校のアメリカン・フットボールチーム「タイタンズ」にも、ブーンという黒人のコーチが就任することになる。その下につくことになった白人コーチ、ヨーストは、コーチとしての殿堂入りを目前としており、ブーンのことを快く思っていなかった。また、選手たちも白人黒人の混成チームとなり、対立を深めていく。ブーンは、そんな四面楚歌の状況で、厳しい指導で周囲をまとめていこうとするのだが……。

 デンゼル・ワシントン主演の、実話を元にしたドラマ。制作はジェリー・ブラッカイマーということもあって、ストーリーは非常に分かりやすく、シンプルにまとめられています。白人と黒人の確執が次第に解けていく様が、とてもさらりとさりげなく、でもとても上手く描かれていて、感動的でした。ただ、難を言えばあまりにも分かりやすくまとめすぎて、選手たちそれぞれの描き方が浅くなっちゃったかな、という気がしましたね。デンゼル・ワシントン演じるブーンが周囲と戦っていく様だけが大きく描かれすぎて、選手たちが薄くなっちゃったとでも言うんでしょうか。デンゼルの出番を削っても、選手たちひとりひとりの対立や苦悩、そしてまとまっていく姿を丹念に描いて欲しかったな、と思います。テーマ的にも、その方がもっといい映画になった気がしました。


「ダイ・ハード」(1988年)

 日系企業ナカトミ商会が行うクリスマス・パーティ。ニューヨーク市警の刑事であるジョン・マクレーンは、そこで働く妻に誘われ、そのパーティにやってきた。だが、その夜、パーティ会場にテロリストが現れ、ナカトミビルは占拠されてしまう。辛くもテロリストの手を逃れたジョンは、テロリストの手からビルと人質となった社員を取り戻すべく、奮闘を開始するのだった。

 もう、紹介を書くのもバカバカしいほど有名な、大ヒットアクションシリーズ第1作です。アクション映画の流れを変えたと言われるこの作品ですが、今観てもこの作品の出来は素晴らしいですね! 着々とビル占拠を進めていくテロリストたちの描き方といい、少しずつテロリストたちと戦っていくジョンの描き方といい、もうこれしかないというテンポで語られていきます。確かに、この作品以降、スタローンやシュワルツェネッガーが演じていたような「超人的なヒーロー」が暴れまくるアクション映画は影を潜め、この映画のジョンのようにごく普通の人間が孤軍奮闘するアクションが増えましたね。個人的には、やはりこの作品のジョン・マクレーンの「普通っぽさ」はとても好感が持てました(笑)。
 これだけ素晴らしい演出を見せてくれていたマクティアナン監督。是非また素晴らしい映画をたくさん撮ってもらいたいですね(「13ウォリアーズ」は面白かったですけど)。


「ダイナソー」(2000年)

 時は恐竜がまだ大地を闊歩していた時代。
 ふとした偶然から、猿たちと暮らすことになった恐竜がいた。猿の子供と仲が良く、心優しい彼は、猿たちからも慕われる存在だった。しかし、ある時、彼は空から巨大な火炎の固まりが降ってくるのを目撃する。次の瞬間、大地は炎に包まれ、緑は焼き尽くされて、川や湖は一瞬で干上がってしまう。
 生きていくため、彼らは伝説のオアシスを目指して旅立つのだが……。

 CGの進歩をこれでもか、と見せつけてくれる超大作。
 恐竜の動きからその表現方法まで、本当によく合成され、あるいは作成されており、本当に感心しました。
 でも、内容は……うーん(苦笑)。
 面白くなかった訳ではないんですが、あの終わり方はあまりにも甘すぎるんじゃないかな、と思いました。時代設定を考えると、生きている生物達にとって一番過酷になる時代の「始まり」を描いているはず。なのに、あんな終わり方でいいのかなぁ?
 ディズニーの「甘さ」だけが感じられた作品でした。もちろん、描こうとしたテーマは間違いじゃないけれども、その時代を選択したことが誤りだったというか……これじゃ「恐竜を動かしたかっただけ」なんて言われても仕方ないように思います。


「タイムマシン」(2002年)

 1899年のニューヨーク。科学者アレクサンダーは、ある夜、恋人に結婚を申し出たその日に暴漢によってその恋人を殺され、失意に暮れてしまう。それから4年。彼は、失った恋人を取り戻すべく、過去を変えようとタイムマシンの開発に取り組み、それを完成させていた。早速恋人が殺されたその日にタイムトラベルするアレクサンダー。だが、暴漢から救った恋人は、今度は馬車にはねられ、結局命を落としてしまう。過去を変えられないのは何故か? その謎を解くため、彼は今度は未来の世界へ旅立つが、不慮の事故に巻き込まれ、なんと80万年未来へと飛ばされてしまう。その時代は、彼の想像を超えた世界だった。

 人気SF作家H.G.ウェルズの名作小説を、そのひ孫のサイモン・ウェルズが映画化。主演はガイ・ピアーズ。衣装まで凝った作りの過去のニューヨークから、2030年のニューヨーク、そして80万年後の未来の世界まで、CGや特殊技術を活かした美しい世界観が素晴らしいSF映画です。
 ただ、ストーリー的には小粒で、いかにも昔の小説の映画化、といった感じ。やはり地底世界とか、そういったものにロマンを感じていた時代の作品ですね。
 とはいえ、ビジュアル的にはとても凝っていますし、いかにもアナログな時代の発明といったタイムマシンなど、面白い仕掛けもたくさんあります。とても楽しく鑑賞しました。


「タイムライン」(2003年)

 クリスは、父親である大学教授、ジョンストンが行っているフランスの修道院遺跡発掘現場で発掘作業の手伝いをしていた。この遺跡は、フランス軍とイギリス軍が激突した貴重な遺跡だったのだ。
 ところがある日、その遺跡から、「助けてくれ」と書かれたメモと、その時代になかったはずの眼鏡のレンズが発掘される。そしてそのメモの筆跡と眼鏡の度数は、ジョンストン教授のものと一致したのだった。
 過去からの教授のSOS……これは、いったい何を意味するのか?
 ちょうど、ジョンストン教授は発掘のスポンサーである企業ITCへと出かけている最中だったが、不安に駆られたクリスと発掘メンバーはITCへ連絡を取ることにした。
 しかし、そのITCから告げられたのは、耳を疑うような事実だった。
 「我々は、タイムマシンの開発に成功した。そして、ジョンストン教授は今、14世紀のフランスに取り残されている」と……。
 救助に向かうことを決心するクリスたち。過去のフランスで彼らを待ち受けているものとは、果たして何か?

 マイケル・クライトンの原作に、リチャード・ドナーが監督をつとめた娯楽冒険活劇。
 ドナー監督作であるこの映画は、物語の筋も演出も、手堅くまとまっていてさすがにベテランの仕事だなぁと思います。
 しかし、あまりに冒険活劇風にまとめてしまったあまり、本作の旨味である「タイムマシン」の要素が全くといっていいほど活かせていなかったことが残念でした。
 それから、キャラクターの魅力が乏しかったのも少し残念。とはいえ、ドナー監督のやり方って少しずつ人間味を重ねていってキャラクターを演出していくって手法ではないので、このあたりは仕方ないのかなぁ、とも思いますが……。
 ちょっとひねればかなり面白くなったと思えるだけに、本当に全体的に残念な出来でした。


「タキシード」(2003年)

 女性に声もかけられないほど弱気な、冴えないタクシー運転手、ジミー・トンはしかし、運転にかけては超一流。その腕を見込まれて、デヴリンという大金持ちの運転手になることになった。
 だが、実はデヴリンはスパイであり、ある事件を巡って大けがを負ってしまう。
 そしてジミーは、デヴリンから1着のタキシードを託される。そのタキシードとは、科学技術の粋を集めたもので、着用した人間の神経に作用し、最大限の運動神経を発揮させてしまう、最高のスパイ道具だったのだ。
 そのタキシードを着てデヴリンになりすましたジミーは、新米のスパイ、デル・ブレインと一緒にデヴリンが追っていた事件を捜査することになるのだった。

 ジャッキー・チェン主演、ジェニファー・ラヴ・ヒューイット共演のコメディ・アクション映画。
 提供はドリーム・ワークスということで、かなり期待して観たんですが……うーん、残念ながらかなり期待はずれでした。
 運動もけんかもからっきしダメな人間が、タキシードを着るだけでスーパーマンに変身してしまう、って路線は面白いんでしょうけど、その「スーパーアクション」をワイヤーや特殊効果でやってしまっている段階で面白さが半減、いやそれ以下になっちゃうんですよね。そんなワイヤーや特殊効果でアクションをするんなら、ジャッキー・チェンなんていらないじゃん、と思ってしまうんですよ。
 大体、ワイヤーなどでアクションをコミカルに演出しようとしているのは分かるんですけど、それよりも普段の映画でジャッキーがやって見せてる生身のアクションの方がよっぽどコミカルでユーモラスである、というのが致命的。
 アクションの見せ方、ジャッキー・チェンという素材の生かし方を完全に間違ってしまった感があって、ジャッキー・チェンの映画としてもアクション映画としても中途半端になってしまってました。実は2回ほど、途中で再生を止めてしまったりしたんですよね……ずっと観ていると退屈で。かなり残念です。
 それにしても、ジミー・トンの正式名がジェームズ・トンなので、名乗っているシーンは笑えます。
 「私の名はトン、ジェームズ・トン」
 このシーンはかなりのお気に入りになりました。


「タクシー3」(2002年)

 8ヶ月もの間に起こった、37件もの強盗事件。その犯人である強盗団は、皆サンタクロースの格好をしているため、サンタクロース強盗団と呼ばれていた。
 マルセイユ警察のエミリアンは、身も心もその事件に懸かりっきりになり、恋人となったペトラにも全く気が回らない生活を送っていた。
 一方、タクシー運転手ダニエルも車にうつつを抜かすあまりに、恋人リリーに愛想を尽かされ、出て行かれてしまう。
 時はクリスマス目前。サンタクロース強盗団は、このときを『本番』とし、着々と計画を実行に移そうとしていた。

 リュック・ベッソン制作の「タクシー」シリーズ第3弾。
 登場人物達も相変わらずの弾けっぷりで、キャラクターを見ているだけでニヤリとしてしまいました。相変わらずのテンポとバカッぷりが楽しい作品です。
 しかし、一番笑ったのは冒頭のアクションシーンからタイトルバックまでの流れ。某大物俳優のゲスト出演に、某人気アクション映画シリーズのパロディタイトルバックには、声を上げて笑ってしまいました。しかも、それが全く本編と関係ないというバカッぽさ。
 ストーリーにも設定にも突っ込み所満載……というより突っ込み所ばかりで構成したような作品ですが、頭を空っぽにして楽しめる作品に仕上がっていたと思います。
 カーアクションがごっそり減っていたことと、最後があまりにもあっさりと終わってしまったのが残念でしたけど、車の撮り方はこれまで同様格好良かったので、個人的には満足でした。


「ターザン」(1999年)

 船の難破により、無人島に流れ着いた若い夫婦と赤ん坊。彼らはそこで自活の道を探るが、大自然の前に命を落としてしまう。一人残った男の子は、やがて雌のゴリラに拾われ、ゴリラの群の中で成長することになった。「ターザン」と名付けられ、青年にまで成長した彼は、周りのゴリラたちと自分との差異に悩む。そんなとき、無人島だった島に研究のため人間がやって来て、彼は初めて他の人間と対面することになるのだった。

 おなじみ「ターザン」を、アニメーション界の老舗ディズニーが映像化した作品。
 これは面白かった!
 まさにディズニーアニメの集大成でしょう。これまでやってきたことを総てつぎ込んでいる、という印象を受けました。
 ストーリーはツボを外さず、きっちりと押さえて作ってあるし、ラストも落ち着くべき所へキチンとおさめてある。
 また、映画を彩るフィル・コリンズの歌の数々も絶品!
 こんなクオリティの作品を出されたら、他のアニメスタジオが束になってかかっても、ちょっと敵いませんね。
 太刀打ち出来るのはジブリくらいかな、と個人的に思っています。


「TATARI」(2000年)

 かつて人体実験が行われていたといわれる精神病院。その建物に、ある夜5人の男女が集まった。一晩、生き残ったら1億円という条件で招待された彼ら。しかし、待っていたのは恐怖の一夜だったのだ……。

 ロバート・ゼメキスとジョエル・シルバー制作による、屋敷物のホラームービー。
 この手の物の王道的パターンとしてそつなく作ってありました。レンタルビデオでみたため、ドルビーサラウンドでの鑑賞となりましたが、なかなか音のこけおどしが(笑)うまく作ってあったのではないでしょうか。
 僕としては、ファムケ・ヤンセン姉さまの、悪女といえないビッチぶりにちょっと驚き&がっくり……(苦笑)。
 作品としては期待以上でも以下でもないのですが、楽しめた映画でした。
 ただ、映画以上に、ゼメキス監督がここ数年スピルバーグとは全く違うジャンルに手を出していることに、個人的に興味をそそられました。「ホワット・ライズ・ビニース」もそうですし、この「TATARI」にしてもそうなんですが、こんな暗い人物たちの設定はスピルバーグならしないだろうな、と思います。昔から比較されていたので、それを嫌ってジャンル的に違う方向へ進んだのか、あるいはこれが地なのか(笑)。
 いずれにしても、演出の手腕は確かなので、安心して観に行ける映画を作ってくれていることは確かですが。
 今後も、ロバート・ゼメキス関連の作品には注目していきたいですね。


「ダブル・ジョパディー」(2000年)

 夫殺しの罪で有罪になった女性が、獄中で夫が生きていることを知り、陥れられたことを悟る。合衆国の法律では、同じ罪で同じ人間を裁くことは出来ない……これを逆手にとって、彼女は復讐のため仮釈放中に夫を殺すことを決意する。本当に夫を殺しても、今度は罪にはならないのだから……。

  アシュレイ・ジャッド、トミー・リー・ジョーンズ競演のサスペンス映画です。夫に復讐しようとする女性にアシュレイ・ジャッド、それを止めようとする保護監察官にトミー・リー・ジョーンズが扮しています。
 でも、トミー・リー・ジョーンズは完全な脇ですね、この映画。しかし彼の存在感故か、制作者が気を遣ったのか(笑)、トミーおぢさんの出番がそれなりに用意されているため、肝心のアシュレイ・ジャッドが演じる人物の描き方が、不足しているのでは……? 脚本的にちょっと中途半端な印象を受けました。
 でも、トミー・リー・ジョーンズはいい味だしてます。最後の方ではめちゃかっこえぇ〜!!
 彼目当てで観に行った僕としてはそれだけで満足でした(笑)。


「ターミネーター3」(2003年)

 ターミネーターとの協力で、サイバーダイン社の研究を潰してから10年。「審判の日」を回避したにも関わらず、ジョン・コナーは未だ暗黒の未来という悪夢から逃れられずに、放浪の日々を過ごしていた。そんな彼の元に、再びターミネーターが送り込まれてくる。未来は変わったはずではなかったのか? ジョン・コナーは、戸惑いながらも再会した幼なじみケイトと共に逃げ出すのだった。運命は、ジョン・コナーをどこへ導くのか。そして「審判の日」とは?

 アーノルド・シュワルツェネッガーが三度殺人機械に扮した、SFアクションシリーズ第3弾。今回はジェームズ・キャメロンは手を引いており、ジョナサン・モストウがメガホンをとっています。
 アクションシーンの出来は凄まじいばかりです。圧倒的なテンションの高さで、最初から最後までぐいぐいと観客を引っ張って見せきってしまう力をもっていますね。
 ただ、作品のスケール感がちょっと小さく感じてしまいました。これは前作で示された世界観を全く広げていないのが原因かも知れませんし、或いは個人の問題に焦点を当てすぎたのが原因かも知れませんが、「世界の命運を左右する戦いをしている」という大きさが感じられなかったのが残念でした。
 ジョン・コナーを演じたのは、エドワード・ファーロングに代わってニック・スタール。エドワード・ファーロングについてはドラッグ問題での降板ということらしくて残念でしたが、ニック・スタールもなかなかはまっていて役柄を体現していました。また、ケイト役のクレア・デインズも、突然の災難に巻き込まれながらも戦いに挑んでいく芯の強い女性を好演。良かったです。
 しかし今回、一番感心したのはT−X役に挑んだクリスターナ・ローケン。この人が演じたターミネーターは、動きは優雅で美しいけれども残忍で、表情も無表情で不気味。このターミネーターは素晴らしいと思いました。
 総じて、シリーズ作品として観れば不満が強く残るものの、単体の作品としてはなかなか面白いアクション映画に仕上がっていました。
 個人的には、また続編を作って欲しいと思わせるラストでしたね。


「ダムド 呪いの墓場」(2001年)

 大統領が暗殺され、その目撃者となってしまった夫婦。FBIによる証人保護プログラムにより、彼らはある屋敷にかくまわれる。しかし、そこは50年前、惨劇の舞台となった呪われた屋敷だったのだ。彼らの前に現れる亡霊や幻影は、何を彼らにもたらすのだろうか。

 比較的オーソドックスな、オカルト系ホラー映画です。レンタルビデオ屋で何となく、期待せずに借りてきたんですが、意外にそこそこ楽しめました。所々、演出的に上手いな、と思うところもあって。
 しかし、証人保護といった設定はあんまり活かされず、かえって邪魔くさかったかなぁ。


「ダンジョン&ドラゴン」(2001年)

 魔法を使える貴族、”メイジ”が平民を支配している、イズメール帝国。だが、その女王サヴィーナは、全ての国民の平等を願っていた。その思想を危険に感じた宰相プロフィオンは、策略を練り、女王の失脚を狙う。女王がその権力争いに勝つには、レッド・ドラゴンを操ることの出来る伝説の杖を手に入れるほかない。その争いに巻き込まれてしまったのは、青年盗賊リドリー。彼は、自らの中に眠る力に気づかないまま、伝説の杖の捜索に乗り出すことになるのだった……。

 全てのRPGの原点ともいえる、テーブル・トークRPG「D&D」の映画化。
 ……しかしながら、この内容は、「D&D」の中で完成されたファンタジー世界の世界観を表現し切れてはおらず、というよりもむしろ破壊しており、かといって「映画として」成り立っているとも言い難いかなり中途半端な物でした。そもそも、ドラゴンってもっと威厳のある、地上でもっとも賢く強い生物であるはず……人間などの思い通りに出来る物ではないはずなのに。ジェレミー・アイアンズの悪役振りだけが突出して印象に残る、何とも脱力な映画でした……。


「ダンテズ・ピーク」(1997年)

 地質学者ハリーは、数年前に火山噴火で恋人を亡くした過去がある。
 その彼が、研究所の仕事で今回向かったのは「ダンテの峰」と呼ばれる火山。
 調査を進めていくうち、噴火の予兆を感じる彼。だが、ふもとの町の経済に与える影響が大きく、早々に避難勧告を行うことが出来ず、ただ焦るだけだった。
 果たして本当に噴火せずにすむのか?
 そんな思いをよそに、火山は不気味な鳴動を始めるのだった。

 ピアース・ブロスナンとリンダ・ハミルトンが共演した、自然災害パニックもの。
 この映画は火山の噴火をリアルに描くことに力を入れて作られた映画といっていいでしょう。その災害描写は本当によく出来ており、自然の猛威の恐ろしさをよく描いています。展開は「ジョーズ」を彷彿とさせるものですが、小さな町の経済問題は確かに大きいですからね。無理なく人々をパニックに巻き込むには、この辺りのストーリーは順当といったところでしょうか。
 ともかく、火山災害の恐怖をよく描いてあって、いい映画だったと思います。


「チャーリー」(1992年)

 ロンドンの貧しい母子家庭に生まれ育ったチャールズ・チャップリン。母は舞台俳優として働いていたが、やがて精神を病み、幼いチャップリンは施設に入れられて幼少期を過ごすこととなる。
 やがて青年に成長したチャップリンは、舞台の喜劇俳優として成功を手にし、アメリカへと渡った。
 そのアメリカで映画という新しい文化に出会った彼は、その世界にのめり込んでいく事となる。それが、彼を大スターにのし上げ、波瀾万丈の人生を歩むきっかけとなったのだった。

 無声映画時代から、俳優として、そして監督として、数々の名作を遺したチャールズ・チャップリンの伝記映画。監督は「ジュラシック・パーク」の恐竜じいさんことリチャード・アッテンボロー、主演はロバート・ダウニー・ジュニア。
 チャップリンの生涯を、暖かい視線で描いています。完璧主義の天才故の苦悩、結婚と離婚の繰り返し、映画での主義主張によって共産主義者の名を着せられてのアメリカ追放……。その華々しくも哀しい生き様を、映画は実に優しい視線で語っているのです。
 最後、アカデミー賞のシーンではジーンとしてしまいました。世代を超え、時代を超えて語られ続ける稀代のクリエイター、チャールズ・チャップリンへ捧げる賞賛として用意されたあのラストシーン。胸が熱くなりました。
 それにしても、ロバート・ダウニー・ジュニアの演技は素晴らしかったですね。浮浪者の姿をして歩くあの歩き方は、チャップリンそのもの。仕事にのめり込んでいく眼差しや周囲に苛立っていく様子など、とてもよく表現していたと思います。
 若き日のミラ・ジョヴォビッチが出演していたのにはちょっとびっくり。頭の弱い若い女優を演じていましたけど、意外なほど似合っていました。いや、ファンとして喜んでいいことかは疑問ですけど。
 そういえば、フィルム技師として、「Xファイル」のモルダーことデビッド・ドゥカプニーも出てましたね。
 他にも、ダン・エイクロイドやアンソニー・ホプキンス、ダイアン・レインなど、演技派の俳優がたくさん出ていまして、俳優陣を見ているだけで贅沢な気分になる映画でした。


「チャーリーズ・エンジェル」(2000年)

70年代に人気の高かったTVシリーズを、ドリュー・バリモア、キャメロン・ディアス、ルーシー・リュー共演で映画化。謎の紳士チャーリーの元で働く3人の女性探偵の活躍を描く。

 この映画は、基本的に「おばか映画」ですね。それも、徹底的に。なんてったって、テンポよいアクションシーンと、3人女性のコスプレシーンのみで構成された映画ですから(笑)。いろんなシチュエーションはてんこ盛りですが、これを「支離滅裂で悪のりのしすぎ」ととるか、「サービス精神と遊び心に富んでいる」ととるかでこの映画の評価は大きく分かれる気がします。
 この際「3人がセクシーで格闘できて頭がいい、なんて個性がないぞ!」とか「スローモーション多用すりゃスタイリッシュになるなんて勘違いすんな!」とか、無粋な突っ込みはよしましょう(笑)。勢いとノリだけに乗っかって、最後まで楽しんでしまうのが正解。
 冒頭のキャメロン・ディアスのビキニ姿でオールOKじゃありませんか?


「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」(2003年)

 ディラン達3人は、モンゴルでの米警察要人のカーターを救出する任務に就いていた。無事、救出に成功する彼女たちだったが、後日、思わぬ事実が発覚する。カーターが狙われた理由は、政府が証人保護プログラムで保護した人物達のリストであり、カーターが持っていたゆびわがそのリストを手に入れるための鍵になるというのだ。そして、エンジェル達の周りで、次々と「証人保護プログラム」で保護された人物達が狙われ始める。そして、エンジェルのひとり、ディランも、実は過去に証人になり、証人保護プログラムで保護された過去を持っていたのだった。

 シリーズ2作目。前作から引き続きキャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、リューシー・リューの3人が主演をつとめています。
 で、感想はといいますと……うーん……。
 相変わらずのハイテンションで物語を進めてはいるんですけど、若干中だるみがしますね。物語も、途中で方向性を見失って右往左往してしまったような気がしました。前作にも増してお遊び要素が増えてしまったのがその原因かとも思えるんですが……まぁ、主演の3人が楽しそうなのでこれもありなのかも知れませんね。
 ゲスト出演のデミ・ムーアは、圧倒的な存在感と貫禄を見せつけてくれます。この存在感はなかなか良かったな、と思いました。


「チョコレート」(2001年)

 刑務所の看守をしているハルクは、保守的な父親の影響を受けて、黒人に対する差別意識を持っていた。そんな彼の息子は、やはり看守という職に就いていたが、近所に住む黒人の家族とも仲良くしていた。そんな息子を苦々しく思うハルク。だが、厳しく接するハルクの言動に、息子は彼の目の前で拳銃による自殺をしてしまう。心に大きな穴を開けられてしまったハルク。そんなとき彼は、一人の黒人女性と出会う。夫と子供を最近亡くし、喪失感に暮れながら生きている、アルコール依存症の女性。ハルクは、そんな彼女に惹かれていく。そして、彼女も。だがやがてハルクは、彼の死んだ夫が、実は自分が死刑執行した死刑囚だったことを知るのだった。

 ハル・ベリーが黒人で初の主演女優賞を受賞した作品。ビリー・ボブ・ソーントン主演。
 濃厚なドラマでした。死刑の是非、差別の問題を絡めながら、物語は親と子の関係を描き出し、それでも惹かれ合ってしまった故にお互いを求めていくふたりの男女を描いていきます。
 特に、ビリー・ボブ・ソーントンと父親、そして息子との関係が心に残りました。父親の厳格で偏った育て方がその子の人格や価値観をゆがめ、そして孫へと伝えられていく姿という描写は非常にリアルで説得力がありますね。実際、人種差別主義者が我が子を人種差別をしない子に育てるハズはありませんし、愛情の伝え方を知らない親に育てられた人間が我が子に愛情を伝えられるか、といったら難しいだろうと思います。その病巣をしっかりと描いて見せていますね。
 あと、ラストのハル・ベリーの表情のみによる演技は絶品です。素晴らしい演技力でした。
 その後の解釈については個々人に委ねられていますが、この後、幸せが訪れて欲しいなぁ、と思った作品でした。


「沈黙の戦艦」(1992年)

 戦艦ミズーリは、その長い戦闘の歴史に幕を引き、武装解除を行う基地への最後の航海に出た。
 だがその最中、太平洋の海原で、テロリストの襲撃にあい、艦内は完全に占拠されてしまう。目的は搭載されている核ミサイル。
 そんな彼らの手を逃れ、その活動を阻止しようと立ち上がったのは、ライバックというコックだった……。

 「沈黙」シリーズなんて称されている、スティーブン・セガールのシリーズ第1作目(とはいえ、本当のシリーズはこの作品と「暴走特急」の2作だけなんですが)。
 この映画、アクション映画として純粋に楽しめますね。戦艦内という限られた空間の中で、多数の敵の手をかいくぐりながら倒していく、というシチュエーションはまさしく「海のダイ・ハード」(笑)。
 トミー・リー・ジョーンズも、お得意のエキセントリックな役柄でいい味だしてますね。
 個人的にはヒロインの「ミス7月」がとてもキュートで好きだったりします(笑)。


「追撃者」(2000年)

 ラスベガスで借金の取り立て屋をしているカーターは、5年前に捨てた故郷で、堅気だった弟が事故で死んだことを知り、葬儀のために故郷へ戻る。しかし、その弟の事故死の裏には、隠された真実があったのだった。

 シルベスター・スタローン主演のアクション。ストーリーとしてはかなり甘めというか、スタローン演じるカーターが何故弟の死を不審に思ったのか、という話の根幹が今ひとつはっきりしないのがもどかしかったですね。でも、全体的にはなかなか楽しめました。終盤のスタローンの凄みや優しさはなかなかいい感じ。ちょっとした佳作といったところでした。


「デアデビル」(2003年)

 マット・マードックは、12歳の時に事故により両目の視力を失ってしまいながら、不屈の精神力で体を鍛え、昼は弁護士、夜は法で裁けない悪人を倒す闇のヒーローとして活躍していた。彼の武器は、その鍛えられた肉体と平衡感覚、そして視力をなくしたことと引き替えに超人的に発達したたの4感。それにより、彼は闇の中で悪を裁く「デアデビル」として悪人と戦っているのだ。だが、彼の前に、キングピンという名の人物が現れてから、彼は自分の存在を考える転機を迎えていくのだった。

 ベン・アフレックがアメコミのヒーローに扮したアクション映画。視力のないヒーローを、ベン・アフレックが熱演しています。
 特に面白いと思ったのは、デアデビルの脳内に形成される、「音の反射による物体認識」の映像表現。最近のハリウッド映画は、こういった表現を好んで映像化してますね。表現力の向上による新しい映像は、観ていて本当に楽しいものです(やりすぎたりしてはいけませんけどね)。
 作品としては、何も考えずに楽しめるアクション映画でした。いかにもアメコミヒーローもの的な展開を見せる作品として、安心して観ていられます。
 ただ……ひとつだけ。あれだけ元気があれば、本当は○○○○○を助けられたんじゃないの、デアデビル?


「デイ・アフター・トゥモロー」(2004年)

 古代気象学者ジャックは、氷河期時代の気候を現代と比較し、地球温暖化に伴う海面上昇によって海流の動きが止まってしまうことによって北半球に氷河期が訪れると学会で発表した。それが来るのは100年後か、1000年後か、それは分からないが、今その対応をしなければならない、と。
 だがそれから数ヶ月後。全世界規模で異常気象が巻き起こる。日本では握り拳大のヒョウが降り注ぎ、ロスでは何本もの竜巻が発生して建物や人をなぎ倒すなど、にわかには信じがたい状況が次々と現実に起こり始めたのだ。
 気候の変更は急激で、ヨーロッパではヘリコプターが飛行中に寒波に襲われ、急激に凍って墜落するという事件も起こる。凄まじい速さで氷河期が襲ってきていることの証左だった。
 ジャックはアメリカ国民を南に避難させるよう副大統領に進言するが、事態を深刻に受け止めてもらえず、無力感に襲われる。
 だがその頃、ジャックの息子サムが出かけていたニューヨークに大津波が押し寄せ、マンハッタンが海に沈んでしまったのだ。
 かろうじて電話連絡を取れたサムに、ジャックは言う。「必ず、助けに行く」と。
 急速に氷河期が迫る中、ジャックは海に沈んだニューヨークへ向かうのだった。

 デニス・クエイド主演のディザスター・ムービー。監督は「インデペンデンス・デイ」「パトリオット」のローランド・エメリッヒ。
 とにかく前半、北半球を襲う異常気象の映像は圧倒的です。ロサンゼルスで竜巻が発生するシーンや、その竜巻がビル街をなぎ倒して進むシーンなどは圧巻の一言。迫力満点の映像が繰り広げられます。
 ですが、一旦その災害の衝撃が通り過ぎてしまった後のドラマには、残念ながら甘さが目立ちましたね。
 経済を優先させた結果の地球温暖化による世界終末を描きながら、この作品は二酸化炭素の排出などへの批判をほとんどせず、親子愛と人類愛を描くことに終始しています。そして「氷河期が訪れても何とか生き残った人たちもいました良かったね、赤道付近は暖かいからこれからはみんなで仲良く生きていこうよ」とでも言いたげなラストを迎えてしまうのです。
 親子愛や人類愛を描くのが間違いだとは言いません。ですが、この作品で描かれた世界はあくまで「厳しい時代の幕開け」でしかなく、北半球の大部分が氷に閉ざされた世界でどうやって食料を確保していくのか、地球のダメージをどう回復していくのかといった課題が目の前に突きつけられる厳しい状況であるはずです。
 それに一切触れることなく「生き残ったよ良かったね、これからはみんな仲良く生きていこう」というのでは、せっかくの舞台設定に対してあまりにもテーマが軽いとしか言いようがありません。これは本当に残念なことでした。
 とはいえ、この特殊効果は本当に素晴らしく、それを楽しむためだけに劇場に赴いても損はしないと思えるものでした。この点については満足です。


「D−TOX」(2002年)

 警官ばかりが狙われる、連続殺人事件が起こっていた。腕利きのFBI捜査官マロイは、その事件の捜査に当たっていたが、証拠は現場に残されておらず、捜査は難航するばかり。そして、その彼をあざ笑うかのように犯人はマロイの友人である刑事を殺し、更にマロイのかけがえのない恋人まで殺害してしまった。そのことがトラウマとなり、マロイは酒浸りの生活に溺れていってしまう。そんな彼を見かねた友人のFBI捜査官は、マロイを精神的な傷を負った警察官専門の更正施設へ連れて行く。それはワイオミング州の極寒の地に建てられた秘密の施設だった。しかし、マロイが収容された夜から、施設内に不穏な気配が動き始める。電話が断線したり、停電が起こったり……。そして、やがて施設内で死者まで出始めるのだった。これは、友人や恋人を殺した、あの犯人の仕業なのか……マロイは、自分を見つめる犯人の視線を感じ始めるのだった。

 シルベスター・スタローン主演のサスペンス映画。トム・ベレンジャーやロバート・パトリックが共演しています。閉ざされた空間の中で殺人事件が起こる、さて仲間の中の誰が犯人か、というサスペンス映画のひとつの典型的な話ですね。この手の作品の場合は、閉ざされた空間の閉塞感と、その中で隣にいるかも知れない殺人犯の存在を、どれだけの緊迫感を持って観客に伝えられるか、がカギになると思うんですが、この映画は残念ながらそういった演出面ではひねりが感じられませんでした。俳優達は、けっこうクセのある面白い人たちを使っていたと思うんですけどね……スタローンは、個人的には好きな俳優なんですけど、作品に恵まれませんね。それとも、こういった映画が好きなのかな? だとしたら、ラズベリー賞の常連となってしまうのも致し方ないのかも知れませんね……。


「ディープ・インパクト」(1998年)

 アメリカのある天体観測会で、新たな彗星が発見された。学者が割り出したその彗星の進路は、地球に衝突する、というものだった。その大きさから、衝突した場合には地球上の生物は絶滅してしまうことが予想される。直ちに、アメリカとロシアは共同で彗星を破壊するための計画を進め始めたが、その計画は困難が予想されるものであった。終末を迎えようとする地球の運命は、宇宙に飛び立つ宇宙飛行士達に託されることとなる。一方地球上では、それぞれの人々が、それぞれの人生で生きる道を探っていた。果たして、彼らの行く末は?

 ミミ・レダー監督の劇場作品としては2作目の映画になります。「アルマゲドン」と同じ年の公開となり、直接ぶつからないために公開を半年ほど早めたといういわく付きの作品です。
 さて、作品の感想なんですが、個人的には好きです。
 欠点はたくさんあります。いや、むしろ欠点だらけと言った方がいいかも。レダー監督は「ピース・メーカー」の時同様、演出するテンポが今ひとつよくないし、しかも作中の時間のたち方と登場人物達の心の変化がシンクロしていないように思えます。簡単に「数ヶ月後」なんてテロップが画面に出てきて時間を進めるのに、出てくる登場人物たちはその考えから環境まで、全く変化していないというシーンがあまりにたくさん目につきました。
 しかし、それでも何故か好きなんです。
 ミミ・レダー監督作品は全般的にかなりウェットで、ショットのつなぎやシーンの取捨選択もあまり上手いとは思えません。けれど、「何をやったら映画として成り立つか」をよく考えて、その上で「描きたいこと」を一生懸命演出していると感じます。その一生懸命さが、何となく好きになってしまう要素ではないかな、と思います。積極的に人に勧める気はしませんけどね。
 イライジャ・ウッドやティア・レオーニなど、俳優陣もいい演技を見せてくれます。この映画を初めて観たときは、特に子役の頃に「ハックルベリー・フィンの冒険」などで好きだったイライジャ・ウッドが、ちゃんとした俳優に成長したのを確認できたのが嬉しかったのを覚えています。


「ディープ・ブルー」(1999年)

 太平洋上に浮かぶ医療研究施設アクアティカ。この施設では、サメの脳を活性化させ、そこから採取されるタンパク質を使ってアルツハイマーを治療しようという研究を行っていた。
 だが、度重なる実験によって、次第にサメはその知能を高めていく。
 そして職員が帰宅して施設が手薄になる週末のある日、台風が施設を襲った晩に、サメたちは一斉に職員に襲いかかるのだった。
 施設に残った人間達は、果たしてサメの襲撃に生き残れるのだろうか。

 レニー・ハーリン監督が手がけたパニック映画。
 映画の展開そのものは手堅くまとめられている感じがしました。登場人物達が逃げ場を探し回り、右往左往している内に次第に犠牲者が増えていくオーソドックスなストーリーラインを、小気味良いテンポで見せていく演出はさすがに手慣れた感じです。
 しかし、やはり基本設定にちょっと違和感が。
 この研究、わざわざサメを使ってやる必要があるんだろうか、と思ってしまうんですよね。「サメの脳は死ぬまで衰えないから」なんて台詞はありますけど、それは脳を活性化させるタンパク質を採取するのにサメを選ぶ理由にはなってないだろ、って突っ込みを入れたくなります。死ぬまでに衰える脳からだって、元気な内に同様のタンパク質は採取できるでしょうに。この辺りはもうちょっと設定を考えた方が良かったように思いました。
 それから、職員が少なくなる週末に、研究施設が台風に襲われ、研究動物が人間を襲い始める……しかも、逃げる人間にサミュエル・L・ジャクソンがいるってのは、やはり「ジュラシック・パーク」へのオマージュだったんでしょうか?


「デイライト」(1996年)

 マンハッタン島とニュージャージーを結ぶ海底トンネル。
 そのトンネル内で、事故による大爆発が発生、両側の入り口が完全に塞がれてしまった。
 救出作業は困難を極め、救助隊も2次災害に遭い、命を落とす……。
 たまたま現場に居合わせた元救急医療士キットは、トンネル内へ潜り込み、生存者を助ける決意をするが……。

 シルベスター・スタローンが挑んだパニックアクション大作。
 体の故障により、これがスタローンの最後のアクション映画と言われていますが、惜しいですね。作品に恵まれない面があるものの、俳優としてのスタローンはけして嫌いではないのですが……。この作品でも、いい味出していると思います(いつものスタローンであることは間違いありませんが)。
 内容は、決死の決意で「出口がないかも知れない」トンネルの中に乗り込んでいくスタローンの姿を描いています。
 ちょっとお涙系に走りすぎかな?と思えなくはないですが、次々と襲ってくる困難を、知恵を絞りながら切り抜けていく展開はとても楽しめました。


「テキサス・チェーンソー」(2003年)

 1973年8月、テキサス。エリンは友人達と5人でライブを観に行くためにドライブしている途中、放心状態の少女と出会い、車に乗せる。だがその少女は「みんな殺された」という言葉を残し、エリン達の目の前で、隠し持っていた銃で自分の頭を撃ち抜き自殺してしまうのだった。そして彼女たちは、想像だにしていなかった恐怖の体験をすることになる。たどり着いた怪しげな家で彼女たちを待つ運命とは?

 「その恐怖描写は芸術的である」としてスミソニアン博物館にフィルムが保管されているという、トビー・フーパー監督「悪魔のいけにえ」のリメイク作品。
 はっきり言えるのは、オリジナルの「有無を言わせぬ不気味さと理屈抜きの恐怖感」はかなり薄れているということでしょうか。これは、オリジナルがレザー・フェイスをはじめとしたあの一家にほとんど輪郭づけをせずに、物語性も無視してとにかく一方的に主人公達をいたぶらせてばかりいたのに対し、本作ではキャラクター性を持たせたり物語としてのストーリー性も配慮したためではないかと思われます。
 ともかく、オリジナルであれだけ感じた「圧倒的な恐怖」は感じられませんでした。
 しかしその代わり、レザー・フェイス達が行う行為の「異常性」は本当にリアルに感じられる出来になっていました。どうも本作は、異常な殺人鬼が行う連続殺人を、「恐怖」よりも「異常さ」そのものに重点を置いて作成されているように思います。映像から受ける不気味さ、殺人鬼達の異常性はオリジナルよりも色濃く描き出されていて、何度か観ていて本当に気持ち悪くなってしまいました。
 主演のジェシカ・ビールはじめ、キャストもいい演技をしていました。恐怖に怯えたり、生きながらじわじわ殺されるという難しいシーンに挑戦していたり。
 作品的に若手キャストが多い作品でしたので、今後の活躍が楽しみです。


「テシス 次に私が殺される」(1995年)

 女子大生アンヘラは、「映像における暴力」というテーマで論文を書いていた。
 担当教授にその資料となる映像の入手を頼んだ彼女。だが、手に入ったのは、同じ大学で2年前に行方不明になった女性が、無惨に殺されていく映像が納められたビデオテープだった。
 果たして犯人は誰か? 誰がこんな映像を撮ったのか?
 その謎に迫っていったとき、アンヘラ自身の身にも危険が迫っていた。

 「オープン・ユア・アイズ」のアレハンドロ・アメナーバル監督の、長編デビュー映画。
 ストーリー展開はオーソドックスながら非常によくまとめられており、特に観客に対して複数の人物に疑惑を抱かせる演出に冴えを感じました。
 それにしても、一番怖かったのは、最後に病院内でテレビを食い入るように見つめている患者たちの姿だったりして(苦笑)。
 ともかく、サスペンス映画としてはそつなく作られており、非常に楽しめました。


「デッドコースター ファイナル・デスティネーション2」(2003年)

 180便の墜落事故から1年。友人たちとドライブに出かけたキンバリーは、ハイウェイの大事故で自分を含め大勢の人が死んでしまう夢を見る。
 あまりにリアルな夢であったため、ハイウェイ入り口で立ち往生してしまうキンバリー。そして、大事故は本当に起こってしまったのだった。
 そのことにより、事故を回避することが出来た8人。だが、その8人は、一人、また一人と不可解な事故に巻き込まれて命を落とし始める。180便で生き残った人々がそうだったように……。果たして、彼らは「死ぬ運命」をふりほどき、生き残ることが出来るのか。

 「ファイナル・デスティネーション」の続編。
 今回も、「死の運命」に翻弄される青年たちの恐怖が描かれています。
 今作は、全作と違って「死の運命」についての謎解き部分がないため、サスペンスタッチではなく「如何に美しく登場人物たちを殺すか」という点に焦点を絞って描かれていますね。このため、先の読めない展開というものはなくなってしまってますが、その分「次に、誰が、どのように殺されるんだろう」と分かりやすい楽しみ方が出来ますね。その点ではとても楽しめました。
 しかし、いくらあまり重要ではないとはいえ、もうちょっとストーリーは辻褄合わせなどを考えて欲しかったなぁ、と思いました。死に神の発動時期が、人によってまちまちなのは何故なんでしょうね?


「デモリションマン」(1993年)

 1996年のロサンゼルス。刑事のスパルタンは、2年間追い続けた凶悪犯のフェニックスを逮捕した。だが、そのときに人質に取られた市民30人が命を落としたとして、スパルタンはフェニックス共々、刑務所の中で冷凍保存の刑に処せられてしまう。そして、時は流れて2032年。仮釈放の審問会にかけられることとなったフェニックスは、看守達をやすやすと殺害し、見事脱走してしまう。その時代は、犯罪や不道徳が一切排除された、理想郷のような時代だったのだ。そんな社会に慣れ親しんだこの時代の看守や警官達には、旧世紀の遺物のような犯罪者であるフェニックスに立ち向かえるだけの力がない。そう、立ち向かえるのは、フェニックスと共に冷凍された、スパルタンしかいなかったのだ。かくして、36年の時を越え、ふたりは再び相まみえることになるのだった。

 シルベスター・スタローン、ウェズリー・スナイプス共演のアクション大作……なんですが、この作品、公開当時も少し古くさい作品だったんですよね。今見直してみても、やはりストーリー展開が大味で苦しいです。ヒーローが活躍すればいい、といった雰囲気で作られているんですけど、「ダイ・ハード」以降、こういった超人的なアクションヒーローはあんまり歓迎されない傾向になってますから、この手の作品の騎手だったスタローンやシュワルツェネッガーが90年代前半に急速に失墜してしまったのもうなずけますね。
 ウェズリー・スナイプスについても、蹴りの足がピンと伸びるスタイルは格好いいんですけど、作品には全く活かされてませんね。残念です。
 しかし、このころはまだあまり知られていなかったサンドラ・ブロックのキュートさと、後に彼女と「デンジャラス・ビューティー」で共演することになるベンジャミン・ブラットの明るさには、とても和まされました。


「DENGEKI−電撃−」(2001年)

 デトロイト警察の刑事、ボイド。彼は優秀ではあるがそのやり方は手段を選ばず、そのお陰で左遷されてしまう。移った先は無法地帯を管轄とする警察署。そこで彼は、麻薬取引の現場に出くわすことになる。そこから逃げ出した黒人男性を追って、ボイドの闘いは始まるのだった。

 スティーブン・セガール主演のアクション作品。これは面白かったですね。S・セガール作品の中でも良くできた映画です。珍しいことに、S・セガールが敵に苦戦してるし。これまでになく、身体全身を使ってアクションをこなし、でも決して超人的でないセガールの役所には案外新鮮さを感じましたね。
 抜群に、という訳でもないけど、アクション映画好きなら楽しめる映画だと思います。


「デンジャラス・ビューティー」(2000年)

 頭は切れるが色気がなく、見た目も冴えない女性FBI捜査官。彼女は、爆弾魔の「ミスコン爆破予告」をうけ、潜入捜査官としてミスコンに参加することになってしまった。スペシャル・チームに美容の粋を凝らされ、彼女は見事なレディーとなって会場へ乗り込むのだが……。

 サンドラ・ブロックが冴えないFBI捜査官に扮して美を競う(笑)コメディ映画です。これは楽しい映画でした。なんといっても、サンドラ・ブロックが不器用ながらも憎めない可愛らしい女性を熱演しています。それだけで十分に楽しめてしまうというのが、この女優の凄いところでしょうね。レディーに外見を変えても中身は全く変わらず、奮闘している姿はほんとうに楽しかったですね。とにもかくにもサンドラ・ブロックの魅力を満喫できる(それだけ、とも言えますが)映画でした。


「トイ・ストーリー」(1995年)

 カウボーイ人形のウッディは、持ち主のアンディの大のお気に入りで、アンディのたくさんのおもちゃ達のリーダー格だった。
 だが、あるアンディの誕生日にプレゼントとして送られてきたのは、最新のギミック(仕掛け)を詰め込んだ、バズという宇宙ヒーローの人形だった。
 アンディの一番のお気に入りの座を奪われ、嫉妬むき出しのウッディは次第に他のおもちゃ達からの信用を失っていく。
 だが、あるはずみから外の世界に飛び出てしまったウッディとバズは、冒険をくぐり抜けながらともにアンディの部屋を目指すことになるのだが。

 ディズニーとピクサー(CGアニメ作成会社)が送る、トイ・ストーリーシリーズ第1弾です。
 よく出来ていますね、このCG。世界初のフルCGアニメーション映画ですが、その動きや描写力は凄いです。ただ、犬などの生物についてはちょっとまだ技術が追いついていないようで、あんまりリアルでないですね。これは仕方ないかと思いますが。
 内容についても、よく出来ています。脚本のテンポも良く、アイデアも練られています。子供と一緒に大人が観ても楽しめると思います(って、僕は大人ひとりで見ましたけど……)。
 おもちゃの楽しさが心の中によみがえってくる、とっても楽しい映画でした。


「トイ・ストーリー2」(1999年)

 なんとウッディはプレミア付きの人形だった?
 コレクターのアルに目をつけられ、ウッディは盗み出されてしまう。
 折しも、アンディはキャンプで留守。バズをはじめ残されたおもちゃ達は、ウッディを救うために外へと飛び出していく。
 一方、アルの家でウッディを出迎えたのは、カウガール人形のジェシー達だった。彼らに人形博物館行きを誘われ、心揺れるウッディ。
 果たして、ウッディはアンディの元へ帰るのか?

 トイ・ストーリーシリーズ第2弾です。
 フルCGアニメーションに更に磨きがかかっています。この数年の進歩は本当に凄い。前作のCGがかすんで見えてしまうほどです。
 今回は、前作の最後でクリスマスプレゼントとしてアンディ宅にやって来た犬が登場しますが、この犬の描写が格段に進歩しています。お見事です。
 また、今回はウッディやバズ以外の、前回目立たなかったおもちゃ達もずいぶん活躍してくれます。この辺りも嬉しいところ。「ジュラシック・パーク」や「スター・ウォーズ」のパロディなど、楽しめるシーンが盛りだくさんです。
 それに、これを観るとおもちゃへの愛情を考えさせられますね。昔心なく捨ててしまったおもちゃのことを思い出して、心が痛くなったり……(苦笑)。
 当初はビデオのみの発売予定だった本作ですが、劇場公開になって大ヒット。このクオリティーの高さならうなずける話です。
 前作同様、とても楽しめる映画でした。


「28Days」(2000年)

 ジャーナリストのグエンは、アルコール中毒で毎晩記憶がなくなるまで酒を飲む生活をしていた。しかし、姉の結婚式の日、酒に酔いつぶれた彼女は、結婚式をぶち壊し、車で他人の家に突っ込んでしまう。言い渡されたのは、リハビリセンターでの28日間の療養だった。そこで様々な過去や中毒に苦しむ仲間たちに囲まれ、彼女は自分の人生と向き合っていくことになるのだった。

 サンドラ・ブロック主演のヒューマン・ドラマ。中毒というものを扱っていますが、そんなに重苦しくなく観ることが出来るのは、サンドラ・ブロックのキャラクター故でしょうね。そのサンドラ・ブロックが、回想の端々でやはえいアル中だった母との触れあいや、その母の死後すれ違っていく姉との関係には素直に感情移入して観てしまいました。スティーブ・ブシェーミもおいしい役をやっていて、個人的にはとても気に入った作品でしたね。


「トゥームレイダー」(2001年)

 5000年に一度の惑星直列。このときに光の民が残したといわれるトライアングルを使うと、時を自在に操る力を得ることが出来るという。冒険家ララ・クロフトは、亡き父の遺言により、そのトライアングルを捜索する事になるのだが、そこへ謎の秘密結社がトライアングルを狙って彼女へ襲いかかってくるのだった。

 この映画は、元々はゲームの映画化ですね。感想は、今イチ。ララ・クロフトのキャラクター像が今ひとつ弱かったように思いました。この手の映画って、キャラクターがきちんと立っていないとちょっと辛いですからね。せっかく実の父娘が共演したというのに、もったいないですねぇ。


「トゥームレイダー2」(2003年)

 ギリシアで起こった、大地震。それにより、長年海底の奥深くに沈んでいたアレキサンダー大王の神殿が、海底に姿を現した。多くの宝探し達がその情報をつかんで神殿を探しに向かったが、ララ・クロフトは他の宝探し達に先駆けて神殿の発見に成功する。神殿の中に入り、不思議に輝く珠を発見したララ。だが、その神殿内で突然正体不明の強盗団に襲われ、その珠を奪われてしまう。強盗団を指揮していたのは、細菌兵器を世界中に売りさばく闇の商人、ライス。そして奪われたその珠は、人類に最悪の災いをもたらすと言われる、パンドラの箱の在処を示す地図だったのだ。人類の危機を回避するため、ララはかつての恋人であり、現在は国を裏切ったことで囚人となっている傭兵、テリーを伴ってライスから珠を奪いかえす旅に出るのだった。

 人気ゲームの映画化作品として大ヒットした「トゥームレイダー」の第2弾。
 主演は前作に引き続きアンジェリーナ・ジョリー。監督は、「スピード」のヤン・デ・ボンがつとめています。
 アンジェリーナ・ジョリーは、今作でもスポーツ万能、頭脳明晰でスタイルも抜群な才色兼備の女宝探し、ララ・クロフトをばっちり演じています。水着からウェットスーツ、普通のシャツ姿からサバンナへの冒険服姿まで、色々と着替えて七変化を見せてくれます。
 また、アクションシーンや色んなスポーツのシーンもあり、それをキッチリとやって見せてくれてますね。これには、色んな意味で(笑)楽しませてもらいました。
 そして、今作の監督ヤン・デ・ボンは、アクションシーンの演出にはさすがにキレがありますね。矢継ぎ早に展開されるアクションシーンには、思わず見入ってしまう魅力と迫力がありました。
 しかし、シーンとシーンの繋ぎ……特にドラマ部分の繋ぎが、少しもたついてしまってる感じがしました。これはちょっと残念。
 とはいえ、前作以上の見せ場がてんこ盛りであるのは間違いありません。
 とても楽しく観させてもらいました。


「トゥルー・クライム」(1999年)

 新聞記者としては敏腕であるものの、酒と女にだらしなく、私生活に問題だらけの男、エヴェレット。彼は事故死した同僚の跡を継いで、死刑囚のインタビューを行うことになる。しかし、資料を調べ、直接会ってみる内に、彼はこの死刑囚は冤罪ではないかと疑いを抱くようになる。だがすでに、死刑執行はあと12時間後に迫っていた……。

 クリント・イーストウッドが描くミステリー。それなりに面白く観れた映画でした。この際、イーストウッドがあの年になっていろんな女とまだ寝ていることとか、たった12時間程度で事件の核心に迫っていくところとか、そんな突っ込みどころにも目をつぶりましょう。残念ながらサスペンスものとしての話のテンポが今ひとつだったんですが、ストーリーのまとめ自体はよくまとめてあったと思います。個人的にジェームズ・ウッズとイーストウッドの掛け合いが楽しかったですね(笑)。


「遠い空の向こうに」(1999年)

 1957年10月。人類初の人工衛星スプートニクが、ソ連によって打ち上げられた。
 ウェストバージニア州の炭坑町に住む普通の高校生、ホーマーは、夜空を横切るスプートニクを見上げた時から、宇宙への憧れにとらわれる。
 ロケットをこの手で造りたい。
 そう決意した彼は、友人達とともにその夢に向かって懸命になるが、様々な困難が待ち受けていた……。

 後にNASAのエンジニアとなるホーマー・ヒッカムの、高校生時代の実話を元に制作された映画です。
 爽やかな感動に包まれた作品ですね。夢を一生懸命追いかける、というのは言葉で言うほど簡単なことではありませんが、それをやり遂げた少年達の姿には素直に感動しました。
 小さな田舎町で夢を見ることで、父親と対立し、変わり者として周囲から孤立しながらも、次第に成果を上げ、理解を得ていく。その過程と、彼らを支えた学校の先生の触れ合いが素晴らしいです。
 ちなみに、原作となったのはホーマー・ヒッカム著「Rocket Boys」という小説で、この映画もそのままのタイトルで映画化予定だったらしいのですが、結局「October Sky」というタイトル(原題)になりました。これは、監督のジョー・ジョンストンが以前撮った「ロケッティア」という映画が、興行的に失敗したため、げんを担いで「ロケット」という言葉を使いたくなかったからだとか……。
 「October Sky」……これ、「Rocket Boys」のアナグラムになってるんですよね。きっかけとなる10月の夜空を表しながら原題を遊ぶなんて、よく考えたなぁ、と感心してしまいました。


「トータル・フィアーズ」(2002年)

 1973年、第4次中東戦争の渦中にあったイスラエル軍は、アメリカから入手した原子爆弾を戦闘機に積み込み、出撃させた。しかし、その戦闘機は撃墜され、核爆弾は不発弾として地中に埋もれることとなった。それから30年……その爆弾が偶然掘り出されたときから、事件は始まることとなる。それは、アメリカとロシアに向けた、恐ろしいテロの始まりだったのだ。

 ジャック・ライアンシリーズの第4作目。今作から、ハリソン・フォードに変わってベン・アフレックが3代目ジャック・ライアンとして出演しています。そのせいか、キャラクターの印象がずいぶん変わっていますね。
 個人的には、シリーズ中最高の出来だと思います。ハリソン・フォードの大きな影響下から脱却し、ライアンシリーズ本来の「情報戦」を重視したストーリー展開に話の筋を持っていけたことは、今後のシリーズ展開を考えても大正解ではないでしょうか。ハリソン・フォードが悪い訳ではないんですけど、彼が演じるとどうしても「人物同士の絆」がまずクローズアップされるきらいがありますからね。
 今作は、情報戦、頭脳戦を展開する、非常に密度の濃い作品に仕上がっていました。とても満足です。
 でも、不満点も少し。
 「世界の不安定はアメリカの問題」なんて発言は、劇中といえども不快ですね。各国の問題は、それぞれの問題であってアメリカの問題ではないのですが。よその国に口出しするのは内政干渉というものですが……。
 それと、原爆が爆発した後の人物達の行動が、あまりにも軽率すぎ。本当に原爆が爆発したら、もっと深刻なダメージと、さらなる2次被害が起こるハズです。その怖さを、今ひとつ登場人物達が感じていないように思われました。
 まぁ、しかし作品としては、とてもよく展開されていたと思います。今後のシリーズにも、期待したいと思います。


「隣のヒットマン」(2000年)

 歯科医のオズは、義父から背負わされた多額の借金を抱え、妻のソフィとの仲も冷え切って、鬱屈した日々を送っていた。そんなある日、彼の家の隣に、ある男が引っ越してくる。その男は、かつて17人を殺し、最後にはボスを裏切って証言台に立ったため、マフィアから賞金がかけられた殺し屋、ジミーだった。その彼を見て、ソフィアはオズにある計画を持ちかけるのだった。

 ブルース・ウィリス主演のコメディー映画。このばかばかしさは、結構笑えますね。しかも、きちんとドラマとして仕立ててあるのも好感が持てます。出演者の曲者振りといい、見ているだけで楽しい映画です。
 個人的に、アマンダ・ピートの健康的なはしゃぎっぷり(脱ぎっぷり)が小気味よくて、とても楽しめましたね(笑)。


「ドニー・ダーコ」(2001年)

 17歳の高校生、ドニー・ダーコは夢遊病で、しばしば道路や畑で目を覚ますことがあった。ある晩、彼は夢で銀色の巨大なウサギと出会う。ウサギは、彼に「世界の終わりまであと28日と6時間42分12秒」と告げる。目を覚ました彼が周りを見渡すと、そこはゴルフ場だった。そして、帰宅した彼を待っていたのは、夜中のうちに落下してきた飛行機のエンジンによって潰された、実家と自分お部屋だったのだ。果たして、そのウサギは何者なのか、そして28日後に何が起こるのだろうか。

 夢と現実の狭間に落ちた高校生を描くファンタジー映画。
 これは良くできてます。全編に渡ってみなぎる、リアルでもなく夢でもない曖昧な雰囲気は、本当によく醸し出したなぁと感心しました。かといって見ている側を放り出してしまうこともなく、キチンといろいろな事件を起こして興味をつなぎ止めることも忘れていませんし、ラストまで説明的になることもなく、息切れもせずにその雰囲気を描ききっていますね。夢と現実を描く作品で、ここまで綺麗にその世界設定を描ききった作品はなかなかないように思います。楽しめました。
 ただ、設定上作品は暗めです。マニア受けの要素も大なので、お勧め、とまでは言いにくいかも知れません。


「ドーベルマン」(1997年)

 生まれたときから銃に安らぎを覚えていた強盗、ドーベルマン。彼は仲間達を従え、次なる仕事にかかろうとしていた。パリ警察はそんな彼らをマークし、逮捕するために人員を総動員して警戒にあたっていたが、白昼堂々、ドーベルマンたちは強盗を成功させてしまう。そして、手段を選ばない非情な刑事クリスチーニが、強硬な捜査を始めるのだった。

 ヴァンサン・カッセル、モニカ・ベルッチ、チェッキー・カリョ共演のバイオレンス映画。
 元はコミックの映画化作品らしいのですが、そのせいかかなりコミックにこだわったカット割りや映像を見せてくれます。
 とにかくテンション高めの映像と登場人物達、そして力押しのバイオレンス描写で最後まで押し切っています。かなり残虐で痛々しいシーンも多いんですが、このテンションに乗ることが出来たら、のめり込んであっという間に見終わってしまいますね。
 残念なのは、生まれたときからどう猛なキャラであるはずの主人公ドーベルマンが、他のキャラの個性と凶悪さに埋もれてしまって、画面上では比較的おとなしい存在に思えてしまったことですかね。特に凶悪だったのは刑事であるチェッキー・カリョ。「キス・オブ・ザ・ドラゴン」でも極悪な刑事を演じていましたけど、この作品ですでにこんな役をやっていたんですねぇ。
 特筆すべきは、耳の不自由なヒロインを演じた、モニカ・ベルッチのその言葉に出来ない程の美しさ。かなり下品な役所ですけど、それでも綺麗に見えてしまうのはやはり彼女だからでしょうね。
 ともかく、作品としては独特のグルーヴ感のある作品でした。


「ドメスティック・フィアー」(2001年)

 造船工のフランクは、妻と離婚し、一人息子のダニーとも別居の生活を送っていた。だがそれでも、彼はダニーとは面会日に会っては心を開いて話し合い、仲の良い親子関係を築いていたのだ。やがて、別れた妻が、最近街に引っ越してきた事業家のリックと再婚することになり、ダニーは嫌々ながら母親と新しい父親の元で暮らし始める。だが、やがてダニーは、リックが人を殺す場面を目撃してしまうのだった。リックが人を殺した……その話を、警察も母親も、誰も信じなかった。ただ一人、フランクをのぞいては。

 ジョン・トラボルタ主演のサスペンス映画。結構ハラハラしながら観ることが出来ました。ただし、映画が目指した物とは別の意味で。
 何というかですね、この映画の登場人物達って、「普通この場面でこんな行動をとらないだろー」って思うことばっかりするんですよ。
 トラボルタ演じるフランクは、リックが人殺しだと息子から聞かされて、リックと直接話もせずにいきなり息子を母親の元から誘拐しちゃうんですよね。んで、それで警察に捕まって、すぐさま今度は親権を取り戻そうと裁判に打って出る……息子は完全にその「殺人者」の手の内にあるんですよ、そんなにあからさまに行動したら危ないって!
 息子も結構行動力がある素振りを見せながら、何故か家から逃げ出さないし、母親は全く息子の言葉を信用しないどころか耳を貸そうともしない。また、警察も最初っからリックを疑おうともせずに、ダニーの証言に基づいての捜査など徹底してやる気がない。
 と、終始そんな感じで、「何が起こるんだろう」っていうサスペンス映画のハラハラ感でなく、登場人物達のほぼ全員に「何そんなバカなことやってるんだよ!」っていうハラハラ感を抱かされて鑑賞してしまった映画でした。
 トラボルタの演技は相変わらず上手いし、面白くなる要素も多分に盛り込まれていたんですけど……登場人物達の行動が、もうちょっとまともな物だったらなぁ、と、とても惜しく思います。


「ドラキュラ」(1992年)

 神の軍として、外敵と死力を尽くして戦ったドラクル。だが彼の妻は、誤解からドラクルが死んだと思い、自ら命を絶ってしまう。自殺者には神の救いはない、という神官の言葉にドラクルは怒り、これまで仕えてきた神への呪いを吐き、復讐を誓う。それから400年。ドラキュラ伯爵としてトランシルバニアの伯爵として生きていたドラクルは、かつて命を絶った妻の生まれ変わりと再会し、永遠の愛を成就させようと目論むのだった。

 フランシス・フォード・コッポラ監督が、ブラム・ストーカーの原作「ドラキュラ」を忠実に映画化しようと試みたゴシック・ロマン・ホラー。コッポラ監督は大の「ドラキュラ」好きだそうで、この作品は「原作に忠実なドラキュラ映画を撮りたい」という彼の念願が叶った作品だったようです。
 とにかく、スクリーンから放たれるオーラに打ちのめされた映画でした。問答無用に力強く描き出される荘厳な絵巻物語に、ただただ圧倒されるばかり。美しさ、エロチシズム、そして不気味さ、汚らしさ、全てに凝りに凝った画をつくり、スクリーンを彩っています。コッポラ監督の力を感じさせられる作品です。
 キャストに関しては、アンソニー・ホプキンス演じるヘルシング教授が白眉です。このヘルシング教授のキャラクターと存在感は本当に素晴らしい。
 面白い、面白くないではなく、打ちのめされた作品でした。好きな映画です


「ドラキュリア」(2001年)

 ロンドンの博物館の地下から、棺桶が盗み出される事件が起きた。強盗達はその中に金目の物が納められていると思い込んでいたのだが、実はその中には、100年前に封印された吸血鬼、ドラキュリアが眠っていたのだ。博物館のオーナーであるヴァン・ヘルシングは、その盗難を知るやいなや、その棺桶の行方を追って旅に出る。実は彼はヴァンパイア・ハンターであり、どのような手を施そうともけして死なないドラキュリアを滅ぼす方法を探りながら、博物館の地下で監視していたのだ。一方、ニューオリンズに住むマリーは、黒いマントの男の夢や幻影に悩まされていた。不吉な予感を抱えながら……。

 ウェス・クレイブン製作総指揮による、吸血鬼アクション映画です。個人的には、吸血鬼を演じていた役者の迫力不足にちょっとがっかりしてしまいましたね。アクションシーンはそこそこ演出してくれてはいるんですけど、肝心のドラキュリアが少し迫力不足というか……。ストーリー的に「ドラキュリアの正体」など、面白い要素があっただけにとても残念です。却って、アクションを少し抑えてドラキュリアに重みと陰影を持たせ、ストーリーを丁寧に描いてくれたらもっと面白くなったと思うんですが……残念です。


「トラ・トラ・トラ!」(1970年)

 1941年、第2次世界大戦中の日本は、アメリカの経済制裁により苦しい内政状態を抱えていた。このままアメリカとの外交交渉を続けるか、アメリカと開戦するか……内閣は決断を迫られる。連合艦隊司令官、山本五十六は、この戦争は始めるべきではないと考えていたが、開戦の決定が下るならば、目標はハワイ諸島の真珠湾奇襲を行うべきと主張する。そして、その主張は現実のものになろうとしていた。

 「真珠湾攻撃」の真実を徹底的にリサーチして日米合作でまとめ上げた、戦争映画の秀作です。この映画は徹底的にリアリズムを追求してあるようですね。山本五十六の苦悩。爆撃30分前に「アメリカに届くはずだった」日本の宣戦布告。情報をキャッチしており、真珠湾への攻撃も予測していながら情報伝達処理のまずさから真珠湾基地への警告が遅れてしまったアメリカ軍。さまざまな偶然や油断、見え隠れする賛戦派の思惑などによって、事態が最悪の方向へ進んでいく様の描き方は圧巻でした。
 とても観る意義のある映画だったと思います。


「トラフィック」(2000年)

 メキシコとアメリカにまたがる巨大な麻薬密売ルート。そのルートを牛耳ることは陰の世界で大きな富を得ることを意味し、密売組織間の抗争も激化していた。麻薬の撲滅を目指す男たちは、そんな麻薬ルートの撲滅を目指して、麻薬密売組織へ戦いを挑んでいくのだが……。

 スティーブン・ソダバーグ監督が描く麻薬戦争のドラマ。
 ソダバーグ監督お得意のドキュメンタリータッチの演出が冴え渡っています。
 いくつかの個別のドラマが微妙につながりあい、ストーリーを構成していく様は圧巻!
 ラストは若干甘めかな、という気がしないではないのですが、本当に面白く、良くできたドラマでした。


「トランスポーター」(2002年)

 退役軍人であるフランクは、フランスの静かな街に移り住み、表向きは年金受給の自適な生活を送っていた。だが、彼の本当の顔は、報酬を受け取って人や物を車で運ぶ「運び屋」だったのだ。彼の信条は3つ。契約は厳守。名前は聞かない。依頼品を開けない。だが、ある時運びを引き受けたバッグが動いているのを見た彼は、ついルールを破ってそのバッグを開けてしまう。中から出てきたのは、アジア系の美女。そしてそのときから、フランクは命の危険にさらされることになるのだった。

 リュック・ベッソン制作、脚本のアクション映画です。
 面白かったのは面白かったんですけど、ちょっと中途半端かな、という印象。
 それは恐らく、修羅場をくぐった凄腕の運び屋が、バッグが動いていたからといって荷物を開けたりするか?と率直に疑問を感じたからだと思います。
 凄腕、というからには当然そういった「素性のヤバイ、生きた人間」を運ぶ仕事だってあるでしょうし、それがこなせなければ運び屋なんて裏家業はこなせないと思うんですが。
 ましてや、クールに、完璧に自己を律して仕事を成し遂げることを信条としている主人公が、簡単に情に流されてしまうなんて、設定上あり得ないように思えたんですよね。
 あと、終盤のアクションシーンで、次々と出てくる悪役達がみんな銃でなくて素手で戦おうとしていたのもちょっと不自然な感じがしました……「キス・オブ・ザ・ドラゴン」の流れでやっちゃったのかな、ベッソン?
 とはいえ、アクションシーンも楽しめるものでしたし、なにより冒頭のカーアクションの出来が良かったので、全体的には楽しめました。


「ドリヴン」(2001年)

 時速400キロでコースを駆け抜けるカートレース。年間20戦行われ、その総合成績でチャンピオンを決めるこのレースは、その年の序盤戦、若き新鋭レーサーであるジミーはめざましい活躍を見せていた。しかし、プレッシャーからか、中盤に入って彼の成績は伸び悩む。チームオーナーは、そんな彼のサポートとして、かつてのスター・レーサーであるジョーをカムバックさせ、ジミーの指導にあたらせるのだが……。

 シルベスター・スタローンが、今は亡き天才レーサー、アイルトン・セナに捧げて脚本を執筆した話題作。そのレースシーンの迫力はかなりのものでした。時折レースシーンの画面全体がCGになるときちょっと違和感がありましたけど(笑)。それでもこのレースシーンは一見の価値ありですね。ストーリーは……まぁ、分かりやすいお話、という感じでしょうか。若いジミーの苦悩なんて、役者の演技は悪くないんだけど、演出の仕方がもっとあるだろう、とちょっと苦笑いで観てしまいました。まぁ、レニー・ハーリン監督だからなぁ(笑)。


「ドリフト」(2000年)

 香港で無為に人生を送る青年タイラーは、ある晩、酔った勢いで恋人とケンカしたレズビアンの女性ウォンと一夜を共にし、妊娠させてしまう。彼女のためにお金を稼ごうと決意したタイラーは、非認可の警備会社に就職。稼いだお金をウォンに渡す生活を送り始める。そしてある時、タイラーは財界の大物ホンの誕生パーティーの警備にあたることになった。そこで彼は、ホンの娘婿であるジャックと出会う。そのジャックは、傭兵を生業としていた過去がある、凄腕の殺し屋だったのだ。そしてジャックは、組織から、義理の父親であるホンを殺せという使命を受けるのだが……。

 ツイ・ハーク監督のアクション映画。
 ストーリーはかなり中途半端で弱い気がしましたけど、それを補うだけのアクションの面白さが存分に味わえました。
 後半に入ってからのアクションは、もう絶品の一言。取り壊されていない九龍の区画を舞台に、ロープなどの小物を有効に使ったアクションを見事に展開しています。色んなアクションのアイデアと見せ方が小気味よく、楽しませてもらいました。
 個人的には、ウォンがレズビアンである必要性が全く感じられなかった、というかその設定が主人公と和解していく過程の説得力をなくしてしまっているような気がしたのが残念。
 あと、「ドリフト」ってタイトルで、ビデオやDVDのパッケージにも思いっきり車の写真が載っているのにカーアクションなし、っていうのはどうかと思いました(いえ、コミカルなシーンで主人公が車を走らせるシーンはあったんですけどね……)。


「トレーニングデイ」(2001年)

 ロサンゼルス市警の麻薬捜査課に転属になった若手刑事ジェイクは、凄腕として有名なアロンゾの下につくことになった。最初の1日を訓練日として、アロンゾはジェイクに麻薬捜査の実体をたたき込もうとする。それは、チンピラから金を巻き上げ、押収したドラッグや証拠品も目的のためなら私物化するという、規則や戒律、法さえも無視したきれい事ではすまされない世界だった。悪党達でさえ一目置くアロンゾは、果たして街を守る英雄なのか、我欲に満ちた悪徳警官なのか。そして、この訓練日は、アロンゾにとってもジェイクにとっても、激動の1日となっていくのだった。

 デンゼル・ワシントンが汚れたカリスマ警官に扮した、クライム・サスペンス。取引や駆け引きに満ちた、汚れた麻薬捜査現場の描き方は真に迫っていました。実際の現場もああなのか、少し不安に思いました。
 正義感溢れる役が多かったデンゼル・ワシントンでしたが、この作品での汚れっぷりには脱帽。相手を説き伏せる話術に、観ている方も「何が本当に正しいのか?」が分からなくなってきます。非常に密度の濃い、骨太なドラマでした。


「トロイ」(2004年)

 ギリシア連合スパルタと、その宿敵トロイとの間に同盟が結ばれたその時。その同盟のためにスパルタを訪れていたトロイの若き王子パリスは、スパルタの王妃ヘレンと恋に落ち、彼女を船室に隠してトロイに連れ帰ってしまう。
 この事実に激怒したスパルタの王メネラオスは、ギリシア王である兄アガメムノンと共に難攻不落のトロイへと攻め込む決意をする。
 そしてアガメムノンは兵士を集め始めるのだが、この史上最大の戦いに勝つには、あるひとりの男の力が必要だった。その男の名は「女神の息子」と称される最強の戦士アキレス。だが彼は、同時にアガメムノンに対して最も反抗的な戦士でもあったのだ。
 王のためでも、まして連れ去られた王妃のためでもなく、ただ歴史的な戦いで名を残すことだけを望みとして、アキレスは戦いの地に赴くのだった。

 ブラッド・ピット主演のスペクタクル大作。
 素晴らしい出来でした。2時間45分もの長尺にも関わらず、全く飽きさせずに、一気に最後まで見せきってしまう編集は本当にお見事。
 男達の、名誉のためだけに愚直なまでに戦う熱い姿、誇りと誇りのぶつかり合いにすっかり魅入られてしまいました。迫力と緊迫感に満ちてます。
 それにしても、ブラッド・ピットの肉体は素晴らしい! この、40歳にはとても見えない身体を作ってしまうその役者根性に感嘆しました。
 トロイの「太陽の王子」ヘクトルを演じたエリック・バナも良かったです。剣術に長け、思いやりがあり、しかも理知的なカリスマでもある役所を、ごくごく自然に演じきっていましたね。
 パリスを演じたオーランド・ブルームは、このふたりと比べるのは少し酷でしょうね。役所があまりにも軽薄で情けないので……。(しかし、『この映画でも弓矢を使うのかよ』と突っ込んだのは私だけではないでしょう)
 ウォルフガング・ペーターゼン監督健在といったところでしょうか。娯楽大作として非常に良くできた映画でした。


「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)

 それは、突然やってきた。
 死者が立ち上がり、生者に牙をむく。そして噛まれた生者は生ける死者となり、また生者を襲う……悪夢のような伝染病が、地上に突如はびこり始めたのだ。
 看護婦のアナは、夫をその病気の感染によって亡くし、命からがら家から逃げ出した。そんな彼女がみた外界の風景は、想像を絶する悲惨なものだったのだ。
 あちらこちらで人を襲う死者の群れ。町は破壊され、阿鼻叫喚に包まれている。
 アナは逃げる途中で数人の仲間と出会い、そしてショッピング・モールへ立てこもるのだが……。

 ジョージ・ロメロ監督の「ゾンビ」を現代風にリメイクした作品。
 オリジナルではあれだけのろのろと歩いていたゾンビが、走るわ飛びかかってくるわでもう大変なんですが、思っていたよりオリジナルと印象の違いは少ないですね。
 モールに立てこもるという設定をそのまま踏襲していることも大きいでしょうけど、それ以上に、立てこもった人間達のドラマをきちんと考えて盛り込んである事が大きいようです。
 立てこもった人間達の中でのリーダー争いや、立てこもった仲間の中からゾンビになってしまう人間が現れたときの葛藤、追いつめられたときの人の自分本位な行動など、しっかり押さえて盛り込んであります。
 しかし、この手の作品では定番ともいえる「ゾンビの群れの中にかつての知り合いを見つけた」ってシチュエーションがなかったのは残念でした。個人的に、そのシチュエーションがゾンビもので一番切なくてやるせないので、好きなんです。
 「モールに閉じこめられた」という緊迫感も、オリジナルほど伝わってこないのが残念。もうちょっと、ゾンビがモール内に進入しようとしてきてもいいのでは?と思いました。
 そしてもうひとつ。オープニングとエンディングで、ゾンビのアップや動きなどの短いカットを次々に映し出す演出は、個人的にマイナス。スタイリッシュ、というのかも知れませんけど、私としては眼がチカチカして頭痛を起こしそうになりました。
 とはいえ、リメイクものとしてはよく頑張って作られていると思います。ゾンビが暴れ回った後の世界の荒廃ぶりや終末感は、本当によく出ていましたし。
 しっかりとしたリメイク作品だったと言っていいんじゃないでしょうか。
 (ただ、個人的に『バイオハザード』に方が好みだった、というのは内緒♪)